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- 2024/11/16
Maestro
1962年に世界初のファズ・ペダル“FUZZ-TONE FZ-1”を生み出した伝説的エフェクター・ブランド、Maestro(マエストロ)がこのたびギブソン・ブランズから復活! ファズ、オーバードライブ、ディストーション、そしてコーラス、ディレイの全5モデルを、ビンテージ・エフェクターに造詣が深い鈴木茂に試してもらった。試奏動画とともに新生Maestroの実力を探っていこう。
世界初のファズ・ペダルとして1962年に誕生したMaestroのFuzz-Tone FZ-1。その遺伝子を受け継ぎながら、21世紀のファズ・サウンドとして進化を遂げたのがTHE FUZZ-TONE FZ-Mだ。コントロールはシンプルで、オーソドックスなLEVELとTONEに加えて、ATTACKツマミはいわゆる“ゲイン”に相当する。
また、中央のモード切り替えスイッチでは“クラシック”と“モダン”、2つのサウンド・キャラクターを使い分けることが可能。前者はFZ-1の伝説的なサウンドに迫るビンテージ・トーン、そして後者は現代的な音楽シーンにもマッチする厚みのあるファズ・トーンを作り出してくれる。
はっぴいえんどの『ゆでめん』で
使っていたファズに近い気がします。
昔のMaestroのファズを基本にした新しいモデルということなんですけども、やっぱり同じではなく進化していて、より今の時代に合った音になっていますよね。特に“MODERN”モードにしたほうが音が前にドンと出てくる感じがより鮮明にします。“CLASSIC”のほうも捨てがたくて、僕の印象ではメタルのバンドが出すような音色にちょっと近いようにも感じましたね。
第一印象としては、僕が昔はっぴいえんどのアルバム『ゆでめん』で使っていたようなファズに近いような気がします。僕からすると、とっても懐かしい感じの音ですよね。なかなかよくできたエフェクターですね、良いと思います。
THE RANGER OVERDRIVEは“ビンテージ真空管アンプで作り出すドライブ・サウンド”にインスパイアされて誕生したというオール・アナログのオーバードライブ・ペダル。トーンにはクリーン信号がミックスされているため、ピッキングやギター本体のボリューム操作への反応に優れており、常時オンの状態にして手元でサウンドをコントロールする使い方に最適な1台だ。また、ゲインを抑え目にして真空管アンプをプッシュするブースターとして使うのもいいだろう。
モード切り替えスイッチでは“LO”と“HI”を選ぶことができ、“LO”ではクリーンでセンシティブなトーンが、そして“HI”ではウォームで多彩なドライブ・サウンドが得られる。
メロディには“HI”モード、
コード弾きは“LO”モードがおすすめ。
パンチがあって、しかも気持ち良いフィードバックが得られますね。“HI”と“LO”のモードを切り替えるスイッチが付いていて、“HI”にするとパンチのある歪みが出て、“LO”にするともう少し歪みが抑えられます。メロディを弾く時には“HI”にしてパンチのある単音を作って、コード弾きでジャリーン!という荒っぽいクランチを出したい時は“LO”にすると面白いサウンドが作れそうです。
“INVADER=侵略者”と名付けられたハイゲインなディストーション・ペダル。アグレッシブで迫力のあるサウンド、そして豊かなハーモニクスを作り出す1台である。
コントロールは一般的な3ノブ式だが、本モデルの大きな特徴はノイズ・ゲートを搭載していること。過激に歪ませてもノイズに悩まされることがなく、楽曲中のブレイクやリフ・ワークなどでメリハリの効いたプレイを実現してくれるだろう。なお、筐体内部の回路基板に取り付けられたトリム・ポットによってノイズ・ゲートのかかり具合(閾値レベル)を調整することができる。
ノイズ・ゲートが
とっても便利ですよ。
僕の音楽のタイプとは少し違う音楽を好んでいる人が好きそうなエフェクターです。いわゆるメタルやハードロック御用達という感じ。なかなか面白いですよ。切り替えスイッチはノイズ・ゲートですね。かなりゲインが高いから、本来は“シャー”というノイズが出ているはずなんです。だけど音を出さない状態にした時に、ノイズ・ゲートが動作して音をカットしてくれます。ボリューム・ペダルをオフにしたような状態になるからとっても便利。
