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Line 6の関係者たちの証言をまとめてお届けしよう。まずは創業者のマーカス・ライルに登場していただいた。天才的なセンスでデジタル・ミュージック・シーンのさまざまなアイテムを開発していた氏が、世界初となるデジタル・モデリング・ギター・アンプを登場させて16年。進化するLine 6のコンセプトを作り上げた張本人の語りは実に説得力に溢れていた。
●96 年に最初のモデリング・アンプを発売していますが、デジタル・モデリング・アンプというアイディアはどうやって生まれたのですか?
我々はそれまで長年にわたって、シンセサイザー、キーボード、エフェクト・プロセッサー、ADATなど、さまざまなミュージック・テクノロジーの開発に深く関係してきました。その当時、キーボード・プレイヤーや音楽プロデューサーにとって、テクノロジーは非常に進んだものであり、ボタンを押すだけで必要なことはほぼ何でも実現できました。しかしギタリストにとって、求めるトーンを実現するには、まだまだいろいろなチャレンジが存在していました。十分な予算があれば、たくさんのアンプとエフェクトを手に入れることができますが、そうできない人も多いですからね。このプロジェクトは、もともとはリサーチ・プロジェクトとして始まりました。94年頃にリサーチを始めた時点では、DSPのパワーが、ついに真空管ディストーションのデジタル・ソフトウェア・モデルを実現できるほどパワフルなものになったかもしれない、と感じていました。
●当時、最も苦労したのはどんな点ですか?
真空管ディストーションのソフトウェア・モデリングで、本当に優れたサウンドを生み出せるのかどうか確信が持てなかったのですが、まずはリサーチを行なってプロトタイプを作り上げると、優れたサウンドを生み出せることを確認できました。そこから先は、とにかく働き詰めで製品として仕上げることに集中しました。当時、ALESISのQuadraverbをデザインしたことで、コーラスやフランジャー、ディレイ、リバーブといったエフェクト開発は経験していました。そこで真空管ならではの歪みのキャラクターやスピーカー・キャビネットの特性など、ギター・アンプ特有の部分に集中しました。たくさんの真空管アンプを買い集め、さまざまな分析と測定を行ないました。それにより最も重要な特徴を理解し、ソフトウェアを作り上げて、機能やモデルを進化させていきました。
●個人的に思い入れの強いLine 6製品はありますか?
ギター・プレイヤーがLine 6 製品を理解するようになったブレークスルーは、やはりPODの登場ですね。ギター・プレイヤーにとっては、ギター・アンプ・モデリングそのものだけでなく、いかにギター・サウンドをレコーディングするかが重要です。PODにより、その両方が初めてひとつの製品として実現しており、ギターを接続してトーンを素早く設定したあとは、音楽へ“ 戻る” ことができます。PODは、Line 6 にとって最も重要な製品のひとつであるとともに、我々にとって重要な“ミュージシャンが音楽に集中する手助けをするためにテクノロジーを活用する” ことを体現する製品でもあります。PODにより簡単に優れたサウンドが得られるので、自分の求めるサウンドを実現するために適した機材を探す手間を省き、音楽を作ることに集中できるのです。
●開発の最初の段階から、常にプロ・ミュージシャンからのフィードバックを得られていたのですか?
エンジニアたちは全員がミュージシャンですし、とても幸運なことに、社外のミュージシャンとも良好なコミュニケーションを持っています。私自身もミュージシャンで、以前はセッション・ミュージシャンとしてレコーディングにも参加していましたが、おもに演奏するのはキーボードとベースで、あまり良いギタリストとは言えませんね(笑)。
●デジタル・モデリング・アンプを開発していた当時から、将来的にVariax やPODなどの製品を作ることも思い描いていたのでしょうか?
