Guild / Takamine / Switch / Taylor
世は7弦、8弦と多弦ギター化も進んでいますが、古くから多くのギタリストを魅了している12弦ギターのサウンドの魅力を今一度振り返ってみましょう。 4ブランド/6モデルのアコギ12弦を野村大輔さんに試奏レポートしてもらいます。カリフォルニアから宇宙の彼方まで、広がり、きらめく12弦ギターの奥深い世界に飛び込みましょう！
GUILD F-512E MAPLE
［Specifications］
●トップ:ソリッド・シトカ・スプルース●サイド:フレイム・メイプル●バック:アーチド・フレイム・メイプル●ネック:マホガニー＆ウォルナット・センター・ストリップ●指板:エボニー●ピックアップ:LR Baggs Anthem with Volume, Mix, and Phase Controls ●価格：528,000円（税込） （問）0561-53-3007／キクタニミュージック株式会社
60年代からの伝統を受け継ぐ定番ブランドの定番モデル
12弦ギターの代表モデルと言ってもいいようなギルドのF-512Eは、最も特徴的なジャンボ・ボディから押し出される音の迫力や中高域の立体感が絶妙です。コードで弾いた時、単音で弾いた時の音のバランスが、多くの名盤で聴いた印象にかなり近く感じました。演奏している奏者にはボディの振動やダイレクトな鳴りが直接伝わってきて、ついつい没頭して弾いてしまうギターです。特にコードを鳴らし終わった後の余韻やサステインが豊かで、副弦の響きが心地よく聴こえてきます。ダウン・ピッキングで弾いた時の鳴りが気持ちいいので、フォーク系のサウンドからカントリー・スタイルの演奏まで幅広く対応できるギターだと思いました。ネックはとても握りやすく、このくらいの太さやシェイプが最もスタンダードで弾きやすく感じるのでは? トップのシトカ・スプルースの色合いも美しく、弾き込んだ後のサウンドの変化も気になるところです。
GUILD F-2512E BLD
［Specifications］
●トップソリッド・シトカ・スプルース●サイド&バック:メイプル●ネック:マホガニー●指板:パーフェロー●ピックアップ:GUILD/Fishman Sonitone GT-1 with Volume and Tone Controls ●価格：99,000円（税込） （問）0561-53-3007／キクタニミュージック株式会社
エントリー・クラスながらアーチド・バックによる力強い鳴り
こちらもF-512Eと同じくジャンボ・ボディでアーチド・バックの1本。中高域に音が集まっていて、12弦らしいサウンドがすぐに楽しめるギターでした。DやGなどのオープン・コードを鳴らすだけでも、音のバランスがしっかり出来上がっているのを感じられ、どなたでも弾きやすく、扱いやすい印象です。12弦ギターは難しいかもと思ってしまう敷居を、グッと低く感じさせるギターなので、12弦のファースト・ギターとして考えるのもありかもしれません。特に巻弦と副弦のバランスが良く、3〜4弦あたりの色艶は演奏しながら素晴らしいと感じていました。現代のサウンドの中でも十分に居場所があり、存在感を主張できるギターの音色をしています。また個人的にはやはりこの12弦らしい大きさのヘッド形状が大好きで、落ち着く印象があります。もちろんヘッドは大きいですが、ヘッド落ちしない良いバランスに仕上がっていました。
Takamine EF381SC
［Specifications］
●トップ:ソリッド・スプルース●サイド&バック:メイプル●ネック:マホガニー●指板:ローズウッド●ピックアップ:Takamine CT-4-DX（DMP） ●価格：187,000円（税込） （問）0573-75-4188／高峰楽器製作所営業部サポート窓口
世界的な評価も高いワールド・スタンダード・シリーズの1本
今回試奏した中で最も剛性感があり、ネックの強度、握った時の安定感を感じたギターでした。ボディは大きいのですが身体にフィットしやすい形状なので持ちやすく、全体のボディ・バランスがしっかり取れていました。サウンドホールから前に押し出すパワー感があり、ガンガン弾いてもそれを上手く受け止めてくれるような印象があります。コードも単音もどちらも良いサウンドで鳴っていますが、特に単音を弾いた時の12弦感が素晴らしいです。主弦と副弦のバランスがよく、副弦がやや強く出るあたりが心地いいです。ナット幅47mmの指板はやや広く感じますが押弦がしやすく、細かいフレーズも気にせずに弾けました。サウンドはタカミネらしい立ち上がりの良い音で、各弦の分離が良いように感じました。スッキリとしていて余計な濁りがないサウンドは扱いやすいです。
Takamine PTU141C-12 N
［Specifications］
●トップ:スプルース●サイド&バック:ローズウッド●ネック:マホガニー●指板:ローズウッド●ピックアップ:Takamine CT-4BII（PTU）●価格：143,000円（税込）（問）0573-75-4188／高峰楽器製作所営業部サポート窓口
ショート・スケールとコンパクト・ボディでライヴでの取り回しも抜群!
