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オーバー100Wのモンスターを飼いならせ!

音塊の王者/フルチューブ・ハイパワー・アンプヘッド特集

文/機材解説:今井靖

 現在好評配信中のデジマート・メールマガジンにて連載中のコラム「Dr.Dの機材ラビリンス」が、デジマート特集・アーカイブに登場!ギター、エフェクター、アンプ、ベース、ドラムなどなど、音が出るなら何でも来い!のDr.Dが機材の迷宮へアナタを誘う重量鉄骨級の機材紹介コラム、いざスタートです!

 

 数多のギタリストたちが酔いしれた、一夜でたった一度限りの「輝く音」。ロックが怒りと反骨そのものであった時代から、それは求め続けられた音であったに違いない。放たれた轟音は淀んだ空気を断ち割って聞く者の胸を貫き、あらゆる生活の垢が一瞬で背骨からたたき落とされる天上のトーン。比類なき熱さ、無垢なる魂、爆発する歓喜……そして、深淵の慟哭。そこには、その全てがある。

  たった一つの楽器の出す音が、これほどむき出しの人間の主張や個性を発揮するのに向いていると、最初は誰も思わなかった事だろう。

 エレキギター。その楽器があの数々の名プレイヤー達によって世界を酔いしれさせることになる「輝く音」を生み出せる存在であると、最初、誰も気づく者はいなかった。ただのバックバンドのアンサンブル・マテリアルとしての一角を占めるだけの脇役でしかなかったギター……それが、遂に自分のポテンシャルを最高に生かす「もうひとつの主張」と出会って、世界は大きく変わった。

 オーバー・ドライブ・トーン。駆動真空管に規格以上の負荷をかけて生み出されるその割れた歪み、オーバー・ロードの産物。アンプ製作者を馬鹿にした、そしてアンプそのものをも破壊しかねないその手法は、確かに最初はただの目立ちたがりな悪童どもによる荒唐無稽なパフォーマンスだったのかもしれない。だが、その音は、ギターという楽器に無警戒だった人の心を確かに打ったのだった。その日から、エレキギターの歴史は変わった。

 決して使われなかったボリュームの目盛りは、つねに「10」。強烈なフィードバック、分厚い低音、きらびやかな倍音と滝のように溢れ出るサスティン……それはエレキギターのプレイさえも変え、「リード」という神が与えた唯一無二のポジションをその楽器に与えた。

 さて……では、皆さんはどうだろう? あなたが持っているそのとても優秀な、そして高価なエレキギター。それが持つ本当のトーン、エレキギターに生まれもって与えられたポテンシャル「輝く音」をあなたはきちんと発揮させているだろうか?

 もし、まだなら急ぐと良い。先にも話したが、エレキギターの力を100%発揮する環境でプレイするならば、そのプレイそのものが変わるのだ。それは、決してヘッドフォンから聞こえる蚊の鳴くような音での自宅練習から得られるものでない事だけは断言できる。頂上のスペシャル・アンプのフルアップとあなたのギターが出会った時にのみ、それは起こる。いち早くそれに気付いた者だけが、プレイだってより早く高みに近づけるのだ。

 ギターをうまくなりたいなら、本物のフルチューブ・ハイパワー・アンプを、服の袖が揺れるくらいの音量で使い回せ!それこそが、「ギタリスト」のただ一つの道だ!

 これぞ現代ギタリスト必須の、最上の相方であり半身ともいえるフルチューブ・ハイパワー・アンプ群。中でも下記に紹介するオーバー100W(ワット)のモンスター・アンプ・ヘッドたちは各アンプメーカー肝いりのフラッグシップ・モデルがほとんどだ。そう遠くない未来にあなたの真の相棒になるはずのこれらギタリスト垂涎の怪物どもを、今からすぐに品定めだ!!

