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  • ビンテージ・エフェクター・ファイル Vol.11

今なお多くのギタリストを魅了する世界初のコーラス・ペダル

BOSS / CE-1 Chorus Ensemble

  • 文:西岡利浩
  • 写真・動画撮影:雨宮透貴

コンパクト・シリーズ発表前の1976年、BOSSのエフェクター1号機にして世界初の“コーラス・ペダル”としてリリースされたCE-1 Chorus Ensemble。ギター・アンプの名器Jazz Chorus(JCシリーズ)のコーラス/ビブラート・ユニットを単体化して生み出された美しいサウンドは、その後のコーラス・エフェクトの世界標準となった。今なお高い人気を誇るアナログ・ステレオ・コーラスの名器である。

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CE-1〜その成り立ち

 CE-1 Chorus Ensembleは、BOSSブランドの記念すべき第1号にあたるエフェクターです。1975年に発表された今や世界的標準機となるギター・アンプ、Jazz Chorus(JCシリーズ)はみなさんご存知のことでしょう。CE-1はそのJCシリーズの特徴でもある“コーラス/ビブラート”の部分を抜き出し、JCシリーズ発表の翌年、1976年に単体ユニット化したエフェクターです。

 それまで空間系のギター・サウンドは、リバーブやテープ・エコーを駆使して作られていましたが、CE-1による“コーラス・サウンド”の出現で、一気にその可能性、バリエーションは広がる事となりました。当時の販売価格は¥25,000と高価だったため、アマチュア・ギタリストには手が出しにくい製品でした。しかし、当時としては珍しくステレオ出力が設定されているなど画期的なエフェクターであったため徐々にギタリストの足下に導入されていくことになります。

 1970年代中頃、日本の音楽シーンはクロスオーバーが大盛況でした。ギター・インストもこの当時は盛んで、美しすぎるとも言えるコーラス効果は絶妙にマッチしました。CE-1はその後に登場する各社のコーラス・エフェクターの元祖的モデルであることに間違いはありません。

CE-1〜そのメカニズム

 CE-1発表の翌1977年に同ブランドより、初のコンパクト・エフェクター・シリーズがいよいよ登場する事になりますが、その発表前なので、当時はまだ大振りな筐体という印象はありませんでした。海外メーカーからはそこそこ小型のモデルも発表されていましたが、CE-1はコーラスとビブラートの複合エフェクターなので、サイズはあまり気にされず"とにかく美しいサウンドが出る”という評価が先行していた感じです。また、鉄板による板金加工の筐体を使用したモデルが大半を占める中、贅沢にもダイキャストのボディが使用されている点も特筆に値するでしょう。演奏中に足でガンガンに踏まれる事を考えるとさすがといえる設計です。さらに、ツマミやスイッチ部分にもしっかり銘板が取り付けられ、視認性と高級感を感じさせてくれるデザインもスマートです。

 回路的には単体化するために多少の変更はされているでしょうが、JCのコーラス/ビブラート部分をそのまま取り出しているため、その出音が全てを満足させてくれますね。現在のコンパクト・エフェクターと比較すると、アンプ・ライクな設計が目を引きます。例えば入力にHighとLowが設けられている点。これがあることにより、ギターのみならず、キーボードやベースにも接続出来ます。さらにより的確にレベルを合わせられるように、入力レベルのコントロールも装備されています。電気的な大きな特徴としては、コンセント・コードがあることでしょう。現在のエフェクターは電池駆動が主流ですが、CE-1には100Vのコンセントが必要です。それゆえ、ステージ上にCE-1専用の長~い延長コードが必要でした。しかし、100V駆動であのサウンドを手に入れることが出来るわけですが……。電源のON/OFFは右側のシーソー・スイッチで行います。また、エフェクトONの時に点灯するLEDはありません。左側のLEDはピーク・チェッカーとして搭載されています。これは過大信号が入力された時に点灯します。正しい使い方は、この左側のLEDが点灯しないようにLevel controlツマミで調節します。また、右側のLEDはコーラスとビブラートのスピードを点滅で表していますので、聴感上だけではなく、目視による確認も可能です。

CE-1

CE-1(底面)

CE-1(右側面)


CE-1(左側面)

CE-1(上面)

CE-1(下面)

OCE-1〜サウンド・インプレッション

 基本的なサウンドは、JCシリーズのアンプを使ったことがある方は全員知っているサウンドです。もはやそれほど有名なサウンドになってしまいました。ギターにおけるコーラス・エフェクト効果はまさしくこれが世界標準です。透明感のある効果と表現すればいいのでしょうか? 発売当時は“12弦ギターのような効果をもたらす”とありました。最初にピッキングされた入力をほんの少し遅らせて2回ピッキングしたかのような動作を電気的に作り出しているのがこの効果です。

 chorusツマミは左から右に回すにつれて、効果が強くなります。かかりが深くなり、うねりの周期も強くなります。vibratoはdepthとrateから成り立っています。depthは効果を深くします。また、rateはスピードと考えると設定が容易に行えるでしょう。コーラス効果は、ジャンルやプレイ・スタイルにとらわれることなく、幅広く使えるのが魅力です。CE-1は入力レベルの調整が出来るので、ボーカル・マイクに接続して、ここぞ!という部分に踏み込むのもいいですね。ビブラート効果もかなり自由度が高いエフェクト効果ですが、テンポの遅めなアルペジオ奏法などをより効果的にアピールすることが可能ですね。ギター・インストの主旋律の強調にも向いているでしょう。より印象的なフレーズにする事が可能になります。

 ピックアップとの兼ね合いですが、シングル/ハム両方の素材を生かす事が可能です。シングルの場合はノイズが気になる事もあるかもしれませんが、ノイズ・リダクションを併用すれば、特に問題はないでしょう。

 CE-1はクリーン・アンプに接続して楽しむのがその効果をより発揮できる基本的な使い方ですが、ここでCE-1の裏技的使用法を紹介しましょう。アンプが歪んでいる場合は、コーラスやビブラートは音がグシャグシャして中々最適な効果を求めることが出来ませんね。そこで、エフェクト(出来ればコーラス・モード)効果をもっとも薄くセットして(ほとんど効果がわからないようにする)、level controlをpeak levelを気にすることなく右に回しましょう。そうです。なんと、CE-1をブースターとして使用する方法です。普通にブーストするのと異なり、非常にうっすらですが、コーラス効果がある事により、マイク乗りの良いリード・サウンドをクリエイトする事が可能です。是非、お試しください。

試奏に関して

サウンドの特色を分かりやすくお伝えするため、ハムバッキング・ピックアップのギターと、真空管アンプの代表的なモデルを使用した。

・ギター:レス・ポール・タイプ
・アンプ:マーシャルJCM2000

動画ではマーシャルをクリーン→クランチにセッティングし、試奏を行なった。

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