Positive Grid Spark 2 meets ROLLY
- 2024/10/15
Martin/GPCE Inception™️ Maple、SC-28E、SC-18E
好評連載Martin Times。第42回目は、時代をリードするギター作りの姿勢が表出した、マーティンの新時代を告げる3モデルをピックアップ。新たなブレイシング技術を取り入れたGPCE Inception™️ Maple、ネック角を自在に調整することができるSC-18EとSC-28Eを、お馴染みの斎藤誠氏に弾き比べてもらおう。
伝統を重んじながらも、常にアコースティック・ギター・メーカーのパイオニアとしてあり続けるマーティン。今回は、そんな彼らの革新的な姿勢が表出した3モデルを紹介しよう。
Xが並ぶようにくり抜かれたブレイスを使用する新たな技術、“スケルトナイズド・ブレイシング”を採用したGPCE Inception™️ Maple。そして特許を取得したSure Align Neck Systemという、ネック角を調整できる機能を有するSCシリーズから、イースト・インディアン・ローズウッド・サイド&バックのSC-28Eと、マホガニー・サイド&バックのSC-18E。
それぞれの特徴を斎藤誠による試奏&インプレッションから紐解いていこう。
常に時代をリードするギター作りを行なうマーティン社が、2024年のウィンターNAMMで発表した最新モデル。
環境に配慮したサステナブル・トーンウッドが用いられ、トップにはFSC認証のヨーロピアン・スプルースを採用。サイドはメイプル、バックはメイプル+ブラック・ウォルナットの美しい3ピース。
そこに新たに開発された、肉抜きされたスケルトナイズド・ブレイシングと、ソニックチャンネルという溝を掘る加工も施されている。これらの相乗効果でトップが運動しやすくなることで、サステインの向上にもつながり、豊かな鳴りを生む。
フィニッシュは落ち着いたアンバー・フェイド・サンバースト。ピックアップはプロにも定評があるL.R.バッグスのアンセムで、ライブで即戦力と言える仕様だ。ボディが軽く、ネック・グリップも適度な厚みで弾きやすい。
【Specifications】
●トップ:FSC認証ヨーロピアン・スプルース ●バック:3ピース・メイプル with ブラック・ウォルナット ●サイド:メイプル ●ネック:ブラック・ウォルナット ●指板:ブラック・ウォルナット ●ブリッジ:ブラック・ウォルナット ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●ピックアップ:L.R.バッグス Anthem ●価格:¥770,000(税込)
まず軽いのが良いですよね。それに弾きやすくて、音量も大きい。ブレイシングに穴が空いているからか、すごくボディが響きます。マーティンのギターは、ピックで弾いた時にプレーン弦がシャーンと伸びる感じが好きですが、そのハイの成分が広がってくれますね。
このギターでは色々とやりたくて、アルペジオから始まり、途中からストロークになる曲を弾きましたが、すべてのポジションでギターが予想どおりに反応してくれます。あと、新しいコバール弦が張ってありましたが、1〜6弦までバランスが良い。ラインの音も、最初から良い音と思えました。
左右非対称の新たなSシェイプ・ボディ、ハイ・ポジションまで弾きやすいカッタウェイ、13fジョイント、ロー・プロファイル・ベロシティーと名づけられた演奏性の高い独自のネック・プロファイルなど、新仕様を満載して2020年に誕生したSCシリーズ。これまではメキシコ製だったが、今回はUSA製のスタンダード・シリーズからついに登場した。
クリアにはエンジングトナーが採用され、ビンテージ・ライクな雰囲気がある。ナット&サドルも牛骨となり、生鳴りがさらに向上していた。これは、サイド&バックに単板のイースト・インディアン・ローズウッドが使われた28スタイルのモデル。
トップも単板のスプルースで、オール単板仕様だ。ブレイシングも特徴的で、高音弦側だけがスキャロップされたトーン・テンションXブレイス。バック・ブレイシングもXパターンとなっている。ピックアップは、高性能なL.R.バッグスのアンセムが搭載されている。
【Specifications】
●トップ:スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●ピックアップ:L.R.バッグス Anthem(写真)、フィッシュマンAura VT Blend ●価格:¥715,000(税込/※2024年11月1日より)
このギターは、ローからハイ・ポジションまでテクニカルに弾く、例えばフュージョン系のギタリストとかには、すごく良いと思う。それから弦高を低く調整すれば、エレキと持ち替えるプレイヤーにも使いやすいはずです。