Marshall

JVM410H/JVM210H

英国ロック魂の伝統と精神を引き継ぎながらオールラウンド・ソリューションの世界へと昇華を果たした、現行Marshallのフラッグシップ・モデル。伝統のECC83+EL34という組み合わせから生み出される余裕のバルブパワーにより、歴代最強の歪みと静粛なクリーン、そしてとろけるようなプレキシ・ドライブを一台で堪能できる。完全独立4chの410Hに対して210Hは2ch仕様のシンプル・プレイ向き。

DSL100H

近代Marshallの歪みを堪能したい人に最もお勧めのシンプルかつパワフルな中核機。1959プレキシのブラウン・リードに、JCM800以降のあのザクザクとした噛み付くようなプリアンプ・ゲインを併せ持ち、二つの時代のリード・トーンを一台で満喫できる。

1959/1959HW/1959SLP

Marshallと言えば、この1959を思い浮かべるギタリストも多いであろう。それまでのJTM45のKT66パワー管供給不足問題により、1966年、本格的にEL34を搭載した100Wアンプの生産を開始した現代ブリティッシュ・サウンドの指標とされる同社の記念すべきモデルだ。SLP(スーパー・リード・プレキシ)は、その原型機をそのまま復元した完全リイシュー・モデルだが、センドリターンやバイパス・スイッチなど使い勝手に配慮した機能も追加された。HWはハンドワーヤード・シリーズの事で、最も人気の高い69年モデルの蛇の眼基盤から繰り出される生々しいレスポンスは、いかなるモデリングをも超越する生々しさだ。

JCM800/JCM900/JCM2000

80年代のサウンドの中核には必ずJCM800/2203があったと言われる程、全世界で有名なモデル。JTやJMPプレキシサウンドを踏襲しながらも、更に豪快な歪みの新境地を開拓したこの機種は、今でもマイナーチェンジを繰り返しながら現役。1chフル・バルブ・ヘッドとして歪みのスタンダードを確立している。さらにハイゲイン化を計ったJCM900や、Marshall史上初の完全クリーン・チャンネルを持つに至ったJCM2000も含めて現代ドライブ・トーンの金字塔とされる。

1959RR/AFD100/2203KK/YJM100/JVM410HJS

ランディー・ローズ、スラッシュ、ケリー・キング、イングヴェイ・マルムスティーン、ジョー・サトリアーニ…歴史を感じさせる歪み系名プレイヤー達のシグネイチャー。

 

 

Bogner

Ecstasy/Ecstasy Classic/Ecstasy Custom

現代の全方位型モダン・アンプの最高位に君臨する、ラインホルド・ボグナーの傑作アンプ。きらめくようなクリーンから、シルクのように滑らかなクランチ、ワイルドなリードが共存し、あらゆるジャンル、プレイに最高の音質を提供してくれる。型番によって細かな仕様の違いがあり、100より101の方がモダンな音質で、A(6L6)とB(EL34)の違いはパワー管だ。細かく好みの音を探せるようにラインアップされている完全に上級者向けのモデルだ。6L6管搭載の20周年モデルもある。

Uberschall/Uberschall Twin Jet/Uberschall Purple Mod

モダン・へヴィネス・シーンで欠く事の出来ない重低音アンプの雄。ただめちゃくちゃに歪むのではなく、整った分厚いミドルに支えられた、密度のある壁のごとき轟音を提供してくれる。よりハイゲインになったTwin Jetや、KT88管を採用して音の鋭さ、ストレートさが増したPurple Modも加わり、現代的適応力を増したスーパーアンプ。

 

 

Custom Audio Amplifiers

OD 100/Standerd Plus/SE Plus/Classic/Classic Plus/SL/ML Plus

押しも押されもせぬブティック・アンプのスーパー・ブランドと言えば、このCAEに違いない。システム技術者だったボブ・ブラッドショウが、西海岸へジョン・サーを召還し共に作り上げたのがこのOD-100シリーズだ。どこまでも透明なクリーンと、幅広い適応力を持った高密度なドライブ・サウンドを備え、一躍CAEをアンプメーカーとして全世界に認識させるに至った。ここまで完璧な相対する実用的2chを同時搭載したアンプはおそらく前例がなかったはずだ。それゆえに世界中から発注が相次ぎ、様々なカタログに無いカスタム・メイドも生まれ、仕様も当初はあまり統一されてはいなかった事から、かなりの数のオンリーワン仕様が出回っている。現在は独立したSuhrの工場と共同で製作をしている。

 

 

