AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Bose / L1 Pro8
ポータブルながらハイ・クオリティなPAシステムとして、2003年にボーズからリリースされたL1。ミュージシャンがPAシステムを所有するという新しい方法論は、最新モデルであるこのL1 Proシリーズでさらに加速していくだろう。初代L1から歴代モデルを愛用している小倉博和に、その真価を語ってもらおう。
人気のコンパクトPAシステム、L1の最新機種L1 Proシリーズが登場した。最上位のPro32から紹介するPro8まで、3モデルがリリース。Pro8は、中高域用に8個の50㎜ドライバーを使用。水平180度の広いカバレッジを実現している。ウーファーはパワースタンド部分に内蔵で、可搬性を高めるためレーストラック型(楕円形)を採用。L1 Compact よりも6dB 音圧が上がり、低域も45Hzまで再生でき、パフォーマンスが大幅に向上した。背面には3chの入力を備え、それぞれボリューム、トレブル、ベースをひとつのツマミで調整可能だ。またch1、2にはリバーブも完備し、楽器やマイクの入力に対応。さらにファンタム電源も使える。使用楽器に合わせた最適なEQを提供するToneMatch機能も便利。ch3はBluetoothにも対応し、外部音源を鳴らす際にも役立つ。専用アプリを使うことで、より細かなセッティングもできる。
──歴代のボーズ・ポータブルPAシステムと比べて、L1 Pro8はどのような点が優れていると感じましたか?
まずサウンド面で言えば、L1シリーズの良さとS1の良さのどっちも兼ね備えている。その上でもう一段レベルが上がったという感じですね。音質と音量、レンジのバランスなどが少し聴いただけで明らかに良くなっていると思いました。これまでの製品も、ローからハイまでしっかり出すような質実剛健なサウンドでしたが、L1 Proでそれがさらにリッチかつクリアな音に進化している。よりアコースティック楽器に向いた方向で花が開いたという感じかな(笑)。
──今回はギター・アンプとPAスピーカーを兼ねる1台2役の使用法でしたね?
なんとなくできているというんじゃなくて、どちらの目的も高いクオリティで果たしてくれるというのはすごいですよ。特にアコースティック・ギターのソロ・パフォーマンスは、タッチや倍音など非常に情報量が多いわけですけど、弾いていて違和感を覚えないし、むしろ楽しくなってくる。これまでは、演奏する会場によっては聴こえにくい音があったり、良い音を鳴らしているつもりでもそれが外には出ていなかったりということも多かった。そういうものだと思って慣れていく人生でしたけど(笑)、ボーズの製品を使い始めてからはそういったストレスがなくなってきていますね。
──ミュージシャンがマイ・モニターを持つメリットはなんでしょうか。
自分の家のスタジオで作った音をそのまま持って行けるし、それが大きな会場になっても変わらない。スタジアムでのライブでも自分のL1を持ち込んでそれでモニターしていますが、変わらないっていうのはすごく重要なんです。特にKEMPERなどを使い始めてからは、会場ごとのモニターとのチューニングにけっこう時間がかかっていたんですけど、それがなくなりましたね。僕みたいにいろいろなタイプの音楽を演奏するのが好きな人間にとっては、クオリティを保ったままさまざまなアイディアを実現するためにL1 Pro8みたいなマイ・モニターを導入するっていうのは、ある意味ひとつの進んでいく方向だとも思う。やっぱり、機材がないとできないことは多いし、ハードがあってソフトが生まれる。発想というのは、いろいろなものを見るたびに頭の中に蓄えられていると思うけど、こういう新しいハードを使ってみた時にそのドアがバッと開くんです。L1 Pro8を使い始めたことで自分の音にもうひとつ確信が持てるようになったし、それは非常に良いことだと思います。
──新しい楕円形のサブ・ウーファーについてはどのような印象を持ちましたか?
L1 Compactはもっとゆったりした音楽のローに合う感じだったんですけど、アコギのボディ・ヒットやアタックのローに関してはL1 Pro8のほうが断然良くなっています。上の中高域用ドライバーのスピードと遜色ないですし、特にアコギでピエゾ・タイプと貼り付けタイプのピックアップを使う場合、そのふたつにスピードの差などが出てしまうと倍音も伸びないんですけど、そういった問題はないですね。逆に、これだけハッキリと出ちゃうと、ボディ・ヒットのタッチとかも気になっちゃうから、もっと演奏も進化させなくちゃいけない(笑)。
──本体のEQやToneMatch機能などでの音作りに関してはいかがですか?
ToneMatchにはギブソンのプリセットEQなどもあって、例えば“Songwriter”はレンジもワイドだし、“J-45”なら上下を切っている感じ、“SJ-200”はミッドが引っ込む感じなど違いがよくわかります。内蔵のEQやリバーブも含めて、味付けがしっかりしているというか、入れたものがきちんと効いてくれるので味わう感度が高くなるんです。これもS/Nなどもともとの性能が良いからそれらの良さが引き立つんですよね。それと、3つのチャンネルごとに独自に設定できるから、山弦のようなギター・デュオの場合、ふたりでギターをつないでもそれぞれのギターに合わせた調整ができます。弾き語りでギターとマイクをつないだりと、1台でいろいろなパターンに対応してくれるし、やってみたいことがふくらんでいくというのが楽しいですよ。
本記事は、リットーミュージック刊『アコースティック・ギター・マガジン 2021年12月号 Vol.90』の記事を抜粋・転載したものです。今号巻頭特集は川崎鷹也、大石昌良、ReNらが登場する“シンガーソングライターの作曲術”。J-POP界を席巻する「Just The Two Of Us」進行の楽曲を収録した歌本も付録。浜崎貴司×奥田民生対談を含む“あなたはどっち派?MARTIN D-28 とGIBSON J-45を徹底的にくらべてみました”特集など内容盛りだくさん。ぜひチェックしてみてください!
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小倉博和(おぐら・ひろかず)
1960年、香川県生まれ。桑田佳祐や福山雅治を始め、小林武史・櫻井和寿を中心としたBank Bandに参加するなど、膨大なセッションで日本ポップス・シーンを彩ってきたギタリスト/プロデューサー。ギター・デュオ山弦としての活動のほかソロ活動でも『GOLDEN TIME』『Summer Guitars』『Sketch Song』シリーズなどの作品をリリースしている。