AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
AMPEG / SGT-DI
大型真空管アンプの代名詞的存在であり、世代やジャンルを超えて愛用されている、ベーシストにとっての王道アンプ・ブランド=Ampeg。本連載では、第一線で活躍するAmpegユーザーたちに、それぞれのAmpeg観を聞くとともに、注目のAmpegギアをチェックしていく。第7回は、2023年に結成20周年を迎えた3ピース・ロック・バンド鶴のほか、菊地英昭(THE YELLOW MONKEY)のソロ・プロジェクトbrainchild'sでも活躍するベーシスト、神田雄一朗をフィーチャー。豊富な機能を備えた同社の新型ペダル型プリアンプSGT-DIをチェックしてもらった。
10代の頃に入っていたリハーサル・スタジオには必ずAmpegが置いてあったので、ベースを始めた頃からAmpegには触れていました。当時の印象としては、やっぱり“ロックだな”って思いましたよ、サイズも大きいですし。それに憧れの人でもあるTHE YELLOW MONKEYのHEESEY(廣瀬洋一)さんのうしろにはドーンってAmpegが並んでいたこともあって、ルックスにも惚れていたんです。Ampegのアンプは過去にもSVT-2PROとか、リイシューのSVT-VRなどを持っていました。それこそフル・チューブのSVT-CLASSICはメジャー・デビューして最初の印税で買いました。当時はロック・スターになれた気がしてワクワク感もありましたね(笑)。でもやっぱり300Wのアンプだとライヴハウスでは音量が大きすぎる面もあったし、音量を下げるとアンプに申し訳ない気持ちにもなるし……。そう思っていたとき、V-4Bに出会いました。
V-4Bはフル・チューブの100Wで数字的には小さいんですけど、音量はガッツリと出せます。でも300Wみたいな爆音にはならないので扱いやすいんですよ。1ヴォリュームのアンプなので、上げればシンプルに音量が上がって、だんだんと歪んでいくんですけど、コレがまた奥深い。器用なことはできないけど、ライヴハウスでもちゃんと真空管の仕事を感じられる音量まで上げられるし、ドライブ感も絶妙に出せるのが魅力ですね。EQは会場の具合や気分でちょっと調整する程度でほとんどイジってないです。シンプルにヴォリュームを上げて、あとは弾くだけ。“お前が頑張って弾け!”ってベーシストの背中を押してくれるアンプだと思います。変な音が出たら自分のせいだなって思える、頼りになる“Ampeg先輩”って感じですね(笑)。V-4BとB-25は、本来ヘッドとキャビネットがセットの製品なんですけど、僕はたまたまV-4BのヘッドとB-25のキャビネットという組み合わせで中古で購入しました。B-25は一般的なキャビネットよりも奥行きが薄いので、持ち運びしやすいのはもちろん、奥行きが深いキャビネットは低音が回って包み込む感じが出すぎてコントロールしきれないイメージがあるけど、B-25は程よく出てくれるのが良いんですよね。弾き方を変えれば低域の膨らみも調整できますし。空気を揺らしつつタイトに出てくれる、この組み合わせが最高だと思います。残りのベース人生、ずっとこのセットだと思います。
現行のモデルもいろいろ触らせてもらったことがあるんですけど、Rocket Bassにはビックリしました。基本的にはヴィンテージ・アンプが好きなので、スピーカーのマグネットを気にしていた時期もあって、アルニコは音像がクッキリしていて音色に厚みがあるけど、モダンなスピーカーはちょっと音が薄いというか、離れると音が飛んでこないってイメージがあったんですけど、現行のRocket Bassはそういうネガティブ要素がまったくない。自分はひとつ前の世代のRocket Bassを持っているんですけど、それよりも音量感に余裕があったのでライヴハウスとかでも使えると思うし、幅広い用途を持ったモデルだと思いました。
