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- 2024/11/16
BOSS / SD-1
1981年に発売され、メインの歪みとして、そして真空管アンプのブースターとして世界中のギタリストから愛されているオーバードライブの名機、BOSS SD-1 SUPER OverDrive。発売40周年を記念し、長年SD-1を愛用する牛尾健太(おとぎ話)とキダ モティフォ(tricot)のスペシャル・トーク・セッション動画をお届けしよう。オーバードライブのスタンダードを、2人はどう使いこなしているのだろうか?
1981年に誕生したSD-1。BOSSのコンパクト・オーバードライブ・ペダルは、LEVELとOVER DRIVEという2つのコントロールのみを備えたOD-1を1977年からラインナップしていたが、OD-1の歪みを作り出す“非対称クリッピング回路”を継承し、TONEコントロールを加えて音作りを追い込めるように進化させたモデルがSD-1となる。中域にピークを寄せたマイルドなサウンドはオール・ジャンルにマッチ。メインの歪みペダルとしてはもちろん、歪ませた真空管アンプのゲイン・ブースターとしても人気が高く、発売から40年が経った現在でもギタリストのスタンダードとして存在し続けている。2014年にはオリジナルのSD-1サウンドを磨き上げたWAZA CRAFTシリーズSD-1Wが発表され、2021年には発売40周年を記念した2021年限定販売モデルのSD-1-4Aもラインナップ。
SD-1を手に入れたのは12、13年前ですね。ボーカルの有馬(和樹)からもらったんです。それまで歪み系のエフェクターはディストーションしか持ってなかったんですけど、やっぱりオーバードライブが必要になってきて。で、ペダルを色々と試していたんですけど、その中でもSD-1が自分にしっくりきたというか、ちょうど良かったので、ライブでもレコーディングでもずっと使っていますね。特に最近のアルバム『眺め』(2018年)、『REALIZE』(2019年)、『BESIDE』(2021年)ではリードでもバッキングでも必ず踏んでいます。
僕はSD-1を歪みペダルの最初につなぐんですよ。ライブだと基本的にアンプはクリーンなので、そこにSD-1で歪みを足してクランチ気味にしています。LEVELは上げ目にしていて、原音よりも大きいイメージ。TONEは12時から1時の間ですね。DRIVEはほとんど上げず、上げても10時がMAX。あとはDRIVEをゼロにすることも多いですね。例えば「綺麗」(『眺め』収録)という曲ではDRIVEをゼロにしているんですけど、巻き弦がキュッとなる感じがあるんですよ。より音に芯が出るというか。それが好きなところですね。
それとSD-1の後段にディストーションやファズをつないでいて。僕のギターにはハムバッカーが載っているので、ファズを使うと、どうしてもブーミーになっちゃうんですよ。なので前段のSD-1でファズをブーストするんです。そうすると低音のブーミーなところが削られて高域も抑えられる。適度にミドルもプッシュされますしね。そういう組み合わせでもすごく使えるので、やっぱり自分にとっては万能で、これがあるとだいたい上手く落ち着く。安心できる名機ですね。
僕もですし、キダさんなんてもっとなんですけど、わりとギターを弾き始めた最初の段階からSD-1が側にあったんです。だからギターを始めて間もない人でも使いやすいでしょうし、“とりあえずこれから始めてみたら?”と思うので、若い人に一番オススメできるかな。今、歪みエフェクターって色んな選択肢がありますけど、やっぱり色々試しても僕の中では“SD-1が良いな”って思うんですよ。あとは“これさえあればなんとかなる”って思わせてくれるのが魅力ですね。だからないと困ります。40年も売れ続けているのは、そういう理由があるからじゃないかな。
tricotのライブ映像を色々と観させてもらったんですけど、キダさんは多才だなって思います。ギターの音にちゃんと芯があるというか、上手いなって。例えばコードのボイシングとか、テンションの鳴らし方とか、開放弦の織り交ぜ方とかは僕にはないものなので、今日も“カッコ良いな”って聴き入っちゃいました。キダさんのSD-1のセッティング、僕のとけっこう近いですよね。だからやっぱり、みんなSD-1はこういう使い方をするのかなって思いました(笑)。使っているギターは違いますけど、自分の知ってる音ですね。
