アコースティックエンジニアリングが手がけた“理想の音楽制作を実現する”環境
- 2024/11/25
Solid State Logic / SSL 2/SSL 2+
ライブ会場のPAブースやレコーディング・スタジオの大型コンソールで知られるSolid State Logic。近年リリースしたUSBオーディオ・インターフェース SSL 2とSSL 2+は、62dBのゲイン・レンジを持つ高品質マイクプリや、独自の“4Kスイッチ”などを搭載しながらも低価格での提供を実現している。ここではSSL 2+を普段から愛用しているというプロデューサーの福富幸宏に登場していただき、このオーディオ・インターフェースの魅力に迫ってみよう。
SSL 2は2イン/2アウト、SSL 2+は2イン/4アウトのUSBオーディオI/O。Mac/Windows対応で、USB接続によるバス・パワー駆動に対応する。AKM製AD/DAコンバーターを搭載し、最高24ビット/192kHzの録音/再生が可能。マイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)を2系統装備し、それぞれ62dBのゲイン・レンジを持つマイクプリを内蔵する。さらに48Vファンタム電源ボタン、マイク/ライン・インの切り替えスイッチ、ギター接続時に使用するHI-Zスイッチ、4Kスイッチを装備。この4Kスイッチはアナログ・エンハンス・エフェクトとなっており、ボタン1つで伝統のSSL製コンソールSL4000シリーズのサウンド・キャラクターを付加することができる。
出力に関しては、SSL 2はライン・アウトL/R(TRSフォーン)とヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)を1系統ずつ装備する。一方、SSL 2+は全部で4chのアウトプットを備え、ch1〜2にはバランス用のライン・アウトL/R(TRSフォーン)と、アンバランス用とのライン・アウトL/R(RCA)を併装。ch3〜4にはライン・アウトL/R(RCA)が用意されている。またSSL 2+はヘッドフォン・アウトにAとBの2系統を搭載し、B側ではch3&4へソースの切り替えが可能。そのほかMIDI IN、OUT端子を設けているのもSSL 2+の特徴だ。
SSL 2とSSL 2+には、ソフトウェア・パッケージ“SSL Production Pack”が付属。ボーカル用プロセッサー・プラグインのSSL Native Vocalstrip 2やドラム用プロセッサー・プラグインのNative Drumstrip、キーボード系ソフト音源のNATIVE INSTRUMENTS Hybrid Keys、ソフト・サンプラーのKontakt Player、DAWソフトのABLETON Live Lite、1.5GB分のLoopcloudサンプル素材、ギター&ベース・アンプ・エフェクト・プラグインのIK MULTIMEDIA AmpliTube 5 SE、ピッチ&タイミング編集ソフトのCELEMONY Melodyne 5 Essential、A|A|S製エレピ/ギター/シンセ音源パックのSession Bundleなどを収録する。
もともと自宅スタジオで使っていたオーディオ・インターフェースのサンプリング・レートがあまり高くなく、次に購入するなら192kHz対応のものが欲しいと思っていたんです。そこで周囲の音楽関係者から評判の良いモデルを幾つか教えてもらい、その中から3つ購入しました。そして約3カ月間それぞれを試し、最終的に勝ち残ったのがこのSSL 2+だったんです。
その理由として一番大きかったのが出音の良さ。メイン・アウトはもちろん、ヘッドフォン・アウトの音質は格別です。とにかく明瞭で、上から下まで変な癖が無いため周波数レンジが広く感じます。音像の細かい部分までしっかり見えるので、繊細な音作りがしやすいですね。
レコーディングにおいては、エレキギターやベース、仮歌などを試したのですが、ゲインを上げてもノイズを感じず、実に“素直なサウンド”という印象。これまでのレコーディングではマイクプリやDIなどを通して録音するのが当たり前だったのですが、SSL 2+にしてからはこれらのハードウェアをほとんど使わなくなりました。まずは一度素直な音で録っておき、アナログの味付けや音作りはその後で行うというふうにプロセスが変わったのです。素で良い音が録れるのであれば、それが一番ですからね。
SSL 2+のもう1つの魅力と言えば、トップパネルに配置された“レガシー4K”ボタン。これをオンにすると高域の倍音が強調されて、よりくっきりとした音で録音可能です。若干音量も上がってパンチ感も加わります。以前、僕はレコーディング・スタジオにあるSSLの大型コンソールで作業していたことがありましたが、そのときのサウンドと似た印象です。家に居ながらにして、SSLらしいソリッドな音が再現できるのは本当に素晴らしいことだと思いますね!
“レガシー4K”ボタンの使い方についてですが、僕の場合、レコーディングする時点でソリッドなサウンドにしたいと思ったパートに用いることが多いです。例えばロック調のひずんだエレキギターや、カッティングを多用するギターなどですね。ボタンのオン/オフで簡単にエフェクトを切り替えられるので、あれこれ迷わず直感的に音作りすることができます。
トップ・パネルに備えられた各ノブも見逃せません。見た目や触り心地などはまさにSSLコンソールのそれと言っていいくらいで、特にSSLが好きな人は作業のモチベーションが上がることでしょう。世に出ている作品の半分以上はSSLのコンソールを通してミックスしているはずですので、そう考えると歴史あるSSLコンソールのサウンドを自宅環境で手軽に再現できるのは大きなメリットだと思います。
最後にSSL 2とSSL 2+には、ボーカル用プロセッサーSSL Native Vocalstrip 2やドラム用プロセッサーNative Drumstripなど、たくさんのプラグインやソフトがバンドルされています。これらの付属ツールをすべて個別に購入しようとすると、SSL 2やSSL 2+の価格を簡単に超えてしまうでしょう。そういった意味でもSSL 2とSSL 2+はコスト・パフォーマンスに優れているので、これからDAWを始めようとするユーザーにとっても非常にオススメだと言えますね。
価格:オープン
福富幸宏
音楽プロデューサー/作編曲家/リミキサー/DJ。これまでに今井美樹、布袋寅泰、YMO、ザ・ブルー・ハーツ、浜崎あゆみ、松田聖子、YMO、ザ・ブルー・ハーツ、藤井フミヤ、中島美嘉、CHEMISTRYなど数々のアーティストの作品を手掛ける。