Diamond Amplification

SPEC OP/DECADA

CAEで15年勤めた生粋の技術者Martin Golub氏が中心となって創設したアンプ・ブランドDiamond。その中でもフラッグシップ的地位にあるこの二機種はローゲインな広域アンプとして、その見事なサウンドで同社が注目を浴びるきっかけを作った。ごまかしのきかないローゲイン・アンプで支持を得るあたり、本物のサウンドを長年聞き続けた氏の耳の良さを物語るものでもある。混じりけの無いクリーンと素直に伸び上がるドライブは、ブルースやロックにはもってこいの帯域を確保する。

Nitrox/Phantom

徹底したハイゲイン趣向を追求したモデル。うるさいだけのジャージャーアンプとは一線を画し、非常に粘りのあるメイルシュトローム・ドライブを放出する。

Spitfire/Spitfire II

ビンテージサウンドを独自の解釈で進化させた、クリーン&クランチ・モデル。密度はあるが飾り気が無くとても空間係のエフェクター乗りが良いクリーンは、クラシカル・トーンのもたつくサウンドに辟易したユーザーから圧倒的な支持を得た。

 

 

JET CITY AMPLIFICATION

JCA 100 H

マイク・ソルダーノがデザインを手がける新鋭のアンプメーカー。Soldano譲りのレンジの広いクランチと、パンチのあるぶっといリードを併せ持つ機体で、モダンな外観ながら、かなり使えるスタンダードさを持つ印象。ちなみにローワット・タイプでは自由にパワー管を差し替える事の出来る自動バイアス調整機構を持っているモデルもあるので、真空管の特性が知りたい人は試してみるのも良いだろう。

 

 

Egnater

Armageddon

アンプ・グルの名で呼ばれるブルース・イグネーターが作り上げた最新のモダン・アンプ。定評のあるタイトなローエンド、ウルトラ・ハイゲインでもエッジと滑らかさを両立させるその歪みは健在。高品位なノイズリダクションで名高いDECIMATORやMIDI制御なども内蔵し、より万能化を進めている。

Vengeance

シンプルな2ch構成。元の音質が良いので、直感的な音作りをする人に最適。

TourMaster 4100

Egnaterのフラッグシップ・モデル。完全独立4chだが、全てのチャンネルがハイレベル。手に跳ね返ってくる真空管のサチュレーションは、鮮烈かつダイナミック。チューブ・アンプの醍醐味を味わい尽くせる逸品。

 

 

SPLAWN

QUICK ROD

メイン・ラインのQUICK RODは、Marshallサウンドの重心を、やや中域から中低域にシフトさせたような野太い咆哮が魅力の個体だ。だが、高音域にあるはじけるようなキラキラ感は全く失われていないのはさすが。通常はEL34仕様だが、KT88版はさらにモダンに進化している。

 

 

Lee Jackson

XLS 1000/XLA 1000

XLAはMarshall JCM800の流れを忠実に踏襲する、ロック魂溢れる2chデュアル・リード系アンプ。しっかりとギターのボリュームに反応し、それぞれのチャンネルでクリーンも作れる。XLSは歪みとクリーンを分けたモダン仕様。音はやはり改造Marshall系。

 

 

Mesa/Boogie

Road King Head/Road King II Head

6L6管x4、EL34管x2というパワーセクションを、5パターンの組み合わせに瞬時に切り替えることのできる「プログレッシブ・リンケージ」機能を持つただ一つの機種にして、Mesa/Boogieの最高位ヘッド。作れない音は無いと言われる程の変幻自在の音質を持ち、歴代のMesaアンプの音を全て網羅する脅威のパフォーマンスは圧巻。

Roadster Head/DUAL RECTIFIER/TRIPLE RECTIFIER

1991年に登場し、全世界のハードロック&ヘヴィメタル・シーンに劇的な革命を引き起こした、ハイゲイン・アンプの金字塔RECTIFIERシリーズ。その名の通り「整流管(RECTIFIER)を複数の真空管もしくはシリコンダイオードに切り替え可能なことから名付けられたこのシリーズは、歪みコントロールの多様性と可能性を示した新時代の象徴でもあった。20年を越えてなおロングセラーを続けるこれらは、チャンネル数を増やすなどマイナーチェンジを繰り返しつつ、現代においてもモダン・ハイゲイン・アンプの試金石として世界的に批准されている。

