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ギブソンを代表するシングルコイル「P-90」の個性とは?
ギブソンらしい太さと、シングルコイルならではの歯切れの良さを併せ持つ稀有なピックアップ「P-90」
ギブソンのエンジニアであるウォルター・フラーが開発したP-90は、1940年代から同社のフルアコースティック・モデルに搭載されてきた、歴史的名器である。フェンダーと同じシングルコイル構造でありながら、P-90はギブソンらしい太さと、シングルコイルならではの歯切れの良さを併せ持つ稀有なピックアップだ。パスタでいえばアルデンテのように、滑らかで口当たりのいい外側と、ほんの少し固い芯の部分が存在する。どの程度まで芯を残すか、ゲイン量によって調整ができる。P.A.F.よりもP-90が好きだというプレイヤーがいても何ら不思議はない、独自のトーンを持っている。
その独特のサウンドの理由は、マグネットがボビン下側に配置されているためにポールピース上の磁力が弱く、横向きに広がった磁界が形成されていることにある。コイルの縦対横の比率が大きいほどサウンドは丸くなる傾向にあるが、P-90では薄く幅広いボビンが採用されている。こうした構造によって、歯切れの良さを持ちながらも実にまろやかなアコースティック・トーンが形作られている。
「P-90」の変遷
P-90も年代ごとにいくつかの仕様変更が行なわれてきた。50年代のものはコイル・テンション/マグネット磁力が弱いこともあり、高音域/ピッキングの強弱に対する変化が大きく感じられる。また、歪んだ際に出る1~2オクターブ上のハーモニックスの豊かさにも定評があり、これが古いP-90の最大の特徴とも言える。簡単に言えば、レズリー・ウエストのトーンだ。
60年代に入り、マグネット・サイズが変化するのはハムバッキングと共通の変更点。68年製のギターには古いタイプのエナメル・ワイアーのコイルが使用されているが、やがてウレタン・ワイアーへと変更される。ベークライト、ブラックのプラスティック樹脂と変化してきたボビンは、硬質なクリア樹脂へと変更される。
“P-90”というパーツ・ナンバーで親しまれたピックアップは、70年代末にリプレイスメント・パーツとして販売され、その時に“レイドバック”という名称がつけられている。その独特のサウンドには、未だ多くのギタリストを惹きつける強い個性がある。唯一の欠点は、比較的ノイジ―なピックアップだということ。しかし、その欠点を補って余りある魅力に溢れたピックアップだ。
Gibson Les Paul(ギブソン・レス・ポール)の歴史と変遷 記事一覧
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・ギブソン「レス・ポール」誕生の背景と歴史
・レス・ポール・レギュラー/スタンダードの変遷 Part1(1952年型/1953年型/1954年型)
・レス・ポール・レギュラー/スタンダードの変遷 Part2(1955年型/1956年型/1957年型/1958年型)
・レス・ポール・レギュラー/スタンダードの変遷 Part3(1959年型/1960年型/1968年型/1969年型)
・レス・ポール・カスタムの変遷(1954年型/1957年型/1968年型/1969年型)
・レス・ポール・ジュニアの変遷(1954年型/1956年型/1958年型)
・レス・ポール・スペシャルの変遷(1955年型/1959年型/1960年型)
・[ピックアップ]ギブソンを代表するシングルコイル「P-90」の個性とは?
・[ピックアップ]多くのギタリストを魅了する「P.A.F.」の歴史と構造