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大きなストロークによる効きの深さは唯一無二! “Guya”名義のワウ&ボリューム・ペダル

Guya / cry-max PF-201

  • 文:西岡利浩
  • 写真・動画撮影:雨宮透貴

6月に公開した“Vol.6 CRYBABY”に続くワウ・ペダルの第二弾は、ワウとボリューム・ペダルの一体型という、かなりレアな個体“cry-max PF-201”を紹介してみたい。2013年に惜しくもその歴史に幕を下ろした東京サウンド製のペダルだが、よく知られた“Guyatone”ブランドではなく“Guya”名義である点もまたレア。さらに長いペダル・ストロークでポットの開放角度を大きく取り、広い可変レンジを確保したサウンドもまた独特だ。実に個性的なペダルの一端を紹介してみたい。

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Brand History〜About Guya/Guyatone

 筆者も含め、昭和時代に楽器に憑り付かれた当時の少年たちにとって、“Guyatone/グヤトーン”は必ず知っているであろう有名ブランドの1つと思います。その歴史は古く、戦前の1933年(昭和8年)に創業し、1956年に法人化されています。「東京サウンド株式会社」といえば耳に馴染みがありますね。元々創設者は古道具を扱う仕事を生業としていたそうで、周りの友人たちから“どうぐや”から転じて“ぐやさん”と呼ばれていたことから、創設時期は「株式会社グヤ」と命名したそうです。現在のエレクトリック・ギターもその頃は“電気ギター”と呼ばれ、日本の音楽に新しいサウンドを広げていった時代でもありました。中でも有名なのがグループサウンズと共に人気を博したGuyatoneの“Sharp5/シャープファイブ”ではないでしょうか? 常に便利な道具を世に提案してきた同社のブランド名は、初期の“Guya”から始まり“Guyatone”に進化していったわけです。

 70年代中盤から80年代にかけて、バンドを始める少年たちはGuyatoneのアンプやエフェクターにも大いにお世話になりました。アンプはその音量や耐久性の割に手頃な価格も魅力的でした。エフェクターもGuyatoneブランドで数種類存在します。初めて見た時のマイクロ・シリーズのサイズには驚かされたものです。ワイヤレス・システムも“REXER”ブランドで大活躍しました。元々真空管を用いたアンプが得意で、長きに渡って生産されました。“FLIP”ブランドと言えばご存じの方も多いのではないでしょうか。

 しかし、残念ながら2013年1月をもって半世紀以上の歴史に幕を閉じました。今回はその日本の音楽に大いなる歴史を刻んだGuyatoneのエフェクターの中から、かなりレアな部類に入るGuya時代のcry-maxをご紹介しましょう。

cry-max PF-201〜その成り立ち

 Guya cry-max PF-201はかなり古いモデルと推測されます。入手し得る古いカタログを追いかけるしか当時の情報を得ることが出来ませんでしたが、1979年のカタログで確認することが出来ました。同時に掲載されている他のエフェクターはMXR風のケースを用いたモデル群(BOXシリーズ)と共に掲載されていますが、それらのブランド名は既にGuyatoneの表記になっています。また、それより古いシリーズも既にGuyatoneブランドになっていることから推測すると、Guya名義のcry-maxは、もしかしたらもっと古い時期から存在していたのかもしれません。79年当時の定価は¥15,000です。せっかくなので、当時のカタログの紹介文を転載します。

PF-201 ★CRY MAX★ワウワウ&フット・ボリューム★ストロークの長いフット・ボリュームと、雑音が少なく切れ味のよいワウワウが特徴。ワウワウとフット・ボリュームの切替は、切り込みを入れたペダル部でスムーズに行えます。

 モデルのペット・ネームがcry-maxと名付けられている事からも、CRY BABYをモチーフにしている事は間違いないでしょう。国産のエフェクター達が産声を上げた頃から各メーカーは基本的にその当時高価だった海外製品のコピー・モデルをリリースしました。そのどれもが安価ながら優れた機能とサウンドを日本のギター・プレイヤーに発信してくれたわけですが、そこはMADE IN JAPAN。本家には無い機能や効果を追加してくれていました。

cry-max PF-201

cry-max PF-201(底面)

cry-max PF-201(右側面)


cry-max PF-201(左側面)

cry-max PF-201(上面)

cry-max PF-201(下面)

cry-max PF-201〜そのメカニズム

 このcry-maxもCRY BABYには無い機能がしっかりとあります。まず見た目でわかるように、ワウ・ペダルの弱点でもある“エフェクト機能の切り替え”の踏み込み心地を解消するために、フット・スイッチが突出している点が挙げられます。しかも本家に比べソフトな踏み心地なため、確実に切り替えが可能となりました。続いて、LEDの搭載によりON/OFFの状態を容易に確認することも出来ます。しかし、これは残念ながら、cry-maxの銘板の位置に取り付けられている事から、プレイヤーが確認する事は出来ません……。そして、最大の特徴は、カタログにもあるように、その大きなストロークにあります。ポットの開放角度が非常に大きく取れることにより、かなり広いレンジを確保することに成功しています。これは本家のCRY BABYにはまず出せない可変率です。

