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- 2024/11/16
Marshall / CODE25
60年代にイギリスで生まれ、ロック・ミュージックの発展に大きな役割を果たしてきたマーシャル・アンプ。本連載では、普段からマーシャルを愛用するギタリストに現行製品を試奏してもらうとともに、それぞれの“マーシャル・アンプ愛=マーシャルな訳”を聞いていく。第2回目は、普段から50WのJCM800を使用するKEYTALKの小野武正に、デジタル・モデリング・アンプのCODE25をチェックしてもらった。
歴代マーシャル・トーンをこの1台で
マーシャルのCODEシリーズは、オーディオ・ソフトウェアのパイオニアであるSOFTUBE社とのコラボレーションで生まれたデジタル・モデリング・アンプ・シリーズ。14種類のプリアンプ、4種類のパワー・アンプ、8種類のスピーカー・キャビネット、そしてディレイやコーラスなど24種類の高品質なエフェクト類がインストールされており、求めるサウンドを手軽にクリエイトすることができる。もちろんマーシャルが世に送り出してきた1959 Super Lead、1962 Bluesbreaker、JCM800 2203といった名機のモデリングも備えられており、歴代のマーシャル・サウンドが1台で楽しめるのも魅力だ。別売りのフット・コントローラー(PEDL 91009)を導入すれば、プリセットの切り替えやエフェクトのON/OFFなどを足元で行うことも可能になる。
iOS機器やAndroid機器に専用のMarshall GatewayTMアプリをダウンロードすれば、Bluetoothによる遠隔操作でセッティングやプリセットを変えたり、デバイスに保存されている楽曲をCODEから流し、音源に合わせてジャム・セッションすることが可能。さらに本アプリは、プリアンプやパワー・アンプ、スピーカー・キャビネット、そしてエフェクトを選択/編集できるのもポイント。
写真のCODE25のほかに、50W出力のCODE50もラインナップしている。
弱点も含めたJCM800の面白さを
CODEは完全に再現できている
こんなに小さいアンプに色んな音色が詰まっていて、すごいですね。モデリングの再現性はかなり高いんじゃないかなと思います。僕は普段50WのJCM800を使っているんですけど、弱点やデメリットなんかも含めてJCM800の面白さが完全に再現されていて、良いなと思いました。
実機のJCM800はPRE-AMPツマミを上げていくとボリュームとか別の成分も一緒に上がっていくんですけど、CODEではGAINツマミを上げると歪みだけが上がっていく感じだったので、そこだけ違うかなという印象でした。でも、それ以外はかなり近いんじゃないですかね。例えばBASSツマミを上げていくと、良い具合にハイの一番上だけ残るんだけど、真ん中だけ潜っていくところとか。そういうところは良く再現されているなと思いました。
音量が小さくても再現性は高いと思ったので、近所迷惑にならない程度の音量でギターの練習ができるし、“アンプってこういう感じなんだ”っていうシミュレーションみたいなこともできるのが良いですね。あとはこのサイズ感ですけどちゃんとパワーがあるので、小さいライブハウスやカフェやバーでも全然使えるんじゃないかな。
それと歴代のマーシャル・アンプのモデリングが網羅されてるんですよね。そういう歴史を辿るのも面白そうです。マーシャルの成り立ちから、現在のサウンドに至るまで、それを全部体感できるという。
CODEは初心者の方にはうってつけですし、僕も普通に良いなと思いました。単純にエレキ・ギターってアンプから音が出ると楽しいですからね。僕は家だとギターをインターフェイスつないで、PCを介して、DTMのソフトを立ち上げて音を出しているんですけど、それ以上の楽しさがアンプには詰まってますから。なので、初心者の方から長年プレイされている方まで、本当にみなさんにオススメできるかな。
マーシャルという存在には揺るぎない信頼感がある
──小野さんはなぜJCM800を使うように?
もともとは2013年くらいにONIGAWARAの斉藤伸也さんからJCM2000を譲り受けて、ずーっと使ってたんですよ。それもすごく良いアンプだったんですけど、2〜3年くらい前に自分のお金でアンプを買ったことがないっていうことに改めて気づき、御茶ノ水に色々試奏しに行ったんです。無骨でイコライジングの制御がしづらいんだけど、上手くハマるとカッコ良い、そして自分のプレイがそのまま反映されるアンプが良いなと思っていて、そこで出会ったのがJCM800で。もともとJCM800自体は知っていたし、使ったこともあったんですけど、やっぱりじゃじゃ馬感というか、使いこなすのが難しいという印象があったんですよ。でも、ちゃんとセッティングしてプレイすると自分のピッキングのニュアンスがすべて出るんです。それが決め手でしたね。
──普段はアンプで歪みを作っているんですか?
そうですね。JCM800で歪みを作っていて、強く弾くとギャーってなるし、弱く弾くとシャラ〜ンとなるような塩梅で。KEYTALKは単音のフレーズが多いんですよ。ディストーションを使ったら優しく弾けるようなフレーズでも、僕の場合はガンガン弾かないとダメで(笑)。それはそれで大変ですけど、面白いですね。
──マーシャルに鍛えられているという(笑)。
完全に鍛えられていますね。ライブのリハの時にPAさんと“外音は今こういう風に出てるよ”っていうのを確認し合っていて、“なるほど、こういう風に弾くとこういう風に鳴るのか!”っていうのを勉強中です。
──レコーディングでも使ってるんですよね。
使っています。レコーディングでは1台だけエフェクターをかましているんですよ。そこまで歪んでいないセッティングのオーバードライブをかますことによって、艶と質感がだいぶ変わるんです。でも、なるべくアン直に近い形でやろうかなと思っていますね。
──最後に、小野さんにとってマーシャルとは?
やっぱり僕が音楽を始めた時から、ロック・ギターといえばギブソンとマーシャルみたいなイメージがずっとあって。で、こうやって15年以上演奏活動を続けてきて、マーシャルという存在は、やっぱり王道を貫きつつ、パイオニアなんだなっていうのを改めて再確認しました。芯が1本図太くドーンとあって、揺るぎない信頼感みたいなものを感じます。あとは真空管のドライブ感がめちゃくちゃ気持ち良いですね。ボリュームを上げてドライブしていく感じは、やっぱりマーシャルならではというか。だからどんどんボリュームが上がっていっちゃうんですけどね(笑)。
価格:オープン
小野武正(KEYTALK)
おの・たけまさ●ロック・バンドKEYTALKのリーダー兼ギタリスト。ギブソンSGがトレードマークで、確かな知識と卓越したテクニックに定評がある。8月25日に最新作『ACTION!をリリース。