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- 2024/11/16
Yamaha / PACIFICA611HFM、PACIFICA612ⅦX
機能性とデザイン性を兼ね備えたYamaha PACIFICA600シリーズ。10万円以下というリーズナブルな値段にもかかわらず、澄み渡るような美しいクリーンからゴージャスなドライブ・サウンドまで、ジャンルを問わずに使えるギターとして話題を集めている。今回はWANDSのギタリストで、多くのアーティストのサポートも務める柴崎浩を招き、PACIFICA611HFMとPACIFICA612ⅦXの実力を検証してもらった。
P-90タイプとハムバッカーの組み合わせで力強いサウンドを実現
2012年に発売されたPACIFICA611HFM。まず目を引くのがピックアップだろう。フロントにSeymour Duncan製SP90-1、リアに同社製のハムバッカーCustom 5を搭載しており、よりパワフルなサウンドを求めるプレイヤーにアピールする1本だ。リア・ハムバッカーはトーン・コントロールをプルすることでコイル・タップが可能になり、シャープなカッティングなどにも対応。さらにGraph Teck製String-Saverサドルと、厚めに設計されたプレートを採用したハードテイル・ブリッジを搭載することで、ボトム・レンジの太さを高めている。ネックの塗装はツルツルとしたグロス仕上げだ。ボディ・トップとヘッドは杢目が美しいフレイム・メイプル、ボディ・バックはアルダー、ネックはメイプル、指板はローズウッドという材構成。カラーは写真のTBL(トランスルーセントブラック)のほかに、RTB(ルートビアー)、TPP(トランスルーセントパープル)もラインナップしている。
僕、最近は2ハムバッカーのギターをメインで使ってるんですけど、いつもの感じで弾けましたね。2ハムのギターって、フロント・ピックアップの音がモコモコするという悩みがありがちだと思うんですけど、これは始めからフロントがP-90タイプになっているので、その心配もないっていうか、それを狙っているのかなって思いました。P-90タイプのリード・サウンドはけっこう粘りがあって、シングルコイルとハムバッカーの中間みたいな音が好きです。ミックス・トーンも良い感じで、アルペジオとかに向いてるかな。あとはリアのハムバッカーをコイル・タップしたり、ボリュームを絞ったりすればエッジの効いた音も出せるので、万能性がありますね。ネック・シェイプも違和感なく、太すぎず細すぎず、握りも弾きやすいと思います。ジャジィな曲もいける気がしますし、幅広く使えるんじゃないかな。
モダンなルックスと幅広いトーンを備えた最新モデル
こちらのPACIFICA612ⅦXは、今年1月にリリースされた最新モデル。様々なジャンルに対応できるように、ピックアップはフロントにSeymour Duncan製SSL-1、センターに同社製SSL-1 RwRp(逆磁逆巻)、リアに同社製Custom 5をマウントしたSSH構成となっている。もちろん本器もトーン・コントロールをプルすることでリア・ハムバッカーのコイル・タップが可能だ。Wilkinson製の6点支持トレモロ・ブリッジVS-50を採用することで、滑らかなアーミングを実現。さらにGrover製Lockingペグや、Graph Teck製TUSQナットとリテイナーを搭載することで、チューニングも安定させた。材構成はアルダー・ボディ、メイプル・ネック、ローズウッド指板。カラーは写真のMSB(マット・シルク・ブルー)、TGM(ティール・グリーン・メタリック)、YNS(イエロー・ナチュラル・サテン)が用意されているが、MSBとYNSカラーはボディとネック裏がサテン・フィニッシュとなる。また、もう1種ボディ・トップ面とヘッドにフレイム・メイプルを採用したPACIFICA612VIIFMXも用意。こちらはシースルーのFRD(ファイヤード・レッド)カラーで、ネック裏の仕上げはグロス仕上げとなっている。
値段が安いのに、HSSレイアウトのSTタイプに持っているイメージの音がちゃんと出ていて驚きましたね。値段が高いギターでも、アームを使う時はナットを調整しないとチューニングが合わないものが多いんですけど、これは激しくアーミングしてもチューニングが狂わないのでビックリしました。リアのハムバッカーのコイル・タップは一般的なハムバッカーのコイル・タップよりもギラつきが抑えられてる感じの音で、その分ノイズが少ない印象です。もし初めて買うギターがこれだったら、ポップスとかロックとか、一通りのことはカバーできるんじゃないかな。あと、リテーナーを付けるとアームを使った時にチューニングが狂う原因になったりするじゃないですか? だから僕のギターにはリテーナーを付けていないんですけど、これはリテーナーが付いてるのにチューニングが狂わなくて驚きました。
プロのステージで使えるクオリティもありますし、
最初に持つギターがこれだったら夢のよう(笑)。
──柴崎さんはPACIFICAにどんなイメージを?