 ギターのヘッドを“顔”と表現することがありますが、ワウ・ペダルにとっての顔はその裏ブタになりますね。そこに記載されている表記は全て英語で統一されている事から推測すると、もしかしたら輸出もされていたかもしれません。ただ、1つ気になるのは“WAH”では無く、“WAU”と表記されていること。何故かここだけローマ字表記です……。

 cry-maxの回路はとてもシンプルです。驚くことに、なんと基板上のパーツは全部でたった19個! これほど少ない部品点数でこれだけ広いレンジを確保出来るのは素晴らしい事です。ワウとボリューム・ペダルの一体式なので、2連同軸ボリュームの可変抵抗器が取り付けられているところも特徴です。ワウ・ペダルの性質上、このパーツは常に酷使される事を強いられますが、見るからに耐久性のありそうなALPS製の部品が搭載されています。このポットは100kΩと1MΩの値の組み合わせで製造されています。恐らく特注品で、スムーズなサウンド可変はきっとこの値に隠されているのでしょう

cry-max PF-201〜サウンド・インプレッション

 cry-maxのマザー・モデルとなっているのはJenの“mister cry baby”でしょう。このマザー・モデルを基本にGuyaライクにモディファイされている訳ですが、先述したように、そのサウンドの可変率はかなりの広さを有します。その昔、筆者の音楽系の友人達と盛り上がったエピソードですが、TVアニメ『天才バカボン』のオープニング・テーマのイントロ部分の、あの気持ちの良いトーンは一体どんなエフェクターで録音されたのか? というのがありました。ある日、様々なワウ・ペダルを持ち寄りサウンド・テストをしたところ、ファズ + cry-maxの可能性が高いだろうという結論に至りました。しかし『天才バカボン』の放送開始が1971年9月25日であるため、この少し前の時期にこのcry-maxが世に存在したのかどうかも議論されました。正確なリリース時期が不明なのはこのテストにも起因しています。著作権の関係でそのままは収録出来ませんでしたが、動画中にそれ風のフレーズがあるので是非参考にしてください。とにかく効きが深い!

 仮に発売時期を79年と仮定しても、まだまだ派手に歪むアンプはおいそれと手に入らない時代、おおよその接続対象はクリーン・アンプだったのでしょう。もちろんこれだけ広い可変率があるとその効果は面白いほど派手なので、当時もcry-maxのオーナーは重宝した事でしょう。この当時はマイケル・シェンカーの存在もクローズアップされてきた頃なので、あのトーンを模索していたcry-maxオーナーも多かったかもしれませんね。現在はアンプも相当な進化を遂げ、小型トランジスタ・アンプでも十分な歪みを得られるようになりました。cry-maxはドライブ・アンプを相手に接続するとより効果的なワウ・サウンドを手にする事が出来ます。一般的にアンプが歪んでいると、ワウの効果がわかりにくいのですが、cry-maxほど可変率が高いと、その効果をはっきりと感じることが出来ます。もちろん、ワウ・ペダルも進化していますが、今だからこそ、このcry-maxが重宝されると思います。クリーンでのカッティング奏法はもちろん、粘りのある歪んだリード・サウンドにも絶大な可変率を演出してくれます。CRY BABY派のプレイヤーにも一度はお試し頂きたいですね。

 ワウワウ&ボリューム・ペダルというシステムは、演奏上の必要性にかられて登場したと言うよりは、ペダルの可能性を模索して生まれたのでしょう。両面開きの筆箱的アイディアとでも表現すればいいのでしょうか……ワウ・ペダルもボリューム・ペダルもギターを演奏するにおいて必要な道具ではありますが、実際のところボリューム・ペダルを必要とするプレイヤーが少数派だったことから自然と衰退して行ったのかもしれません。

 そこで、動画にボリューム・ペダルを使ったプレイがありますので参考にしてください。オーソドックスなボリューム奏法はもちろん、ペダル・トレモロも実演しています。こういうスタイルのプレイは聞いたことが無いので今のうちに参考にしてみてはいかがでしょうか?

試奏に関して

サウンドの特色を分かりやすくお伝えするため、ハムバッキング・ピックアップのギターと、真空管アンプの代表的なモデルを使用した。

・ギター:レス・ポール・タイプ
・アンプ:マーシャルJCM2000

動画ではマーシャルをクリーン→クランチにセッティングし、試奏を行なった。

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Guya / cry-max PF-201

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