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- 2024/11/16
Knaggs Guitars Chesapeake Series
現在50〜60代のレイドバック世代は、これまでの長い人生経験でいいギターもあまり良くないギターもたくさん見てきたはず。そして自分の中に良いギターの基準はしっかりと確立されているだろう。そんな厳しい選択眼を持つ世代に生涯の伴侶もしくは新恋人としてお勧めしたいギターがある。それがナッグス・ギターだ。名手・今剛の試奏レポートによってその魅力をお伝えしよう。
ナッグス・ギターは、ポール・リード・スミスの創業メンバーでもあるジョー・ナッグス、さらにマーケティング・ディレクターだったピーター・ウルフを中心に2009年に誕生したブランドだ。ジョーはPRSのフラッグシップ、プライベート・ストックを製作するチームの責任者という経歴の持ち主。そのため木材に対する知識や経験は世界でもトップ・クラス。トーンウッドのセレクト、杢目の美しさへのこだわりはもちろん、シトカ・スプルースやチェリー・ウッドなど、エレキでは珍しい材も積極的に用いている。また木材の美しさを際立たせるハンド・カービングの技術も超一流。木工技術の高さは、銘木を使ったピックガード、ヒールの加工が丁寧なセット・ネック構造や絶妙なコンター加工にも表れている。さらに杢目を宝石のように輝かせる塗装技術も健在だ。
ジョーはビンテージ・ギターへの造詣も深く、トラディショナルなギターの良さも取り入れながら、現代的な演奏性が確保された、より美しいボディ・シェイプをデザインした。現在ナッグス・ギターには、大きく分けてふたつのシリーズがある。今回紹介するチョップタンクやセヴァーンのように、チェサピーク・ブリッジを搭載したチェサピーク・シリーズ、そしてインフルエンス・ブリッジが載っているインフルエンス・シリーズだ。また装飾のグレードは、ティア1〜3(※1が最も豪華)まである。
そして、独自開発したチェサピーク・ブリッジも大きな魅力。ハード・スティールを削り出して作られるベース・プレート上にサドルが沈むようにセットされ、余計な共振を抑制。サステインが向上し、さらに輪郭のクリアな音と広いレンジを生み出す。またブリッジは、リア・ピックアップをマウントするプレートに蝶番で連結され、滑らかなアーミングが可能な仕組みだ。
音質、演奏性、ルックスの3要素が高次元で調和したナッグス・ギターは、まさにプロが求める新時代のスタンダードとなり得るギター・ブランドと言える。
今剛も愛用しているチョップタンク、その最新モデルだ。ボディには軽量なスワンプ・アッシュを用い、塗膜の薄いセミ・グロス・ラッカー・フィニッシュも相まって、豊かな生鳴りとレンジが魅力。また軽量さは、抜群のレスポンスを生む。その生鳴りを生かすのは、3基のリンディー・フレーリン・ブルース・スペシャル。明るく艶のあるクリーン・トーン、抜けの良い歪みが得られる。ネックと指板はメイプル製。セット・ネック仕様で、適度な肉付きのネック・シェイプ、丁寧な仕上げのフレットも相まって、演奏性も抜群だ。ナット幅は1-5/8”、スケールは25-1/2”。チェサピークと名付けられたオリジナル・ブリッジがマウントされ、幅広いスタイルに対応できる。
【Specifications】
●ボディ:スワンプ・アッシュ●ネック:メイプル●指板:メイプル●ピックガード:メイプル●ピックアップ:リンディー・フレーリン・ブルース・スペシャル●ブリッジ:チェサピーク・ブリッジ●コントロール:1ボリューム、2トーン、5ウェイ・ピックアップ・セレクター・スイッチ●価格:755,700円(税込)
音抜けがすごくいい。反応も良くて音の追随性も素晴らしいと思います
