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- 2024/11/16
DOD / Overdrive Preamp/250
節目の20回目で最終回を迎える本連載。最後はDODの伝説的オーバードライブ「Overdrive Preamp/250」を取り上げてみた。ご存知イングヴェイ・マルムスティーンの使用で一躍人気を博したモデルである。昨年復刻された現行モデルも弾き比べてみたので、ぜひその違いも楽しんでほしい。
DODのエフェクターを世に送り出したのは、DOD ELECTRIC社という会社です。1974年の事でした。Preamp/250も含めMXR社を非常に意識していると思われる商品ラインナップでした。ただし、単純な模倣というものでは無く、サウンドは独自の展開をしていました。現在では、ディー・オー・ディーと発音しますが、80年代の中盤くらいまでは日本国内ではドッドと発音されていました。
少なくとも、1981年頃には日本に上陸していました。価格は¥16,900でした。マニアなら気になる筐体のカラーですが、イエロー・ボディとグレイ・ボディが混在していました。というのも、リリース当初はグレイ・ボディだったのですが、1981年頃からイエロー・ボディへと移行していったためでしょう。また、当時のDODは日本国内ではあまり人気が無かったこともあり、イエローとグレイの存在自体、あまり気にされることがなかったようです。ところが、80年代も半ばになり突如「DOD Overdrive Preamp/250」がクローズアップされる事になります。そう、ご存知イングヴェイ・マルムスティーンが愛用していると報じられたからです。イングヴェイはグレイ・ボディを使っていました。グレイ・ボディを第1世代とすると、今回ご紹介しているモデルは第3世代にあたります。
Overdrive Preamp/250の守備範囲は非常に広く、ほとんど歪みのないサウンドから、一般的なオーバードライブのイメージを超えたかなり深い歪みまでを体現します。音の性質は非常にストレートでラッと切れが良く、特に高域の出方に特徴があります。ほどよく原音が残ってるところも良い点でしょう。また、アンプを歪ませている場合は、ブースターとして使用するのもお勧めです。音量の上がり方がスムーズで癖が無いので調整もとても簡単です。もちろん、ブースト(増幅)するので、歪みが強くなるほどノイズの量も上がります。これはいたって普通の事ですが、イングヴェイはBOSSのノイズ・サプレッサーでOverdrive Preamp/250のみをLOOPの中に入れノイズを軽減するという接続方法でブーストしていました。
ツマミはGAINとLEVELのふたつとシンプルです。
・GAIN:歪みの強さの調整。ただし、音量もかなり変化するので注意。
・LEVEL:出力音量の調整。アンプが歪んでいない時は、ON/OFFの音量差に注意。
回路も非常にシンプルです。抵抗8本、ダイオード2本、電解コンデンサ2個、マイラ・コンデンサ3個、セラミック・コンデンサ1個、そして最後にICが1個。基板上にはたったこれだけの部品しかありません。シンプルな回路が良い音を出すという典型的なモデルかもしれません。そしてここに搭載されているICですが、第3世代は4558がチョイスされています。もはや4558といえばオーバードライブに使う代表的なICですね。ちなみにOverdrive Preamp/250の第1世代は741系、第2世代は351で区切られているようです。動画に使用しているモデルはサムスン電子製のKA4558が搭載されています。
ツマミの動きと歪み具合いが良い意味で比例しているので、細かく音を探すことができ、好みのサウンドを探すのは非常に簡単でしょう。シングルコイルとの相性も非常に良く、ギターのボリュームを絞ってもしっかり付いてくるのでブルース系にもマッチしますし、ハード系なら歪んだアンプにブースターとして使えば問題なし。乾いた低速フレーズから、ネバリのある中域の高速リード・プレイにも対応するなどプレイ・スタイルを選びません。設定に手間がかからず幅広いスタイルに対応してくれるのが人気の秘密かもしれませんね。
今回は復刻された現行バージョンのOverdrive Preamp 250も試奏してみました。オールマイティなOverdrive Preamp/250の唯一の弱点はON/OFFの視認性の悪さです。しかしその問題も現行モデルではクリアされました。しかも高輝度のブルーLEDが搭載され、おしゃれさもUP。筐体も軽量アルミ製になり、カラーも黄色からゴールドにリニューアルされました。気になるサウンドの変化ですが、やや高域が丸みを帯びた程度で、むしろこれは変化したのではなく“現代風”のサウンドに変更したのかもしれませんね。
サウンドの特色をわかりやすくお伝えするため、ハムバッキング・ピックアップのギターと真空管アンプの代表的なモデルを使用した。
・ギター:LPタイプ
・アンプ:マーシャルJCM2000
動画ではマーシャルをクリーン→クランチとセッティングを変更し、試奏を行なった。
【ご愛読い頂いた皆さまへ】
2013年10月25日公開の「ビンテージ・エフェクター特集Vol.1 MXR Distortion+」からスタートし、国内外のさまざまなビンテージ・エフェクターを取り上げてきた当連載は、Vol.20の今回を持って最終回となります。1年8ヵ月に渡りご愛読・ご試聴頂きまして誠にありがとうございました。過去の記事はアーカイブされておりますので、サウンドを確認したい時、該当製品の購入を検討したい時など、いつでもご覧ください。
ビンテージ・エフェクター・ファイル一覧
ビンテージ・エフェクター特集Vol.3 MXR Dyna Comp
ビンテージ・エフェクター特集Vol.2 MXR Phase 90
ビンテージ・エフェクター特集Vol.1 MXR Distortion+