aNueNue, Morris, Tears, Zemaitis
ライブでかき鳴らしたいエレアコ、路上弾き語りに映えるドレッドノート、レコーディング時に使いたいビンテージなど、同じアコースティック・ギターでも、使用用途はさまざまです。中でも、多くのギタリストにとって、最も長くギターを弾くのは家にいる時でしょう。かつ、お酒を片手にリビングのソファでくつろぎながら、さっと手に取れるようなスモール・サイズのギターが一番身近な相棒となるはずです。以前はパーラー・ギターとも呼ばれていましたが、近年は小さいボディや短いスケールを持った本格派も各ブランドから多数登場しています。小型ながらリッチな音色を持つおすすめのリビング・アコギを、日本のジャンプ・ブルースの第一人者であるスウィンギン・バッパーズの吾妻光良が試奏レポート！
ウクレレ・ブランドとしても知られる台湾発祥のアヌエヌエ。現在は中国の広州にある合資工場でギター製作も行なっている。代表のジョンソン・リアオは、ビンテージ・ギターにも精通し、近年では日本を代表するルシアー杉田健司に監修を依頼して誕生した、“LS-Acoustic Future Series”も好評だ。これは610mmスケールを採用したスモール・サイズのギターだが、オール単板が使われた上級モデル。トップはスイス・スプルース、サイド＆バックにはインディアン・ローズウッドが使われ、グロス・フィニッシュで仕上げられている。オフセット・サウンドホールも特徴で、ロゼッタには杢の出たメイプル材が埋め込まれ、高級感のある仕上がりだ。ナット幅は44mmあるため、ソロ・ギターでも使いやすい。
やや深胴のサイド板には、イースト・インディアン・ローズウッドを採用。ディープ・ジョイント仕様なのでハイポジションでの演奏性も抜群だ。
オフセット仕様のサウンドホールは、スポルテッド・メイプルを使ったお洒落なデザイン。
普通のギターよりもっと自分の音を近くに感じられる気がするね。
いや、このサイズで、これだけ豊かで甘い低音が出るのには驚いたね。ネック・グリップやテンション感もほど良いし、とても弾きやすいギターだと思います。サウンドホールが自分の近くにあるせいか、普通のギターよりもっと自分の音を近くに感じられる気がするね。コードが綺麗に鳴ってくれるので、コードの響きが美しい曲を弾きたくなるなあ。インレイも月が欠けていくデザインでオシャレだし。とにかく気持ち良くギターを弾けるから、自分がうまくなったんじゃないか？って錯覚しちゃうよ（笑）。
日本を代表するアコースティック・ギター・ブランド、モーリス。古くは“モーリス持てばスーパースターも夢じゃない！”というCMを覚えているファンも多いはず。そんなモーリスが手がけるスモール・ギターがこのSA-021E。ハイポジションの演奏性を考慮してヴェネチアン・カッタウェイが施されたボディ・トップには、スプルース単板が使われている。サイド＆バックはサペリで、暖かみのあるサウンドを生む。スケールは620 mmと、短か過ぎず長過ぎずといった絶妙な設定。演奏性も良好だ。またナット幅は44mmに設定され、モーリスSシリーズのコンセプトを継承していることがうかがえる。ピックアップ・システムには独自のMP-4をマウント。視認性の高いチューナーも内蔵している。
サイド板に組み込まれたプリアンプ。ボリューム、フェイズ・スイッチ、3EQに加え、視認性の高いチューナー機能も備える。
カッタウェイ付きなので、ハイポジションでの演奏もスムーズ。
Cコードをカジュアルに鳴らすのが似合うギターだと思いますね。
シンプルにCコードをカジュアルに鳴らすのが似合うギターだと思いますね。そこに喜びを感じられるのは良いギターってことなんでしょうね。弾きやすいし、楽しく弾けるからついつい力強く弾いてしまったけど、音が潰れずに響いてくれます。それに音が前に飛ぶ感じもいいね。アンプから出した時はハイを少しだけ上げたけど、ほぼフラットなセッティングでも問題なく使える音が鳴ってくれた。あとこのチューナーも、画面が見やすくて使いやすくて好きですね。