Lone Star Head/Lone Star Rackmount Head

現行品のオールジャンル用Boogieアンプとしてラインナップされているシンプルなモデル。非常にまろやかなクリーンと多様な設定を可能な歪みの、合わせて2ch仕様。

ROYAL ATLANTIC RA-100

好評だったMesa入門アンプTrans Atlanticシリーズの最上位機種としてラインナップされたハイパワー版だが、その実力、音質は予想の範疇にはとどまらずまさに桁外れ。元々の粘りのある音質に加え、EL34管x4から生み出されるモダンで明るい歪みが、Mesaの新時代のステージアンプとして注目を浴びている。

Mark III

同社のもう片方の潮流「Markシリーズ」。ハイパワーになったMark II時代にはあまりヘッドは無く、現行のIV、Vではサイマル90Wをパワーステージに採用しているため100Wオーバーのヘッドは見かけないが、IIIの時代にはColiseumシリーズのパワー部を合わせたりとハイパワー化が顕著だった。この時代独特の音圧があり、時代を感じさせる。

 

 

Fender USA

Tone Master Head CSR3

コンボが主流のFenderの数少ないスタック100Wアンプが伝説のTone Masterだ。出力は増えても、あのもどかしい切なさを帯びたフェンダー・トーンはいささかも変わりなく、むしろフルアップ時のきらびやかなドライブは新しいチャンネルを追加したように新鮮だった。

Super Sonic 100 Head

そんなTone Masterの機構を踏襲した現行モデルがSuper Sonic 100だ。明確なチャンネル分けとモードを搭載し、直感的に歴代のフェンダー・トーンを探し当てることが出来る他、スピーカーの反応をルーズやタイトに設定できる「Danping」やパワー管のバイアスを一定の数値に設定し直す事の出来るオート・バイアスなど、自由度の高さを持ったヘッドに生まれ変わった。

Dual Showman Reverb

伝統のRCA7025管(12AX7のハムを減らした改良管)+6L6という直球のビンテージサウンド。当時のTwinReverbが100Wから135Wに移行するのに合わせて、6L6を6本使用した135W仕様も登場。空関係システムとの併用奏者に長年愛される名機。

 

 

MUSIC MAN

HD 130

エリック・クラプトンの使用で一躍有名になった傑作アンプ。実際にレオ・フェンダーの血を一番受け継いでいるアンプかもしれない。発売当初、Musicmanはギターもベースも作っていないただのアンプメーカーであった。神田商会が何台か日本に輸入している。

 

 

VHT

Sig.X

弾いたギタリストが、全てシグネイチャーモデルとして認めるだろうという意で付けられたその名「Sig.X」。さすがのパワー・レスポンスを誇り、絶妙の切れ味と滑らかさを共存させる魅惑のリードを奏でる極上アンプだ。

 

 

FRYETTE

Pitbull Head ULTRA LEAD/Hundred CLX/Hundred CL

問答無用のフラッグシップ・モデル。現行のモダン・アンプでは必ず上位に入るその圧倒的なサウンドは、ジャンルを問わず支持を受ける。本当の意味でパワーアンプを100%ドライブさせたサウンドを得られる数少ない機種で、それを小音量でも堪能できるからまたすごい。それぞれ、使用する管がKT88(ULTRA LEAD)とEL34(CL)の違いで名前が区別されているが、その駆動形式がかの有名な同社のパワーアンプ「2150」と「Classic」の膂力を踏襲しているのは、フロントパネルの底板を見ればお判りの人も多い事だろう。

 

 

Laney

GH100L

歪みに特化したクールな1chモデル。決して毛羽立たない滑らかなディストーションが持ち味のLaneyドライブは、レスポンスの良さも併せ持って癖になる歪みだ。

VH100R/TI100

こちらは、鈴なりのローゲイン・チャンネルを備えた2ch仕様。VH100Rはリバーブ搭載、TI100はブラック・サバス、トニー・アイオミのシグネイチャーモデルだ。あの揺らぐような暗い音質はこの歪みを持って作られている。

 

 

