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- 2024/11/16
Line 6 / POD Go Wireless
オールインワン・タイプのアンプ/エフェクト・プロセッサーにワイヤレス機能を搭載したLine 6 POD Go Wireless。この手の機材というと、どうしてもギタリスト向けと思ってしまいがちだが、実はベーシストにこそ注目して欲しい便利機能も多数搭載しており、さまざまなシチュエーションで大活躍するポテンシャルを秘めている。今回はLine 6 Helix Floorユーザーでもあり、ソロ・アーティストとして活動するほか、ももいろクローバーZやYOASOBIのベーシストとしても注目度が高まっているやまもとひかるに“ベーシスト目線”で試奏してもらった。
今となってはプロ/アマ問わず当たり前のように使われているモデリング・アンプ/エフェクト。そのモデリング・シーンを切り拓いたのがLine 6から1998年に発表されたPODだ。2000年にはベース用に特化されたBASS PODも登場し、宅録やライヴの機材の在り方を大きく塗り替えてきた。そのPODシリーズに、2013年のPOD HD X以来の最新モデルとなるPOD Goが登場。よりリアルなサウンドとフレキシブルな操作性を追求してきたPODシリーズに、新たな価値観をもたらした注目のモデルだ。新たな価値観とはモデル名にある“Go”。約36cm×23cm、2.5kgという軽量コンパクトなデザインで、スタジオ練習やライヴなどに気軽に持ち込める可搬性を重視したモデルと言える。
要のサウンドはHXシリーズから継承した86アンプ(ベース用は14)/41キャビネット(ベース用は7)/226エフェクトを内蔵(Ver 1.22時)しており、POD HD Xシリーズ以上のリアルさを体感することができる。そのうえで直感的な操作性を追求しているのも本機の特長だ。ひとつのプリセットには9個のアンプ/エフェクト・ブロック&センド/リターンが用意されており、内4ブロックに好きなエフェクトを割り当てることができる。実際に音を作っていくエディット画面では、画面上部に信号の流れが表示され、ブロックの選択や並べ替えはすぐ右の上側ボタンとノブで、画面下部にはモデル選択やパラメーターが表示され、画面右の下側ボタンとノブで操作。各パラメーターの調整は画面下の5つのノブが担当と、マルチ・プロセッサーに慣れていない人でもすぐに操作が覚えられるだろう。任意に使えるエフェクト・ブロックは4つだが、256個という豊富なプリセット数、同一プリセット内で音切れなしにパラメーター変更やエフェクトのオン/オフなどが行なえるスナップショット機能などにより多彩な音色を作り上げることが可能だ。
また、好みのコンパクト・エフェクターを接続できるセンド/リターン端子、キャビネット・モデリングを通る前段で出力できるアンプ・アウトなど入出力も柔軟で、POD Goで作り上げた音をラインに送ったり、アンプやキャビネットの手前で分岐した音を中音用のアンプに送ったりすることも可能。ライヴではライン音を重視しつつアンプとのバランスを取った音作りが重視されるベーシストにとって、非常に実戦的なシステムと言えるだろう。またPOD Go WirelessにはG10TⅡトランスミッターが同梱されており本機だけで高音質なワイヤレス環境を整えることができる。シールドの煩わしさから解放された自由なパフォーマンスも手軽に行なえるわけだ。
POD Goシリーズのファームウェアがv1.30へアップデート。新機能として搭載された「ユーザー・モデル・デフォルト」やストンプ・スイッチのカスタマイズ、スナップショットの名称変更などより利便性が高まり、アンプ/エフェクト・モデルも多数追加されている。ファームウェアの詳細はこちらまで。(2021年10月6日追記)
