AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Ibanez / 2681 Bob Weir Model(1978年製)
時代を駆け抜けた熱き気風が、再び音となって人の心を打つ。それらは、今なお、ただ堂々とオリジナルであり続け、色褪せる事を知らない。70年代〜80年代の古き良き国産エレキ・ギターを動画とともに紹介する「魅惑のジャパン・ビンテージ」も、コアなファン層に支えられ、あっという間に連載第4回を迎えることとなった。この度は、国内よりも先に海外でその評価を高めた異色のブランド、Ibanez──その過渡期に、ボブ・ウェア(exグレイトフル・デッド)のシグネチャーであり、破格のプロ仕様を備えて市場に卸された希少モデル“2681”を取り上げる。求めたのは、全ての達成された伝統を凌駕する、世界基準の付加価値。一様に局地化するギターのニーズをして、Ibanezを国内外で全く同じ価値を維持する高位のブランドたらしめたもの……それは、何よりも本場アメリカで臆する事なく勝負した『勇気』であると人は言う。2681の研ぎすまされたサウンドに命を吹き込むのは、毎度、変幻自在のフレーズで楽しませてくれる達人・稲葉政裕氏。いつも通り、試奏インタビューや個体の詳細データを参照する事により、国産ビンテージの奥深き世界をさらに身近に感じていただけたら幸いである。香るようなそれでいて力強い2681の響きが、今ここに、変革という荒波を背に海を渡った倭(やまと)の心意気を蘇らせる。
Ibanez(アイバニーズ)は、現在母体となっている星野楽器が、昭和の初期にスペインのIbanez Salvador(イバニエス・サルバドール)社の商標を買い取った事によって発足させた国内ブランドである。元々、星野書店の楽器部として1908年にスタートした星野楽器(1929年に独立。当時は合資会社「星野楽器店」)は、アイバニーズ・ブランドの始動と呼応するように着々と自社の弦楽器開発を進め、その旗下に多満製作所(現在のTAMAブランドの原型)が設立された頃にはエレキ・ギターの製造にも本格的に着手するようになっていった。
そして、1965年に多満製作所がメイン・ラインをドラム製造にシフトすると、星野楽器はエレキ・ギターの製造を富士弦楽器製造(現フジゲン)に委託するようになる。この業務提携を期に、星野楽器は、富士弦楽器と関係の深かった神田商会(グレコ)とも密接な協力関係を築いていく事になっていった。最初はコピー・モデルの製造から始まり、70年代に入ってからも三者の強固なトライアングルは、ギター開発に関わる全ての部署に及ぶようになり、それはやがて、国内の流通を押さえるグレコ、輸入事業による海外との強いコネクションを武器にするアイバニーズ、という異例とも言える別企業による市場の棲み分けを生み出した事は、よく知られている通りである。
こうして国産エレキ・ギターの輸出専門ブランドとして独自の地位を確保するに至ったアイバニーズは、事業の安定化とともに、やがて念願だったオリジナル・エレキ・ギターの製造に着手する。1973年、彼らは遂にブランド初のオリジナル・プロダクト「The ARTIST SERIES」を完成させる。それらは4桁の数字を冠されたシリーズとして統一され、同年のうちにエレキ・ベースを含む7種のラインナップが海の向こうへと出荷されていった。そのうちの2611、2612、2613、2614は、後にジャパン・ギターの代名詞となる正対称ダブル・カッタウェイによるシルエットをすでに持たされたエレキ・ギターであった事も相まって、海外──特にギブソン、フェンダーという2大ブランドがシェアの大半を独占していたアメリカ本土において、一大センセーションを巻き起こすこととなった。
これらのモデルは、当初からハイ・パワーな独自のピックアップ“Super70”(日伸音波製作所=Maxon製)を搭載していた事で、当時、より強力なドライブ・サウンドを求めていた米国のロック・ギタリストを中心に注目を集め、特に、75年のブランド初となるセット・イン・ネックを採用した2617や、76年に登場した24フレット仕様の2618では、さらにその支持を拡大してゆくことになる。その後、77年に訪れたブランド初のメジャー・アップデートによるジブラルタル・ブリッジ&テイルピース等ハードウェアの充実も軒並み高い評価を得たアイバニーズは、そのブランド名をしっかりと海外の地に根付かせることに成功したのだった。その噂は海を越え、グレコとの協定により販売のなかった日本国内においてもアイバニーズを求める声は着実に高まりをみせ、1979年、ついに「The ARTIST SERIES」は基本となるダブル・カッタウェイのシリーズを中心に一斉にモデル名を変更し、国内販売を開始する事になる。それが、後のアイバニーズにおけるトップ・ラインとなる“AR”シリーズの起源である。
