Positive Grid Spark LIVE meets Toshiki Soejima & Naho Kimama
- 2024/12/13
YAMAHA / PACIFICA611HFM、PACIFICA612VⅡX
機能性とデザイン性を兼ね備えたYAMAHA PACIFICA600シリーズ。10万円以下というリーズナブルな値段にもかかわらず、澄み渡るような美しいクリーンからゴージャスなドライブ・サウンドまで、ジャンルを問わずに使えるギターとして話題を集めている。今回は自身のソロ活動を始め、YOASOBIなど数々のアーティストのサポートも務める新進気鋭のギタリスト、AssHを招き、PACIFICA611HFMとPACIFICA612VⅡXの実力を検証してもらった。
P-90タイプとハムバッカーの組み合わせで力強いサウンドを実現
2012年に発売されたPACIFICA611HFM。まず目を引くのがピックアップだろう。フロントにSeymour Duncan製SP90-1、リアに同社製のハムバッカーCustom 5を搭載しており、よりパワフルなサウンドを求めるプレイヤーにアピールする1本だ。リア・ハムバッカーはトーン・コントロールをプルすることでコイル・タップが可能になり、シャープなカッティングなどにも対応。さらにGraph Teck製String-Saverサドルと、厚めに設計されたプレートを採用したハードテイル・ブリッジを搭載することで、ボトム・レンジの太さを高めている。ネックの塗装はツルツルとしたグロス仕上げだ。ボディ・トップとヘッドは杢目が美しいフレイム・メイプル、ボディ・バックはアルダー、ネックはメイプル、指板はローズウッドという材構成。カラーは写真のTBL(トランスルーセントブラック)のほかに、RTB(ルートビアー)、TPP(トランスルーセントパープル)もラインナップしている。
僕は普段、P-90タイプとハムバッカーの組み合わせのギターを弾くことがないので、すごく新鮮でした。力強いし、ネックが自然に手に馴染むのでバランスが良いですね。フロント・ピックアップはカッティングでも映えるんですけど、少し甘さが入っているので、コード・ストロークでも1弦から6弦までバランス良く鳴ってくれます。ハムバッカーをコイル・タップした時、ギタリストは音量差やパンチ感を気にすると思うんですよ。でも、このギターはコイル・タップした時に“スコーン!”と抜けてくれたので、すごく使えるなと思いました。ちゃんとしたシングルコイル・サウンドが出せるから重宝されるんじゃないかな。あと、優しく弾いたらちゃんと音量が下がるんですよ。だからニュアンスが出しやすいし、反応もすごく良いのでギター&ボーカルの人も使えると思います。逆にめちゃくちゃ歪ませた時は低域のディープなところまでもしっかり再現してくれるので、このギターはプレイヤーを選ばないんじゃないかな。
モダンなルックスと幅広いトーンを備えた最新モデル
こちらのPACIFICA612VⅡXは、今年1月にリリースされた最新モデル。様々なジャンルに対応できるように、ピックアップはフロントにSeymour Duncan製SSL-1、センターに同社製SSL-1 RwRp(逆磁逆巻)、リアに同社製Custom 5をマウントしたSSH構成となっている。もちろん本器もトーン・コントロールをプルすることでリア・ハムバッカーのコイル・タップが可能だ。Wilkinson製の6点支持トレモロ・ブリッジVS-50を採用することで、滑らかなアーミングを実現。さらにGrover製Lockingペグや、Graph Teck製TUSQナットとリテイナーを搭載することで、チューニングも安定させた。材構成はアルダー・ボディ、メイプル・ネック、ローズウッド指板。カラーは写真のMSB(マット・シルク・ブルー)、TGM(ティール・グリーン・メタリック)、YNS(イエロー・ナチュラル・サテン)が用意されているが、MSBとYNSカラーはボディとネック裏がサテン・フィニッシュ仕上げとなる。また、もう1種ボディ・トップ面とヘッドにフレイム・メイプルを採用したPACIFICA612VⅡFMXも用意。こちらはシースルーのFRD(ファイヤード・レッド)カラーで、ネック裏の仕上げはグロス仕上げとなっている。
乾いていて、タイトなサウンドという印象です。トーン・コントロールの効きがすごく好きですね。フロント・ピックアップはエッジのある音なんですけど、トーンを絞ると甘くなる。もちろんトーンをMAXにしてピックアップをハーフ・ポジションにすれば、リズミカルなフレーズも全然いけますよ。リア・ピックアップはコイル・タップしてもパワーがありますし、エフェクト乗りが良いですね。ネックのサテン塗装も好きです。ボディの収まりも良いし、すごく持ちやすいので、初めて持つギターとしても良いんじゃないかな。アームの効きはめちゃくちゃ滑らかですよ。フィンガーピッキングにも合うし、(調整次第では)クリケット奏法みたいなこともできるし、色んなアームの使い方ができますね。チューニングも狂わない。612VⅡXは“ニュアンスにすごくこだわる人”にオススメです。ちょっと弾き方を変えるだけで鳴り方も変わってくれるので、“感情乗り”が良いというか。表現を広げてくれるギターです。
現場でも普通に使えると思うんですよね。
──今回PACIFICAを初めて弾いたとのことでしたが、いかがでしたか?