POD Goは、ひと言で言えば“サウンドのクオリティが高い”ですね。マルチ・エフェクターはほかにも使ったことがあるんですけど、歪みエフェクトだけはどうしてもデジタルっぽいかかり方がすると感じていて、マルチも使いつつ歪みだけはコンパクト・エフェクターを使っていたりもしました。それが、POD Goはデジタルっぽさを感じないですし、歪みエフェクトだけでもたくさんの種類があってベース本体と相性が良いものを選べたり、細かい調整も可能でコンパクト・エフェクターに近い音作りができます。それと、特にベースの場合はコンパクト・エフェクターを並べれば並べるほど音ヤセが気になって、“このエフェクトを薄くかけたらどうかな”と思いついても、いろいろな手間もかかるから考え直すこともあったんですけど、マルチ・プロセッサーなら音ヤセを気にせず気軽に試すことができるというのもメリットです。こういったマルチ・プロセッサーの操作はそもそも苦手な方なんですが、このPOD Goは感覚的に操作できましたね。ブロックを選択するツマミ、アンプやエフェクトのモデルを選ぶツマミ、アンプなどのパラメーターをいじるツマミなどがパッと見でわかりやすいですし、エフェクトの順番を入れ替えるのも簡単でした。しかもその入れ替え中も音が途切れないので順番を試すのも楽です。
今回試奏したのはPOD Go Wirelessというモデルなんですけど、とにかくこのG10TⅡというトランスミッターが小さいんです。しかも、そのトランスミッターをベースのアウトプット・ジャックに挿すだけで本体とすぐにつながる。これが今回一番ビックリしたことですね。しかもヴォリュームのオフやPA側での操作なしに抜き差しができるので、ベースを持ち替える際にも事故が起きなくて安心です。それからワイヤレスの設定の中には“ケーブルトーン”という項目があって、そのままのワイヤレスのサウンド(Off)のほかに3m(10')や9m(30')のシールドを使ったときのような音質変化を選ぶことができます。実際私も、Offの状態で試奏してみたところ少しバキバキ感が強かったので、よりナチュラルに聴こえる3mに変更してみました。ワイヤレスでこういった音質調整ができるというのは驚きですね。
普段私が使っているHelix Floorと比較してとにかく小さくて軽いというのがPOD Goの第一印象でしたが、かといってアンプ・モデルやエフェクトが簡略化されているわけではなく、Helixと同等のクオリティのサウンドを楽しむことができます。そのうえワイヤレスも搭載していて一台何役なんだろう、と(笑)。センド/リターン端子で自分のお気に入りのコンパクト・エフェクターを組み込むこともできますし、リターン端子やアンプ・アウトを使って、アンプ&キャビネット・モデルを通った音はラインに、通っていない音はアンプにといったふうに信号を分けることもできます。普段はコンパクトをたくさん並べている人でも、手軽に持ち運べて使えるものとしても満足できると思いますし、逆にいろいろなエフェクトを試せるという点でビギナー・ベーシストにもオススメです。
今回のデモ演奏の音作りは、やまもと好みのパキッとした音がする【G Cougar 800】というアンプ・モデルを使ったファクトリー・プリセットをエディットして行なわれた。その際、アクティヴ・ベースをメインに使っているためアンプの部分で歪まないように、[Drive]のパラメーターはかなり下げ目(2.0ほど)にしたそうだ。信号の流れは、【Volume Pedal】(ヴォリューム・ペダル)→★【LA Studio Comp】(コンプレッサー)→★【Simple Pitch】(オクターバー)→★【Autofilter】(オート・ワウ)→【G Cougar 800】(アンプ)→【4×10 Ampeg HLF】(キャビネット)→【Parametric】(EQ)で、★印がフリーのブロックにアサインしたエフェクトとなる。【Autofilter】はベース音をキープしたまま装飾的な効果を出すため[Mix]を37%程度に、[Interval]を-12にして1オクターヴ下が出る設定にした【Simple Pitch】は、音程感を失わないように[Mix]を30%にしている。
Line 6のウェブサイトには“CUSTOMTONE”というページがある。そこでは世界中のLine 6ユーザーが自身が作ったプリセットをシェアしており、それらを自由にダウンロードして使用することができる。やまもとひかるがデモ演奏で使用したオリジナル・プリセットもシェアされているので、ぜひ自身のPOD Goシリーズに取り入れほしい。
価格:オープン
やまもとひかる
14歳でベースを始め、動画サイトへのベース演奏動画の投稿をきっかけに、高い演奏テクニックが国内外から注目を集める。2019年にはキタニタツヤが書き下ろした楽曲「DOGMA」にてベース &ヴォーカリストとしてソロ・デビューも果たす。2021年2月には自身が作詞作曲を手がけた2ndデジタル・シングル「NOISE」をリリースした。アーティスト活動の傍ら、YOASOBIを始めとするサポート・プレイヤーとしても活躍中。