日本独自の技術力を世界中で認知させ凱旋したエレキ・ギター界の帰国子女、アイバニーズ。国内の販路に固執しなかった彼らがより困難な場所へのチャレンジに未来を求めた瞬間から、本当の意味で、国産オリジナル・ギターの“身内のまねごと”ではない、“商品”としての歴史が始まったのである。
アイバニーズが、その幅広い海外でのコネクションを活かし、数多くの高名なミュージシャンとタイアップすることで生まれた「The ARTIST SERIES」。そのリミテッド・バージョンとして76年から正式にカタログ上に登場したのが、プロ御用達の特別モデルやプロトタイプをほぼ同一スペックのまま再現した通称“プロフェッショナル・シリーズ”である。
中でも、“2671” Randy Scruggs(ランディ・スクラッグス)モデルと、“2681”Bob Weir(ボブ・ウェア)モデルは、当初からより完璧なプロ仕様であり、最も上位のシグネチャー・モデルとしてトラスロッド・カバーに「Professional」の文字が刻まれた。2681は、76年から79年まで製造、発売されるという、リミテッド・モデルとしては異例とも言えるロングセラーを記録したモデルで、その期間内に、何度も細かな仕様変更を繰り返した事でも知られる(ディテール解説参照)。兄弟モデルとして、唐草の指板インレイやヘッド・バインディング、ボディふちの象嵌(ぞうがん)等を省略した廉価版2680が存在するが、機能や基本的な材に違いが無いにも関わらず、2681とは売値で3万円以上もの差がつけられていた。
2681は、ホーンの形状こそ異なるものの、エボニー指板、アッシュ・ボディというマテリアル、そして特徴的なジャーマン・カーブ風のトップ形状から、75年より先行発売されていた2617の流れを汲んでいる事は明白であった。また、アイバニーズは、この2681をベーシックに据え、かの有名なジョン・マクラフリン使用の“Double Rainbow”ギター(レックス・ボーグ製作)へのオマージュとして、ダブル・ネックの2670を作った事はあまりにも有名。同時期には、仕様はほとんど同じままでレス・ポール・シェイプのボディを持つ2671もあった。2681は、94年以降に「80’s Custom Legend」として再生産されている。
600個以上のスピーカーで構成される巨大なPAシステム「ウォール・オブ・サウンド」を構築するなど、サウンド、機材に対しては並々ならぬ情熱とアイディアを持っていたグレイトフル・デッド。そのデッドのギター・サウンドはボブとリード・ギタリスト、ジェリー・ガルシアとの関係抜きには語れないだろう。デッド初期から70年代半ばまで、ボブ・ウェアはギブソンES-335、345、ギルド・スターファイアーなどを愛用していた。一方ガルシアは、改造ストラトキャスター(通称アリゲーター)、アレンビックのダグ・アーウィンによって製作された「ウルフ」、スルーネック構造でプリアンプを内蔵した「タイガー」など、ギターに対しても実験的な姿勢を持っていた。両者がハムバッカーのギターを使うとどちらの音か判別しにくくなるため、一方がシングルコイルのギターに変えるなどのエピソードもあったようだ。
そんなガルシアとのサウンド・バランスを模索していたと思われるボブは、ES-335よりもっとブライトなサウンドのギターを求めて、アイバニーズの北米支社に勤務していたジェフ・ハッセルバーガーを頼ったと見られる。ピックアップの位置決めなどに腐心した結果、作られたものが2681になる前のオーダー・モデルだ。そのギターはセンターにもシングルコイル・ピックアップを搭載したHSHレイアウトで構成されていた。また、5つのコントロール・ノブに加え、各ピックアップに連動した3連フェイズ・スイッチ(オン/オフを兼ねる3点トグル)をボディ・トップの上方にマウントし、かなり音色の幅は広かったと思われる。他にも通常の2681には付かない黒いピックガードを装備していたり、カッタウェイ周りのジャーマン・カーブの形も異なる等、ワンオフの個体ならではのかなり特殊な仕様が目立つ。彼の最初の2681プロトは、使用わずか2年程度でロスのロキシー・シアター公演の際に盗難にあって、紛失している。