歪みのパワーもすごいし、サステインもすごいから、ギターが上手くなったような錯覚をするエフェクターかもしれない。まあ、どっかでバレるけどね(笑)。でも弾いていてとっても気持ち良いですよ。
“COMET=彗星”の名を冠したコーラス・エフェクター。アナログ・ディレイ素子(BBD素子)を使用して、温かみのあるクラシックなコーラス・サウンドを作り出すモデルだ。
モード切り替えスイッチにはそれぞれ“EARTH”と“ORBIT”という特徴的なモード名が付けられており、“EARTH”モードではきらめくようなコーラス・サウンドを、“ORBIT”モードではコーラスにAM変調を加えたロータリー・スピーカーのようなサウンドを生み出す。さらに回路基板のトリム・ポットを操作することで“ORBIT”モード時のロータリー・スピーカー系エフェクトの量を調整することも可能だ。
“これでもか!”というタイプではなく、
上品ですんなりサウンドに溶け込む。
“EARTH”と“ORBIT”というモードに分かれていまして、“EARTH”はコーラス、“ORBIT”にするとロータリー・スピーカーやアンプ内蔵のトレモロみたいなエフェクトが得られますね。“これでもか!”というタイプのモジュレーションではなくて、上品ですんなりサウンドに溶け込む音作りができる気がします。たしかに宇宙に行ったような体験が……得られるか、得られないかはあなた次第。なかなか面白いコーラスだと思いますね、良かったです。
アナログ・ディレイ素子(BBD素子)を利用して、クラシックでウォームなサウンドを生み出すアナログ・ディレイ・ペダル。“DELAY”ツマミでコントロールするディレイ・タイムは20ms~600msの範囲が調整可能だ。
中央のトグル・スイッチでは内蔵されたモジュレーション・エフェクトを起動することができ、サチュレーション状態にあるカセット・テープのようなワウフラッター効果から、大幅にピッチシフトされた変調効果まで、様々なモジュレーションをディレイ信号に付加する。なお、2つの内部トリム・ポットでモジュレーションの“RATE(速度)”と“WIDTH(スイープ範囲)”を調整できる。
モジュレーション・ディレイは
隠し味としてとても有効。
ノーマルなディレイとモジュレーション・ディレイ、2つのタイプの音が作れます。やっぱり面白いのはモジュレーションをオンにした状態ですね。あまり強くかけすぎずに程よいところで設定すると、サウンドの隠し味としてとても有効なエフェクターです。モジュレーションの気持ち良さにうっとりしますね。空間系の良さは言葉で表わすのが難しいので、ぜひ楽器店でチェックしてみてほしいと思います。奥が深いエフェクターですよ。
僕が若い頃にMaestroの三角形の形をしたファズ(FZ-1)がありまして。みんな“ローリング・ストーンズの「(I Can't Get No)Satisfaction」のリフの音はどうやって作るんだろう? アンプをフルにしてもあの音にならないぞ”、ということでみんな憧れていたんです。そんな初期のMaestroを基本に、今の時代に合った形になっているなと思いました。
僕は初期のMaestroのファンで、例えばSUSTAINERという名前で出ていたコンプレッサーは、その後色んなメーカーが作ったコンプレッサーの元祖だと思うんですよね。だから僕にとってのMaestroは開拓者と言ったらいいのかな。最初に原型を作ってきたブランドだからとっても好感を持ってるし、信頼もしているし、素晴らしいなと思います。今回の5台のラインナップを弾いてみて、さらにこのあともどんどん進化していくような予感がして楽しみですね。
価格:¥18,700 (税込)
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鈴木茂
すずき・しげる●1951年、東京都生まれ。68年にSKYEを結成したのち、69年にはっぴいえんどに加入。72年のバンド解散後にキャラメル・ママを立ち上げ、様々なアーティストのバックを務める。現在もソロ活動、ギタリスト、アレンジャーとして第一線で活躍中。