AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
HEADWAY
1977年の創業以来、良質な国産フラットトップ・ギターを作るブランドとして確固たる地位を築いているヘッドウェイ 。近年は若いビルダーも育っており、以前にも増してクオリティの高いギターを製作している。アコースティック・ギター・マガジンの新製紹介記事/ニュー・ギア・サウンド・チェックでお馴染みのギタリスト=有田純弘に注目機種4本を試奏してもらった。これまでに1,000本近くの新製品を弾いてきたアコギ・ソムリエの目に、現在のヘッドウェイのクオリティはどのように映ったのか?
マスタービルダー百瀬恭夫のもとで研鑽を積んだ精鋭たちが製作するAska Team Buildシリーズの、記念すべき3,000本目に当たるHOシェイプ&フローレンタイン・カッタウェイ・モデル。ボディのサイド&バックには弥生時代に地中に埋没した神代桜、ネックには朱里桜が採用されており、指板、ヘッドやピックガードなどにも、貝をふんだんに用いて作成された豪華な桜モチーフのデザインが施されている。和材を積極的に扱ってきたヘッドウェイならではの唯一無二の1本と言えるだろう。トップ材には目の詰まったアディロンダック・スプルース、3ピース・バックの中央やブリッジにはハカランダと、高級材が惜しげもなく使用されている。ネック・グリップは、1フレットで20.5mm/9フレットで22.5mm厚という、ヘッドウェイ史上最も薄いエクストラ・スリムUネックを採用。演奏性を高めながらカーボン・ロッドで剛性を確保する工夫がなされている。また、Xブレイシングの交点をフォワード・シフトより4.6mmブリッジ側に下げた34セミフォワード・ブレイシングの採用など、たゆまぬ進化の結実も見られ、ヘッドウェイの歴史と現在を具現化した1本となっている。
雑味のない音色で高級なクラシック・ギターを弾いているような感触すらある。
ネックに桜材を用いたギターを弾いたことはあるんですが、ボディまで桜というのは初めてですね。桜材には、芯がタイトだけど硬い音ではなく、スッキリして反応が速いという好印象を持っているんですが、このギターもその印象です。鉄弦なんですけど、雑味のない音色で高級なクラシック・ギターを弾いているような感触すらある。澄み渡った冬の空気感というか、日本的な響きも感じられて、思わず石川鷹彦さんの演奏を思い起こすようなサウンドですね。倍音がうまくまとめられているというか、コントロールに苦労することがなくて、演奏がうまくなったような気もしてきます(笑)。ハーモニックスを弾いてもギラッとなりすぎず、隠し味的な響き方をしてくれる。ギターの演奏ってこんなにシンプルで良かったんだって、気づかされました。これは高級なギターだからというわけではなくて、桜材の特性を踏まえた設計と仕上げがなされているからと感じます。
創業から2年後の1979年、ヘッドウェイならではのギターを目指して開発されたHD-115。シンプルなヘッド形状やロゼッタ、小ぶりなダイアモンド・インレイなど、素朴なルックスで人気を博すモデルだ。本器はAska Team Buildが製作を手がけ、ARSブレイシングを用いた1本で、力強く骨太な鳴りという伝統を継承しつつ、さらなる進化をもたらしたものだ。特徴のひとつは1フレットで21.0mm/9フレットで23.5mm厚のエクストラ・スリムVネックの採用。トラディショナルな音色とダイナミクスは保持しつつ、速いパッセージや複雑なテンション・コードなどモダンなプレイへの対応も見据えた設計となっている。2022年製作モデルには特別に、ラベルに信州手漉和紙が用いられている。
真っ先に気づいたのはネックの快適さ。剛性が高く安心感があります。
いわゆるトラディショナルなドレッドノートの弾き心地で、国産ギターに稀に感じる窮屈さがない、ユニバーサルな響きを持ったモデルですね。基音がタイトに出ていて単音を弾いても音の太さがありますし、ピッキングのちょっとしたニュアンスで厚い音も涼しげな音も出せる。出したいと思っているサウンドや音量をしっかり出してくれる印象です。試奏して真っ先に気づいたのはネックの快適さで、薄いと言えば薄いんですけど剛性が高く安心感があります。ネック全体が響いているというのはすぐにわかるんじゃないかな。新品だけど腕の良いリペアマンに調整してもらったようなしっくり来る感じがありますし、楽器に合わせて弾くという感覚ではなく、自分が弾きたいプレイに応えてくれる感覚がありますね。
