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- 2024/11/16
Headway/HD-FUYUZAKURA
桜材を使って作られる、ヘッドウェイの桜モデル。“ストーリーのあるギター作り”を信条に数多くのモデルが生み出され、2024年で10周年を迎えた。今回は、これまでに日本の四季をテーマに作られた桜モデルの中から、“冬”をモチーフにしたタイプの違う2本を紹介しよう。
春の桜に次いで、2016年にスタンダードからスタートしたのが冬桜モデルだ。寒桜など冬に咲く桜もあり、そこからインスピレーションを受けて製作が開始された。冬に咲く桜は、春の桜とは印象が少し違い、鮮やかな美しさや派手に舞い散ることもなく、どこか神秘的で奥ゆかしいイメージがある。
冬桜モデルでは、雪が積もって澄んだ空気が心地よい朝のイメージや舞い落ちる雪、雪の結晶などがデザインされてきた。また冬の夜桜モデルも作られ、三日月のインレイなども特徴となっている。
2021年には、和傘の女性が雪を踏みしめて歩くイメージや雪が積もった合掌造りのデザインが入ったサウンドホール・カバーなども登場し、その年ごとに冬の桜ストーリーを紡いでいる。おそらく桜と雪を同時に見ることができる国は珍しく、世界のギター・ファンも興味を抱くモデルだろう。
2021年の冬桜モデルは、色白なアディロンダック・スプルース、サイド&バックのヤマザクラに加え、3ピース・バックのセンターには美しいトチが使われ、まるで真っ白な雪景色を思わせる。アディロンダックのため、桜らしい甘さと力強いトーンが同居する音色も魅力的だ。この年から3ピース・バックを効果的に用い、デザインやストーリー性を際立たせる手法が特徴のひとつとなった。
ヘッドに入る三日月も冬桜の特徴で、ここから雪が地面へと舞っていく様が指板には表現されている。また雪の結晶のまわりを桜が囲っているが、結晶のカタチに合わせて花びらは6枚で、その表現が神秘的な物語性を生む。
バックには、雪の中を歩く和傘の女性がデザインされ、空から舞う雪に手を差し伸べている仕草が美しい。足跡も含めたバックの表現は、このモデルの完成度の高さを物語る。
音質やデザインも含め、高い完成度が感じられる2023年の冬の夜桜モデル。ボディのグラデーション・カラーが印象的で、まだ薄暗く冬の早朝から夜が徐々に空けてくる様をイメージさせてくれる。
トップは上質なシトカ・スプルース。34セミ・フォワード・シフテッド・スキャロップドXブレイシングが施され、繊細なタッチにも応えてくれる反応の良さも魅力だ。
ヘッドは冬のダイアモンドをイメージしたデザインで仕上げられ、三日月のインレイが輝く。エボニー指板にはターコイズを効果的に使った氷をまとった桜の花びらや雪の結晶が入り、冬の夜空からヒラヒラ舞い落ちる構図も美しい。
ボディ・バックはヤマザクラとキルト・メイプルを組み合わせた3ピース。冬の大三角形をモチーフにした星を、和傘の女性が見上げるようなデザインで、吐息が空想を掻き立てる。
本記事は、『アコースティック・ギター・マガジンVol.100』(2024/04/26発売)に掲載された「Sakura Model 10th Anniversary 2014-2024~桜モデルが紡いだ物語」を抜粋/再編集したものです。誌面ではさらに、マスタービルダーの安井雅人氏へのインタビューやアニバーサリー・モデルの紹介コーナーも掲載。
詳細はこちら:https://www.rittor-music.co.jp/magazine/detail/3124112001/