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- 2024/11/16
Positive Grid / Spark MINI
Positive Gridより2020年に登場したギター/ベース兼用コンボ・アンプ、Spark。豊富なアンプ・モデルやエフェクターが多彩な音作りを可能にし、さらにはバッキング・トラックの自動生成機能やコード解析機能なども備える次世代型アンプだ。そんなSparkの機能はそのままに、コンパクトなボディとなった2022年発売の新モデルがSpark MINI。ギタリストの間ではすでに話題を呼んでいる本アンプについて、“ベース用アンプとしての実力は?”と気になっている読者のため、ここではハンブレッダーズのベーシストでらしに登場してもらい、そのサウンドと操作性を体感してもらう。
アンプ/エフェクト・プロセッシング・ソフト “BIAS”シリーズで知られるPositive Gridから登場したSparkは、専用アプリ(iOS/Android)との連携により世界中のプレイヤーが作成したプリセット・ライブラリにアクセスできるなど、ほぼ無限大の音作りを可能にし、人気を集めた。Spark MINIでは機能はそのままに、2インチ・スピーカーを2基搭載する10W卓上アンプとしてコンパクト化。パッシヴ・ラジエーターを備えることで小型ながらもパワフルな低音を実現している。
コントロールがよりシンプルになったことで、音作りは主にアプリで行なう仕様となったSpark MINI。アプリではGATE、COMP/WAH、DRIVE、AMP、MOD/EQ、DELAY、REVERBの順番でチェーンが組まれており、4種類のベース用アンプ・モデルをはじめ、それぞれのカテゴリーで多種多様なエフェクター・モデルを使用して音作りができる。そのほか演奏スタイルに合わせてバッキング・トラックを自動生成するSmart Jam機能、コードを自動解析/表示するAuto Chords機能も搭載。USBオーディオ・インターフェイスとしても使用可能だ。
でらしには、ひと通りの機能に触れてもらったあと、3パターンのプリセットを作ってもらった。
――Spark MINIの第一印象は?
普段家でベースを弾くときはPC経由でヘッドフォンから聴いているので小型アンプを鳴らしたのは久しぶりでしたが、“このサイズで低域がここまでクリアに出るんだ!”とまずは驚きました。各ベース・アンプやエフェクターのモデリングの再現性も高くて、“そうそう、こういう音だよな”となるものばかりで感心しました。
――基本的にアプリで操作するSpark MINIですが、Sparkアプリの使い勝手はどうでしたか?
直感的に操作できて、素晴らしいです。少し触っただけで短時間で使い方を把握できたので、すごく使い勝手がいいと思います。アプリ自体はSpark MINIを持っていなくてもダウンロードできるので、エフェクターの種類や使い心地を購入前にチェックしてみてもいいかもしれませんね。
――今日はSpark MINI で3種類のプリセットを作ってもらったので、それぞれの音作りのポイントについて聞いていきます。まずはライヴでのメインとなるようなベーシックな音色を作ってもらいました。アンプにはSUNNのフル・チューブ・アンプの名器をモデリングしたSUNNY3000をチョイスしていますが、その理由は?
もともとアンプが真空管で歪む感じが好みで、SUNNやマーシャルのアンプが好きなんです。SUNNY3000は実機の再現性がすごく高くて気に入りました。設定したツマミの位置も実機を使うときのセッティングに近いと思います。コンプレッサーも入れていて、EBS製MultiCompのモデリングを選んだんですけど、これは高校生のときに初めて買ったエフェクターなんです。当時かなり使い込んだ機材ですが、操作性やツマミの効き具合がうまく再現されていると思いました。それからノイズ・ゲートも優秀だったので入れています。シールド・ノイズを消してくれるので、練習がストレスフリーになっていいですよね。
――ふたつ目の音色としてはベース・リフなどで使える、歪んだ音色を作ってもらいました。
アンプはさっきと同じものですけど、少し攻めた音色になってます。ギャリエン・クルーガーのモデリングも良かったんですけど、最初に作ったベーシックな音から離れすぎないようにと思って、SUNNY3000にOver Drive(オーバードライブ)とRed Comp(コンプレッサー)というふたつのペダルを足す形に落ち着きました。ギター用の歪みエフェクターには低域が痩せてしまうものも多いですけど、このOver Driveは下の帯域もちゃんと出るのがいいですね。あとはアンプのほうのベースのツマミも上げていて、“派手だけどバンドのなかでちゃんと存在感がある感じ”の音が作れたと思います。MaestroのBass BrassmasterをモデリングしたBassmasterもかなり攻めた音で好きだったので、ベース・ソロなどではこっちを使いたいなと思います。
――ちなみに普段から歪みとコンプレッサーはセットで使うことが多いですか?
パコパコ感がでたらいいなというのと、暴れすぎずにちゃんとまとまって聴こえるようにという意味で、歪ませるときにコンプをかけることは多いです。Sparkアプリにはコンプが5種類入っていてどれも良かったんですけど、個人的にはベースで使うならOver DriveとRed Compが好みでした。
――3つ目の音色は“エフェクティブな音”という注文で作ってもらいました。これはスラップ用ですか?
