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- 2024/11/16
MaestroGuitars Raffles IR CSB/L.Luthier LeLight ST
アコギ・シーン周辺で、にわかに話題となっているサウンドポート付きギター。従来のサウンドホールに加えてもうひとつの音の出口を持つギターたちだが、果たしてどのような効果が期待できるのだろうか? Maestro Guitars、L.Luthierの注目の2モデルから検証してみよう。
コスト・パフォーマンスの高いギターを世界中のプレイヤーに届けたいという信念をもってスタートした、シンガポールのマエストロギターズ。音質にこだわりすべてのモデル毎にブレイシング・パターンを設計、サウンドポートやアームレストなどのカスタム仕様も選択できるのでカタログ・ラインでもブティック・グレードのギターを手にすることが可能だ。本器はスモール・ジャンボ・モデルで、フローレンタイン・カッタウェイを設けたバージョン。ボディの腕があたる部分には、ベヴェルド・アームレスト加工もされており抱え心地も快適で演奏性に対する配慮も十分だ。
倍音が凝縮されるというか余韻がフワッと上がってくる感じがある
音に品がある上質なギターです。低音感も絶妙で和音を弾いた時の音のまとまりも良いですね。ボディのボトム部が大きめのデザインで、そのぶん音がふくよかに響いている感じがありますし、身体に伝わってくる振動もアコギを弾いているっていう感じがあります。さりげないコンター加工も、サイズと弾きやすさを考えた大事なポイントですね。サウンドポートは繊細なニュアンスが感じやすいのはもちろん、ここで倍音が凝縮されるというか、余韻がフワッと上がってくる感じがあります。音の切り方とか、プレイの仕方も変わってくるかもしれないですね。
“すべての人が音を楽しめるギター”をブランド・コンセプトにアドウィン・ライが立ち上げたマレーシアのブランド。いずれのモデルもどこかポップでカジュアルなデザインが特徴的である。本器は3年もの開発期間を経て完成したLè Guitarシリーズのライト・サイズ・モデルで、シダー・トップを採用した1本。左ショルダー側のサイドに設けられたサウンドポートに加え、トップ面のサウンドホールも左ショルダー寄りになっており、独特のサラウンド効果を生み出している。品質が高く、楽に音が出せるセット・アップは、ビギナーにもオススメしたいポイントだ。
トータルでバランスの良い弾き心地。ビギナーや女性にもオススメです
音に包み込まれるような感じがありますね。普通のアコギだと感じ取りにくい、小さな音量でのピッキングのニュアンスもちゃんとわかります。サウンドポートからフワッと音が上がってくるというか、家で夜に弾く時にもいいですね。手に取りやすい価格帯のモデルですけどクオリティは高くて、ロー・ポジションでのアルペジオとかはもちろん、ハイ・ポジションも弾きやすい。トータルでバランスの良い弾き心地です。抱えやすいボディ・サイズですし、ビギナーや女性でもストレスなく弾けると思います。素朴だけど、サウンドホールとかも含めて良いデザインですね。
ここではボディ・サイドに開けられたモニター用の穴を総称して“サウンドポート”と呼ぶことにするが、その起源や効能を整理してみよう。
サイド・サウンドポートの大きな目的は、演奏者がアコースティック・ギター本来の鳴りをモニターしやすくするためだ。通常のアコースティック・ギターの場合は、サウンドホールがトップ板に空いているため、演奏者が聴くサウンドと会場に響く音色は異なっている。それは、自分のギターを誰かに弾いてもらい、その音に耳を傾ければすぐにわかるはず。そこで、より会場に響くサウンドに近い音を自分でモニタリングしながら演奏する目的で生まれたのがサイド・サウンドポート(ホールと呼ぶブランドもある)なのだ。
サウンドポートの加工は、個人製作家やブランドによってさまざまなアプローチが試みられているが、演奏者側のサイドのショルダー付近に円もしくは楕円に開けられているのが基本だ。このサイド・サウンドポートは、1980年代頃までのギターでは見られないことから、ここ数十年で広がった比較的新しい技術と思われる。
カナダの名工サーゲー・ディヤングの話によれば、もともとはギタリストのジャン・ギルボルト(Jean Guilbault)が、1982年か83年頃にサイド・サウンドポートに繋がるアイディアを出し、それを安いギターを用いて試してみたのが、サーゲーとウィリアム・ラスキンだったという。サーゲーはそのアイディアを気に入り、自身のギター製作に取り入れていった。最初サーゲーは、ホール部分に蓋を付けてスライド式にしていたそうだが、多くのプレイヤーが蓋を開けて弾くことを好んだため、サウンドポートのみに落ち着いたという。
当時の他メーカーのギターにサイド・サウンドポートが見られないため、モニターとして考えられたサウンドホールとしては最初期と言えそうだ。ただし、ギブソンから発売された“プレイヤーポート”と呼ばれるモニター用のサウンドホールを備えた“ジェネレーション”という新たなシリーズは、なんと同社のアーカイブに保存されていた1964年の設計図を参考に作られているという。
本記事は、『アコースティック・ギター・マガジンVol.92』(4/27発売)の特集記事、“自宅での演奏に超最適!話題のサウンドポート付きアコギを徹底検証”を転載したものです。ここで取り上げてたMaestro Guitars、L.Luthierを含む全7種のサウンドポート付きアコギの試奏記事に加え、ビルダーのサウンドポート哲学、DIYによるサウンドポート改造企画など盛りだくさんの内容です。興味のある方はぜひ本誌もチェックしてみてください。
■詳細はこちら
→https://www.rittor-music.co.jp/magazine/detail/3122112001/
価格:¥268,400 (税込)
価格:¥60,500 (税込)
関口シンゴ
せきぐち・しんご●1982年生まれ、東京出身のギタリスト/作編曲家/プロデューサー。2009年にmabanua(d)、Shingo Suzuki(b)と共にOvallを結成。並行してソロ活動のほか、あいみょん、アイナジエンド、米津玄師、藤原さくら、CHEMISTRY、ハナレグミ、土岐麻子、瑛人などのプロデュース/サポート・ギタリストでも活躍している。