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- 2024/11/16
Martin /D-28Standard、D-28Satin、D-28Street Legend®
大好評を得ていた連載Martin Timesがコロナ禍を経て3年ぶりに復活! お久しぶりの第38回は、初心に戻って永遠のスタンダードD-28に焦点を当てる。レギュラー・ラインとなるD-28 Standard、2023年に登場したサテン・フィニッシュのD-28 Satin、ビンテージと見紛う風貌のD-28 StreetLegend®の3本を用意して、お馴染み斎藤誠さんに弾き比べてもらった。
1931年からマーティン社で製作が開始された、ドレッドノートの代表モデルD-28。その後、時代ごとに仕様を変えながら、多くのトップ・ミュージシャンに愛され、数々の伝説を残してきた名器だ。近年のアコースティック・ギターはこのD-28を参考に作られ、進化したモデルも多い。その人気は現代においても衰えることなく、常にマーティン社における人気モデルとして、不動のレギュラー・ラインナップとなっている。
そんなD-28は2017年にリニューアルされ、ビンテージ・ライクなルックスと現代的な演奏性を合わせ持つ仕様へと変貌したが、塗装は伝統的な高級感のあるグロス・フィニッシュのみ。しかし今回、塗装のバリエーションが増え、サテン、ストリート・レジェンドがラインナップに追加された。それぞれルックスだけでなく音にも変化が感じられ、より理想に近いD-28を手に入れられるようになった。
時代の求めるニーズに合わせ、常に進化するD-28。現在のD-28は、2017年にリニューアルした仕様で作られている。スタンダードは光沢のあるグロス・トップで、華やかでレンジの広い音を生む。オープン・バックのグローバー製チューナー、トップに施されたエイジング・トナー、アイボリー調のバインディング、べっこう柄のピックガードなどビンテージ・ライクでありながら、ネック・プロファイルは現代的に仕上げられている。
【Specifications】
●トップ:スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドXブレイス(ノンスキャロップド) ●価格:¥450,000(税込)
従来のグロス・フィニッシュは、ガツンと響くし、重厚感もあってローもしっかり鳴ってくれます。低域は、今回弾いた中で一番出ているかな。1960年代からずっと聴いてきた、慣れ親しんだサウンド。とにかく安定感があって、安心します。ストロークは、このグロス・フィニッシュの音が好きですね。今回サテン・フィニッシュと比べましたが、ここまで音が違うのかと驚きましたよ。ただグロス、サテンともに良さがあると思います。
今回、登場した新しい塗装がこのサテン・フィニッシュだ。基本的な仕様は、“D-28 Standard”と共通だが、大きく異なるのがつや消しの塗装。ボディを触るとサラサラと乾いた音がする。サテン・フィニッシュは、グロス仕上げよりも塗装の工程が少なく、磨き上げもしないため塗膜が薄くなる。そのため、グロス・フィニッシュよりはややレンジがまとまる印象があり、弾き比べてみるとその違いをハッキリと認識できるはずだ。
【Specifications】
●トップ:スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドXブレイス(ノンスキャロップド) ●価格:¥390,000(税込)
僕は普段OMとかを弾いているので、レンジの広いドレッドノートを弾く時は、“よし、真剣に取り組むぞ”という意識で気をつけて弾いています。例えば低音のコントロールとかですね。だけどサテン・フィニッシュは、いい意味で低域が出過ぎていないので、少し気構えていたドレッドノートの弾き方が、グッと和らぎます。細かいフレーズを深刻な気持ちにならず、サラサラ弾けるというか。これが今回、僕がビックリしたことですね。
遠目からだとビンテージ・ギターにしか見えないこのモデルは、好きなデザインを材に直接描ける最新のプリント技術で仕上げられているのが特徴。マーティン・ミュージアムに収蔵されている、本物のビンテージD-28をベースに、弾き傷もリアルに表現されたひとつのアート作品と言える。基本的にはサテン仕上げの一種だが、弾いてみるとそのルックスと相まって、弾きこまれたような落ち着いた音に感じてしまう不思議なモデルだ。
【Specifications】
●トップ:スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドXブレイス(ノンスキャロップド) ●価格:¥390,000(税込)
専門的なことはわかりませんが、サテン・フィニッシュよりもさらに音がナローになっているように感じました。ルックスのせいかもしれないけど、ロックとかブルースを弾きたくなる音だよね。僕の中では3機種の中で、最も楽に弾けるギター。ただサテンとストリート・レジェンドは、グロスとサテンほどの音の違いは感じないかな。サテンの2本は音のバランスが取りやすい。だから、僕のスタイルではサテンの方が使いやすいと思います。
今回3機種を弾いてみて思ったことは、ボディ・シェイプや使われている木材が一緒ですと言われても、信じられないくらい音の違いをグロスとサテン・フィニッシュでは感じましたね。ガツンとピックで弾くなら従来のグロスが気持ちいいと思ったけど、細かいフレーズを楽に弾きたい方は、サテンが弾きやすいかも。だから、同じお店にないかもしれないけど、グロスとサテン・フィニッシュは、ぜひ弾き比べてほしいと思いましたね。特にサテン・フィニッシュのD-28を弾いた時の気持ち良さは、ぜひ1回は体験してほしいですね。
ただ、どのフィニッシュにもそれぞれ良さがあるから、自分の音楽に合っているのはどれか、という視点で選ぶことがオススメです。僕も今回弾き比べるまで気付かなかったですが、塗装の違いが音に大きな影響があるんだと驚きました。どうしてグロス・フィニッシュにすると、低域が出るのかはわからないけど、特にロー感には違いを感じましたね。
斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。1983年にアルバム『LA-LA-LU』でシンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポート・ギターを始め、数多くのトップ・アーティストへの楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。 2018年、MARTIN GUITARのラジオCMでお馴染みのシングル「It’s A Beautiful Day」をリリース。本人名義のライブ活動のほか、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務めており、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。また、音楽の楽しい話満載のラジオ番組、FMヨコハマ「MAKOTONE〜It’s a beautiful day〜」を担当中。2022年には13枚目のアルバム『BIG LOVE』をリリース。マーティン・サウンドや卓越したギター・プレイそしてエモーショナルなボーカルを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!
斎藤誠 13th ALBUM『BIG LOVE』
『BIG LOVE』情報はこちらから!