ヘッド形状は、2671や2674でも採用されていた「バッファロー」。ロゴは、76年最初期モデルの2681には筆記体ロゴもわずかに存在する。これはイタリックスのブロック体ロゴ。ヘッドの化粧板(天神板)は指板に合わせた黒。トラスロッド・カバーは77年以降に見られる白黒2プライの2点ネジ止めタイプで、“プロフェッショナル・シリーズ”の中でも最上のシグネチャー・ラインの証し「Professional」の文字が刻まれている。ヘッド全体を被うバインディングも実に見事。ナットは、初期型は牛骨だったが、これは牛骨(3.5mm)+ブラス(1.5mm)の「ハーフ&ハーフ・ナット」。シリアル・システムは70年代半ばからのもので、アルファベットが製造or出荷月、次の2桁が19○○の年代表記、残りが通し番号となっている。
高級モデルらしい漆黒のエボニー指板が見て取れる。アイバニーズのナンバー・モデルにエボニー材が採用されたのは75年からなので、2681は例外無く全てエボニー指板。インレイには、同社のトップ・モデルやカスタム・ラインに採用される絢爛豪華な「ツリー・オブ・ライフ」が彫られている。ヘッドまで繋がった美しい唐草模様は全て白蝶貝。ベルベタッチ・フレットと呼ばれる自社フレットを採用(オーバー・バインディング)。
77年の改変期以降は、アクティブ回路対応のオリジナルSuper80をマウント。前機種Super70と同様にフェイズと切り替え機構を内蔵し、加えてコイルタップも可能という高機能な仕様を備えるSuper80だが、この試奏モデルにはそれらを操作するスイッチはない。フルカバー・タイプなので、ポールピースは固定(カバーとの間には樹脂が流し込まれている)され、トップには「フライング・フィンガー」のインプレスが輝く。78年以降のSuper80は基本的に3点支持だが、このモデルではそれ以前の2点支持スタイルのものが採用されている。
アイバニーズを象徴するジブラルタル・ブリッジ&テイルピース。発売当初の2681のブリッジはボディ・トップに直接固定するただの2点スタッド・タイプだったが、77年前半にはジブラルタル・ブリッジの原型とも言うべき「ハーモニック・オー・マティック」タイプが採用され、77年後半以降はサステイン・ブロック(奥行き19.5mm x 幅89mm x 深さ17mm)に直接固定する本格的なジブラルタル・ブリッジに移行した。テイルピース飾りは、俗称で「三角オーナメント」と呼ばれる、これぞ国産ギターとも言うべき名物パーツ。77年前半までのものには、まだテイルピースにジブラルタル方式の溝は切られておらず、ただのストップ・テイルピースであったり、オーナメントにも「Ibanez」のロゴがなかったりと、過渡期の細かな仕様変更の混乱の跡が垣間みえる。
初期の2681ではスピード・ノブがほとんどだったが、77年からは滑り止めのゴムが巻かれたシュア・グリップIに統一された。ちなみに、まだピックアップにSuper70が搭載されていた初代2681が載っている76年度版のカタログには、そのスペックの中で“Phase Selector Switch”の存在について触れられているが、実際の掲載写真からはそのようなセレクターの存在は確認できない(確かにSuper70はアウト・オブ・フェイズとハムバッキングを切り替えられたが、2619の76年前半モデルと混同したというのがもっぱらの説。ただし、ボブ・ウェア本人のプロト・モデルには各ピックアップ用のフェイズ・スイッチがあった)。公式なカタログで言及されているにもかかわらず、最初期の2681にフェイズ・スイッチが実装されていたかは証言の食い違いが多く、このモデルにおける最大の謎として未だに議論の種になっている。
ネックは3ピース・メイプル仕様。ヘッド角は13度〜14度程度。初期のペグはゴールド・パーツの幅広のロトマチック・タイプ1336G(smoothチューナーだが、“星ペグ”ではない)だったが、77年のリファイン期になると丸みを帯びた金属製のツマミを持つベルベチューンと、本器のようなパーロイド製ツマミのベルベチューンIIがランダムに採用された。ボリュートはかなり太く、試奏した稲葉氏によると「人のアゴを触っている感じ」(笑)だそうだ。
ボディ形状はナンバー・モデルによくあるようなホーンの丸いAR的スタイルではなく、カッタウェイの浅く広いSG型を採用。ボディは2617ゆずりのアッシュ削り出し。トップ材もアッシュで、ジャーマン・カーブの縁取りとともに中央は杢目を活かしてアーチ状にカットされている。カッタウェイ部分のバインディングはかなりの厚みがあり、こちらも2617のスタイルを踏襲するメキシコ・アバロンの象嵌といい、かなり手の込んだ仕様となっているのが分かる。トップ・コートもひと見てわかるほどに分厚い。