汎用性が高くて、プレイヤーを引き出してくれますね。ハードなものも、メロウなものも弾けるし、何でもできる。やっぱり偏ってしまうギターもあるし、それをがんばって弾き倒すっていうこともありますが、それとは違った印象を受けました。
──改めて1本ずつの印象を教えて下さい。
611HFMは欲しいサウンドにすぐ手が届く。コイル・タップもあって、ボリューム、トーン、そしてピックアップ・セレクターを組み合わせると色々な音が出せます。P-90タイプとハムバッカーという特徴があるので、ガツンといきたい時はリア・ピックアップにして。あと、コイル・タップしてもパワーがなくならないのが一番強いんですよ。もちろんフロント・ピックアップにしてトーンを絞ればメロウなものもいけるし、トーンをMAXにすればファンキーな音楽もいけますね。これは今日弾いた2本とも共通することなんですけど、コントロールの使い方をマスターしたら相当幅広く音が作れると思いますよ。あとはネック・シェイプも人を選ばないです。僕のメイン・ギターってすごくネックが太くて、フレットも大きいサイズのものを載せているんですけど、僕みたいに極端な人でもすぐ持てるというか(笑)、誰でも受け入れてくるギターですね。
──では、612VⅡXは?
オールマイティにこなせますね。あとはトレモロ・アームがすごく柔らかい。安いギターに付いているアームってすごく固くて、僕はアームがすごく嫌いだったんですよ(笑)。でも、このギターから入ればアームがすごく楽しくなると思いますね。アーム・ダウンしてもチューニングが安定してくれるギターはなかなかないですし。それとネックも弾きやすいです。ハイ・ポジションにいくにつれてどんどんシェイプが太くなっていくので、グリップ感がある。ピックアップもSSHなので、色々と対応できるんじゃないかな。ハーフ・トーンが好きな人はこっちを選んでみてください。
──このPACIFICA600シリーズは、なんと新品が10万円以下で購入できてしまうんですよ。
すごいですよね! 僕、ギターを始めて今年で約10年目なんですけど、10年前を思い返してみると、ギターを買うことってすごくハードルが高かったんですよ。最初に買ったギターが4万円くらいのものだったんですけど、買って3ヶ月くらいで倒して折っちゃったんです。で、直すのに10万円って言われたんですよね。“いやいや、無理!”ってなって、ほかのギターを10万円で買ったんですけど、それがすごくしんどくて。しかも当時は高校生だったから、10万円のギターって良いものだと思っていたのに、それが良くなかったのもすごくショックだったんです。だからそういう時にPACIFICAが手に入っていたら、ちょっと違う未来になってたかもしれない(笑)。
──もちろん今お使いのメイン・ギターが一番だと思いますが、もし現場にPACIFICAしかない、となった時に プロの現場で使用できますか?
たぶん現場でも普通に使えると思うんですよね。そのクラスのギターを10万円以下で手に入れられたら嬉しい人はたくさんいると思います。ぜひゲットしてみてください。
価格:¥78,100 (税込)
価格:¥83,600 (税込)
AssH
自身のソロや、数々のアーティストのサポート・ギタリストとしても活動するアーティスト。17歳からギターを始め、自身のバンドでメジャー・デビューも果たす。バンドを脱退後に渡米し、多数のライブやセッションに参加。現在は日本のみならずワールドワイドに活躍中。