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- 2024/11/16
Martin/D-18Standard、D-18Satin、000-16 StreetMaster®
3年ぶりに復活した連載Martin Timesの第2弾! 通算第39回は、前回のD-28に続き、バリエーションが増えたD-18と、巷で話題の000-16 StreetMaster®が登場。レギュラー・ラインとなるD-18 Standardとサテン・フィニッシュのD-18 Satin、そして新機軸とも呼べる000-16 StreetMaster®を用意して、お馴染み斎藤誠さんに弾き比べてもらった。
マーティンを代表するモデルとして人気の高いD-18は、D-28と同じ1931年に誕生した。D-18はマホガニーがサイド&バックに使われていることもあり、D-28よりも音がまとまる傾向があり、シンガーやバンドで演奏するギタリストから人気が高いロングセラー・モデルだ。
そんなD-18にもD-28と同じく、新たにサテン・フィニッシュが加わった。そこで今回も、D-18のサテンとグロス・フィニッシュを斎藤誠に弾き比べてもらった。やはりD-28と同様、レンジや響き方に違いが感じられ、塗装が音に影響を与えていることを改めて実感する結果となった。
今回はさらに巷で話題の000-16 StreetMaster®もチェックしてもらった。同モデルは、木材のエイジングを進める技術“VTS(Vintage Tone System)”が施されたアディロンダック・スプルースをトップに使い、豊かな鳴りを生み出していた。
べっ甲柄のピックガードと、バタービーン・ノブが付いたオープン・バック・チューナーがプリウォーのD-18を彷彿とさせる、グロス・フィニッシュのスタンダード。2012年に仕様が変更され、フォーワード・シフテッドXブレイシング、エボニー指板&ブリッジとなり、サウンド面でもプリウォー・マーティンを意識した作りとなった。ただしネック・テーパーは、現代的なパフォーミング・アーティスト・スタイルで演奏性も高い。
【Specifications】
●トップ:スプルース ●サイド&バック:ジェニュイン・マホガニー ●ネック:セレクトハードウッド●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドXブレイス(スキャロップド) ●価格:¥390,000(税込)
ずっと言っていますがマホガニーのサイド&バックで作られたギターは、“干し草の匂い”がすると思っているんです。僕は0-18を使っていますが、それもまさに“干し草”のようなニュアンスが音にあります。それが、好きなんです。ただグロスは、前回D-28を弾いた時のようにローもふくよかで、音が少しゴージャスに感じられました。もしかしたら、長いマーティン社の歴史の中で、D-18の音も進化しているのかもしれないですね。
D-28同様、D-18にも写真のサテン・フィニッシュ、使い込まれたルックスが魅力のストリート・レジェンド、淡いシェイデッドのようなサテン・アンバーバースト、3種類のバリエーションが追加された。3機種はすべてサテン仕上げのため、グロスよりも求めやすい。ただしギター本体の仕様は変わらないため、コスト・パフォーマンスに優れる点も魅力だ。またグロスとサテンでは、音に若干の違いがあるためぜひ店頭で試してほしい。
【Specifications】
●トップ:スプルース ●サイド&バック:ジェニュイン・マホガニー ●ネック:マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドXブレイス(スキャロップド) ●価格:¥359,000(税込)
サテン・フィニッシュを弾いた瞬間、“最高の田舎じゃん”って思い嬉しくなりました(笑)。グロスよりもレンジがタイトになったように感じますが、それが弾きやすい。レコーディングで爪痕を残せるギターっていう、マホガニーの音。バンド・サウンドとも馴染みますし、ソロを弾くとプーンと臭ってくる干し草感があって、最高です。その感じがサテンは強くて、音も前に張り出してきますし、まさに僕が求めるD-18のサウンドですね。
戦前のブルースマンが愛用したギターを彷彿させるような、風格のある塗装が目を引くストリートマスター。D-28やD-18よりも求めやすい価格設定ながら、トップにはアディロンダック・スプルースが使われている。さらにビンテージ・ライクな鳴りを生むVTS処理が施されていることも大きな魅力。サイド&バックにもイースト・インディアン・ローズウッドが組み合われたトラディショナルな仕様で、幅広い音楽ジャンルに使いやすい。
【Specifications】
●トップ:アディロンダック・スプルース(VTS) ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:マホガニー ●指板:ローズウッド ●ブリッジ:ローズウッド ●スケール:24.9インチ(632.4mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:Xブレイス(スキャロップド) ●価格:¥299,000(税込)
この価格で、アディロンダック・スプルースがトップに使われていることがすごい。塗装から透けて特徴的な木目がよく見えるので、アディロンダックの主張が強い(笑)。これは音に存在感がありますよ。音が太くて各弦が独立して前に出てくる。それから、弾き手の個性がハッキリとわかる感じもあります。ストロークでも、アルペジオで弾いても全部出てきますから。この仕様と鳴りでこの価格は、かなりの掘り出しものだと思いますよ。
前回試したD-28よりも、今回のD-18の方がグロスとサテン・フィニッシュで違いを感じましたね。サテン・フィニッシュの方が、僕が思い描く“干し草の匂い”がするD-18の音色で、昔のD-18のイメージに近いかな。低域もそこまで出過ぎず、いい意味で気を使うことなく弾けます。それに弾き方でコントロールしなくても、1〜6弦までバランス良く鳴ってくれるから、演奏が楽なんです。たぶんレコーディングでも、マイキングがすぐに決まるギターですね。グロス・トップはレンジが広く、弾く時に少しだけ気を使います。ただだからこそ、D-18が進化してきたことを感じさせてくれます。
000-16 StreetMaster®は、音の響きがすごい。VTSトップのアディロンダック・スプルースだからですかね。ギター自体も軽いし、このデザインは女性にも人気がありそう。見た目は使い込まれた雰囲気ですが各部の処理も丁寧で、さすがマーティンって思いましたね。
斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。1983年にアルバム『LA-LA-LU』でシンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポート・ギターを始め、数多くのトップ・アーティストへの楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。 2018年、MARTIN GUITARのラジオCMでお馴染みのシングル「It’s A Beautiful Day」をリリース。本人名義のライブ活動のほか、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務めており、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。また、音楽の楽しい話満載のラジオ番組、FMヨコハマ「MAKOTONE〜It’s a beautiful day〜」を担当中。2022年には13枚目のアルバム『BIG LOVE』をリリース。マーティン・サウンドや卓越したギター・プレイそしてエモーショナルなボーカルを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!
斎藤誠 13th ALBUM『BIG LOVE』
『BIG LOVE』情報はこちらから!