アコースティックエンジニアリングが手がけた“理想の音楽制作を実現する”環境
- 2024/11/25
Lâg Guitars / THV30DCE & THV30ACE
フランス発のアコースティック・ギター、Lâg Guitars。伝統的なギターらしさとエレガントなデザインを両立し、またコストパフォーマンスの高さから注目を集めている。そのうち今回はHyvibeシリーズからドレッドノート&オーディトリアム・サイズの2モデルを紹介しよう。なんとこちら、アンプやケーブルもなく生音にエフェクトをかけられるのだ。さらにチューナーやルーパーを内蔵、録音なども手軽にできる。その実力を確かめるべく、井草聖二にマイク1本で試奏してもらった。アコギ・ライフの新たな相棒として迎えてみては?
上質な木材がセレクトされた、カッタウェイ付きドレッドノート
HyVibeシステムを搭載するドレッドノート・モデル。カッタウェイ付きのトップ板は、ベアクロウが浮き出た上質なシトカ・スプルースを採用。フィギュアード・ボコーテのサイド&バックもあいまって、ストロークを始めさまざまなスタイルで豊かな響きを生む。なお使用材のバリエーションとして、レッド・シダー・トップのTHV10、イングルマン・スプルース・トップの同20も用意されている。
【Specifications】
●ボディ:トップ:シトカ・スプルース単板 ●ボディ・サイド&バック:フィギュアード・ボコーテ ●ネック:カヤ ●指板:ブラックウッド ●ブリッジ:ブラック・ブランコウッド ●ピックアップ:オリジナル・アンダーサドル・ピエゾ ●コントロール:アップ/ダウン・ボタン、エンター/バック・ボタン、ボリューム、フェーダー ●入出力:インプット、アウトプット、USB-C ●メーカー希望小売価格:217,800円(税抜価格198,000円)
フィンガースタイルもオススメのオーディトリアム・モデル
オーディトリアム・シェイプのTHV30ACE。ドレッドノートに比べればややミッド・レンジ寄りの響きとなる。演奏スタイルは問わないが、特にフィンガースタイルで真価を発揮するだろう。基本的なスペックはTHV30DCEと変わらず、スケールも同じく650mmだ。専用ハードケースが付属されるのも嬉しいポイント。
【Specifications】
●ボディ:トップ:シトカ・スプルース単板 ●ボディ・サイド&バック:フィギュアード・ボコーテ ●ネック:カヤ ●指板:ブラックウッド ●ブリッジ:ブラック・ブランコウッド ●ピックアップ:オリジナル・アンダーサドル・ピエゾ ●コントロール:アップ/ダウン・ボタン、エンター/バック・ボタン、ボリューム、フェーダー ●入出力:インプット、アウトプット、USB-C ●メーカー希望小売価格:217,800円(税抜価格198,000円)
アドリアン・マモウ・マニ氏(Adrien Mamou-Mani)が創立したHiVibe社。彼はパリの大学で音響学および力学の博士号を取得、その後音響と振動の研究を進め、HyVibeシステムを開発した。原理はギターの振動をアンダーサドル・ピエゾ・ピックアップを経て、ボディ・サイドのプロセッサーへ。エフェクト処理などが施された信号は、そこからブリッジ・プレートに配されたふたつのアクチュエーターにより再び振動へと変換され、トップ板から音となって伝わる。これにより、アンプやケーブルがなくても、生音にエフェクトをかけることができる。今回の試奏動画はマイク1本で録音したのでその実力を確かめてほしい。エフェクトは歪みから空間系まで幅広く内蔵し、パラメータの調整もLEDスクリーンで直感的に行なえる。さらにチューナー、メトロノーム、ルーパーも搭載(ループ音は録音できる)。そしてなんと外部音源を入力(Bluetoothもしくはライン)でき、その音はギター本体から鳴る。つまり、これ1本でセッションまでできる画期的な楽器だ。練習や作曲時に新しいアイディアが生まれたり、動画配信などでも役立つだろう。
HyVibeシステムは、専用のアプリ“HyVibe”(iOS/Android)を使うことで、さらに真価を発揮する。まずアプリをスマートフォンなどにダウンロード、ギターとBluetooth接続する。エフェクトやパラメータをより繊細にコントロール&保存することが可能で、ライブ時などに離れた位置からでも瞬時に音色を変えられる。また数十あるバンクから新規エフェクトの追加やセッティング、ルーパーの設定や録音などもでき、曲作りやフレーズのアイデア帳としても重宝するはず。録音したファイルはWAVのため、バンドのメンバーなどに渡す際もスムーズだ。
とてもおもしろいギターですしワクワクしました。それに生楽器としても良くできている。
──試奏を終えて率直にいかがでしたか?
