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ジャズ・ギターにお薦めのシールド・ケーブル4選

楽器用シールド・ケーブル

近年はハイエンドなシールド・ケーブル(シールド)も数多く発売され、少しでも理想に近い音色を鳴らすため、こだわるギタリストも増えてきた。そうは言っても、高価なシールドを何本も試奏できる楽器店は限られる。そこでシールド選びのヒントになればと、音へのこだわりが特に強いジャズ・ギタリストの田辺充邦に、編集部が厳選したシールドを試奏してもらった。

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MOGAMI
3368

MOGAMI 3368

プラグにはプロの現場でも使用されるノイトリック社製が使われている。

PVC素材で覆われたシールドの外形は約8mmとやや太いが、柔軟性もあり取り回しもスムーズにできる。

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ナチュラルな出音で楽器本来の音を引き出す

 数々のレコーディング・スタジオやライヴの現場などでも使われるモガミのケーブル。1957年に創業したモガミ電線が現在も作り続けている。以前はケーブルのみだったが、2022年からプラグを付けたシールドを発売し、すでに高い評価を受けていた。モガミの特徴は色付けの少ない自然な音響特性。この3368は、1980年代からロング・セラーを続けるケーブルで、中低域もしっかり鳴らしてくれるためフルアコやセミアコとの相性も良い。また半導電層を設けることで、マイクロフォニックスと呼ばれるノイズを抑えている点も特徴だ。

【Specifications】●導体:50/0.12OFC ●ジャケット:PVC ●プラグ:NEUTRIK ●価格:6,160円(S-S 3m)、6,600円(S-L 3m)、7,920円(S-S 5m)、8,360円(S-L 5m)  問い合わせ:日本娯楽(info@nihongoraku.co.jp)

Tanabe’s Impression
ローからハイまで平均的に出てくれて、楽器を選ばない。

田辺充邦&MOGAMI 3368

 バランスが良くて、すごくナチュラルですね。ローからハイまで平均的に出てくれて、楽器を選ばないと思います。ローが出過ぎることもなく、自然に減衰してくれます。音の分離感も良く、コードもいい感じに響きますね。それからコーラスをかけて弾いてみましたが、エフェクター乗りもナチュラル。エフェクターで積極的に音作りをするギタリストの方が使っても、満足できるシールドだと思います。音のレスポンスも適度に速く、音の粒立ちもハッキリしていて、発音もいいですね。

 僕はこのシールドをベースや歌とのデュオに使ってみたいですね。自然な出音だから歌う人もピッチを取りやすそうで、本領発揮してくれる気がします。何より求めやすくコストパフォーマンスが高いので、初心者の方や学生さんでも無理なく買える点も大きな魅力ですね。変な癖がなくレスポンスも良いので、自分のタッチも分かりやすく、練習用としてもオススメしたいシールドです。

SOMMER CABLE
SPIRIT LLX

SOMMER CABLE SPIRIT LLX

ヨーロッパでは認知度が高いプロ用のプラグ、HICON Connectorsが採用されている。木製のカヴァーも個性的でオシャレだ。

ジャケットはPVCで、柔軟性が高く巻きやすい。

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ロー・ミッドが豊かで太く存在感のあるトーン

 ドイツのシュトラウベンハルトにあるケーブル・メーカーのゾマー・ケーブル。楽器用シールドのみならず、多種多様なケーブルを製作する専門メーカーで、ヨーロッパではトップ・シェアを誇っているという。このモデルは、プロ仕様のHD-SDビデオ・ケーブルと同様の高周波同軸設計が採用され、電気信号のロスを最小限に抑え、静電容量も非常に低くなっている。そういった特徴からロー・ミッドが厚く、太い音を鳴らすことが可能だ。またゾマーのシールドは総じてジャケットの柔軟性が高く、取り回ししやすい点も大きな魅力。

【Specifications】●導体:銅製網シールド+半導体 ●ジャケット:PVC ●プラグ:HICON Connectors ●価格:オープン・プライス  問い合わせ:株式会社カエルワークス(03-6423-1858)