やや小振りのボディ・サイズで、630mmのショート・スケール仕様など演奏のしやすさを感じるギター・セッティングになっていました。またシングル・カッタウェイ構造でもありハイ・フレットへもアクセスしやすくなっています。弦のテンションが柔らかく感じるので、コード、単音のどちらもアグレッシブに攻められますし、ライヴやステージ上でのパフォーマンスに最適なサイズ感でした。サウンドはかなり素直な鳴りをしていて、レスポンスも良く弾きやすい印象です。小振りながらも低域から中域がしっかりと出ていたので、ロー・ポジションからハイ・ポジションまで余すところなく使えるギターだと思いました。ネックのシェイプが太すぎず、細すぎず手に馴染むようになっており、特にハイ・ポジションでの演奏は弾きやすく感じました。
Switch GA-70C 12st
［Specifications］
●トップ:ソリッド・シトカ・スプルース●サイド&バック:ソリッド・インディアン・ローズウッド ●ネック:アフリカン・マホガニー●指板:エボニー●価格：374,000円（税込） （問）06-6155-5923／株式会社エースケー
フィンガースタイルに順応した今までにはない新しい演奏性
バランスの良い鳴りと、扱いやすいボディの形状なので、かなり楽しめる1本だと感じました。コードを鳴らした時にも十分に素晴らしいサウンドなのですが、それ以上に特に単音を弾いた時の「12弦感が」最も強く味わえました。そして副弦の鳴りや色艶がしっかりしているので、イメージ通りの12弦ギター・サウンドが楽しめます。カントリーやフォーク、そして現代でのポップ・サウンドなど、かなり幅広いジャンルにも対応できるギターだと思います。
Taylor Builder’sEdition652ceV-Class
［Specifications］
●トップ：トレファイド・シトカ・スプルース●サイド＆バック：メイプル●ネック：ハードロック・メイプル●指板：エボニー●ピックアップ：Taylor Expression System 2（ES2）●価格：792,000円（税込） （問）https://www.taylorguitars.jp／株式会社山野楽器
マスター・ビルダーのこだわりが詰まった１本
小振りなボディ、ネック、指板など、どこをとってもかなりこだわった作りで、全体のバランス・マネジメントがしっかりしているギターだと思いました。注目したい点としては、主弦と副弦の位置関係が逆になっているので、他のギターとサウンドの出方が違う点、そしてひとつのブリッジ・ピンに2本の弦を入れるダブル・マウント方式という点です。確かにV-Classブレーシングによって全体的に余計な響きがないのでスッキリしながらも12弦の良さが出ていますし、特に12弦であるということに気を使わずに弾いても、十分に12弦ギター感を楽しむことができる仕上がりでした。
本記事は、ゆる〜くギターを弾きたい大人ギタリストのためのギター専門誌『ギター・マガジン・レイドバックVol.7』から転載したものです。今号は、玉井詩織（ももいろクローバーZ）を表紙に、ロックの名盤『ホテル・カリフォルニア』や『幻想飛行』を大特集。さらには世界と日本の出来事と音楽をまとめた年表『1976年クロニクル』、ミュージックマン特集などユニークかつマニアックな特集を多数掲載。大人のギタリストにぜひ読んでいただきたい1冊です！
■詳細はこちら → https://www.rittor-music.co.jp/s/gmlb/
野村大輔
のむら・だいすけ◎1975年、東京都出身。15歳でビートルズに憧れアコースティック・ギターを手にする。その後、ジミ・ヘンドリックス、エリック・クラプトンらにも影響を受け、エレキ・ギターを宮脇俊郎氏に師事。現在はライヴ/レコーディング・サポート、 楽曲制作、アレンジ、ギター講師、執筆などを幅広くこなすマルチ・ミュージシャンとして活躍。
