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- 2024/11/16
BOSS / SDE-3000D
ラック・タイプのデジタル・ディレイとして広く知られ、多くのアーティストやエンジニアが愛用してきたRoland SDE-3000。そのサウンドをペダルに凝縮したBOSS SDE-3000Dが発売された。往年のディレイ・サウンドを忠実に再現しており、デジタル草創期の操作感とビジュアルにグッとくるギタリストも多いのではないだろうか。普段からSDE-3000を愛用しているというAKIHIDEにSDE-3000Dを試してもらったので、そのインプレッションをお届けしよう。
1983年に発売されたラック型ディレイ、SDE-3000のサウンドを得られるペダル・エフェクト。2基のディレイを搭載しており、それぞれを直列または並列で使用することが可能だ。ディレイ・タイムは最長3000msまで対応。ディレイ音とフィードバック音の位相反転やフィルター、モジュレーション機能も備えている。SDE-3000の操作パネルを模したボタンやディスプレイになっているのもポイントだ。現代におけるユーザビリティも考え、メモリー数の拡充やディレイ音のキャリーオーバー、MIDI対応などのアップデートも施されている。2系統の出力を備え、ステレオでの出力やドライ/ウェットの個別出力に対応する。
EVHと共同開発したSDE-3000EVHというモデルもラインナップしており、こちらは3系統の出力を搭載。エディ・ヴァン・ヘイレンが行なっていた、ウェット/ドライ/ウェットでの出力が可能だ。EVHによるプリセットもメモリーされている。
——SDE-3000Dの元になっているラック・ディレイ、Roland SDE-3000を今も愛用しているそうですね。
使うようになったきっかけはバンドを始めた頃にお世話になっていたPAの方で、その人がSDE-1000を貸してくれたんです。そのディレイ・サウンドに魅了され、どうやらSDE-3000というさらに良いモデルがあるらしいと聞き、中古で購入しました。
——そのほかのディレイも試したりしていましたか?
僕はディレイが大好きで、様々なモデルを集めていた時期もありました。アナログ・ディレイやテープ・エコーなど、数多くの製品を試してきましたが、どうしてもSDE-3000が持つ“原音に絡みつくディレイ”を出せる機種はなかったんです。SDE-3000はライブでもレコーディングでもとにかく使いやすく、音楽に寄り添ってくれるサウンドが魅力的で、ずっと使い続けています。今ではペダルボードのコンパクト化もあってライブでは使用していませんが、レコーディングでは変わらず使っていますね。
——どちらかというとアナログやテープ系を好むギタリストが多いと感じますが、デジタル・ディレイの魅力はなんでしょうか?
やはり返ってくる音がクリアな点と、タイムやフィードバックをカチッと決めることができる正確性です。ただ、そのクリアなリピート音の存在感を嫌う人もいると思うのですが、SDE-3000に関しては正確に返ってくるけど主張は強すぎず、聴こえてほしい帯域が出てくる印象なんです。デジタル機器でありながらアバウトな設定でも許してくれるような、少しアナログライクな面を持っているディレイだと思います。そして、先ほど言ったような原音に絡みつくようなサウンドも素晴らしい。センド・リターンではなく、インサートによって原音も通ることで生まれる音なのだと感じます。当時のAD/DAの影響も関係しているんでしょう。
——そんなSDE-3000がペダル型になったのがSDE-3000Dです。第一印象はいかがでしたか?
まずBOSSの本気を感じました。SDE-3000のビジュアルを模したパネルもカッコいいですね。SDE-3000はラックでしたし、それが持ち運びしやすいペダル・サイズになっただけでも嬉しいポイントですが、ディレイ2基が1つの筐体に備わっているのも衝撃的です。今ではプロ・アマ問わず、キレイにペダルボードを組む人は多いですし、ディレイ2つをこのサイズで組み込めるのは嬉しいですよね。
——サウンド面はいかがですか?
SDE-3000を忠実に再現してくれています。これでSDE-3000という名機を知る人が増えてしまいますね! よく抜けてくるディレイ音で、欲しい帯域をキレイに出してくれる感じは唯一無二だと思います。正確すぎるディレイだと、音が重なっていった時に低域が濁ってしまったりしてロー・カットを入れる必要が出てきたりもしますが、SDE-3000Dはその必要がないんです。中低域が上手く調整されていて、ディレイが重なってもボワつきません。
——パネルは往年のデジタル機器という感じで、慣れ親しんだ人にはグッとくる見た目ですね。
パッと見て直感的に操作できるパネルになっていると思います。デジタル機器ですが、階層をたどって操作する必要もなく、ダイレクトにその機能のボタンを押すだけで設定できるんです。とはいえ、ただシンプルなだけではなくて、ディレイの直列/並列などかなり深いセッティングまでできる。無限大の楽しみがあるディレイです。もちろんSDE-3000を使ったことがない人や、ディレイを初めて使うという人にとってもわかりやすい操作性だと思います。これはBOSSやRolandの製品に共通していることですね。
——今回は色々なセッティングで試してもらいましたが、その上で見えてきたSDE-3000Dの強みはありますか?
2基の組み合わせで幅広いサウンドを生み出せることですね。僕はギター・ソロでSDE-3000を使うのが好きで、ブライアン・メイみたいなやまびこディレイを使ったりするんです。ただ、1つのディレイだけでそのサウンドを作るのは難しいんですね。でもSDE-3000Dなら1台で完結できてしまいます。さらにモジュレーション機能を使ってコーラスっぽくしたり、ステレオ出力でピンポン・ディレイにしたり、フィルター機能でアナログっぽくしたりと様々なパフォーマンスが可能です。
——SDE-3000Dはどのようなプレイヤーに向いているでしょうか?
ディレイは基本的なエフェクターであり、それが2基備わっているSDE-3000Dだからこそ学べることもあると思うので、ビギナーの方にもオススメできます。ディレイを十分に知っているというプレイヤーも、SDE-3000Dが持つ音楽的な響きには魅了されるでしょう。プリセットも充実していてクオリティが高いので、そこからインスパイアされてフレーズが生まれることもあると思いますね。自分の中に眠っているものを呼び覚ましてくれるというか、ディレイ音によってこちらがフレーズを弾かされるというようなイメージで、SDE-3000Dと一緒にプレイしているような感覚になるはずです。一味も二味も違うディレイ・ペダルになっていますよ。
価格:オープン
価格:オープン
AKIHIDE
アキヒデ●2001年にロック・バンドFAIRY FOREのギタリストとしてメジャー・デビュー。2007年にDAIGO、SHINPEI らとともにBREAKERZを結成し、同年7月に『BREAKERZ』にてメジャー・デビュー。2013年からはBREAKERZ と並行してソロ活動を開始する。ギタリストとして以外にも、イラストや言葉といったさまざまな表現での制作活動も行なっており、絵本の出版や自身の作品のデザイン・アートワークも手がけている。