70年代後半のアイバニーズにのみ見られる独特の18フレット・ジョイント「シャロー・ジョイント」。草創期のARよりもヒールカットはなだらかに仕上げてあるが、80年代に比べてジョイントは浅く、強度を保つために厚みのあるネック形状を維持せざるを得なかった。これが、他の世代とは違う、ネック側に重心があるこの時期特有の重量バランスを生む結果となった事は否めない。2681のストラップ・ピンの位置は、この個体のようにボディ裏のネックの根元に付けられている物がよく見られるが、ホーン先にある物もあり、発売期間中(76年〜79年)には全ての期間に渡ってどちらの仕様も存在していた。
オーソドックスな配線のコントロール・サーキット。ボリューム、トーン共に絶縁された500kΩポットを採用。トーンのキャパシタ用には223コンデンサーが追加されている。グラウンド対策はアルミ箔を敷き詰めただけの原始的なものだが、キャビティの蓋が真鍮製のため、それへ流すための導電経路もしっかり確保されているのが見て取れる。
これは、本当に憧れのギターでした。ルックスは文句のつけようがないくらい、好きでしたね。特にこれ、この杢目、ホント最高です! 確か、ジョン・マクラフリンがこれとそっくりのダブル・ネックを使っていて、昔よく行っていたレコード屋のポスターにそれが写ってたんです。もう……かっこ良くて! 音楽なんかまだ全然わかってない頃だったんですけど、そんな事は関係なく、楽器のデザインに惚れ込んじゃっていましたねぇ。でも、当時はこういった派手なギターのことを、好きって言えなかったんですよ。友達に「これ、音に関係ないじゃん!」って言われたりすると、僕は「じゃあ……いらないっス」みたいに変に硬派ぶっちゃったりしてね(笑)。素直になれなくて。こんなふうに綺麗なインレイが入ったのとか変形ギターなんて、誰かに、シュミ悪い、とか言われるのが怖くて、とてもじゃないけど言い出せる雰囲気じゃなかった。だから、僕はずーーーっと誰にも言わないまま気持ちを封印していたんですけど、実は、心に秘めたまま大好きだったんですよ。たとえ、それがどんなに弾きにくいギターでも、ね(笑)。そんなわけで、今、こうして誰にも遠慮せずにこのギターの本物を抱えていると、とっても幸せな気持ちになります。
まず、ピックアップがフルカバーっていうのが、イイですねー。確か、ギブソンのL6-S(ギブソン初の24フレット。ビル・ローレンスと共同開発されたモデルで、1979年までのものは、ピックアップにビル・ローレンス製のフルカバー“Super Humbucker(s)”を2基搭載していた)とかもフルカバーだったので憧れていた記憶があります。あと、このネックの差し込みが、わりとこうギリギリというか、かなり外に出ている感じが独特ですよね。思わず強度が心配になっちゃうくらい(笑)。でも、これ、僕の勝手な見解なんですけど、この形って、実はボディの重さと関係しているんじゃないですかね? このギターって、アッシュ・ボディで一見この重さが弱点に見えますよね。でも、本当は、一番弾きにくいギターってボディだけ軽くてネックが重いギターなんですよ。だから、メイプル・ネックでこれだけジョイントが浅いとネックが下がってきそうなもんですけど、このギターはそうじゃない。意外に、立って持ってもバランスが良いんですよ。ストラップ・ピンがこの位置でも、全然問題なく使えちゃう。これって結構凄い事ですよ。……まあ、それでもこの重さに全然問題が無いっていうわけじゃないですけどね。ステージ使うんだったら、僕は、10曲中2曲くらいでいっぱいいっぱいです(笑)。
アコースティック・ギターのようなきらびやかな高音に、倍音がチラチラチラ……です。12弦ギターみたいに凄く複雑な音ですから、フロントとの相性は抜群でした。ただ、リアは少しキンキンするというか、そのままだと耳に“痛い”感じかな。ピックアップ自体はバランス良さげな出力で、言われているほどハイ・パワーな印象は無かったですけど、ナットにブラスが入っている分、牛骨だけのものよりもわりと硬めな高域が出るのかもしれませんね。ただ、これ、コード・ストロークは凄く気持ちが良いですね。こういうギターは、ガツンと弾くとコンプレッションがかかっちゃうんで、あまり力を入れないで、こう、ふわっと鳴らすとキレイな音になってくれます。優しく触るように弾けば、ハムバッカーなのでイヤな感じの硬さも無いですし、意外に抜けの良い安定した音が出るのでオススメですよ。エフェクターでは、今回試した“Orange Squeezer”なんかバッチリなんじゃないでしょうか。ハーモニクスも凄くキレイに出ますし。ただ、せっかくこういうデザインのギターなので、ジャンルに縛られるんじゃなくて、「このギターに合った音楽を探す」というのはどうでしょう? これって、楽器としてそういう楽しみもできちゃうくらい、本当に神がかったムードのあるギターなんですよね。
