AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Deviser
5月23日に特設サイトが公開となるディバイザーの大商談会。国内屈指のギター・メーカーであるディバイザーが、数多くの新製品を販売店に向けて発表するイベントだ。近年はオンラインで開催されており、一般ユーザーも楽しめるようになっている。ここでは大商談会でお披露目される、ディバイザーの職人が“特別な1本”として製作したギター/ベース=Premium Collectionについて紹介。製作を行なう飛鳥工場の職人、高取裕二氏と谷口翔太氏へ話を聞いた。
——まずはPremium Collectionがどういった製品なのか教えて下さい。
高取 こだわりの材やチャレンジングな仕様で作る1本もののギターやベース製品になります。“大商談会を行なうにあたって、特別なものを作ってほしい”とディバイザーの営業サイドから話があり、2019年の大商談会で10本くらい製作したのが最初ですね。通常の限定品は営業と飛鳥が相談しながら製作し、その製品は複数本作られますが、Premium Collectionは工場の職人が主導権を持って特別な1点を作っているというのが特徴です。
——職人側の主導で作ることは、製品にどのような違いが生まれますか?
高取 やはり一番は材料です。“こういう面白い材で作ってみよう”と、我々職人目線のアイディアを形にすることができます。
——Premium Collection以外のシリーズでも、和材などの貴重な材や仕様を持つ製品はありますが、それらとの違いは?
高取 同じように和材を使ったモデルであっても、柾目だったり、杢目の出方が良いPremium Collection用として確保した材を使っていたりします。ほかにも、通常のネック材に加えて豪華な指板でプレミアム感をプラスするなど、仕様の面でも違いが生まれるんです。
——全体の仕様はどのように考えていますか?
高取 私としては、まずネック材を選び、それからボディ材を選んでいます。“このネック材だったら、こういうトップ材を使って……”と、材の組み合わせのイメージから始まることが多いです。
——やはりレギュラー・ラインよりも製作期間は長くなるのですか?
高取 そうですね。レギュラー・ラインよりも2倍近くの期間をかけているものもあります。
谷口 “こういう仕様の製品だからこれくらいの本数を作る”ということではなく、“1本に対してどういった仕様を採用するのか”という通常とは逆と言える考え方で作っていますし、その分その1本にしかない特別なサウンドやデザインを表現できていると思います。
——アイディアを盛り込む製品だからこそ、トライ&エラーも多いのでは?
谷口 多いかもしれません。尖ったモデルをたくさん作ったとしても世間に受け入れられるかわからないですし、Premium Collectionとしてまず出してみることでプレイヤーの方々の反応を見るという側面もあるんです。
——では今年の大商談会でお披露目されるPremium Collectionについて教えて下さい。まずはMomoseのMCモデルですね。
高取 形状はSTタイプですが、このモデルはホロウ・ボディになっています。ベースとなっているのはMomoseのMC-MVというモデルです。MC-MVはピックアップがSSHレイアウトで、トレモロ・ユニットにGotoh 510T FE-1を搭載したモダン寄りの仕様になっており、それに加えてホロウ・ボディにすることでレギュラー・ラインとどういったサウンドの差が出てくるのかイメージしながら製作しました。ボディ材はトップとバック共に和材のトチを使っています。
谷口 以前にもトチのボディとメイプル指板の組み合わせで製品を作ったことがあり、とても人気が高かったんです。その印象もあって、今回も製作しました。
——サウンドはどのようなものになっていますか?