KRANK

Revolution 1/ Revolution 1 PLUS

氷のようなクリーン・トーンと、地を裂くような激烈なハイゲインが同居する、脅威のモンスター・アンプ。野太いミドルを残しつつ音粒の芯にクリーンを混ぜたような独特のその歪みは、どんなにドライブさせても音の輪郭を失わない究極のモダン・ドライブの一つとされる。

KRANKENSTEIN/ KRANKENSTEIN PLUS

故ダイムバック・ダレルのシグネイチャーモデル。それまで彼をソリッドステート・アンプにこだわらせていた「チューブ・アンプの音の立ち上がりの遅さ」を見事に克服し、ついにダレルにチューブ・アンプを選ばせた唯一のモデルとして有名。その音の早さ、鋭さは、彼の死後このアンプを求める人が後を絶たない事からも容易に想像がつくだろう。

 

 

Randall

RM 100

Egnaterデザインの、3ch仕様モジュール式アンプ。好きな音色をMTSモジュールから三つ選び、組み合わせてお気に入りのセットを自由に組めるのが特色。安易なデジタル・モデリングとは異なりプリアンプそのものをごっそり交換する手法なので、フルチューブのサチュレーションは一切失われない。ちなみに、Egnater Mod100というアンプもほぼ同じ構造で、Egnater用モジュールもそのまま使える上、サードパーティーからモディファイものの高音質なプリ・モジュールも出ているのでチェックすべし。

KH120/LB 103/NB KING 100

数多くのエンドーサーを抱える同社の、シグネイチャー・ヘッド・モデル。左から、カーク・ハメット、ジョージ・リンチ、ヌーノ・ベッテンコート仕様。ファンならば一度はチェックすべし。

 

 

BRUNETTI

XL R-EVO

EL34管x4から繰り出すアグレッシブなドライブが心地よい120Wハイパワー・アンプ。コントロールパネルの下に1Uのエフェクター格納庫を装備しており、音の拡張性は無限大。現行品のLTDは格納庫も無く、KT88x2の70W仕様に落ち着いてしまっている。

 

 

PEAVEY

6505/6505 Plus

メタル奏者御用達の轟音ハイゲイン・アンプの現代的指標の一つとされるシリーズ。バリバリと空気を振動させるエッジの立った歪みはさすが。Plusになって2chそれぞれのイコライジングを独立させ、より細かく歪みを追い込める。

5150/5150 II

90年代初頭、時代を変えたハイゲイン・アンプ…一つはMesa/Boogie Dual Rectifier、そしてもう一つがこのPeavey 5150だ。雷鳴をそのまま部屋に解き放ったような突き上げる爆音が特徴で、カラッとしたMarshallとは一線を画す、獰猛なアメリカン・ドライブそのものだった。今でもそのファンは尽きない。

 

 

EVH

5150 III 100W

エディの思想、魂、スタイルを一台で体現するアンプ。彼の愛してやまなかった5150をとことんまでブラッシュアップ。攻撃x攻撃x攻撃の3ch仕様が、空をも突き破らんとする究極の歪みを降臨させる。力強く、ストレートな主張が欲しいならコレ。

 

 

RIVERA

Knucklehead Reverb KR100/Knucklehead Reverb KR7/Knucklehead TRE

特有の重心の低い攻撃的なドライブを持つ、6L6系(EL34もオプションで選択可能)ハイゲイン・アンプ。後継機KR7では、ミック・トムソンの助言を得て、中域の周波数をシフト、さらにW数を120にアップして広大なヘッドルームを得た事により、よりアグレッシブなアンプに生まれ変わっている。ダウンチューニングのギターでも最適なアタックを得られるアンプとして、ヘヴィー系のユーザーも多数。TREではパワー管をEL34に変え、クリーンサウンドも今までの重い沈黙のような響きから一転、透き通るような明るさを得た。三機種ともアキュトロニクス製のスプリング・リバーブを実装し、非常に幅広い表現力を持つ。

 

 

HIWATT

CUSTOM 100 HEAD/CP 103/DG 103

現行の最高級品、ポイント・トゥ・ポイントと手巻きパートリッジ社製トランスによって構成されるカスタム・ハンドメイド・シリーズ。ワイドな響きを持つ分厚いドライブは年を経ても変わらない普遍のトーン。CP103はピート・タウンゼント、DG103はデイヴィッド・ギルモアのシグネイチャー。