白の感じが良くて、スナメリみたいで可愛い。“スナメリちゃん”という名前を付けて使いたいですね(笑)。チョップタンクはATSUSHIのライヴとか、あとレコーディングに使っていますが、これは僕のより軽いです ね。生音も大きくて、音抜けがすごくいい。それに反応も良くて音の追随性も素晴らしいと思います。音は明るく上下に伸びていて、ワイド・レンジ。ベースをわざと上げてみましたがブーミーにならず、芯がハッキリとした低音が出ます。歪ませても気持ちがいいですね。これはレコーディングにも使いやすいギターです。実はチョップタンクにアームを付けて欲しいと、最初にジョー・ナッグスさんにお願いしたのは僕なんですよ(笑)。
テクニカルなプレイにも対応できる演奏性に優れたモデル、セヴァーン。ボディ・トップには極上のフィギュアド・メイプルが使われ、バックは軽量なアルダーだ。ボディには丁寧なコンター加工が施され、高いプレイアビリティを実現。またピックガードはメイプル製で、音色によりウッディな響きが加わる。ネック&指板もメイプル製で、セット・ネック仕様。ナット幅とスケールはチョップタンクと同様で、指板のアールがキツくなく弾きやすい。大きな特徴は、こちらもチェサピーク・ブリッジ。鉄から削り出されたベース・プレートにサドルが沈み込むように配置され、余計な共振を防ぎ音に明瞭さをもたらす。
【Specifications】
●ボディ:メイプル(トップ)/アルダー(バック)●ネック:メイプル●指板:メイプル●ピックガード:メイプル●ピックアップ:リンディー・フレーリン・ブルース・スペシャル●ブリッジ:チェサピーク・ブリッジ●コントロール:1ボリューム、2トーン、5ウェイ・ピックアップ・セレクター・スイッチ●定価:878,900円(税込)
弦の振動がロスなく伝わっていますね。思った通りの音が出てくれます
生鳴りが良くてアンプを通した時の繋がりもいいですね。クリーンがすごく良くて、歪ませるのがもったいないくらい。ハーフ・トーンで、ソウル系のカッティングをしたら合いそう。ギターやピックアップの感度が高いのか、プレーンとラウンド弦の違いも手に取るようにわかる。弦の振動がロスなく伝わっていますね。サステインも長く、思った通りの音が出てくれます。それからネック・ヒールの処理も丁寧で、ネックが握りやすいですね。それにハイ・ポジションまで弾きやすく、ハイ・フレットでもコードが押さえやすいと思います。コンターも深く、演奏中の違和感がない。トップの杢目の感じも高級感がありますし、完成度の高いギターだと思います。
今回2本試奏しましたが、僕が使っている2013年頃のモデルよりもレンジが広がっているように感じましたね。レンジが広がっても芯のあるサウンドはさすがです。生鳴りもいいので、クリーンで弾きたくなりますね。それからブリッジの作りも良くなっていると思います。ノイズが少ない現場であればライヴでも使いたいですし、レコーディングでも使いやすいギターです。どちらも丁寧に作られ高級感があることも、ナッグスの魅力です。
あの頃、ギター・ヒーローになりたかったすべての大人ギタリストに送る新ギター誌の第8弾。表紙は、映画『いとみち』のヒロイン、駒井蓮。特集は「70年代ロック黄金期を支えた忘れえぬギタリスト11人」と題して、レイドバック世代に大きな影響を与えた70年代の11人のギタリストをフィーチャー。ロリー・ギャラガー、パット・トラヴァース、リック・デリンジャー、テッド・ニュージェント、レスリー・ウエスト、トミー・ボーリン、アルヴィン・リー、フランク・マリノ、ロビン・トロワー、マーク・ファーナー、ロニー・モントローズの忘れえぬ物語。ナッグス・ギターの記事も掲載。
今剛(こん・つよし)
1958年、北海道出身。日本を代表するスタジオ・ミュージシャン。寺尾聰のルビーの指環」から宇多田ヒカルの「Automatic」まで、ヒット曲にこの人ありと言われるほど、数多くのアーティストのレコーディング、ライヴに参加している。近年はEXILE ATSUSHIや福山雅治のツアー、シンガー・ソングライターの丘咲アンナのプロデュースなどがある。なお、今回の試奏では、フラクタル・オーディオ・システムズのAX8を使用。ラインでミキサー卓に繋ぎ録音した。