高取 メイプル指板でフローティング・トレモロ、そしてホロウ・ボディという組み合わせから、明るいながら少し柔らかいサウンドになった印象です。あえてアルダーやアッシュを使わずにトチを採用したことも、良い結果につながってくれたと思っています。
——次はMJMモデルです。形状はJMタイプで、こちらもホロウ・ボディになっていますね。
高取 先ほどのMCモデルと同じく、トチを使ったボディです。ネックはフレイム・メイプルで、指板はエボニーになります。塗装のカラーにもこだわっていますね。材に合わせてカラーリングを決められるというのも、Premium Collectionならではです。材の加工がある程度進んでくると、例えばトチでは杢目の出方が違ってくるので、その状態を見ながら色の判断ができます。
——カラーリングの面でも貴重な1本に仕上がるわけですね。次は最初と同じMCモデルですが、材のカラーとゴールド・パーツの組み合わせが映える1本になっています。
高取 バール・ポプラと呼ばれる材をボディ・トップに使っています。フレイム杢も混じっている個性的な材ですね。ボディ中央部はもともと茶色がかっていたため、中央にチャコール系の塗料、周辺にグリーンの塗料を生地着色することで、木色を活かしたグラデーションに仕上がっています。フレイム・メイプルのネックにもチャコール系の塗料を生地着色して、正面から見たときにボディの中央の色味とマッチして、全体的な統一感が出るようにまとめました。木部については杢目の個性を活かしながらも落ち着いた渋めのトーンでまとめましたが、プラスチック系のパーツは黒、ハードウェアはゴールドでメリハリを足して、大人っぽい雰囲気に仕上げています。
谷口 弾き手を選ばないトラディショナルなデザインと仕様をベースとしながら、現代的な利便性も考えてGotohのペグとブリッジ、Mojotoneのピックアップなどのパーツをセレクトしています。
——次はMSGモデルです。
高取 SGタイプの形状で、ボディ・トップはフレイムの神代タモ、バックはマホガニーですね。同じ厚さで張り合わせるハーフ&ハーフで、そこへ和材を使うのも面白いだろうと。通常のSGタイプのボディはマホガニーが多いですが、アッシュに近いタモをトップへ使うことで出てくる特性が楽しみです。まだ塗装前ですが、神代タモ自体が特徴的な色なのでそれを活かしたフィニッシュにする予定ですね。
——ネックの仕様は?
高取 ネック材はマホガニーで、指板はハカランダです。神代タモとハカランダの組み合わせはかなり贅沢な仕様だと思いますね。重厚でリッチなサウンドに仕上がると予想しています。
——続いてはMTモデルというTLタイプです。
高取 これもトチを使ったモデルです。トップがトチでバックがアフリカン・コリーナというモデルと、トップもバックもトチになっているモデルがあります。
——同じくトチを使ったMCモデルとはまた違った杢目の出方になっていますね。
高取 色々な種類の杢がある木材なんです。この2本は両方ともトチ・トップのシンライン・ボディになっていることが共通点ですが、杢のタイプが全然違うので印象もかなり変わってくると思います。ピックアップはどちらもMojotoneですが、1本はフロントにハムバッカーを、もう1本はシングルコイルを搭載しています。
——最後はゴールド・パーツを使ったMTタイプですね。
高取 キルテッド・タモをトップに使用したモデルです。波打つような杢目はとてもインパクトがあると思います。先述したようにタモはアッシュに近い性質を持っており、ごくまれにこのような激しいキルト杢を持つ個体があるんです。キルト杢と言うと一般的にはメイプルが有名ですが、タモの場合はまったく異なる雰囲気を持っているので、“人と被りたくない”というギタリストの方にはオススメですね。
谷口 ボディ・バックは1ピースのアッシュ、ネックはサーモ加工を施して剛性を高めたバーズアイ・メイプル、指板にはストックの枯渇によってレギュラー・モデルでの使用を昨年中止したマダガスカル・ローズを採用しています。さらに、強烈な個性を持つ材を落ち着いたブラウン・バーストでカラーリングし、ゴールド・パーツでまとめて高級感のある仕上がりになりました。
——様々な材やパーツの組み合わせで、どれもが特別な1本になっていますね。サウンドはもちろん、個性や見た目にもこだわりたいという人にとっては、とても良い選択肢になると思います。今回紹介いただいたモデル以外にも出展される製品はあるのでしょうか?
高取 はい、今年の大商談会のPremium Collectionのモデルは約60本を用意しています。そのうちの8割がギター製品ですね。今回ご紹介したMomoseのMCやMJM、MSG、MTといったモデルのほか、LPタイプや7弦ギター、24フレット仕様など、多彩なバリエーションを製作しています。
——販売店やユーザーに注目してもらいたいポイントはありますか?
谷口 Premium Collectionは1本1本が個性を持ったモデルになっています。それらを一度に見れるのが大商談会なので、ぜひ自分にぴったりなギターやベースを見つけてほしいですね。ここで紹介したモデルはまだ製作中のものもありますが、5月23日にはディバイザー大商談会の特設サイトで製品の全貌が公開されるので、楽しみにしていて下さい。
高取 Premium Collectionは年を重ねるごとに製作本数も増えてきました。今年の大商談会が終わってすぐ、来年に向けた製作もスタートしますし、秋のDeviser One Day Guitar Showを含め、今後のディバイザー・イベントにも注目していただきたいですね。