私はエレキ・ギターを始めたのが中学2年生くらいなんですけど、その時、家に父親のエレキ・ギターとSD-1があって、なんとなく弾いてみたくなったんです。それまではアコギを弾いていたので、“自分の想像していたギターの音や!”って思いましたね。SD-1の一番好きなところはLEVEL、TONE、DRIVEのみのシンプルさ。それと色がかわいい(笑)。新品だとけっこう濃い黄色なんですけど、長く使うことで褪せてきた黄色もかわいいですね。そこも好きです。
tricotでは初期のほうで使っていたと思います。『爆裂トリコさん』(2014年)と『小学生と宇宙』(2012年)っていう2枚のミニ・アルバムでは確実に使っていましたね。その時はSD-1の前にメインの歪みペダルがあって、その歪みをSD-1でブーストさせていたっていうのを覚えています。音量だけじゃなくて歪み量も増やして、ちょっと広がりを加えるような感じですね。そのSD-1は扱いが乱暴だったので引退させていて、今はSD-1Wにしています。使い続けている理由は、最終的には“情”みたいな(笑)。愛着が湧いてしまっている部分があるので、“使ってあげたい!”っていう気持ちもありつつ、ブースターとしても使いやすいので、1台あると助かるんですよ。
普段、ボードにはSD-1Wのほかに3台くらい歪みエフェクターがあるんですけど、SD-1Wは歪みペダルの一番うしろにつないで、曲の最後でほかのペダルの歪みと合わせてグシャグシャにする役割ですね。で、SD-1W単体で弾く時は私も牛尾さんと同じでDRIVEは9時くらい。LEVELは11時くらいですかね。そしてTONEが12時。そんなに強くない歪みです。ゲインを上げなくてもキレイに伸びるというか、音の輪郭をハッキリさせたまま持ち上げてくれるような使い方ですね。
自分もそうだったんですけど、SD-1はツマミもシンプルだし、音も作りやすいので、ギターを始めたての人でも難しくないと思います。それとエフェクターの組み合わせ次第で使い方も変わってくるので、長くギターを弾いている方でも普通とは違った使い方を見つけられるんじゃないかな。なので、みんなが使えるエフェクターだと思います。
牛尾さんのギターはカッコ良い音です。でも、自分の知ってるSD-1の音ではないなと。私のギターはシングルコイルばかりなので全然違う音がしていましたね。“ハムバッカーだとそういう音がするんやな”と思いました。おとぎ話の曲を聴くと、牛尾さんのギターは良い意味で“あんまり主張してこない”というイメージがあって。それを意識されてるのかどうかはわからないですけど……絶対に悪い人が弾いているギターではないというか(笑)。説明がヘタクソなんですけど、“寄り添うギター”っていう印象を受けました。優しい音。優しいだけじゃなくて、真ん中に筋が通っています。
牛尾とキダが動画内で使用しているシールドは、BOSSから発売されているBIC-Pシリーズ。高品位な素材を採用し、独自のバランスでチューニングを施した最高峰のケーブルだ。プラグがストレート-ストレートの3m(BIC-P10)と5.5m(BIC-P18)、そしてプラグがL型-ストレートの3m(BIC-P10A)と5.5m(BIC-P18A)をラインナップしている。
価格:オープン
価格:オープン
価格:オープン
牛尾健太
うしお・けんた/1983年生まれ。広島県出身。2002年にロック・バンド、おとぎ話に加入。バンドは曽我部恵一、ドレスコーズ、カジヒデキ、忘れらんねえよ、前野健太などのサポートも務めるほか、牛尾個人でも菅田将暉、KOHH、THE BOHEMIANSなどのレコーディングに参加している。ライブ・バンドとしての評価の高さに加えて、映画や演劇など、多ジャンルにわたるアーティストやクリエイターからの共演を熱望する声があとをたたない。バンドの最新作は今年1月にリリースした結成20周年記念アルバム『BESIDE』。
キダ モティフォ
キダ モティフォ/1989年生まれ。滋賀県出身。2010年に結成した4人組ロック・バンド、tricotのギター&コーラス。マス・ロックを基盤とし、変拍子をふんだんに取り入れたトリッキーなリズムとキャッチーなメロディを武器に中毒性のある楽曲を奏でる。その高いクオリティは海外のロック・シーンでも話題になり、2014年にはイギリスでピクシーズのサポート・アクトを務めた。キダの愛器はAltero Custom Guitars製のオリジナル・ギター。バンドの最新作は5月にリリースした配信シングル「暴露」と、6月にリリースした「いない」。