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- 2024/11/16
AMPEG / Venture V3
大型真空管アンプの代名詞的存在であり、世代やジャンルを超えて愛用されている、ベーシストにとっての王道アンプ・ブランド=Ampeg。本連載では、第一線で活躍するAmpegユーザーたちに、それぞれのAmpeg観を聞くとともに、注目のAmpegギアをチェックしていく。第8回は、結成20周年を2024年に控えた9mm Parabellum Bulletより、中村和彦が登場! Ampeg新時代の到来を告げる注目の新モデル“Ventureシリーズ”を、10月25日の発売を前にひと足早く体感してもらった。
Ampegを知ったのがいつだったかはあまり覚えてないですけど、楽器を始めて、楽器について知識が増えてくるにつれてベース・アンプの存在として最初に認識したのはやっぱりAmpegですね。最初は音の印象とかはわからなかったけど、リハスタにあれば安心感があったし、当たり(のスタジオ)だなって思いました(笑)。
今使っている1987 LIMITED EDITION(SVT-HD)とSVT-VRは入手したのはほぼ同時期ですね。1987 LIMITED EDITION(SVT-HD)をメインで使うって決めてからバックアップとしてSVT-VRを入手したという感じです。1987 LIMITED EDITION(SVT-HD)はスタッフの横のつながりで手放したい人がいるということでスタジオで弾いてみて、“理屈じゃなくてもうコレだ!”って感じで決めましたね。SVT-VRはバックアップという感じですけど、時期や自分の好みなどによってメインで使っていたり、レコーディングで使い分けたりすることはあります。1987 LIMITED EDITION(SVT-HD)はAmpegらしい骨太な印象で、SVT-VRはそれよりもシャキッとしていてキレがいい感じです。とはいえ、どちらも音の傾向は大まかに一緒で同じ役割は果たせるんですけどね。
もうひとつPF-500も所有していて、自宅でヘッドフォンから出して聴いたりとか、リハスタや小規模のライヴでヘッドだけ持って行って使ったりとか、バンドでフルセットの本番用というわけではないですけど、使い勝手が良いし、Ampegっぽい感じが手軽に欲しいときに便利で重宝しています。今はAmpegのエフェクターは使ってないですけどSGT-DIをはじめ最近のAmpegは攻めてきてる印象があります。“らしさ”を失わずに、正しく進化していると思いますね。Ampegの魅力は何といっても“音”。一発鳴らせばそれでわかるっていうくらいの音の説得力とか存在感がある。ほんと理屈では語れない部分ですね。
2006年に初期型SVTの復刻版としてリリースされたモデルで、最初期のSVTのルックスを踏襲したシルバーのフロント・パネルとブルーのシルク・スクリーン印刷が特徴。SVT-HDと同じく出力300Wで12本の真空管を搭載するが、12AX7や12AU7といった現代でも入手性の良い型番に変更されており、スピコン端子によるスピーカー出力や、トランスによるXLRバランス出力など、現代的な機能も装備している。残念ながら現在は生産終了となっている。
1969年から1979年まで発売された初期のSVTがシルバーのフロント・パネルなのに対して、1980年代に発売されたSVT-HDはブラックを基調としたフロント・パネルとなっており、プリアンプのコントロールや機能はオリジナルを踏襲している。1987 LIMITED EDITION のSVT-HDは1986年にAmpegを買収したセントルイス・ミュージックが1987年に500台限定で製造したモデルであり、バック・パネルに取り付けられたシリアルナンバー入りのゴールド・プレートが限定モデルの証だ。真空管は6550電力増幅管6本を含む合計14本を搭載しているが、12DW7や6C4といった型番の真空管は現代ではやや入手困難な状況だ。
EQはトータルでも効きが良いですけど、特にミドルはブースト感も充分でわかりやすく効いてくれますね。ミドルの周波数も幅が広くて無段階というのも調整しやすいです。自分はいろいろな奏法を使い分けますけど、アンプはなるべくオールラウンドに対応できるようにセッティングしたくて、Ventureもそういう感じで使えるしバランスが取りやすいですね。ウルトラ・ロー/ハイの効きは強力で戻れなくなりそうです(笑)。でもEQとの組み合わせでローファイ風なサウンドにも寄せられるし、飛び道具として遊べる機能でもあるかなと思いました。
SGT機能のサウンドは非常に好きですね。特に“SVT”モードは普段使っているアンプ(SVT-HD、SVT-VR)に寄せていけそうだし、ウルトラ・ロー/ハイと組み合わせて使うとエグすぎるところが緩和されて“ちょうどよく”使える感じがしました。“B15”モードはナチュラルに効くので、わかりやすく効く“SVT”モードと使い分けると良さそうです。PF-500(V3と同様にクラスDパワー・アンプを搭載する小型ベース・アンプ・ヘッド)に比べると、SGT機能による歪みで積極的な音や攻めた音が作れるのが魅力だと思います。普段は歪みの音色は足下のエフェクターで作っているので、もし自分でV3を活用するとしたら、SGT機能でナチュラルなドライブ感を出しつつEQは控えめにしてバランスの取れたセッティングにすると思います。
