デジマート・マガジン > 特集 > ヤマハBBシリーズ特集〜時代に合わせて進化を続けるソリッド・ベースの旗手
ヤマハBBシリーズ特集〜時代に合わせて進化を続けるソリッド・ベースの旗手

ヤマハBB・ヒストリー〜ソリッド・ベースの旗手となったBBの歴史を振り返る

YAMAHA BB

ソリッド・ベースの旗手となったBBの歴史

ひと言でBBシリーズと言えど、時代背景に合わせてさまざまなバリエーションが発売されていた。その歴史を振り返ってみよう。

1970〜80年代 不変のデザインを誇るBBシリーズの誕生

 BBシリーズのベースは、ヤマハがかつて世に送り出したなかでも最も人気が高く、最も寿命の長いモデルである。BB以前に1960年代からヤマハのベース・ラインナップを支えていたSBシリーズは、デザインもさまざまで、試行錯誤の時代を思わせる。その点、BBシリーズの基本デザインは現在に至るまでほぼ不変であり、完成度の高さがうかがえる。

 最初のBBシリーズが発表されたのは1977年で、スルーネック構造のBB1200を筆頭に、ボルトオン構造で、より低価格のBB1000とBB800というラインナップだった。これらのモデルでは、ヘッドのロゴが“BB”ではなく“Broad Bass”という表記になっている。BB1200のデザインはフェンダー・プレシジョン(以下、Pベース)を思わせるが、当時アクティヴ・システムなどの斬新なコンセプトを打ち出して話題となっていたアレンビックのスルーネック構造をいち早く取り入れたり、同じスプリット・タイプのピックアップでも低音弦と高音弦の音質バランスを意識してPベースとは逆の配置にしたり、弦のボール・エンド部に巻かれた糸がサドル上に乗らないように、サドルと弦留めの距離を広く取ったダイキャスト・ブリッジを採用したりと、先取の思想や独自のノウハウが投入されていた。BB1200を使用した最も有名なミュージシャンはポール・マッカートニーだが、これはもちろん、左利き用に作られたBB1200Lであった。

 BB1200は国産のものとしてはかなり斬新なベースだったが、ピックアップが1個ということもあり、音作りの幅は限られていた感があった。そこでヤマハは翌78年、リアにピックアップを追加したBB2000を発表して、この問題にいち早く対応。そのピックアップはシングルコイル・タイプで、指板面に合わせた曲面を持つバー・タイプのポールピースを採用し、1&4弦と2&3弦の出力差を解消する工夫がなされていた。当時はベースにもさらなるブライトなサウンドが求められるようになっており、チャック・レイニーなどのセッション・プレイヤーたちは、Pベースのリア側にジャズ・ベース(以下、Jベース)のピックアップを追加する改造を行なっていた。当のレイニーもやがてヤマハを愛用するようになるが、BB1200にリア・ピックアップを追加したプロトタイプが彼のために製作されたという。BB2000には、100本限定で製造されたフレットレスのBB2000Fや、ショート・スケール(通常の860mmに対して800mm)のBB2000Sという派生モデルも存在した。

1980〜90年代 試行錯誤を経て派生した多彩なバリエーション

 1982年には、次世代のBBとなるBB3000が発表された。BB2000との最大の違いは、フロント・ピックアップがPベースと同じく、低音弦側のコイルをネック寄りに配置したことだろう。この配置を最初に採用したのは、1981年に発表されたショート・スケールのエントリー・モデルBB VⅠSである。ビリー・シーンも愛用したBB3000はその後2009年まで、27年という長期にわたって製造された。2001年にはBB3000MAという、ヴァン・ヘイレンのベーシスト、マイケル・アンソニーのシグネイチャー・モデルが発表されたが、このモデルではフロント・ピックアップがBB2000と同じ配置に戻されている。また、1984年にはヤマハ初の5 弦ベースとなるBB5000も発表された。80年代のBBシリーズはこのあと、基本のデザインを維持しながらさまざまなバリエーションに派生し、ハムバッキング・ピックアップを2個搭載したBB1300や、Pベース・タイプのピックアップを2個搭載したBB VIII、Jベース・タイプのピックアップを2個搭載したBB V、24フレット仕様のBB VIIAなど、エントリー・モデルを中心に試行錯誤を行なった跡が見られる。

BBシリーズのなかで、ロングセラーとなったBB3000。ビリー・シーンが自らの手で改造を施して愛用するなど、多くのベーシストに使用された。


1990〜現代 時代に合わせて進化を続けるBB

 90年代になると、電子化が進み過ぎた80年代のサウンドからの反動か、ヴィンテージ・サウンドが見直されるようになり、BBシリーズもボルトオン構造でJJタイプの2ピックアップ・システムという仕様が基本となった。BB Limited(1995年発表)やBB Standard、5弦のBB Limited 5(ともに1996年発表)といったモデルがそれである。一方、1994年には大人気のセッション・ベーシスト、ネイザン・イーストのためにBBNEが発表されたが、これはアクティヴ・システムを採用した最初のBBであるばかりでなく、スリム化されたボディや24フレット仕様など、同じBBでもまったく新しいラインナップと言えるだろう。BBNEはその後BBNEⅡにバージョンアップされて、現在も発売されている。

 BBは21世紀に入っても進化を続けており、BBNEのボディをさらにスリムにアレンジしたBB2004やBB2005、ビリー・シーンとのコラボによるBB714BS、ボディ構造や木材のシーズニングなどに最新のノウハウを投入して生まれたBB2024/2025などが発表されている。30年以上の歴史を誇るBBは、いわばエレキ・ベースの伝統と革新のシンボルなのである。(坂本信)