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- 2024/11/16
ORIGIN EFFECTS/Cali76-CB
スタジオ機材のクオリティをペダル・サイズで実現し、絶大な支持を集めるイギリスの気鋭ブランドORIGIN EFFECTSによるベース専用コンプレッサー、Cali76-CB。リーランド・スクラーやピノ・パラディーノも愛用した同社のオリジナル・コンプレッサー“Cali76”をペダル・ボードに収まりやすいサイズにギュッと凝縮しベースのサウンド・メイクに最適な機能を加えた同ペダルは、ベース用コンプレッサーの新たな定番機として今プロ・ベーシストの間で高い評価を集めている。ここでは愛用者のひとり、ポルカドットスティングレイのウエムラユウキが登場! サウンドチェックをとおして改めてその実力を検証してもらった。ライヴやレコーディングにおいて“常にCali76-CBを踏んでいる”という彼が語る本機の魅力とは?
ORIGIN EFFECTSは、ヴィンテージ・アンプやペダル、レコーディング用のアウトボードをモチーフに、コンパクト・サイズで表現するイギリスの気鋭ブランドだ。2012年創業の同社は、ラック・タイプのコンプレッサーの名機であるUREI 1176をペダル・サイズに落とし込んだCali76を発表。音にこだわるミュージシャンの間で話題となった。その後もアンペグ製SVTを踏襲したBassRIG Super Vintage、フェンダー系アンプを踏襲したBassRIG '64 Black panelを発売し、音好きを唸らせるプロダクトでヴィンテージ機材の音を知るマニアなベーシストたちにも知られるようになった。
今回紹介するのはORIGIN EFFECTSの原点とも言える、コンプレッサー・ペダルのベース専用機、Cali76-CB。オリジナルのCali76をサイズ・ダウンし、ベーシストにとって便利な機能を追加している。本機はUREI 1176同様にFET回路を用いたコンプレッサーで、アタック/リリース・タイムを素早く設定できるのが大きな特徴だ。コントロール部分で特筆すべきは、Attack/Releaseのツマミで、アタック・タイムとリリース・タイムをひとつのノブで調整できる。加えて、1176タイプに見られるアタック/リリースの設定による低域の歪みを事前に抑えており、どのポジションでも音が破綻せず、直感的なサウンド作りができる。もうひとつが新搭載のHPFコントロール。コンプレッサーがかかる周波数をハイパス・フィルターで調節すれば、低域の音ヤセが解消できる。これはベーシストにとって嬉しいポイントと言える。また、ドライ信号をブレンドできるDRYコントロールを備えているため、サウンドに厚みを持たせることができる。18Vの高電流のクラスAディスクリート回路、トランジスタなどの質にもこだわり優れたSN比を実現した本機は、コンパクト・サイズのベース用コンプレッサーの新たな定番機として、プロも多数愛用。確固たる実力を備えたモデルだ。
レコーディングやライヴでCali76-CBを愛用しているポルカドットスティングレイのウエムラユウキに、その魅力を語ってもらった。
僕はバンドのなかでけっこう派手なプレイもしますが、そういうときにアンサンブルのなかでベースの音がちゃんと抜けてほしいなと思っていました。最初にORIGIN EFFECTSのペダルを試したのはエンジニアさんに借りたCali76で、今言った自分の悩みを解消してくれました。オンにするだけで一段階良い音になるというか、音がグッと前に出てきたんです。それがすごく気に入って買おうと思ったけど、すでに入手が難しいモデルだったので、Cali76-CBが発売されたタイミングで購入しました。
これまでコンプレッサーのペダルはいろいろと試しましたが、4弦の低域が弱くなったり、歪みと一緒に使うとノイズが出たりと問題があったりして。でも、Cali76-CBはそれがまったくなくてずっとかけっぱなしでいられる。僕的にはそこが最高に気に入っています。