 

 

ORANGE

TH 100/OR 100H

英国サウンドの継承者ORANGEの主力機、TINY TERRORの2ch、100Wハイパワー・アンプTH100。小型機ではザリザリするだけだった高域の尖ったトーンが、6CA7(EL34)x4のサチュレーションによりきらきらとした豊潤な倍音を放つのは感激の一言だ。OR100は伝統のPics Onlyパネルを持った2ch仕様。

Rockerverb 100/100 MKII

独特の瑞々しいクリーンとガッツのあるディストーション。100Wの広大なヘッドルームを生かしてよりきめ細やかな解像度を実現した万能型ステージアンプ。

 

 

VOX

AC 100 CPH

希少なVOX製100Wフルチューブ・アンプ・ヘッド。特徴的な中域のプッシュは少なく、むしろ余裕のヘッドルームを生かしたナローなサウンドが光る。

 

 

Albion Amplifiers

TCT 100 H

新規参入ながら、実力派なアイテムを低価格で史上に投入する新星ブランド。アンプ自体は12AX7とEL34で構成されたスタンダードなUKタイプのヘッドだが、これを5万円以下で買えるというのは脅威。出音も予想外にゴージャスで均整が取れている。アンプ・デザインを手がけるSteve GrindrodはMarshallやVOXでエンジニアをしていた実力派。今後注目のブランドだ。ちなみに協賛しているオーディオメーカーWharfedaleから、同型同名(TCT100)のパイロット製作版のアンプが出ている。

 

 

Blackstar

HT Stage 100 Head

英国の真空管技術者集団Blackstarの生み出す100%ピュア・チューブ・ドライブを持つラインナップ群の中でも中核を占めるHT-VENUEシリーズ。ステージで性能を完全に発揮するためにのみ作られたヘッドで、最近流行のアッテネーター機能などは一切なく、シンプルな回路でまとめられている。キャビを選ばず強烈な音塊をたたき出す、主張のある男らしいヘッドだ。

ARTISAN 100 Head

最高のクラフトマンシップで組まれた、ハンドワイヤード・アンプ・ヘッド。Blackstarでは最上位のモデルで、訴えかけるようなその音の豊かさは弾かなければわからないほどの繊細さながら、万人を虜にする色気を持っている。真空管の特性を最大限に引き出すために設計されたサーキット・デザインが宝石のような音粒を生む、まさに極上品。

SERIES ONE 200 Head/SERIES ONE 100 Head/SERIES ONE 104EL34 Head/SERIES ONE 1046L6 Head/BLACK FIRE 200

それぞれ搭載された真空管の特性を個性にかえる、SERIES ONEラインナップ。高性能なDPRパワー・リダクション・コントローラーも搭載し、使い勝手の良いアンプに仕上がっている。BLACK FIRE 200は攻撃的な重低音を持つヘヴィメタル用アンプとしてS-1/200をモディファイしたGus G.シグネイチャー。

 

 

Ampeg

V-4 HEAD

ローリング・ストーンズ御用達だったアンプ。インプットで通るプリ回路を分ける構造で、それぞれ用いる真空管12AU7と12AX7の違いで歪みの量を変える。マイルドなドライブだが、暖かみがあり、寂しげな感じが良い。60WのV-2もある。

 

 

Diezel

D Moll

高出力KT77管を採用したシンプルなスタイルの3chフルチューブ・ヘッド。完成されたDiezelのクリーンや歪みが、KT77によってよりクリアな印象になった。コントロール系も強化され、MIDI以外でも専用フットスイッチ・コントロール(FS7HE)に対応し、直感的なコントロールが出来るようになった。

Herbert/Herbert MK II

KT77を6本同時駆動させる180Wのパワーがもたらす恩恵は、ガラスのように澄み切ったクリーンと悪夢のような超重低音ディストーションを両立させる余裕のヘッドルームを生む。さらにマスター中域をカットするMID CUT、ローエンドの解像度を高めるDEEPコントロールで音を追い込める。