まずルックスがカッコいいですよね(笑)。Ampeg愛に溢れる自分にも応えてくれるルックスだと感じました。説明書なしでも操作できるくらいシンプルな使い勝手なのも驚きで、ワンタッチで格納できるサイド・ノブなど、細かい点が考えられていますよね。音色については、自分なりのAmpegのイメージと相違なく、鳴ってほしい音がそのまま出せます。さすがAmpegという感じで、バンドに混ざってもしっかり存在感のある音色に仕上がります。ノブが多いプリアンプって綿密な音作りができる反面、セッティングの諦めがつかないし欲が出すぎて迷子になりがち。だからSGT-DIみたいな3バンドはシンプルで好きだし、ミドルがパライコになっているのも便利ですよね。使用する難易度的には、初心者の人も問題なく扱えると思いました。
ミドルの周波数は最小/最大だけでなく、数値が細かく表記されているので聴感上だけでなく、視覚的にもわかるのがいいですね。効きも良いし、感覚的にいじっても効果がわかりやすいので迷いなく操作できます。200~3kHzと幅広い帯域なのも嬉しくて、僕はスラップだとドンシャリよりもミッドが効いた音色が好きなので、このあたりの帯域を少し持ち上げると芯があって粘る感じが出せました。逆に1k/2k/3kHzあたりはハイ・ミッドを上げたい若い世代のバンドマンにもウケるのではないでしょうか? フレットと弦が当たる感じを強調できますね。ウルトラ・ロー/ハイはヘヴィな音が欲しいバンドの人や、スラップで始まるイントロとか、ベーシックとは異なるエフェクト的な音色として活用するのに適していると思います。ウルトラ・ロー/ハイはナチュラルで使いやすいし、EQで上げるのとは質感が違って楽器の表情が変わる印象があるので、違った音色が必要な場面で活用できそうです。
これまでコンプレッサーはあまり積極的に使ってこなかったんですけど、SGT-DIのコンプはツマミひとつでしっかりかかってくれるから使いやすい。(アタックを)叩かれている感じとかがわかりやすくてセッティングも簡単です。ここで良い感じにアタックを揃えてあげれば、プリアンプのサウンドと相まってアンサンブルでもしっかりと存在感を発揮すると思います。何より、フルテンにしても破綻しないのが使いやすいですね。
SGT(歪み機能)についてはエフェクターで意図的に歪ませた雰囲気ではなく、“アンプで歪んじゃった”ってイメージ。ベース用の歪みエフェクターってクリーン・トーンにディストーションの音色が乗っかっているタイプが多い印象なんですけど、コレはナチュラルな部分、芯から歪んでくれる。深めに歪ませると“ジュワッ”とした音色になるので、ミッドの2kHzあたりのハリが出るところを上げると明るくなって、ベーシックな音色にも使えそうです。頑張って重いアンプを持っていかなくても、ラインで良い音が録音できちゃいますね。歪みの種類を切り替えるVOICEは、実機の雰囲気がすごく出ています。SVTのほうがわかりやすく歪むので、歪みのニュアンスをクッキリ出したいときにはSVTを使うと良いかな。B-15のほうは実機だとアンプの出力もそれほど高くないし、スピーカーが限界で歪んでる感覚があるけど、それをメチャクチャ的確に再現しています。ピッキングの強弱で歪みのニュアンスが変わる感じとかも最高ですね。飛び道具というよりもベーシックな音色としてかけっ放しにして、アンサンブルの馴染ませ具合を調整する感じで使うと良いと思います。
専用アプリ“Ampeg IRローダー”は、本体とPCをUSBケーブルでつないでアプリを立ち上げたら勝手に認識してくれて、とても簡単。本体の操作と画面が連動していて、画面上の操作もわかりやすいです。ハイ・カットを効かせると、音が近づいてくるというか存在感が増す印象があります。キャビネットの115のタイトな雰囲気とか、810の空気で迫りくる感じなど、実機を忠実に再現していると思いました。プリアンプやエフェクターでいろいろいじるよりも、このキャビネット・シミュレーターだけでもかなりの音色の幅があるし、楽曲にハマる音に寄せたいときとか、EQの補正時とか、音作りの秘策として積極的に活用できると思いました。