僕のCali76-CBのセッティングは、どんな楽曲やプレイ・スタイルでも、かけっぱなしで使うことを想定しています。僕はこのペダルのコンプの音が好きなので、普段はDRYはあまり混ぜませんが、ここで原音を混ぜるとかなりアグレッシブな音になります。レシオは気に入っているツマミで、普通のコンプはレシオのセッティングによっては音が破綻しますが、このペダルはそれがないんですよね。僕は9時方向でやりすぎない感じにしています。あと、HPFはあまりかけていません。アタック/リリースは3時方向くらいでリリースを速めにして、オクターヴで弾いたときに高音弦の感じがちゃんと出るようにしています。やっぱりCali76-CBをオンにしてスラップしたときのハリのある感じと、抜けの良さが本当に良いです。ライヴはもちろんですが、ラインの音が良くなるので、レコーディングでも活躍します。僕はデモ作りでも使っているし、今はCali76-CBがないと自分のベース・プレイの意味が薄まるようにも感じていて、自分のサウンドにとって、なくてはならないペダルです。
ORIGIN EFFECTSのオーナーであり設計者のサイモン・キーツ氏にインタビューを敢行。 本機製作の裏側を語ってくれた。
――そもそもの話になりますが、ORIGIN EFFECTSのブランド・コンセプトについて教えてください。
ORIGIN EFFECTSは、好きなレコードの音色を再現できるペダルが見つからないという問題意識から生まれました。私はコルグで働いていたときにVOXのペダルのデザインをしたり、アンプやスタジオのアウトボード機器も作っていたので、そのノウハウを生かそうと思ったのです。ORIGIN EFFECTSの共通テーマは、名機を完璧に近いアナログで再現し、そこに新しい機能や技術を組み合わせること。部品の小型化が進んだことで、より複雑な回路設計が可能になり、高い再現性が得られると同時に、コンパクト・サイズの製品を提供することが実現しました。
――Cali76-CBの開発の経緯はどのようなものだったのでしょう?
前身モデルのCali76とCali76-TXは、スタジオ用コンプレッサーUREI 1176からヒントを得たもので、Cali76はリーランド・スクラーやピノ・パラディーノといった著名なベーシストに即座にヒットしました。Cali76-TXはベーシストをターゲットにした製品で、この数年後にコンパクト・シリーズとして登場したのがCali76-CBです。ようやくベース向けの最適な機能を小型ペダルで実現することができました。
――開発するうえで苦労した点はありますか?
大型のコンプレッサーがヒットしていた当社にとって、小型化したコンプレッサーは懐疑的に見られてしまう懸念がありました。そこでいくつかの点において積極的な品質向上に取り組むことにしました。Cali76の品質がすでに非常に高かったため簡単ではありませんでしたが、Cali76-CBはよりグレードの高い部品を使用し、高電流回路を採用することで低ノイズ化を実現しました。加えてUREI 1176との近似性もより向上しており、私たちがテストしたいくつかのヴィンテージの1176の性能と、Cali76-CBパフォーマンスは密接に一致することを確認しています。
――DRY信号をコンプレッション・トーンとブレンドできることは本機の魅力ですね。
DRY信号を混ぜることができる“パラレル・コンプレッション”は、“基本となる音色”を強化するための強力なツールです。よく“コンプレッサーは静かな音を大きくし、大きな音を小さくする”と言われますが、パラレル・コンプレッションでは静かな音はやはり大きくなりますが、大きな音は大きいままです。その結果、サステインやピックアップの感度などが向上し、演奏のダイナミクスを素直に再現することができるのです。
――Attack/Releaseのツマミがひとつになっていることも特徴です。この設計で目指したことを教えてください。
AttackとReleaseのコントロールは非常にわかりにくく、多くの誤解が生まれがちです。そこで、ベーシストにとって最も有用なAttackとReleaseの組み合わせをシンプルで直感的な方法で設定できることを目指し、さらにはAttackとReleaseが“誤った設定”となる可能性も低減しています。少し詳しく説明してみましょう。