その当時から、いつかは実現したいと考えていましたが、最初に開発したのはアンプ、次はエフェクトで、Variaxはとてもエキサイティングかつチャレンジングなプロジェクトになりましたね。その当時からの夢は、ギタリストへ、トーンの完全なコントロールを提供することです。つまり、指先で生み出されたものが耳に届くまでのすべてを、ギター・プレイヤーが自由にコントロールできるということですね。
●PODなどは、最初はスタジオ向けの製品というイメージがありましたが、最近はライブの現場でも多く使用されています。これも当初から考えられていたことですか?
そのどちらも重要だと考えていますし、PODにはその両方に効果的なソリューションが用意されています。PODは、ギター・プレイヤーが作業を行なうさまざまな方法へ対応できるよう進化してきたと言えるでしょう。レコーディングには完璧な存在であり、USB端子を装備しているのでコンピューターへダイレクトにレコーディングすることもできますし、ライブ用にはギター・アンプやPAシステムへダイレクトに接続できる方法が用意されています。
●Line 6 のアンプを使うメリットはどんなところにありますか?
Line 6 は、世界中のどのメーカーより多くのアンプを販売している会社です。その理由は、素晴らしいトーン、しかも実に幅広いトーンを生み出せることが、ミュージシャンをインスパイアしているからでしょう。予想もしなかったサウンドに出会うと、それによりインスパイアされ、新しい曲が生まれたり、リフが生まれたりします。幅広い選択肢へ瞬時にアクセスできることにより、Line 6のアンプはインスピレーションを提供しているのだと思います。過去60年間に、数多くのアンプがデザインされてきました。その中で特別なアンプというのは、時間が価値を証明しています。クラシックとして認められ、刺激的なトーンを生み出す素晴らしいアンプ。そうしたアンプのシグネチャー・サウンドをモデルとすることで、1台のアンプですべてのトーンを生み出すことが可能なのです。また、世の中には存在しない、Line 6 ならではのトーンも作り出しています。
●個人的に思い入れのあるアンプはありますか?
たくさんありますね(笑)。1959年製のフェンダーのベースマン4x10 は大好きですし、スプロもいいですね。制限があり、それがキャラクターの一部になっています。ジミー・ペイジは、「コミュニケーション・ブレイクダウン」などでスプロのアンプを使っていて、つぶれた感じのサウンドがおもしろいですね。ボグナーのアンプも大好きです。モダンなアンプの中ではベストでしょうね。
●好きなギタリストは?
うーん、たくさんいるので(笑)。テクニカルな面ではスティーヴ・モーズもいいですし、フィールやソウルではスティーヴィー・レイ・ヴォーンは最高ですね。パイオニアという意味では今でもジミ・ヘンドリックスは刺激的ですし……。若い頃はプログレ・ファンだったので、スティーヴ・ハウもいいですし、アラン・ホールズワースも素晴らしいですね。サウンドの可能性を広げたという意味では、ジ・エッジも忘れてはいけませんね。
●DT50についてコメントをいただけますか?
ギター・アンプには、2 種類の異なる役割があると思います。ひとつはトーンを生み出すこと、もうひとつは空気を動かしてそれを届けることです。我々はラインホルド・ボグナー氏と数年にわたって仕事をすることで、真空管パワー・アンプが、ギター・プレイヤーへどれほど効果的にトーンを届けられるかを学んだと思います。真空管パワー・アンプでは、ものすごい量の衝撃、アタックを感じることができます。PODにより、スタジオで生み出されるギターのトーンを作り出すことができますが、ギター・アンプの前に立つのは、それとは異なる経験です。アンプの前にいると、胸を押され、ズボンの裾が風で揺れるような空気の動きを感じます。DT50は個人的にも最高のギター・アンプだと思いますが、それはテクノロジーを超越しているからだと思います。デジタルで実現できる最高のことと、真空管による最高のパワー・アンプにより、最高のギター・アンプが生まれていると思います。モデリングや真空管の部分は忘れて、そのサウンドを体験して下さい。