●システム:試奏機/Ibanez“2681”(ギター)→MOOER“SOLO”(ディストーション)→SHIN'S MUSIC“Baby Perfect Volume”(ボリューム・ペダル)→TC ELECTRONIC“Mini Flashback”(ディレイ)→FENDER“’68 Custom Deluxe Reverb”(アンプ)
* 上記システムを基本とし、サブとしてDAN ARMSTRONG“Orange Squeezer”(コンプ(プリ)、70年代オリジナル)とARION“SPH-1”(フェイザー)、そしてMAD PROFESSOR“Sweet Honey Overdrive”(オーバードライブ)を適宜追加しながら使用。また、ボリューム・ペダルからの分岐でモリダイラ“Bit Tune”(チューナー)を常設。
*今回は特別に、Ovaltone製“DARK HORSE”シールド・ケーブルの提供を受け、ギター直結用として使用している。
●マイク&レコーダー:マイクはSHURE“SM57”をオンマイク、コンデンサー・マイクをアンビ用として使用し、ZOOM“H6”レコーダーで収録した。
試奏手順は、まず、試奏機“2681”の状態チェックを稲葉氏本人に行ってもらうことから始まる。アンプを平時クリーンな状態にセット(基本的にコントロールはフラット)する。歪みは基本的にエフェクターで作ることとし、さらに収録するフレーズに合わせて空間系エフェクトをテストする。同時に、バッファで音が濁り易い“Orange Squeezer”のサウンドを入念にチェック。最後に、再度ギターの運指テストとピッキングの確認作業を行った後、録音作業の運びとなった。
気に入ったギターだからか、稲葉氏のギターへの適応はいつにも増して早く、収録開始直後からほとんどリテイク無しで、快調にご機嫌なフレーズを弾き並べていく。途中、ややネックのコンディションによるナット周りの弦の接触に気を遣う部分をみせたものの、そこは持ち前のテクニックで全く音の澱みを感じさせない柔らかなタッチを駆使し、あっという間にあらゆるパターンを弾き切っていく。気がつけば、ほんの十数分という、当企画史上最短の収録時間で録音作業はあっさりと終了した。
中古からビンテージまでエレキ・ギター700本以上、エフェクター500点以上、さらに数多くのピックアップ、パーツ、小物等、圧倒的な在庫量を誇る、都内でも有数の中古/ビンテージ・ショップ、TC楽器。今回の試奏器、Ibanez 2681 Bob Weir ModelはTC楽器の在庫からお借りしたものだ。国内外のブランドを問わず、ビンテージから中古楽器まで幅広いラインナップを扱うが、中でもジャパン・ビンテージの在庫を豊富に揃えているのは、ファンにはたまらないところだろう。2Fはアンプも大量に扱っており、気になったギターがあれば2Fの好みのアンプで試奏出来るのも同店ならではの嬉しい環境と言えるだろう。販売される楽器は専門スタッフの手により、完全に調整・クリーニングされ、詳細なスペックを調べた上で、その楽器に正当な評価をして販売されている安心のショップだ。
・TC楽器 1Fエレキギター売場
稲葉政裕(いなば・まさひろ)
1960年、大分県生まれ。ベテランにして、時勢にとらわれない磊落なサウンドで人々を魅了し続ける、国内屈指の職人ギタリスト。正確無比な技巧に裏打ちされた創造性豊かなフレーズ・ワークを活かし、小田和正をはじめ、吉田拓郎、渡辺美里、平原綾香など多くのアーティストのステージ・サポートやレコーディングで多大な実績を残す。また一方で、熱心なストラト研究家としても知られ、特にビンテージ・フェンダーに関する知識ではマニアも裸足で逃げ出すほどの博識で通っている。自身が所属する『Far East Club Band』をはじめ、都内を中心としたあちこちのクラブ・イベントやライブを精力的にこなし、セッション漬けの多忙な日々を送る。
オフィシャル・ブログ
オフィシャルFacebook