80年代くらいからありますよね? “スティーヴィー・サラスやマイク・スターンが使ってたなぁ”っていうイメージで。で、この2本の価格をWebで見て、すごく買いやすい値段だから“どんなギターなんだろう?”と思ってたんですけど、普通にちゃんとした音が出ていましたね。あとはピックアップやナットやトレモロだったり、パーツの選択でクオリティを上げているというか。パーツの選択や調整で、“値段を抑えた使えるギター”を目指しているのが、すごく伝わってきました。
──この値段でここまでのプレイアビリティを備えたギターって、なかなか少ないと思うんですよ。
そうですよね。ビックリしました。僕が高校生の頃に初めて買ってもらったギターは4〜5万円だったんですけど、やっぱりネックが曲がってしまっていたり、チューニングが合わなかったりしていたと思うんです。でも、この2本は本当にしっかりしているので、ちゃんと練習できるっていうかね。もちろんプロのステージで使えるクオリティもありますし、最初に持つギターがこれだったら夢のよう(笑)。
──611HFMの印象はいかがでしたか?
僕、P-90タイプのピックアップが載ったギターを持っていなくて今日初めて弾いたんですけど、2ハムバッカーのギターみたいに使えそうな感じがしましたね。程よい歯切れの良さもあるし、弾き方を変えればウォームな音も出る。2ハムのギターを買おうと考えている人がいたら、これを選ぶのもアリなのかなって思います。
──では、612ⅦXは?
撮影に入る前に自分で調整をしたんですけど、それもあってか今はすごく弾きやすい状態になっていて(笑)。トレモロ・ユニットも少しフローティングさせたので、自分が持っているギターとそんなに違和感なく弾けましたし、サウンドもHSSレイアウトのイメージどおりの音がしましたね。本当に“安いからしょうがないな”っていうところがまったくないというか。
──どういうギタリストにオススメだと思いますか?
612ⅦXはシングルコイルが付いているのでブルースにもオススメですし、最近のポップスとかロックでの歯切れの良いカッティングとか、メタルっぽい歪みとかも全部いけるので、これからギターを始める人には最高だと思います。でも2本ともそうなんですけど、すべてのギタリストにオススメできるんじゃないですかね。ジャジィなサウンドや、ウォームな音を出したい人は611のほうが良いかな。
──PACIFICAはプロの現場でも使えそうですかね?
いけそうな気がします。アームが付いているギターはチューニングが狂ってしまって“使えないな”ってなることが多いんですけど、PACIFICAはそこをクリアしていますし、いつもと違和感なくプレイができたので、サポート現場やセッションでも使えると思いますね。驚きました。
価格:¥78,100 (税込)
価格:¥83,600 (税込)
柴崎浩(WANDS)
しばさき・ひろし/1991年にWANDSのギタリストとしてデビュー。1997年に一度脱退するも、2019年にWANDS第5期として再始動。その間、西川貴教らとabingdon boys schoolの結成や、相川七瀬のライブ・サポート、アーティストへの楽曲提供を行なうなど幅広く活動。WANDSの最新作は11月3日リリースのシングル「YURA YURA」。