特徴的なヘッド形状や、フレットによってサイズが異なる指板インレイ、オリジナル形状のピックガードやブリッジ、さらにはヘリンボーンに赤のラインをミックスしたロゼッタなど、モダン志向の仕様を盛り込んだ “500番”シリーズのリニューアル版。百瀬恭夫が45年間のキャリアの末に見出した34セミ・フォワード・シフテッドXブレイシングを実装したローズウッド・サイド&バック・モデルで、“ネックのあと仕込み”や“アリ溝ジョイント”など、上位シリーズと同様の組み込みがなされている。今のところエクストラ・スリム・グリップはATBシリーズのみの仕様ということで、スタンダード・シリーズにあたる本器には、太すぎず細すぎずのスリムUグリップが採用されている。その他、口径の大きなコンバージョン・エンドピン、ジョイント・ブロック部の電池ホルダーなど、あとからピックアップ&プリアンプを搭載する際に加工がいらない設計など、実践的な配慮が行き届いている。
HD-115に比べると低域がすっきり。ポップスのバンドでも使いやすいはず。
高音域が華やかに抜けて来る感じや、重くなりすぎないソリッドな中低域はモダンさを感じますね。スピーディなフレーズや繊細な表現にグラデーションをつけたい時にしっかり応えてくれる印象です。HD-115に比べると低域がすっきりした感じですけど、ホールなどでのコンサートではロー・カットすることが多いですし、ポップスのバンドでも使いやすいギターだと思います。その辺もモダンさを感じるかな。ただ、高域でメロディを弾いたりする場合はしっかりドレッドノートの感触があって、余計な力を入れなくてもちゃんと響いてくれる。中域が裏からしっかり支えてくれている感じで、これが実現できているギターってなかなかないですよ。
アジア工場で組み上げたギターをディバイザーワークショップの職人がブラッシュアップするJapan Tune-upシリーズ。ナットやサドル弦高調整などは上位モデルと同等の追い込みがなされており、初心者でも手に取りやすく、かつ挫折しにくいギターとなっている。マートルの単板トップ、マートルの合板サイド&バックを使った本器には、ボディの右腕が当たる部分に、滑らかにカーブしたコンター加工が施されているが、これは個人製作家などの上位機種で見られるような凝った細工。このあたりにも本シリーズの本気度が見て取れるだろう。フィッシュマンのSonitoneシステム内蔵で、ライブや宅録などにも対応してくれる1本だ。
マホガニーやメイプル両方の良さを兼ね備えたウッディさが際立つ音色。
ボディ材のマートルはマホガニーやメイプルほど振り切った個性はないですけど、その両方の良さを兼ね備えたようなウッディさが際立つ音色で、太さはあっても重くなりすぎない印象ですね。良い意味でダークというか落ち着いたトーンです。ストロークの迫力も良いんですが、単音の伸びも良いので、僕だったらしっとりしたメロディを弾きたくなるかな。強くピッキングしても音が潰れないのも良い点です。それとシングル・カッタウェイだけど胴は深めで鳴りも十分。ベヴェルド加工されたコンターで抱えやすくなっているというのも考えられた設計です。
本記事は、『アコースティック・ギター・マガジンVol.93』(7/27発売)の特集記事、“受け継がれるヘッドウェイ の魂 1977-2022 45th Anniversary”を転載したものです。ここで取り上げてた注目製品の試奏レポートに加え、ビルダーのインタビューやヘッドウェイの技術力に迫った記事、現行製品カタログなど盛りだくさんの内容です。興味のある方はぜひ本誌もチェックしてみてください。
■詳細はこちら
→https://www.rittor-music.co.jp/magazine/detail/3122112001/
価格:¥2,000,000 (税別)
価格:¥280,000 (税別)
価格:¥210,000 (税別)
価格:¥150,000 (税別)
有田純弘
ありた・よしひろ。大阪府出身。ギター、バンジョー、マンドリン、ドブロなど多くのルーツ系弦楽器を操る。ブルーグラスをルーツに、ジャズ、ポップスを始め、多岐に渡るフィールドで活動。1985年ウィンフィールド全米バンジョー・チャンピオンとなり、80年代、米国や欧州のブルーグラス・シーンで演奏。デヴィッド・グリスマン、ベラ・フレックなどのヘヴィ級アコースティック・ミュージシャンから、森山良子、小野リサ、槙原敬之などの国内アーティストとの共演も多数。洗足学園音楽大学ワールドミュージックコース客員教授として後進の指導にも努めている。鬼怒無月、竹中俊二とのアコギ・ユニット“FRETLAND”で活動中。