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- 2024/11/16
Deviser
ディバイザー大商談では様々な著名ギタリストが出展ギターを試し、その様子がYouTubeチャンネルにて公開されている。その試奏者の1人が、ネオソウル系を中心に多彩なプレイを聴かせてくれる有賀教平だ。ここでは、有賀に試奏したモデルのインプレッションを語ってもらおう。
——有賀さんは2022年の大商談会から試奏者として参加されていますね。ディバイザーのギターには、どのような印象を持っていますか?
細部まで丁寧に仕上げられ、調整もしっかりと行なわれているんです。どのギターもそのように感じられるので、本当にすごいですよね。しかも、そんな製品が手の届く価格帯に落とし込まれているというのも魅力的です。組み込みの精度などの良さって、ネックを握った瞬間に伝わってきます。それは松本市の工場で製作されたモデルだけではなくて、海外で製作されて日本でセットアップされるJapan Tune-up Seriesのモデルであっても同じく感じるんです。ギター・メーカーとしてかなり努力されているのだと思います。
——では、今回有賀さんが試奏された大商談会モデルのインプレッションを聞かせてください。まずは和材の栃(トチ)を使ったMomoseのMT24-MV-TOCHI SP’23/NJの印象はいかがですか?
トチはメイプルに近い印象ですが、特徴的なフレイムの杢目にもなっていて、やっぱりディバイザーは良い材を使っているなと改めて感じました。ギターのデザインにもトチがばっちりとハマっている印象です。サウンドは明るくて抜けが良く、歪みのノリも良いですね。
——このモデルはModern Virtuoso Seriesとして、現代的なプレイにも適した仕様で製作されています。TLタイプながらピックアップはHSH配列となっていて、コイルタップができるのも特徴的です。有賀さんのように、多彩なスタイルを持つギタリストには使いやすいスペックなのではないでしょうか?
トレモロも付いていて、さらに24fにもなっているという、“全部のせ”なギターですね。この1本があれば、どんな現場やジャンルでも対応できると思います。コイルタップ時も単純に音が細くなるような感じではなく、しっかりとシングルコイルの良い特徴が出てくれるので積極的に使いたいサウンドです。“ボディ・シェイプはTLタイプが好きだけど、STタイプのサウンドが好き”という方も結構いますし、そういうギタリストには特にハマりそうですね。
——続いては同じくトチを使ったSeventySevenのモデル、STORK-TOCHI PP-SP’23/NJです。
さっきのMomoseモデルと同じく、トチの杢目がキレイに出たギターです。明るいサウンドも共通していると感じました。ホロウ・ボディは低域が膨らんで高域が控えめになりがちですが、トチとの相性が良く、抜けもあって低域も出るという“いいとこ取り”なサウンドになっています。
——有賀さんのスタイルにしっくり来ている印象でした。
今回試奏したモデルの中で特に気に入っている2本があって、そのうちの1本がこのSTORK-TOCHI PP-SP’23/NJなんです。良い具合に枯れ感を持っていて、その枯れ感に導かれてフレーズが出てきました。P-90タイプのピックアップとボディの相性の良さもサウンドに貢献していると思います。P-90タイプは大好きなんですよ。テイルピースはオールドスクールな見た目のブランコ型で、それによって独特のリバーブ感が生まれている気がします。
——次は枝垂桜(シダレザクラ)を用いたMJM-SHIDAREZAKURA SP’23/Eです。ディバイザーを象徴するサクラ材で、落ち着いた風合いがあるギターですね。
日本のブランドならではのルックスでかっこいいですよね。サクラについては、僕としては良い意味で癖がない音という印象です。一般的なギターで言うとアルダーのようなイメージでしょうか。JMタイプのピックアップのパワー感を素直に押し出してくれて、オールマイティに使えるギターだと思います。このギターも、触った瞬間に組み込みや仕上げの精度の良さを感じられました。
——このギターに向いている音楽やプレイヤーは思いつきますか?
どんなジャンルやギタリストであってもマッチすると思いますが、強いて言うならブルースっぽいサウンドは合いそうですね。
——エキゾチック・メイプルという、杢目が特徴的なメイプルを採用したMC-MV-EXOTIC MAPLE SP’23 /WGはいかがでしたか?
杢目の良いメイプルとゴールド・パーツの組み合わせで、とにかく見た目がゴージャスです。個人的に気に入ったのが、ピックガードの模様ですね。パール系でこんな色が付いているピックガードはあまり見たことがないんですが、ボディ・カラーとのマッチングが素晴らしく、ゴージャスさを際立たせていると感じます。
——ピックアップはSSH配列で、多様なプレイやサウンドにも対応してくれそうですね。
僕はリアの音が気に入りました。リアがハムバッカーだと、パワーがあって歪みのノリが良いというメリットもありますが、クリーン・トーンだと音作りが難しい面もあって、積極的に使わないという人も多いと思います。でも、このギターのリアはスコーンと抜けてきて、クリーン・トーンでも歪みでもしっかりキャラクターが立って出てくる印象でした。リアを使ったサウンドメイクを楽しんでほしい1本です。
——次はアカマツを使ったMC-AKAMATSU SP’23/R BLK-Agedです。虫食い被害にあった赤松をギターとして再生させたモデルで、こちらもインパクトのある見た目になっています。
STORK-TOCHI PP-SP’23/NJに続いて、僕が気に入った1本ですね。エイジド加工が施された見た目も良いですし、生音がすごくカラッと響いて、個人的にはマホガニーっぽい温かみを感じる音も好みです。しかも、その生音の印象がそのままピックアップを通してアウトプットされるんですよね。赤松がギター材の新たなスタンダードになる日も近いんじゃないかと、そのポテンシャルに期待をしたくなるサウンドです。
——STタイプでピックアップはSSS配列と、馴染み深い仕様になっていますが、赤松ならではサウンドは感じられましたか?