ハイエンドなアコースティック・ギターから、プロも愛用するピックアップやアクセサリーまで、幅広い製品を扱うバードランド。長年アコースティック・ギター関連商品を扱ってきた経験を生かした同社がプロデュースするブランドがティアーズだ。数々の高級フラットトップを手がける国内工場で、熟練の職人により１本１本丁寧に製作されている。これは12フレット・ジョイントのニューヨーカー・スタイルで、エリック・クラプトンなど世界のトップ・ギタリストも愛用するカルロス・ピックアップ“VIP-DM”を標準搭載している。0サイズのボディ・トップは、イングルマン・スプルース単板、サイド＆バックはマダガスカル・ローズウッド単板と高級材が使われるなど、プロも納得の仕上がり。
エリック・クラプトンやパット・メセニーなど世界的ギタリストに愛用されるドイツ製のカルロスPUを搭載。
ニューヨーカー・スタイルということでエボニー材のピラミッド・ブリッジを採用。サドルは象牙、ブリッジピンには水牛骨を使用している。
夜に部屋でひとりつま弾くのにぴったりの贅沢な音色。
音がとても柔らかくて美しさがありますね。甘い音色。夜に部屋でひとりつま弾くのにぴったりの贅沢な音色だと思う。弾くだけで穏やかな気持ちになれそう。どこかクラシック・ギターを弾いているような上品さも感じるね。ほかの弦と共鳴しているのか、スプリング・リバーブ的な効果があって、弾いてて心地いいですよ。ピックアップは、ピエゾを中心に音作りをして、そこにマイクで輪郭を足していく感覚で使うのが合っている気がします。
イギリスの製作家トニー・ゼマイティスと言えばエレキ・ギターが有名だが、アコースティック・ギターも数多く手がけていた。そのデザインを引き継ぎ製作される現代のゼマイティス製アコースティック・ギターは、ハート型のサウンドホールなどキュートなルックス的な魅力もあり、女性からの人気も高い。ふくよかなボディ・サイズが多いゼマイティスのフラットトップの中でも、15インチと比較的小ぶりなシェイプで作られているのがこのモデル。トップはイングルマン・スプルース単板、サイド＆バックはインディアン・ローズウッド単板というオーソドックスな組み合わせ。ピックアップには、フィッシュマンの“Matrix Infinity VT”が搭載され、ライブにも重宝する。ヘッドにはダイアモンド型のアルミ・プレートが燦然と輝く。
ゼマイティスと言えばやはり彫金されたメタル・パーツ。このアコギにはヘッドのロゴ・プレートとトラスロッド・カバーに採用されている。
フィッシュマンのマトリックス・インフィニティVTが搭載されているので、エレアコとしても使用可能。
やっぱりストーンズのようなシンプルなロックが似合うと思う。
ゼマイティスは初めて弾きましたけど、音色も含めて高級感をすごく感じるギターですね。音は明るい傾向かな。やっぱりストーンズのようなシンプルなロックが似合うと思う。あとオープン・チューニングでスラックキー・ギターみたいなのもいいかもしれない。弾けないんだけど（笑）。テンション感はほかのギターよりも、しっかりあると思う。ピックアップを通しても硬派な音に聴こえるから、意外と古いジャズ・ギターのインストとかも似合うかもしれないね。
本記事は、『アコースティック・ギター・マガジンVol.94』（10/27発売）の特集記事、“毎日リビングで弾きたくなる本格派スモール・ギター大集合！”を転載したものです。ここで取り上げたギターを含む全18種のスモール・ギターを、スウィンギン・バッパーズの吾妻光良が試奏しています。興味のある方はぜひ本誌もチェックしてみてください。
■詳細はこちら
→https://www.rittor-music.co.jp/magazine/detail/3122112001/
価格：￥255,000 （税込）
価格：￥52,800 （税込）
価格：￥429,000 （税込）
価格：￥544,500 （税込）
吾妻光良
1956年東京・新宿区生まれ。日本を代表するジャンプ・ブルースの第一人者として知られる。兄はハードロック・ギタリストのジョージ吾妻。中学の時にギターを始め、79年、大学の卒業記念に“吾妻光良＆ザ・スウィンギン・バッパーズ”を結成。以来、サラリーマンとの二足の草鞋を履きながら、40年以上にわたりバンドを運営。去年、ついに定年を迎え、65歳にしてプロ化を宣言。全国各地で精力的にライブを行なっている。