はい。派手に聴かせるスラップ用のハイファイな音を作ってみようと、エデンのアンプ・ヘッドをイメージしたW600というアンプを選びました。またSparkアプリはモジュレーション系のエフェクターが充実していることもあって、フェイザーを加えています。モジュレーション系や空間系のエフェクターってあまり触ったことがなかったんですけど、Spark MINIはそういう飛び道具系のエフェクターについてベーシストが勉強するにはもってこいのアンプかもしれないですね。フランジャーやコーラスも選択肢に入ってきましたし、バンドのデモ制作でベース・リフを考えるときなんかにも、こうやって音に選択肢があると普段は出ないアイディアが湧いてきそうです。
――ベース用のイコライザーも触っていましたね。
ベース用のイコライザーが入っているのはすごくありがたいです。こういう機材でも、ギター用はあるのにベース用がないというケースは少なくないので。やっぱりベース用イコライザーはベースにとってのオイシイ帯域を押さえてくれるので、実用的だと感じました。
――ギター用のプリセットやエフェクターを積極的に試していたのも印象的でした。
ギター用のプリセットを使ってみるのもかなりアリだと思いました。僕、普段から家でデモを録るときにDAW上でギター用のエフェクトを選択することも多いんですよ。ライヴ用のエフェクト・ボードにもFULLTONEのOCD(オーバードライブ)を入れていますし、必ずしも“ベース用”にとらわれる必要はないんじゃないかなと思ってます。
――Smart Jamやコードの自動解析といったAIを使った機能も試してもらいました。Smart Jam機能を使ってみた感想は?
ドラム・パターンの種類も豊富ですし、リズム・マシンとして相当優秀です。自分が弾いたフレーズに合わせてAIが勝手にドラムとベースのバッキング・トラックを作ってくれるのには驚きました(笑)。これはギタリストにはたまらないでしょう。でもベーシストにとっても、アドリブでソロを弾く練習とかで使えると思いました。これだけ膨大なアンプやエフェクターが入っているわけだから、派手なエフェクトをかけてリード用の音色を作ることが簡単にできますからね。
――でらしさんだったら、この機能をどのように活用するでしょう?
例えばベース・ラインのアイディアが浮かばないとき、それを考えるためにわざわざトラックを打ち込みで作るのって面倒じゃないですか? Spark MINIだったら、自分が弾いたフレーズからテンポを勝手に読み取ってくれてパッとリズム・トラックを作れるので、その作業がかなり手軽になるんじゃないかと。あとはベース・ソロを考えるときにも重宝しそうです。YouTubeにもソロ練習用のバッキング・トラックは落ちてますけど、そういうのってあまりテンポとかコードの融通が利きませんから。テンポもコード進行も自動で作ってくれるというのは、カユいとこに手が届く感じで便利だと思います。
――コードの自動解析機能はどうでした?
自分たちの曲でも試してみましたけど、完璧ではないもののかなり再現性が高かったです。ベーシストにとっても楽曲のコピーをするうえで使える機能だと思いました。あとは、各曲に合わせて自分が音作りしたプリセットをほかのユーザーと共有できる機能もおもしろそう。ほかの人がどんな音で自分たちの曲を弾いているのかも気になります(笑)。
――最後に、Spark MINIをどういうベーシストにオススメしますか?
“ハンブレッダーズを聴いて楽器を始めた”と言ってくれる人ってけっこういるんですけど、まずはそういうベースを始めたばかりの人にこそオススメしたいです。ベースと一緒に最初にSpark MINIを買えば、それだけでうまくなる道筋がもう見えますよね。これさえあれば練習には困らないですし、音作りの勉強にもなると思いますよ。もちろん中級者以上のベーシストにとっても、この使い勝手の良さと低音のクオリティは魅力的だと思います。オーディオ・インターフェイス機能が付いているのも実用的で、実際にDAWを使って試しましたけど、Spark MINIで作り込んだ音でそのまま録音できるのは嬉しいです。なんなら僕はインターフェイスを今後これにしたいくらい(笑)。デモにベースやギターを入れる程度ならインターフェイスは自宅にこれ1個で充分ですし、見た目もかわいいので普通にリスニング用のBluetoothスピーカーとしても使えるでしょう。Bluetooth機能で好きな曲に合わせて練習をするのもいいですね。これだけ軽かったらライヴの楽屋にも持っていって練習もできるし、外で使う機会も少なくなさそうだなって思いました。
価格:¥33,000 (税込)
でらし
1994年9月1日生まれ、栃木県出身。アニメ『けいおん!』をきっかけにベースを手にし、スピッツの田村明浩から影響を受ける。大学の先輩が2009年に結成したハンブレッダーズに2016年に加入。頭に残るメロディと少しの毒をはらみつつ心地よく韻を踏んだ歌詞で高い支持を集め、2020年2月にアルバム『ユースレスマシン』でメジャー・デビュー。2022年11月には3rdアルバム『ヤバすぎるスピード』を発表した。最新作は2023年2月にリリースされた、アニメ『「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」のエンディング・テーマ「またね」を含む両A面シングル『またね / THE SONG』。