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Gibson

画期的なソリッド・ボディが持つ魅力と完成された究極のシェイプ

サンバースト・レス・ポールが持つ希少価値と魅力を再発見

  • サンバースト・レス・ポールとは?
  • 1958年〜1960年だけに製造された希少価値
  • 構造とスペック
  • より詳しい情報は専門書籍で!

サンバースト・レス・ポールとは?

誕生の背景

 ギブソンが同社初のソリッド・エレクトリック・ギターであるレス・ポール・モデルを市場に投入したのは、1952年のこと。ギブソンは、当時の人気ギタリストであり発明家でもあったレス・ポール氏のアイデアを取り入れて、ライバルのフェンダーに対抗するソリッド・ギターとしてレス・ポール・モデルを開発した。

 当時の仕様は、P-90ピックアップ、トラピーズ・ブリッジ/テイルピース、ゴールド・フィニッシュというもの。その後、数度のマイナーチェンジを経て、1958年に伝説となったサンバースト・レス・ポールの仕様が完成する。

 つまり、チューン・オーマティック・ブリッジ、“PATENT APPLIED FOR”(特許申請中)のデカールが底部に貼られたハム・バッキング・ピックアップ(通称PAF)といった前年までの仕様にプラスして、塗りつぶしのゴールド・フィニッシュからサンバースト・フィニッシュに変更されたのが1958年。以降1960年まで生産が続くこの仕様のビンテージ・レス・ポールこそ、“サンバースト・レス・ポール”、“バースト”などと呼ばれるものだ。

製造期間について

▲1959 LES PAUL 9 0656
アメ色に強く焼けたハニー・バースト・トップ。

サンバースト・カラーについて(経年変化)

 『The Beauty of the Burst』を見れば一目瞭然だが、いわゆるサンバースト・レス・ポールは、1本1本がまったく違う顔を持つ。こうした個性は、以下のような要因が複雑に関係して生じる。

  • ボディ・トップのメイプル材の色味が経年によって変化すること(フィニッシュの下でも木地の色味が変化する)
  • カラー層では、混合された塗料の退色の進み具合が色味によって異なること
  • トップのクリア層が光により変色すること

 そしてこれらのことが保存状態(どの程度光にあたっていたか、湿度や温度の影響etc)や、弾き込み具合(塗料に対する汗の影響)などとも絡み、全く同じ経年変化を起こす個体は存在しない。

 ギブソンがサンバースト・フィニッシュを取り入れたとき、サンバーストの背景としてまず特殊な顔料系のイエロー層を塗り(この層は基本的に退色しない)、その上には鮮やかな色合いとなるように染料系の塗料を使って、赤を中心に深みを出すために微量の青系や黒を混ぜた中間色をリム部分に使用した。この染料系の塗料は鮮やかな色を出すには好都合だったが、退色しやすい側面も持っており、特に赤の成分は他の色味成分よりも早く退色が進みやすい。

 サンバーストのリム部分である赤の強いブラウンから、赤みが抜けていくことで薄いブラウンが残り、元々鮮やかだったレッド・サンバーストは淡いブラウン系のサンバーストに変色する。その過程では赤とブラウンの中間的なサンバーストが生まれる。さらに退色が進めば、最終的には中央部分のイエローと、アメ色に焼けたトップのクリア層だけが残り、レモン・ドロップなどと呼ばれるカラーに変色する。また、メイプル自体に染みや色ムラがあった場合(メイプルは単純な白ではなく、わずかに茶色味を帯びている)、本来のサンバーストより濃い色合いで仕上げられたと考えられ、それらが退色する過程でタバコ・ブラウン・サンバーストになる例も見受けられる。

 1960年には、ギブソンも一部のサンバーストが退色することに気づき、リム部分の赤系の塗料が顔料系の赤に変更された。これを使った1960年製のサンバースト・レス・ポールは、比較的出荷当初に近い、鮮やかなレッド・サンバーストを保つ個体が多いようだ。

  • サンバースト・カラーについて(経年変化)

サンバースト・レス・ポールをもっと知る!

『ザ・ビューティ・オブ・ザ・バースト リプリンテッド・エディション』
著者:岩撫 安彦
定価:2,625円(本体2,500円+税)
仕様:A4変型判/224ページ/ポスター付き
発行:リットーミュージック

サンバースト・レス・ポール研究書の決定版を復刻!
 96年にハードカバー版として初登場した『ザ・ビューティ・オブ・ザ・バースト』は、ビンテージ・ギター市場で最も価値の高い58~60年製ギブソン・レス・ポールを80本以上ファイルし、その構造や歴史を詳しく研究した決定本。98年には英語版を発行、世界的な評価を獲得し、今に至るまでサンバースト・レス・ポールのリファレンスとして最も信頼できる一級の資料とされている。
 国内では97年にソフトカバー版を発行して以来、長らく入手困難となっていたが、ネット上などで復刻を望む声が高まり、ついに『~リプリンテッド・エディション』として基本的にはオリジナルの内容のまま復刊することとなった。刊行形態はソフトカバーで、初版のハードカバー版にのみ付いていた特大ポスター(740×500mm)を付録。