動画でのデモ演奏では、真空管のナチュラルなドライブ感を出したいと思いつつ、ベーシックではプリアンプ機能は使わずにキャビネット・シミュレーターをオンにしています。CAB MODEは“USER”のAにして、アプリ内の210を使いました。途中でSGTを踏んでいますけど、ここはベースが輝くシーンなので飛び道具的な音色に作っています。フレーズ自体はシンプルなので“1音の存在感”みたいなものを出したくて、歪みを上げつつプリアンプ機能もオンにして、“カチッ”とした部分というか、引っかかるところを持ち上げています。僕はラインで録音してもマイクで引っかかるところというか、録音時に噛みつき具合が欲しいんです。それは音作りや機材選びで重視している部分でもあるんですけど、今回はそういったところを意識して音作りしてみました。本番のレコーディング案件でもさっそく使ってみたんですけど、サクッと鳴らしてみたら良い感じだったので、そのままOKテイクになりましたね(笑)。
バンドに混ざってもしっかり存在感のある音色。
SGT-DIは、アナログ技術とデジタル技術の融合により、Ampeg伝統の骨太サウンドからモダンなクリーン・サウンドまで幅広く対応するペダル型プリアンプ/DIだ。Ampeg伝統のプリアンプ機能を中心に、SGTによるドライブ機能やIRによるキャビネット・シミュレーション機能も盛り込み、充実の入出力機能を備えた“オールインワン・ベース・ボックス”となっている。
SGT-DIはプリアンプ、SGT(ドライブ)、IRローダー/キャビネット・シミュレーターの3つのセクションから形成され、これらはそれぞれ独立してオン/オフすることができる。プリアンプのキモとなるBASS/MID/TREBLEの3バンドEQは、ミドルの周波数がAmpeg製ベース・アンプではお馴染みの5段階のセレクターではなく、無段階にスウィープできるセミ・パラメトリックEQとなっており、ウルトラ・ロー/ハイ・スイッチや、ワン・ノブでセッティングしやすいコンプ機能も備えている。ドライブ機能はチューブ・アンプ特有の音色傾向を再現するSGT(スーパー・グリット・テクノロジー)によって構成されており、Ampegを代表するベース・アンプの名機、SVTとB-15のふたつのヴォイシング・モードが選択可能。歪みのバリエーションが得られるだけでなく、質感やアタック感などアンプのニュアンスも忠実に再現している。
またAmpegでは初搭載となるIR(インパルス・レスポンス)ローダー/キャビネット・シミュレーション機能は、デジタル技術によりスピーカー・キャビネットを鳴らしたときの空気感をリアルに再現する。本体に標準搭載されているのは115(Heritage B-15、15インチ・ユニット×1)、410(Heritage SVT-410HLF、10インチ・ユニット×4+1インチ・ホーン・ドライバー)、810(ヴィンテージの“スクエアバック”SVT-810、10インチ・ユニット×8)の3種類のIRデータだ。PCと接続し、専用アプリ“Ampeg IR Loader”を立ち上げれば、その他のキャビネット・モデルを使用可能で、それぞれPC画面上でも質感をリアルタイムに調整できるほか、ユーザーが持つIRデータも読み込み可能だ。
また右側面にはモノラル入力(6.3mm)とステレオ入力(3.5mm)に対応するAUX IN外部入力端子がまとめられており、背面にはチューナー・アウトなどに対応するTHRU端子、IRローダー/キャビネット・シミュレーターを通らないPREAMP OUT端子、バランス出力のDIRECT OUT端子など、入出力端子も非常に充実している。ライヴ/レコーディング/自宅練習といったシチュエーションを問わず、ベース演奏に必要な機能がすべて網羅されている。
価格:¥75,900
神田雄一朗
かんだ・ゆういちろう●1982年3月27日生まれ、埼玉県出身。2003年に中学の同級生で結成された3ピース・ロック・バンド、鶴でベース&コーラスを担当。バンドは2008年にシングル「恋のゴング」でメジャー・デビュー。精力的なライヴ活動とソウルフルな楽曲で幅広い層から人気を獲得する。神田は菊地英昭(THE YELLOW MONKEY)が主宰するプロジェクト、 brainchild’sにも参加するなど、多方面にわたり活動を展開している。鶴は2023年に結成20周年を迎え、7月23日に日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)にて、“結成20周年記念 鶴の野恩返し 〜みんなにワイワイお祝いしてもらう会〜”を開催する。