Attackコントロールは、音を拾ってからコンプレッサーが作動するまでの時間的な遅れを決定するもので、Attackタイムを速く設定するとコンプレッサーは即座に作動し、音全体を圧縮します。一方で遅くすると、ピッキングの瞬間のトランジェントは圧縮されずにフル・ゲインでコンプレッサーを通過し、コンプレッサーが作動すると音の持続部分のみが圧縮されます。これはスラップ・ベースで効果的で、便利な設定の一例です。
Releaseコントロールは、コンプレッサーが音と音の間で回復するまでの時間を調整します。速いReleaseタイムでスタッカートの連続音を演奏することを想像してください。この場合はAttackタイムを遅くすると、コンプレッサーが音と音の間を完全に回復するための時間があるため、各音は素晴らしいトランジェントを持つようになります。しかしReleaseタイムが遅いと、コンプレッサーは音間で回復することができないため、スタッカートの一連の音はグループ全体として圧縮され、あまり実用的ではありません。
このようにAttackとReleaseは組み合わせによっては問題が発生しますが、本機のAttack/Releaseのツマミは両パラメーターを逆相関で同時に変化させることで、多彩なカラーを持ったクリアなコンプレッションを提供することを可能にしています。
――HPF(ハイパス・フィルター)コントロールを搭載した狙いについても教えてください。
Cali76-CBでは、HPFコントロールは低い周波数での圧縮率をスムーズに減少させる働きをします。これは、ベースの低音弦を調理しすぎないようにするのに有効です。低音弦は通常多くのエネルギーを含んでいるため、ピックアップで発生する電圧も大きくなり、特にドロップ・チューニングや5弦ベースにはコンプレッサーが強く反応します。そして多くのベーシストは、これを“パワーの損失”として認識します。これはHPFコントロールを微調整し、コンプレッションのフォーカスを中高域に移すことで簡単に対処できます。
一般的な用途としては、HPFコントロールを使って意図的にロー・エンドを太らせることが考えられます。200Hz~300Hz以下のコンプレッションをカットすることで、低音域を大きくブーストすることができるのです。ツマミを時計回りに回すと、低域が厚くなるのがわかるでしょう。従来のEQに頼らずとも、低域の重みをさらに増すことができる優れた機能です。
――Cali76-CBをどのようなベーシストに薦めたいですか?
すでに愛用している楽器をさらに向上させたいと考えている人に特にお薦めしたい製品です。多くのユーザーがCali76を "常時オンにしている"と言ってくれますが、これにはそれなりの理由があります。Cali76-CBは魅力的なフィーリングを持ち、直感的でコンパクトなパッケージのなかに素晴らしい機能を備えており、楽器の自然な特性を実に有機的かつ音楽的に高めることができるのです。
――最後に、日本のベーシストに向けてメッセージをお願いします。
この場をお借りして、日本のお客様たちに心からお礼を申し上げたいと思います。ちょうど10年前、初めて日本にペダルを発送したときのことを思い出します。当時のお客様からいただいたポジティブなコメントも覚えています。このとき私は、会社の価値観と日本のユーザーの皆さんの価値観や嗜好とのシナジーを実感することができました。それは今でも続いていると信じています。ORIGIN EFFECTSは、音色の追求を通じて楽しみや満足感を得る人々の存在を常に信じ、できる限りそのお手伝いをするよう努力しています。製品や機能に関するご意見は私たちチームにとって非常に重要ですから、ぜひ私たちのソーシャル・メディアもフォローしてもらえると嬉しいです。
価格:¥53,900 (税込)
ウエムラユウキ
●1993年10月23日生まれ、鹿児島県出身。高校生のときにベースを手にする。ポルカドットスティングレイは2015年1月に本格的な活動を開始、同年8月にウエムラが加入する。2017年に『全知全能』でメジャー・デビュー。突き刺すようなギター・ロック・サウンドを武器に、バンド・シーンで高い人気を獲得する。2019年7月に日本武道館公演を果たす。最新アルバムは昨年9月にリリースした4thフル・アルバム『踊る様に』。