Tanabe’s Impression
音の重心が低くロー寄りで、音が太く感じると思います。

田辺充邦&SOMMER CABLE SPIRIT LLX

 最初にEの開放弦を弾きましたがズドーンと音が出てきて、ロー寄りのシールドだなと1音で分かりました。ただハイが出ないわけではなく、ややミッドが抑えられた谷型のバランスのように感じましたね。音の重心は低めです。これはレコーディングをした際、説得力のある音が出せるシールドでしょう。音が太いので、リフとかサックスなどの他の楽器とユニゾンするときに使いたいですね。それからバラードを弾く際に、よりメロディを聴かせたい曲とかにも使ってみたいです。ピッキングのニュアンスをしっかり描いてくれるので音に表情を付けやすい。

 あと、音が太くなるので、ソリッドなエレキ・ギターでジャズを演奏する方にも向いていると思います。文字がギター側からアンプ側へ流れる方向に結線しないと、音はかなり変わります。逆にするとスッキリした音になり、1本で2つの音質が楽しめます。ケーブルも柔らかく、取り回しもいいですね。

SOMMER CABLE
CLASSIQUE

SOMMER CABLE CLASSIQUE

ゾマー・ケーブルが販売するシールドには、HICON Connectorsのプラグが標準で使われているようだ。

外装はヴィンテージ・ライクなデザインで、柔らかく取り回しもしやすい。

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ヴィンテージ・ライクなサウンドが楽しめるモデル

 ヴィンテージ・ギター好きに向けて製作されたという、珍しいコンセプトのゾマー・シールドのモデル。ジャケットがレトロな雰囲気で、ヴィンテージ・ギターを合わせて使った際に気分を盛り上げてくれそうだ。1960年代の温かみのある音を狙ったという通り、ミドル・レンジに特徴のあるサウンドだが、こもった音ではなく明瞭感があって抜けも良い。これは現在の技術を使って開発されているからだという。内部のシールド線には、28本の銅線を撚ったものが使われている。これがヴィンテージ・ライクなサウンドの秘密となっているのだろう。

【Specifications】●導体:銅製スパイラルシールド+半導体 ●ジャケット:PVC+ファブリック ●プラグ:HICON Connectors ●価格:オープン・プライス 問い合わせ:株式会社カエルワークス(03-6423-1858)

Tanabe’s Impression
ミドル・レンジが豊かで、美味しいレンジがよく出てくれます。

田辺充邦&SOMMER CABLE CLASSIQUE

 ヴィンテージ・ギターを愛用しているので、このシールドが楽しみでした。やはり、自分の耳に馴染んだ音がします。開発者の狙いがすごく分かりやすいですね。子供の頃にレコードで聴いていた、ジャズ・ギタリストの音色を作りやすいケーブルだと思います。ミドル・レンジが豊かで、ジャズ・ギターの美味しいレンジがよく出てくれます。E7を弾いたら、たまらない音が鳴りましたね。StratocasterやTelecaster、Les Paulといったソリッド・ギターとも、相性が良さそうです。

 あとナチュラルに薄くコンプがかかる印象があり、音の頭が少し潰れてくれるので弾きやすく感じます。ケニー・バレルとか、1960年代の古き良き時代のジャズ・ギターの音をイメージしたのだろうなと感じました。トラディショナルなジャズ・ギターを演奏される方には、特にオススメしたいモデル。布被膜で取り回しも抜群にいい。それから軽く、持ち運びにも便利ですね。

Vanilla House Sound Lab
VH JAZZギター・ハイグレード・ケーブル

Vanilla House Sound Lab VH JAZZギター・ハイグレード・ケーブル

プラグにはプロ・ミュージシャンの定番とも言えるノイトリックが採用されていた。

ケーブルはモガミの“2524”だが、単純にプラグと組み合わせただけでは得られない質感の音が鳴る。

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本物の音を知るエンジニアが製作するプロ仕様のシールド

 レコーディング・スタジオも経営するヴァニラ・ハウス・サウンド・ラボ。紹介するシールド以外にも、ベテランのレコーディン・エンジニアならではの発想で、プリ・アンプやエフェクターを開発し、機材のモディファイも手がけている。なんとシールドの製作には、最低でも3日必要というから驚きだ。ジャズ向きに開発されたこのモデルは、ギタリストが求める驚異的なレスポンスがあり、プレイヤーの繊細なタッチを描き切る。その優れた表現力を求めて、小沼ようすけや井上銘といった、音にこだわるジャズ・ギタリストたちも愛用している。

