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現在のLine 6の先進性を見事に体現したギター・アンプ、DT50の開発に関わった3人のインタビューを紹介していこう。これらの声からもテクノロジーと音楽への真摯なこだわりが十二分に伝わってくることだろう!
●初めにDT50のベーシック・コンセプトを教えて下さい。
【エリオット】 Line 6がモデリングやデジタル製品において実現してきたフレキシビリティを提供するとともに、それを真空管アンプの世界と融合させて、同様の対応力を実現することにありました。モデリングを搭載したデジタル製品のメリットのひとつは、自由度が高く、プリセットを選択することでトーンを劇的に変更できることです。ラインホルド・ボグナー氏とSpider Valveで共同作業を行なった際に、こうしたハイブリッドなアプローチに高い価値があることを理解しました。ラインホルドが非常にフレキシブルなアナログ・デザインを行ない、我々がモデリングで同様のことを行なうというのは、Line 6が長い間考えてきた目標でもあります。
3年近くにわたって開発を続けてきた新しいHDアンプ・モデルでは、アンプを各セクションに分けてモデリングしており、16種類の新しいアンプ・モデルに加えて、同じ16種類のパワー・セクションのないモデル、つまりプリアンプとトーンスタックしかないものも用意しています。これがDT50内に収められていて、DSPモデリングにドライブされたプリアンプとトーンスタックがトーナリティを決定、それがコンフィギレーション変更可能な真空管アンプ出力と組み合わされて、音を作り出すのです。一方、メニューなどの要素はできるだけ少なくして、伝統的なアンプのような外観にしています。その結果、ユーザーは伝統的な真空管アンプと同様にノブやスイッチを操作するだけで、優れたトーンを得ることができる。DT50は、最高のフィーリングとサウンドのアンプですが、操作は簡単で、プレミアムなトーンを生み出すことに集中できます。
【スコット】 Spider Valveが静的な真空管セクションだったのに対して、DT50ではデジタル・コントロールされたうえでのコンフィギュレーション変更可能な真空管セクションを搭載しています。L6 LINK で接続した際にはPOD HDがインテリジェントに機能し、DSPとアナログ・セクションが融合するようにデザインされています。
【エリオット】 もちろんDT50は独立して使用できるアンプですが、POD HDと接続すると深いレベルで統合することができます。これまでのPODユーザーは、自分のPODからどのようにアンプへ接続すれば良いのかを常に考えてきました。伝統的な真空管アンプへ接続する場合、現時点でのベストな方法はエフェクト・リターンへ入力することになります。そしてPOD側ではアンプのモデルをオフにするととてもうまく機能しますが、少し妥協せざるをえない部分があるのも事実です。新しいPOD HDとDT50は完全に統合させることができるので、PODとアンプの両方を生かすという点においてもメリットがありますね。
●DT50とSpider Valve では、真空管回路において似た部分はありますか?
【スコット】 プリアンプの真空管は同じですが、DT50のパワー・アンプにはEL34が、またSpider Valveは6L6を採用しています。回路デザインの哲学という意味では、一部は共有しているものの、DT50はオーガニックに変化するアンプなので、大きく違うと言えます。こうした回路デザインは、ラインホルドが長年温めてきたもので、最初の共同作業だったSpider Valveと比較すると、モデリングとアナログはより強固に統合しています。
【ジョン】 真空管アンプには60年もの歴史があり、その間に数多くの機能が開発され、またさまざまな進化をとげてきました。そうした歴史を振り返ると、このDT50が新たな進化を実現していて、とてもエキサイティングだと言えますね。
【スコット】 DT50のシンプルさも特筆すべきですね。すべての知性は隠されており、ユーザーからはとてもシンプルに見えますが、その背後ではとても複雑なことが行なわれています。
●4種類のボイシングについて教えて下さい。
【エリオット】 ボイシングⅠはアメリカン・クリーンと呼んでいて、フェンダーの黒パネルのようなトーンが特徴です。かなりのヘッドルームがあり、クラスAB、Pentode ( 五極管) モードが推奨されます。ビンテージのフェンダー黒パネル特有のトーン特性と演奏フィールを実現しています。こうしたフィールは、リスナーには聴き取りにくい場合もありますが、演奏者にとっては非常に明白。つまりトーンの違いを、音としてだけでなく、アンプが指に反応する感覚として感じることができるでしょう。
ボイシングⅡは、イングリッシュ・クランチ的なトーンで、ボイシングⅠほどタイトでなく、少しルーズになっています。ビンテージ・マーシャルのようなフィールがあるんです。
ボイシングⅢはイングリッシュ・チャイムで、推奨されるセッティングはクラスA動作。クラスA/BからクラスAへ切り替えると出力は50Wから25Wになり、また固定バイアスからカソード・バイアスに変更されます。ミッド・ノブが、VOXアンプのようにカット・ノブ的に機能するなど、さまざまな要素が変更されます。ボイシングⅣは、モダン・ハイゲイン・セッティングです。低域に特徴があり、ディープやレゾナンスと呼ばれるモダン・ハイゲイン特有のトーンを含むサウンドが出せます。ボイシングの選択によりアナログ・セッティングがロードされますが、Triode/PentodeやクラスA/クラスA/Bの選択をパネル上で行なうことが可能です。例えばボイシングⅢを選択することでクラスAの、非常にリアルなVOXアンプ的なサウンドを得られますが、クラスA/Bに切り替えて、より出力が大きくてヘッドルームに余裕があるブライトで歪みの少ないサウンドにすることもできます。つまり4種類のボイシングと、スイッチ切り替えによる4通りのセッティングにより、非常にバラエティ豊かなトーンが得られるわけです。
●ボイシングを4つに絞り込んだいきさつとは?
【エリオット】 数多くのプロ・プレイヤーたちにテストしてもらいましたが、プロは通常のレコーディングに4 〜5 台のアンプを持ち込むそうです。“ 先週、ビンテージなAC30でレコーディングしたけど、DT50で得られるサウンドのほうがいいね”といううれしいフィードバックももらいました。
●パワー管にEL34 を選択した理由は?
【エリオット】 ラインホルドは6L6を使用したものを含めて、数種類のプロトタイプを作り、またKT66なども検討しましたが、高品質の真空管の手に入りやすさ、回路への適合性、そしてもちろんブラインド・リスニング・テストによるサウンド・クオリティの評価を経て、最終的にはEL34がベストということになりました。