アコースティックエンジニアリングが手がけた“理想の音楽制作を実現する”環境
- 2024/11/25
アコースティックエンジニアリング
“自分の家に、音楽制作に集中できる部屋が欲しい!”……プレイヤーなら、自宅レコーディング、さらには完パケまで行えるDTM環境を持ちたい人は多いはず。そんな夢を実現してくれる建築設計事務所がアコースティックエンジニアリングだ。スタジオやライブ・ハウスなどの防音/音響設計を行う一方、一般住宅の防音室、プライベート・スタジオも多く手がけている。同社はリズム&ドラム・マガジンで“ドラムが叩けるプライベート・スタジオ”も連載しているが、今回は特別編として、ドラムはもちろん、すべての楽器を録音し、音源制作までできてしまう夢のようなプライベート・スタジオを紹介していく!
「中学1年生の頃、B'zの松本孝弘さんに憧れてギターを始めました」というSさんの職業は眼科医。大学病院などの勤務医を経て、今年2月に独立開業を果たした。その医院と、家族と暮らす住居を兼ねた木造3階建ての建物の2階にスタジオがある。中に入ると、一方にドラム・セットとアップライト・ピアノが、反対側にはDAWシステムが並ぶデスクと大型のモニター・ディスプレイ、モニター・スピーカーが整然と並ぶ。壁のハンガーに掛けられたギターも存在感を放ち、まさに“ミュージシャンの部屋”という雰囲気だ。
それもそのはず、Sさんはミュージシャンとしての顔も持っている。大学時代に作曲を始め、「自分でなんでも演奏できたほうがいいと思って」ベースやキーボード、ドラムもプレイするようになったSさんは、医師への道をまっすぐ進みながら、音楽も趣味の域を超えて「それぞれの時期でやれること、やりたいことを続けてきました」という。「プロの楽曲コンペに参加したりもしています。子どもが生まれたり、開業の準備だったりでここ数年はできていませんが、しばらくしたら、もっとこのスタジオを活用して制作にも励みたいと思っています」。
「だから、スタジオを作るなら楽器を演奏するだけでなく、作曲やレコーディング、ミックスまで、自分がやりたいことを全部できる部屋にしたいと思っていました」と話すSさん。「それを叶えてくれたのがアコースティックエンジニアリングさんです。もちろんお名前は以前から知っていましたし、建物の設計/施工をお願いしたハウス・メーカーさんがアコースティックさんとコネクションがあったのと、僕の先輩にアコースティックさんで自宅スタジオを作った人がいたのが決め手になりました」。
スタジオを作るにあたってSさんがまず重視したのは、やはり音が外に漏れないこと。スタジオは静かな住宅地にあるのだが、「夜ドラムを叩いても、道を歩いている人が気付かないくらいにしたい」とリクエストしたそうだ。そして完成したスタジオは、Sさんが期待する以上の遮音性能を確保。「この建物の中にこんな部屋があるなんて、ご近所さんはたぶんどなたも気付いていないと思います」。
スタジオの価値を決めるのは遮音性能だけではない。そこで鳴る音がどれだけ心地よく聴こえるかが、本当の意味でスタジオの生命線となる。しかも、Sさんのスタジオには響き方の違ういろいろな楽器があり、DAWを駆使した楽曲制作の場でもある。それぞれに適したルーム・アコースティックを、豊富なノウハウとアイディアで実現するのがアコースティックエンジニアリングの腕の見せどころ。具体的には、部屋の寸法比率を適切に設計した上で、壁/床/天井の吸音と反射のバランスをエリア別に整えるという、正攻法だが豊富なノウハウとアイディアが求められるアプローチが採られた。
さらに、スタジオは普通1階に作るのがセオリーだが、Sさんのスタジオは2階にあり、音響的に有利となる天井高の確保が一般的には難しい。しかし、建物全体を担当したハウス・メーカーと初期段階からすり合わせを行うことで、なるべく天井を高く設計してもらうことができたそうだ。「同じ階に手術室もあるので、そのためにも2階は天井を高くしてもらいました。スタジオの天井は、設計士さんのアイディアで吸音パネルの間に凹みを設けて照明をつけているんですけど、それも天井を高くしたからできたことです」。
そんな照明に関するこだわりが随所に見られるのも、このスタジオの特徴の1つだ。天井にはダウン・ライトのほか、ダクト・レールを使った可動式ライトも設置。「僕がここでギターを弾いたり、子どもがピアノの練習をするときに、楽譜をピンポイントで照らせるようにお願いしました」。DAWデスク側のダウン・ライトも灯りの向きを変えることができ、ディスプレイへの映り込みを避けられるようになっている。明るさだけでなく色も変えられる間接照明も、スタジオのムード作りに一役買っている。
「子どもの頃からの夢が詰まったスタジオです」と、Sさんは何度も喜びを口にした。「お値段の面でも、アコースティックさんは本当に頑張ってくださいました。もちろん、それでも決して安い買い物ではありませんが、スタジオを作ることで建物に対する愛着が何倍にもなると思うんです。さらに僕の場合は、子どもに託す将来へのビジョンも、このスタジオに投影されています。アコースティックさんと打ち合わせをしていた頃はまだ言葉も話せなかった子どもが、今ではここで僕と一緒に音楽を奏でてくれていて……幸せですね。スタジオを作ることに反対するどころか、むしろ子供の頃からの夢を応援してくれた妻や親には本当に感謝しています」。
株式会社アコースティックエンジニアリングは、音楽家・音楽制作者のための防音・音響設計コンサルティングおよび防音工事を行う建築設計事務所。1978年に創業して以来、一貫して「For Your Better Music Life」という理念のもと、音楽家および音楽を愛する人達へより良い音響空間を共に創り続け、携わった物件の数は2,000件を超えている。現在も時代の要請に答えながら、コスト・パフォーマンスとデザイン性に優れ、「遮音性能」、「室内音響」、「空調設備」、「電源環境」、「居住性」というスタジオの性能を兼ね備えた、新しいスタイルのスタジオを提案し続けている。
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