【Specifications】●導体:50/0.12OFC ●ジャケット:PVC ●プラグ:NEUTRIK ●価格:38,500円(約6m) 問い合わせ:ヴァニラ・ハウス・サウンド・ラボ・ショップ(vanillahouseinfo@gmail.com)

Tanabe’s Impression
ローからハイまで音に透明感があり、打てば確実に響く音。

田辺充邦&Vanilla House Sound Lab VH JAZZギター・ハイグレード・ケーブル

 ハイエンドなシールドを数本か持っていますが、それと同じで、アンプに挿したとき、一瞬“ウ〜ン”とアンプが鳴りました。それをアンプに魂が入るように感じていますが、このシールドも唸りましたね(笑)。シールドを挿しただけで、“これはいいぞ”と思わせてくれましたが、やはりその通り。ローからハイまで音に透明感があり、打てば確実に響く音。それに瞬発力もあって、ピッキングのニュアンスも繊細に表現してくれます。この音は、エンジニアの人も録音しやすいと思います。リヴァーブ感も増す感じがあって、ほかにはない特徴です。だから音に立体感が出せます。ジャズだけではなく、どんなジャンルでも使えるはず。

 僕みたいにギターからアンプまでシールド1本で使っている場合は、特に素晴らしさが感じられますね。演奏が楽しくなるような音を鳴らしてくれるシールドだと思います。それから、ギターの良さも引き出してくれますね。

Total Impression

音が少しでも理想に近づくなら、迷わず買ったほうが幸せになれる

田辺充邦「シールドを変えて、より美しい音色を鳴らせるようになると、1音でお客さんを魔法にかけられる」

 ギターが自分の身体の一部だとすれば、シールドは最後の砦と言えるほど重要です。今日試奏したシールドは、すべて特徴があって音が変わります。だからシールドも楽器の一部だと考え、音が1mmでも自分の理想に近いモデルに出会えたら、迷わず買った方が幸せになりますよ。僕みたいにアンプ直結で演奏される方は、特にシールドにはこだわった方がいい。楽器を持ち替えたと思うくらい、音質が改善することもあります。

 僕も以前は「シールドなんて」と思っていましたが、自分に合ったモデルに出会ってからは、弾き方やアンプのセッティングまで変わり、ストレスなく弾けるようになりました。それにシールドを変えて、より美しい音色を鳴らせるようになると、1音でお客さんを魔法にかけられる。嘘だと思うかもしれませんが、それくらいシールドは大切なんです。レコーディングでは理想の音を鳴らすため、4、5本のシールドを持参します。エフェクターも大切ですが、それと同じくらいシールドにこだわると、さらにギターを弾くことが楽しくなるはずです。

『Jazz Guitar Magazine Vol.13』 発売中!

Jazz Guitar Magazine Vol.13

本記事はリットーミュージック刊『Jazz Guitar Magazine Vol.13』から抜粋したものです。誌面にはより多くのシールド・ケーブルが紹介されています。

今号ではジャズ・ギターのハーモニーの弾き方、楽しみ方を大特集。ジム・ホール、ビル・フリゼール、ベン・モンダーなど、革新的なジャズ・ハーモニーを生み出してきたギタリストを多角的に分析し、一歩進んだハーモニーを身につけるためのノウハウが満載です。カート・ローゼンウィンケル、ウォルフガング・ムースピールらによる本誌のための解説も充実しています。紙版には布川俊樹(g)と納浩一(b)によるユニット、DuoRamaのライブ盤CDが付属! 50分間のスタンダード演奏をお楽しみください。

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製品情報

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プロフィール

田辺充邦
たなべ・みつくに●ウェス・モンゴメリー、バーニー・ケッセル、フレディ・グリーンなどを敬愛し、ソロギターからビッグバンドのアンサンブルに至るまで、幅広いスタイルをこなすプレイヤーとして定評がある。

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