AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
沖田ギター工房 渋谷店 & OGS WORKS
日本各地に点在するという、ハマったら抜け出せない機材の沼スポット。自他共に認める機材好きで1日に5回デジマートを見る男が、全国の沼を訪ねて歩く連載、それが「ニッポン沼めぐりっ」! 今回は東京の「沖田ギター工房 渋谷店」に突撃です!
今回訪れる「沖田ギター工房 渋谷店」は、独自の技術を活かしたリペアとオリジナル・ギターの製作・販売を柱とするショップだ。本店は千葉にあり、これから訪問するのは渋谷店なので、待ち合わせ場所は定番のJR渋谷駅のハチ公前に決定。ここで私は沼めぐり取材班と合流した。
「沖田ギター工房 渋谷店」は現在、予約制となっている。当然我々もアポイントを入れており、訪問までは時間がある。ということでブラブラ・タイム、スタートゥ!
渋谷ストリームという複合施設の一角に、めっちゃ美味しいレモネードを出す店があると聞いたので、早速飲みに行ってみる!
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おや??
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がーん
閉店
ついてないぜ……。まぁ、この店、LEMONADE by Lemonicaは全国に店舗があるらしいので、見つけたら私の代わりにぜひ飲んでみて。
こうしている間にも時間はどんどん過ぎていくので、「沖田ギター工房 渋谷店」に向かうことに。
渋谷二丁目の交差点から
青山トンネル方向へ
真っ直ぐ行くと
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「沖田ギター工房 渋谷店」到着!
取材当日、ビルの表には看板がなかったが(いつもなのかな?)、ビルのエントランスを入ったところでジミ・ヘンドリックスの看板がお出迎え!!
工房はビルの2階にあるので
エレベーターを使って上階へ
店内は、思っていたよりコンパクト!
しかし、1本1本「これはなんですか」「これを弾かせてください!」 と言いたくなるような個性的なギターが並ぶ!
そして圧巻の
マンドリン・ウォール!
マンドリン、マンドリン、マンドリン、マンド
リン、マンドリン、マンドリン、マンドリン……
ぬうう、まだ店内をざっと見回しただけだが……この店は、これまでの沼めぐりにはなかったタイプの店だということは、わかる!!
するとそこに渋谷店 店長の前山伸二郎さんが登場!
早速、コンタクトを試みる。
わし ──ごんぬずば! こちらのお店、1本1本のギターが放つ存在感が、ハンパないっすね。状態の良さそうな、いい顔をしているというか……
前山店長 ── ありがとうございます! 当店はギターの修理・調整に力を入れておりまして、店頭のギターに関しても当工房が修理・調整した方が良いと思う箇所はすべてリペアし、フルチューンアップして提供しているので、それでそう感じられるのかもしれませんね。
ぬうう、なるほど。ギターはどれもピカピカ、マンドリンもつやがあって、みんなうれしそうな顔しているもんなぁ。
壁にかかっている1枚の写真
こちらが沖田ギター工房の創業者にして
会長の沖田正和氏だ。
リペアに力を入れているというだけあって、ここ渋谷店にもリペア・ルームがある。取材当日もあるミュージシャンからビンテージ・ギターの修理の依頼があり、ここで現状の傷の入り具合などを念入りにチェックし、書き取っていた。
沖田ギター工房といえばリペア、特にヘッド折れやネックのリセットなど難易度の高い修理に定評があるが、そうした技術を活かしてオリジナル・ギターの製作も行っている。
こちらは
↓ OKITA GuitarsのOMOM ↓
というモデル。
トップはイタリアン・アルバイン・スプルース、サイド&バックはマダガスカル・ローズウッド、ネックはホンジュラス・マホガニー、材はどれも極上だ!
これは是非とも弾いてみたい!
お願いすると
快くOKしていただいた!
弾いて爆笑!
何これ、良すぎる(笑)
沖田ギター工房のオリジナル・ギターの特徴は、こんな感じ。
聞くところによると、ネックジョイントには音のエネルギーを逃さないスペイン式を採用、トップ材はあえてあまり薄くしない(なんと4mm! しかし、鳴る!!)など、製作上のさまざまなこだわりがあるようだ。ネックやボディの剛性が高いので、弦が変な揺れ方をしない。音の切れ際も、きれい!!
わし ──ちなみに、これ……ピックもめちゃいいですね! 私、ピック大好きなんですけど、アコギ用としては最高のピックだと思います!
前山店長 ── 沖田ギター工房のオリジナルのピックで、セルロイド製です。
これ、セルロイドなのにちょっとウルテムっぽいモチモチ感があって、本当に良いピック!! これを買うためだけに沖田ギター工房に行く価値があるくらい!!
こちらはドレッドノート・タイプ。
さらに音量が豊か!
いやー、本当に良いアコギを弾くと、心が洗われますな。こんなギターを手に入れることができたら、毎日の暮らしが豊かになりそう。
わし ──素晴らしいギターでした。オリジナル・ギターは、アコギだけなんですか?
この質問に応えてくれたのは、社長の沖田渉吾氏。
沖田社長 ── 実は、公には今回が初公開となるのですが、私が企画したオリジナルのエレクトリック・ギターがあります。
か、かわいい!!!!!
どことなく、マンドキャスターを連想させる小ぶりなかわいいフォルムだが、スケールは648mmのいわゆるレギュラー・スケール。ミニ・ギターという感覚ではない。早速、弾かせていただいた。
ぬー、これ、羊の皮を被った狼というか、かわいい見た目だが中身はハイエンド・ギターですわ。ネック周りがめちゃくちゃ弾きやすくて、音の立ち上がりがよく、ピッチが凄く安定しています。サウンドはブライトめで、誤解を恐れずにいえば良いTL系という感じ。
自分だけの個性的なギターが欲しい人にぴったりな1本だ。
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さて
店内で気になるのは
大量のマンドリン!
