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- 2024/11/16
Headway/HD-SAKURA'18 SUMMER、HD-SAKURA SUMMER’22 SF
“ストーリーのあるギター作り”を大切にして作られてきたヘッドウェイの桜モデルが、2024年で誕生から10周年を迎えた。今回は、これまでに製作された“日本の四季”をテーマにしたモデルの中から、夏を題材にした2本のギターを紹介しよう。
3番目の四季モデルとして、2018年の夏に限定で登場した夏桜ギター。当初は夏に咲く桜を探したが見つからず、短い期間だけ咲く桜のイメージと、一瞬で輝いて消える夏の花火を重ね、青いサンバースト・フィニッシュを施すことで、印象的な最初の夏桜モデルが誕生したという。淡く儚げだが刹那に輝くイメージは、ギターを手に取るユーザーにどんなストーリーを連想させたのだろうか。
その後も夏桜は定番となり、“夏桜ブルー”と名付けられたシースルー・フィニッシュや独特のグラデーションが施されたモデルが作られていく。さらに夏夜桜も登場するなど、多彩な夏の桜モデルをこれまで作り続け、さまざまな夏と桜のストーリーを生み出してきた。
和を感じさせる品格のある青いフィニッシュは、アコースティック・ギターでは珍しく、ステージ映えするモデルとしても魅力的だ。
2018年に登場した最初の夏桜モデル。春にパッと咲いて僅かな時間で散る桜と、夏の花火を重ね合わせ、独自の世界観を生み出している。
桜のイメージがない夏と桜が違和感なくマッチし、あたかも花火が打ち上がる夏の夜空に舞い散る桜が、実在するようにさえ感じさせてくれるデザインだ。海を連想させるようなブルーのサンバースト・フィニッシュ、ターコイズを効果的に使ったロゼッタや象嵌も、夏をイメージさせてくれる。ピックガードにワンポイントで入れられた線香花火も、このギターのコンセプトを端的に表わしているようだ。
木地が透ける青に着色されたサイド&バックには、地元のマツモト・サクラを使用。アドバンスド・リア・シフト・ブレイシングが施されたトップはシトカ・スプルースで、音の輪郭がクリアで、反応の良い音が楽しめる。
水面を泳いでいる金魚のデザインが、印象的な2022年の夏桜モデル。水面には散った桜が浮かび、風に揺れてかすかに動く様も連想させてくれる。金魚は縁起を担いで全部で7匹デザインされている。
シトカ・スプルースのボディ・トップには、夏の水面の青さや鮮やかな空の色を想起させる、縦方向のサマー・グラデーション・フィニッシュが印象深い。ブレイシングは34セミ・フォワード・シフテッド・スキャロップドXで、音質面でも妥協がない。金魚鉢がデザインされたサウンドホール・カバーは、1本1本に合わせて丁寧に作られている。
さらにバックは、フレイム杢の入ったヤマザクラで、センターのカエデには筆のタッチで和傘を持つ女性が描かれている。またワンポイントの金魚も秀逸だ。デザイン、音、演奏性含め、完成度の高い夏桜モデルと言える。
本記事は、『アコースティック・ギター・マガジンVol.100』(2024/04/26発売)に掲載された「Sakura Model 10th Anniversary 2014-2024~桜モデルが紡いだ物語」を抜粋/再編集したものです。誌面ではさらに、マスタービルダーの安井雅人氏へのインタビューやアニバーサリー・モデルの紹介コーナーも掲載。
詳細はこちら:https://www.rittor-music.co.jp/magazine/detail/3124112001/