一般的なSTタイプとは違った味わいがあります。マホガニー的な、アコースティックでふんわりとした響きが出ますね。これも僕の好みのサウンドです。STタイプの見た目にとらわれず、違った楽しみ方や弾き方を提示できる1本だと感じます。
——BacchusのDUKE-CTMは、ゴージャスなLPタイプの王道といった見た目で、価格的にもビギナーから上級者まで手に取りやすいモデルになっています。
一般的なLPタイプよりもボディが薄く設計されていて、日本人にとてもフィットしやすいと思います。そのおかげでプレイアビリティも高く、STタイプなどから持ち替えた際も違和感なく弾くことができるのが素晴らしいですね。
——薄いボディがサウンドに影響している部分は感じましたか?
少し低域がすっきりとした軽やかさがありました。歪み系はもちろん、カッティングなどの高域が出やすいサウンドやプレイにすごくマッチすると思います。
——DUKE-CTMは、上位グレードの設計を受け継ぎつつ、海外工場で製造されたGlobal Seriesに属するモデルです。ほかの試奏モデルと比べ、弾いた時の感覚に違いはありましたか?
最終的なセットアップは国内の職人がされているということもあり、このギターに関してもネックを握った時の安心感が変わらずありました。クオリティの高さは上位機種にも引けを取らないと思います。この価格帯のギターには弦高などの調整がうまくされていなかったり、その調整幅に限界があったりもしますが、DUKE-CTMにおいては出荷時からしっかりと調整が行なわれているのでギターの弾きやすさが格段に違うはずです。コードが押さえやすくなるなど、ギターを弾くハードルを下げてくれるので、ビギナーにとって成功体験を得やすいギターだと言えます。
——最後はDeviser Special SpecificationのROSETTA VESSEL ZIRICOTE SP’23/ZCです。25インチ・スケールやfホール、ハードテイルなどの仕様が特徴的ですね。
とても好みの見た目ですね。STタイプのシェイプですがfホールがあり、P-90タイプのピックアップが2発、そしてハードテイルと、ディバイザーならではのモデルだと感じます。ボディ・サイズ以上の響きが得られるのも素晴らしいポイントで、STタイプのプレイアビリティで箱もの感も楽しみたい人にはオススメです。
——STORK-TOCHI PP-SP’23/NJと同じく、ホロウ・ボディとP-90タイプの組み合わせが有賀さんにマッチしているようですね。
この組み合わせはなんでこんなに良いんでしょうね。P-90タイプの持つ力強さがホロウ・ボディによってよりふくよかに表現されているのかもしれません。ブリッジがハードテイルなので、振動がしっかりとボディへ伝わっていることも鳴りに貢献していそうです。アンプを通さないでも楽しめるくらいの響きなので、リビングに置いておきたいギターですね。ボディ・トップに使われたジリコテもインテリアっぽい見た目ですし、家具的な美しさがあります。
——どのような音楽に向いていそうですか?
ジャズやソウル系でしょうか。ぜひこのギターならではの温かいサウンドを活かしたプレイをしてほしいですね。
——YouTubeで公開されている試奏動画以外で気になったモデルはありましたか?
MGタイプのMMG-Premium/QT #16461ですね。キルテッド・タモという木材を使っていて、唯一無二の見た目になっているんです。アンプを通さずに生音で弾いただけだったのですが、ボディの響きがしっかりと伝わってきました。MGタイプは、もともと入門者向けという立ち位置で出てきたギターですが、それをキルテッド・タモで高級感のある見た目に仕上げるという発想が面白いですね。うねった杢目と緑のフィニッシュ、ゴールド・パーツの組み合わせが、このギターにしかない独自の高級感を出しています。
——今回のディバイザー大商談会では、100本以上のギターが出展されました。既に購入できるモデルも多くあり、どれを購入しようか迷ってしまう方も多いと思います。そういった方に向けて、有賀さんからアドバイスできるギターを選ぶ際のポイントはありますか?
僕がギターを選ぶ時に一番大事にしているのは直感です。まずは見た目、それから弾いてみて、“このギターじゃないとこの先自分はやっていけない!”と運命を感じるかどうか。あとは用途に合わせてピックアップなどの仕様を検討したり、弾き心地を気にしたりします。とは言え、ディバイザーのギターはどれも弾きやすく調整されているので、そこは安心してもらって大丈夫です。多彩な見た目のギターが揃っているので選ぶのに苦労するかと思いますが、本数が限られているものも多いので、ビビッときたら手に入れておくことをオススメします!
有賀教平
ありが・きょうへい●10代からプロ・ギタリストとしての活動をスタート。松田聖子、SixTONES、フィロソフィーのダンスなど様々なポップ・アーティストのサポートを行なう。また、SNSで発信する演奏動画は高い人気を誇り、特にネオソウル系のフレージングは、プロ/アマ問わず、多くのギタリストから注目を集めている。