普段はマンドリンと無縁の生活をしているのだが、間近で見るマンドリンの美しさにはやられた! マンドリンに関しては、担当の近藤晃弘さんに話を伺った。
近藤さん ──マンドリンはブルーグラスで使われることが多く、ブルーグラスを演奏しない人にとってはあまりなじみがないですよね。でも、昔のフォーク・ソングでは結構使われていましたし、今アンサンブルの中で使ってもとても面白いので、そういったご提案をしたいと思っています。
ブルーグラスではGibsonのマンドリンが主流だが、Gibsonは生産数が限られているのと高価なため、マンドリンの入口として手頃な1970年代頃の日本製のモデルを丁寧にリペアしてそろえているとのこと。
こうなると、実際に音を聞いてみたい! そこで自身がSSWでプレイヤーである近藤さんにお願いして、演奏していただいた。手にした1本は、70年代〜80年代の国産ブランドBlue BellのF-15!
見ていたら、自分も弾いてみたくなった(弾けないけど笑)。
これ、かなり面白いし、アンサンブルの幅が広がるのでギタリストにもお勧め!! と、マンドリンを満喫していたら、前山店長の「ほかにも面白いもの、ありますよ」というささやきが!
うわー
ビンテージのニューヨーク
エピフォン・エンペラー!!!!
めちゃくちゃ存在感ある!
圧倒的!
音も深みがあって(特にロー)最高!!
ビンテージのエピフォンでまだドキドキしているところに、前山店長が「まだあります」と出してきたのが、カスタム K-200!!
このカスタム、単なるオモシロ・ギターではなく、ディアルモンドのピックアップが搭載されていて良い音するんだよ!
面白いものがいろいろあるなーと思っていたところに、前山店長の「まだまだあります」というささやきが!!!
うわー、今度はリッケンバッカー A-22 Flying-Pan!!!!!
博物館クラス きたー!!!
すごいものが出てき過ぎで、弾きたかったビンテージのリッケンバッカー360は時間切れとなり触れず……無念。
ふー
いろいろ、いろいろすごかった。
ここで改めて、社長の沖田渉吾さん、店長の前山伸二郎さん、そしてアコースティック楽器の生き字引のような近藤晃弘さんの3人に話を伺った。
わし ──今回お邪魔して、色々な製品の良さ、技術の高さがよくわかりました。皆さんは沖田ギター工房の強みをどう感じていますか?
沖田社長 ── まずは、会長が編み出したオリジナルの技術を持っていることですね。ネック角をリセットせずに変える沖田式の角度調整や、補強にネック材と同じ材の付き板(柾目)を何層にも張り合わせる沖田式のネック折れ修理など、独自の技術でもとのギターの良さを損なわずに直すことが可能です。それから、40年間リペアをしているので、その間に集積された知識も強みですね。
近藤さん ── 私は以前、大手のギター・ショップに在籍していまして、その頃からたくさんのギターのリペアを沖田ギター工房に頼んでいました。当時から、単に修理されて戻ってくるだけでなく、弾き心地や音程がより良くなって帰ってくるのが特徴でした。見えないところまで徹底してこだわってセットアップするのが強みだと思います。
前山店長 ──私は、お客様が納得いくまでお付き合いするところだと思っています。お客様が納得していないのに、こんなものだと決めつけるような修理は絶対にしません。我々には聞こえていなくても、お客様には聞こえている音もあると思うので、お客様の耳や感じたことを大切に、とことんお付き合いしていきたいと思います。
なるほど。いろいろ話を伺い、実際にオリジナル・ギターやメンテナンス済みのビンテージ・ギターを弾かせてもらって、「難易度の高いリペアこそ、ここにお願いしたい」と思った。特に、アコギや箱物に関しては、まずここに相談するのが良さそうだ。
最後に、全員で記念撮影!
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いやー、良い店だった。
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いつもの通り、興奮して乾いた喉をビールで潤したい!
渋谷には良い飲み屋がたくさんあるが、
今回はバンドマンがよく行く名店
山家に決定!
では、早速いっぱい頂きます!
我ながら、いつもうれしそうだ(笑)
いたーきます!
うまっ! うまっ!!
良いギターに、旨いビール。今日も良い一日だった。
今回はこれにて
ミッション・コンプリート!
水深(楽器の品揃え)★★★★
水質(スタッフの対応)★★★★★
沼の面積(フロアの広さ)★★★
周辺状況(近隣の飲食店等)★★★★★
判定:リペアの技術はもちろん、オリジナル・ギターも素晴らしい! ユーズドやビンテージ・ギターの品揃え、それにマンドリンの品ぞろえも個性的で、実に楽しい沼! 行くべし
住所:〒150-0011 東京都渋谷区東1-2-23MA東ビル2F
電話番号:03-6805-1877
営業時間:11:00〜19:00(予約制)
定休日:水、木曜日
デジマート・ショップページ
https://www.digimart.net/shop/5018/
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<お知らせ>
ここで突然だが、この不定期連載も
実はこれにて一旦、終了となる。
これまで「沼巡り」を支えてくれた
担当者と記念撮影し、お別れだ。
ここまで読んでくれて、本当にありがとう!!!!!
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井戸沼尚也(いどぬま なおや)
日本で唯一の、沼鑑定士(自称)。
1日5回デジマートを見る、機材大好きのギタリスト/レビュアー/ライター/ワウペダル奏者。
インスト・ファンク・バンドZubola Funk Laboratoryのメンバー。
2019年3月より、ドラムとギターのみの変態インスト・バンド「Ragos」を始動。マスクをするとデジマート地下実験室の室長に似ているらしい。