VH4/Hagen

Diezelの名を世界に知らしめたフラッグシップ・モデルVH4。豊かなミドルを有した歯切れの良いディストーションと、甘いクランチ、熱に浮かされたようなリード、そして森の静寂をたたえるクリーンを一台に集約。更に重いパンチ力を増した歪みを搭載したHagenとともに、モダン・ハイゲインの騎手として不動の地位を手に入れている。

 

 

GENZ BENZ

EL DIABLO 100

低価格ながら優れた製品を創るGENZ BENZの100Wチューブ・アンプ。反応が早く、低音の押し出しもスムーズで、扱いやすい上品な音質。偏見の無い人に是非使って欲しい実力派アンプだ。

 

 

Hughes&Kettner

TRIAMP/TRIAMP MKII

1995年に登場以来、ハイゲイン統合型アンプの代表格としてその地位を不動のものにしたTRIAMPシリーズ。厚みのあるクリーンと繊細かつ広がりのある歪みが同居し、万能アンプとして今でも不動の地位を保っている。近年、オプションであったMIDIを初期装備した仕様にマイナーチェンジし、益々使い勝手が良くなった。

 

 

ENGL

Special Edition E670

現行のENGLサウンドの集大成。あらゆる音を網羅する、想像力をかき立てられるスーパーアンプである。プリアンプ・タイプの(E570)にあった「プリアンプ・ディフィート機能」がカットされているのは惜しい。

Savage 120 E610

たった2本の6550管と1本のECC83管のみを使ったパワーセクションで、脅威の120Wアウトプットを絞り出す怪物アンプ。余裕のあるヘッドルームを持つしなやかな音質ではなく、ギリギリの極限から絞り出される悲鳴のような熱を帯びたサウンドが持ち味。

INVADER 150 E640

モダン・へヴィネス・シーンに対応すべく実用性の高い装備を誇る、150Wハイパワー・モデル。MIDIやノイズゲートで荒れ狂う轟音を制御すれば、質の高いハイゲインを堪能できる。

Powerball E645/Powerball II E645II

重低音タイプだが、INVADERとは違いごつごつした巌のようなファットなディストーションを得意とするモデル。

Fireball 100 E635

エントリーモデルながら、音には全く妥協がないハイパワー・サウンド。エフェクターに頼らず、楽にチューブの野太い歪みを体感できる優良機。

Retro Tube 100 Head E765

ハイゲインのイメージが強いENGLでは異端の、クリーン系100Wアンプ・ヘッド。アンサンブルに埋もれない無骨なクランチが絶品。

Victor Smolski Signature E646/Ritchie Blackmore Signature E650/Steve Morse Signature E656

各シグネイチャーモデル群。さんざんMarshallを引っ掻き回したリッチーの最後の到達点となるのか。

 

 

Koch

Supernova SN120H

5チャンネル、4ヴォイシングのサウンド構成に加え、MIDIコントロール、ストア機能も併せ持つKochの誇るフラッグシップ・モデル。各チャンネルの音もそれぞれ基礎音が洗練された音質である上に設定できる自由度は高く、どのジャンルにも合う幅の広い適応力を見せる。同社のペダル型プリアンプ(Pedaltoneシリーズ)でも好評だったOTS(新しい倍音を付加させるための0.5Wオールチューブ・パワーアンプ)も搭載され、比類なき完成度を持つ至高のアンプ。

Powertone II /Powertone III/Multitone II

同社ミドルエンド向けの高機能アンプ。上質な3chを備えたPowertoneシリーズは、IIIになってOTSを搭載し更なる表現力を確保。Multitoneはゲインステージをプリアンプの前後に配置、選択する独特のスタイルで新たな歪みを想像する強力なマルチ・アンプ。

 

 

FUCHS

Overdrive Supreme 100W Head/Tripledrive Supreme 100W Head/Tripledrive Supreme 150W Head

今や本物を見る事も少なくなったダンブル・アンプのサウンドを追い求めるメーカーとして知られるFuchs。その中でも、100Wオーバーアンプは、同社の独自の洗練された真空管アクセス技術によってより強い個性を発揮するようになった。波が押し寄せるような本物のレトロ・チューブ・サウンドを体感したいなら、良い選択肢になるはずだ。

 

 