これはラインで使うことを前提として設計されているようで、ライブで使いたいギターですね。コバール弦の影響もあるかもしれませんが、音が広がり過ぎない点も扱いやすいと思います。でもしっかりと、シャラーンと気持ちが良い28の魅力は生音からも感じますよ。
ネック・アングルも簡単に変えられるから、それも一度試してみたい。
こちらも同様にスタンダード・シリーズから登場した18スタイルのSCモデル。基本的な特徴は28と同じだが、サイド&バックは単板のマホガニーとなる。
ネックは28、18ともにハードウッドが用いられるが、ダーク・マホガニー・フィニッシュで質感もいい。指板は28同様、良質なエボニーが使われている点も特徴だ。スケールは25.4インチ(約645.2mm)で、ナット幅は1 3/4インチ(約44.5mm)。
SC-18Eもエンジングトナーによるフィニッシュが施され、ヘッドに取付けられた通称“バター・ビーン”ツマミが付いたオープンバック・チューナーは、ビンテージ・ライクな雰囲気を高めてくれる。
SCシリーズに共通する特徴としてネックを簡単に取りはずせ、仕込み角度をシムで変更できるシュア・アライン・ネック・システムも搭載している。季節によるトップの膨らみ沈み込みなどが起きても、ネック角度を短時間で調整して対応することが可能だ。
【Specifications】
●トップ:スプルース ●サイド&バック:マホガニー ●ネック:セレクト・ハードウッド●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●ピックアップ:L.R.バッグス Anthem(写真)、フィッシュマンAura VT Blend ●価格:¥638,000(税込/※2024年11月1日より)
この特徴的なボディ・シェイプでも、18特有の“干し草のにおい”はありますね(笑)。やっぱりマホガニーは、ロックンロールが弾きたくなる。それを味わってもらおうと、用意した曲では、色々な要素を詰め込みました。ストロークも味わってほしいし、ブルージィなソロも聴いてほしいですね。
ローズウッドよりも音がそこまで広がらないから、単音が届きやすい気がします。このSC-18Eも先ほどのSC-28Eも、ソリッドな音が鳴る印象です。そういう特徴があるから、ラインでライブをするのにすごく向いているモデルだと思いますよ。
最近はラインの音が少し不得意になっていたんですが、今日弾いた3本は自然に弾くことができました。ギターの設計もそうですし、ピックアップとの相性も考えられて、すごく進歩していると感じましたよ。ラインで弾いても楽しかったですね。それに、どのギターもすごく弾きやすいと思いました。3本ともライブ向きのモデルだと感じましたね。
それからマーティンは、僕が弾き始めた1990年代から“スマート・ウッド・シリーズ”とか、環境に配慮したギター作りを行なっていて、その歴史が長いですよね。今回のギターもそうでしたが、それが当たり前になっています。環境に配慮した材を使っても、その材の個性をうまく引き出してくれる。そこもマーティンのすごさですし、面白さですよね。
今日弾いた3本ともそうでしたが、マーティンはギター作りの老舗ですが常に新しいトピックを提案してくれて、また新しいギターを作ってくれるんだろうなと、いつもワクワクさせてくれます。
価格:¥770,000 (税込)
価格:¥715,000 (税込)
価格:¥638,000 (税込)
斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。1983年にアルバム『LA-LA-LU』でシンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポート・ギターを始め、数多くのトップ・アーティストへの楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。 2018年、MARTIN GUITARのラジオCMでお馴染みのシングル「It’s A Beautiful Day」をリリース。本人名義のライブ活動のほか、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務めており、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。また、音楽の楽しい話満載のラジオ番組、FMヨコハマ「MAKOTONE〜It’s a beautiful day〜」を担当中。2022年には13枚目のアルバム『BIG LOVE』をリリース。マーティン・サウンドや卓越したギター・プレイそしてエモーショナルなボーカルを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!
斎藤誠 13th ALBUM『BIG LOVE』
『BIG LOVE』情報はこちらから!