(筐体を手に持ってみて)V3はヤバいですね、中身入っているのかなってくらい軽いです(笑)。VB-410も“マジっすか?”ってくらい軽いです。ビックリしました。重いキャビほど、音量感も含めて重い音が出る印象を持っていたので、今日はけっこうな音量を出して試奏しましたけど、この軽さで出るとは思えない、しっかりした音と十分な音圧が出せますね。ウルトラ・ロー/ハイの効きがハッキリと認識できるレンジの広さもあってすばらしいです。
“軽い”とか“小さい”とかっていう利便性の高いアンプは、需要としてはあるんでしょうけど、従来のAmpegは“これさえあればほかはいらない”みたいな無骨なイメージだったので、Ventureの登場は意外ではありました。でもAmpegらしさをかなり感じましたし、機能も豊富で便利に使えてとても良いアンプですね。SVTって歴史もあって“王道のベース・アンプ”って言われてますけど、ヴィンテージも含めフル・チューブの大型のSVTを所持するのはハードルが高いし、そのサウンドをしっかりと認識できている人は少数だと思うんですよね。そういったサウンドに寄せられるVentureの登場によってAmpegの“王道のサウンド”に触れやすくなるし、多くの人に届いて、正しく受け継がれて、また新しい歴史が作られていくんだなと思いました。
理屈では語れないほどの説得力とか存在感がある。
Ampegの最新アンプ・ヘッド/キャビネット・シリーズ“Venture”はブランドの伝統を引き継ぎながらも、現代のベーシストが求めるモダンなサウンドと優れた機能性を実現した小型ベース・アンプ・シリーズだ。Ventureシリーズのアンプ・ヘッドで先行リリースされるのは300Wの出力を備える“V3”と1200Wの出力を備える“V12”。どちらもオール・アナログ回路によるプリ・アンプとクラスDパワー・アンプで構成された小型軽量アンプ・ヘッドだ。
フロント・パネルの中央下部に大型のLEDが装備され、スピーカー・オンで青、ミュート時は赤に点灯する。プリ・アンプは-15dBのパッド、ミドル周波数が無段階でコントロール可能な3バンドEQ、ウルトラ・ロー/ハイ・スイッチ、2種類のボイシング・モード(SVT/B15)を備えたSGT(スーパー・グリット・テクノロジー)ドライブ機能を備え、Ampeg伝統の骨太なロック・サウンドからモダンなクリア・サウンドまで幅広いサウンド・メイクを可能にする。ウルトラ・ローは-/0/+、ウルトラ・ハイは0/+の切り替えとなっており、機能だけでなくデザインもAmpegの伝統を受け継いでいる。
バック・パネルにはグランド/リフト、プリ/ポスト、0/-20㏈切り換え機能を備えたXLRバランス出力により万全のDIアウトを引き出せるほか、エフェクト・センド/リターン、AUX外部入力、ヘッドフォン出力といった入出力端子も充実している。V3のスピーカー・アウトはVentureキャビネットと同様、フォン・プラグも接続可能なコンボ・タイプのスピコン・コネクタ×2を搭載している(※Venture V7&V12はコンボ・タイプではなく、スピコン・コネクタ×2)。出力300WのV3はギグバッグのポケットにも入るコンパクトな筐体(W231xD267xH65mm)に重量は1.8kgと超軽量。V12は出力1200WでV3と同様の機能に加え、コンプレッサーとエフェクト・ループのドライ・ミックス・コントロールが装備される。
Ventureシリーズのキャビネットは5種類ラインナップされる。スピーカー・ユニットは2008年に設立された新進気鋭のイタリアのブランドLavoce(ラヴォ―チェ)によるカスタム・ネオジム・ウーファーと高域用ドライバーを搭載。新設計のキャビネットと組み合わせ、驚異的な軽さと堅牢性の高さを実現している。入力端子はフォン・プラグも接続可能なコンボ・タイプのスピコン・コネクタ×2で、バック・パネルにはオフ/-6dB/0dBを選択可能な高域用アッテネーターを装備する。中村が今回試奏したキャビネットは10インチ・ウーファーを4基搭載するVB-410。低音域の音量や質感も充分ながら、本人も実際に持ち上げてみて驚くほどの軽さだ。本モデル以外には、12インチ・ウーファーを1基搭載するVB-112、15インチ・ウーファーを1基搭載するVB-115、10インチ・ウーファーを2基搭載するVB-210、12インチ・ウーファーを2基搭載するVB-212がラインナップしている。
価格:¥94,600 (税込)
価格:¥239,800 (税込)
中村和彦
なかむら・かずひこ●1984年4月24日生まれ、宮城県出身。9mm Parabellum Bulletは2004年3月、横浜にて結成。2枚のミニ・アルバムをインディーズ・レーベルよりリリースしたのち、2007年に『Discommunication e.p.』にてメジャー・デビューを果たす。2009年には日本武道館、2011年には横浜アリーナでの単独公演を成功させている。2023年8月9日に12thシングル『Brand New Day』をリリースした。9月19日には9年ぶりとなる日本武道館公演を開催した。