アコースティックエンジニアリングが手がけた“理想の音楽制作を実現する”環境
- 2024/11/25
Universal Audio / UAFX Dream '65 Reverb Amplifier
ユニバーサル・オーディオから発売中のペダル型アンプ・シミュレーター、UAFX DREAM '65 REVERB AMPLIFIER。試奏者に山岸竜之介を迎え、前編ではモニター・スピーカーから出力した本機のライン・サウンドのインプレッションをお届けした。後編となる今回は、JC-120のリターン端子に接続した際の印象を語ってもらおう! ライブ現場での使用を想定し、山岸には普段から愛用しているペダルも用意してもらった。
ブラック・フェイス期の忠実な再現!
ナチュラル度満点のアンプ・シミュレーター
待望のアンプ・シミュレーターが登場だ。筐体ロゴのデザインから連想できるとおり、、本機は60年代半ばの“ブラック・フェイス”期のコンボ・アンプを忠実にエミュレートした機種。ユニバーサル・オーディオの高度なモデリング技術で、ボリューム・アップさせると自然に歪んでいくあの挙動も極めてナチュラルに再現している。
ボリュームやブースト、2バンドEQなどシンプルなコントロール類は“直感派”にも嬉しいレイアウトだが、MODとスピーカーのタイプ切り替えスイッチが特筆すべきポイントだ。スピーカー・タイプはそれぞれ、GB25=ビンテージのCelestion Greenback、OXFORD=Oxford 12K5-6、EV12=Electro-Voice EVM12Lという設定で、本器をアプリ(UAFX Control)に登録すれば、さらに3つのタイプが無料で追加可能。オリジナル・アンプのカスタマイズをモデリングしたというMODの種類はLEAD/STOCK/D-TEXの3つで、BOOSTノブを上げることで音色が変化する。例えばLEADならツマミ10時〜12時でミドルが加わり、12時以降はパワー・アンプの出力補正といった具合で、各モードにセッティングがある。また、甘いトレモロとスプリング・リバーブも本機の醍醐味であり、それらと各スイッチとの組み合わせを種々試せば、サウンドメイクの幅はかなり広いだろう。すでに巷では熱い視線を注がれている本機。2020年代の名機となる日も近いか?
シンプルな見た目とは裏腹に
サウンドメイクの奥は深いのでは?
──今回はJC-120のリターン端子に接続し、アンプから音を出してもらいました。ラインで出力した時と比べ、音の違いはどうでしたか?
めっちゃ大きな変化があったかと言われると……ないんですよね。もちろん良い意味でですし、これはホンマに凄いことだと思うんですよ。ギャップがありすぎると、単純に音が作りにくいですから。でも、耳で聴いた時にテンションが上がるのは、ギター・アンプのスピーカーから出た音だと思います。“うわっ、大きい音が出た!感動!”って、ギター少年の心をくすぐってくれたので(笑)。
──やっぱり気持ち良さはありますよね。
JCは凄く使いやすいモデルですが、その分エフェクターの乗り方が試されるアンプだと思うんです。でもDREAMは音がそのまま乗っかってくれる感じがしました。
──DREAMの前段には、山岸さんがいつも使っているというNeural DSPのQuad Cortex(ギター・プロセッサー)をつないでもらいました。
最近はライブハウスでもホールでも、足下はこの1台だけなので。DREAMとはモノラルでつないでみたのですが、まったく違和感がないですね。Quad Cortexの歪みのモデリングとの相性も良かったし、DREAMのもとになったアンプに歪みが乗った感じとも近いというか。エフェクトの乗り方がキレイなんでしょうね。こうなるともう、家で作った音を会場に持って行って、JCのリターンに挿す、完成! みたいな(笑)。それにボーカルやベース、キーボードなど、ほかの楽器のサウンドとも音楽的に混ざりやすいんじゃないかな。
──DREAMのEQはTREBLEとBASSの2つですが、使い勝手はどうでしたか?
やっぱりジャキジャキ弾きたいのか、リード・トーンを太く出したいのかによって使い方が変わってくると思いますね。今はTREBLEを0にしていますが、これはジャズマスターだからであって。ストラトなら2つのEQをもう少し上げてもいいかな。どんなギターをつなぐかによって表情が変わる気がします。あとはミドル・ツマミがない分、前段に置くエフェクターの音作りも大切になってきますね。それとギター側のボリューム操作だけで、かなり音をイジれるんですよ。だから、DREAMだけで色んな音作りをカバーできそうです。
──ピッキングした時のニュアンス、音の立ち上がりの速さはどう感じましたか?
めっちゃ良いですね。ギター側のボリュームを絞ればまろやかな音も出せるし、ジャッと弾いた時と、ほんわか弾いた時の区別もしっかりとあります。そのほうが断然音作りがしやすいんですよね。
──DREAMはトレモロも魅力の1つです。サウンドはどうでした?
やっぱりアンプで鳴らすと、この揺れ具合の絶妙さに心がギュッと掴まれました。“本当にキレイな音だなぁ……”と。スプリング・リバーブも同時にかければ、例えば最近のネオソウル・フレーズとか、ちょっとお洒落なギターを弾く時にも最適ですよね。トレモロやリバーブがかかっているからこそ、連れてきてくれるフレーズがたくさんあるというか。
──最後に、DREAMを導入するメリットを教えてもらえますか?
実機のアンプって、電車移動では持っていけないじゃないですか? くり返しにはなりますが、これが1台あると、ペダルボードとギターだけを持って行けば、家で作った理想のサウンドをどこでも鳴らせるんです。どの現場にもJCやマーシャルなどがあると思うので、センド/リターンのリターン端子にDREAMを挿してしまえば、色々と時間をかけないで済みますよね。この点で“2022年最高!”って思います。あと、音を作り込む時には研究が必要だなとも感じました。すぐに良い音を出せることは間違いないペダルなんですけど、シンプルな見た目とは裏腹に、実はサウンドメイクの奥が深いモデルなんじゃないかと思うんですよ。キャビネット・シミュレーターを変えていく楽しさとか、DREAMをもっと弾きまくって味わいたいですね。
価格:オープン
山岸竜之介
やまぎし・りゅうのすけ◎2013年にムッシュかまやつ(g)、KenKen(b)と共にLIFE IS GROOVEを結成。自身の楽曲の作詞・作曲は山岸自身が行なう。ジャズ・ピアニストの小曽根真と共演し、レコーディングに参加。また、ギタリスト/アレンジャー/プロデューサーとして、様々なアーティストのレコーディング、ライブに参加するなど幅広く活躍中。