さまざまなエフェクターを内蔵していて、とてもおもしろいギターですしワクワクしました。それに弾いてみたら、生楽器としても良くできているなと感じました。その上で、いろいろな機能が入っているのが素敵ですね。
──HyVibeシステムには驚いたのではないですか?
生音と混ざってエフェクト音が出てくるところが不思議でしたね。だから楽器の生音の特性が音色に影響します。それから内蔵されているエフェクトが、かなりプレイヤー目線で作り込まれている印象を受けました。
──生楽器としての音質はどうでしょう?
生ギターとしてすごく性能が優れていると思います。モダンなルックスどおりの現代的な作りで、音のレスポンスも速かったですね。だから近年の速いパッセージの曲や、ストロークで歯切れの良い曲にも合うと思います。HyVibeシステムがなくても、この価格帯のギターとしてオススメしたくなるモデルです。学生の頃にこういうギターがあれば良かったなと思います。
──演奏性に関しては?
ネックはモダンなシェイプで、ハイ・ポジションでもそこまで太くならずにスムーズに弾くことができます。アルペジオを弾いた時の反応もいいですし、何よりも左手のフィンガリングがすごくしやすいので、ソロ・ギターでも十分に使えますね。
──システムの操作には迷いがなかったですね。
ボディ・サイドに小さな液晶があり、触ってみるとすごく使いやすかったですね。デジタルなのにアナログに近い直感的な感覚で操作できました。
──この画期的なシステムを、井草さんはどのように活用してみたいですか?
家で練習する時にリバーブをかけたら、すごく気持ち良く弾くことができると思います。それから僕はYouTubeで短いフレーズの動画をアップしていますが、そこでも使ってみたいと思いました。というのは、配信の時にいろいろな機材をラインでつないで弾くのは大変だったりします。だからマイクを立てて、ギターの生音にエフェクトをかけた状態で、音色を手もとで切り替えられる点は便利ですね。
──さらにルーパーも内蔵しているので、動画配信でも役に立ちそうですね。
普通ルーパーは足もとで踏んで使いますが、これはクリックに同期させて弾くので、YouTubeなどの動画配信でも使いやすいですよね。それだけでなく、単純にリズムの練習にも使えると思いました。
──多くの機能が入っていて、生音で使えるエフェクトのバリエーションも豊富。弾き手としてインスピレーションが刺激される部分はありますか?
あると思います。例えばフェイザーとかは、アコギで使うことがほとんどないと思います。でもこのギターで試しにストロークしてみたら、すごく相性が良かった。そういった発見から新しいアイディアが生まれてくるでしょうね。
──では最後に、このギターはどんなプレイヤーにオススメですか?
多機能ですのでいろいろな方が楽しめると思います。これ1本あればアンプやケーブル、エフェクターを買う必要がないので、初心者の方にもオススメですね。それと頻繁にライブをする方も便利だと思います。EQからエフェクトまで本体のみでセッティングできるので、自分の出したい音をすぐに出せる点も強みですね。さらに専用のアプリをスマートフォンなどに入れておけば、離れた位置からも音色をコントロールできるので、ステージの袖でスタッフさんに切り替えてもらうなどのステージングも考えられます。そういった意味でも、新しい可能性が感じられるアコースティック・ギターだと思いました。
価格:¥217,800 (税込)
価格:¥217,800 (税込)
井草聖二
いぐさせいじ●1988年生まれ、兵庫県出身。牧師家庭に生まれ幼少より讃美歌、ゴスペルに親しむ。11歳でドラム、15歳よりギターを始め、20歳でプロとしての活動をスタート。2009年にトミー·エマニュエルの前座を務める。アコースティック/エレクトリックを問わずさまざまなギターを愛用し、ソロ·ギター界を牽引する旗手のひとりとして注目を集めている。