Ceriatone

Overtone S&M Special 100 Head

本物のポイント・トゥ・ポイント配線で組まれた、DUMBLEアンプのリアルクローン。空間を共鳴させるうねるようなクリーンと、熟した実が自然にこぼれ落ちるような豊潤なクランチを実現。価格も他のクローン・メーカーよりはかなり破格ながら、その音は本物と間違えかねない程の完成度。

SSS

DUMBLE SSSの沈み込むような静謐に満ちたクリーンを、より可変域の広いマットな音幅の中に確保した「歪まない」スペシャル・アンプ。ハイゲインが主流の昨今で、クリーン・スタックの高音質をあらためて感じる事の出来る希少な個体。音量最大のクリーンが鼓膜をビリビリと震わせるのは、魔法にかかったような陶酔感すら味わえる体験だろう。

 

 

Two Rock

BI ONIX

アナログ・スプリング・リバーブを有したクリーン&リードの2chハイエンド・アンプ。淡く萌えるようなDUMBLEクリーンを彷彿とさせるきらびやかさを持ち、すっきりとしたリード・トーンを共存させている。

CUSTOM REVERB SIGNATURE VERSION3

混ぜ物の無い完成されたクリーントーを基調に、様々なシステム構成要素やドライブ・エッセンスを加えて磨きをかけたグリーン・アンプ・ヘッド群。針の穴を通すような完成系クリーン=ドライブの追求をするためのモデルたち。まさに至高のハイエンド。

 

 

Carvin

V3 100/LEGACY 3 VL300/TS 100

老舗Carvinがラインナップする、12AX7プリ管とEL34パワー管の組み合わせの高出力アンプ群。モダンなV3、スティーブ・ヴァイ監修のクラシカルなトーンLEGACY3、ラックタイプでパワー管が選べるTS100と、幅広く展開。

 

 

 さて、数多くの魅力あふれるハイパワーなチューブ・アンプを取り上げてみたが、それに関連する話をもう一つしておこう。それは、アナログな消耗機器にまつわる提言だ。

 皆さんは「エイジング」という言葉をご存知だろうか?「エイジング」=ageing(aging)、つまり、「老化」させる行為の事だ。しかし、これは機材業界用語においては、一概に悪い意味で使われているわけではない。老化=「使い込む」ことで、その効果を最大限発揮する事の出来るパーツなどを意図的に適切な状態にまで消耗させる、言わば、「ならし運転」のようなものなのである。

 実は、真空管やスピーカーのような消耗品は、長期間運用する耐久性も考慮して製造されているので、工場出荷時が一番良い状態とは限らないのだ。エイジング時間がかかる真空管やスピーカーなどは、長時間うまく消耗させれば、キャラクターががらっと変わる程素晴らしい音を出す場合が多々ある。あこがれたアンプが、買った瞬間では理想の音が全く出なくて「おや?」と思う事もあるかもしれないが、まずはこのエイジングを疑ってみよう。プロフェッショナルのギタリストでは、状態良くエイジングをかけて育てた真空管をわざとライブやレコーディング用にストックしている事も普通に行っている。ショップによってはすでにエイジングした真空管を販売してくれるところもあるので、音に悩んだら試してみる価値はある。覚えておこう。

 さて、スピーカーの話が出たついでに、次回の予告だが……次は、今回紹介したヘッドアンプに最適な各メーカーの現行スピーカー・キャビネットのラインナップを弾き比べてみる予定だ。実は出音の50%を決めると言われるキャビ。どんなヘッドにどんなスピーカー・キャビネットを合わせるかでも、そのギタリストの個性は格段に違ってくるぞ。乞うご期待!

 

[ライターPROFILE]
今井 靖(いまい・やすし)

フリーライター。数々のスタジオや楽器店での勤務を経て、フロリダへ単身レコーディング・エンジニア修行を敢行。帰国後、ギター・システムの製作請負やスタジオ・プランナーとして従事する一方、自ら立ち上げた海外向けインディーズ・レーベルの代表に就任。上京後は、現場で培った楽器、機材全般の知識を生かして、プロ音楽ライターとして独立。現在、デジマート(リットーミュージック主催)の隔週メールマガジン『デジマート・ニュース』内において、「Dr.Dの機材ラビリンス」を好評連載中。