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- 2024/11/16
Line 6 / Helix Floor
Line 6 Helixシリーズを愛用するトップ・アーティストたちに、その活用法とインプレッションを披露してもらう本連載。その第19回目は、カシオペアのメンバーとして日本のフュージョン・シーンの隆盛に大きく貢献し、バンド脱退後はソロ・アーティストとしてのキャリアを着実に積んできた櫻井哲夫に登場いただく。自身のソロ・ライブでは主旋律をベースで奏でるということで、“気持ちはヴォーカリストやサックス奏者と同じ”と語り、多彩な音色の切り替えを必要とする櫻井は、Helixに大きな可能性を感じているという。
最新テクノロジーとこれまでLine 6が培ってきたノウハウをすべて投入した“最高のギター・プロセッサー”を実現するべく、6年にも及ぶ開発期間を経て2015年にリリースされたHelixシリーズ。現在までにフロア・タイプ2種とラック型、プラグインをラインナップしているが、中でも宅録/ライブといったシチュエーションを問わず人気を呼んでいるのが、フロア・タイプのHelix Floorだ。最新のVer3.10では、1タイプのアンプ・モデリングと、5種のエフェクトなどを追加。3.0で追加されたエフェクト・モデルには新しいパラメーターが追加され、より音作りを追い込めるようになった。さらに、オーバー・サンプリングが全面的に強化され、より自然な減衰音が得られるようになったり、チューナー起動時にもディレイのリピートやリバーブのディケイが残り、ルーパーも回り続ける“チューナー・トレイル”が搭載されるなど、機能面での進化も止まらない。
今回の櫻井のセッティングはあくまでも“ベーシック”とのことで、10個のエフェクトを直列で並べ、それぞれをフットスイッチに割り当てて個別にオン/オフする“ストンプ・フットスイッチ・モード”で使用している。信号の流れがつかみやすく、従来のペダル・ボード感覚で操作できるモードだ。アンプ・モデルは内蔵のベース用14タイプから“G Cougar 800”をチョイス。実機をよく知る櫻井もお墨付きのクオリティだという。また、バッキングのメイン・サウンドとなるフェイザーの“Script Mod Phase”も、実機より低音を残した音作りがしやすかったといい、特にベース用を謳っていないアンプ&エフェクト・モデルも充分ベースで活用できるわけだ。さらに踏み込めば、信号のスプリット&マージ機能を使うことで、分岐信号のレベル調整はもちろん、周波数帯による信号の分岐など、原音(特に低音)を生かしたまま多種多様な音作りを実現してくれる。また、搭載されているセンド端子をアウトプット端子として使うこともできるので、原音をそのまま確保しておくことも可能だ。櫻井のようなソロ・プレイヤーはもちろん、トリオ・バンドのベーシストが厚みや音色の幅を出すのにも重宝するだろう。
べースの音色を使って音楽全体を作っていきたいという発想の人間にとっては、夢のような機材
デジタル・マルチ・エフェクターは昔から試していたんですけど、やっぱり音の抜けなどに不満がありました。それが、2年ぐらい前にどうしてもマルチ・エフェクターが必要なライブがあって、そのときに渡辺香津美さんが「便利だよ」って紹介してくれたのがこのHelix Floorだったんです。確かに、音の立体感や瞬発力はアナログ機器のそれとは違って、やはりデジタルはデジタルだと思います。ただ、「このクオリティだったらデジタルでもいいじゃない」っていうところまで、このHelix Floorは行っているんじゃないかな。
特にソロ・ライブの場合は、僕はいわゆるボトムのベース・パートを弾くことはほとんどなく、メロディ楽器としてベースを使っているので、センター・スピーカーのほかにディレイやモジュレーション系エフェクトを広げるステレオのセットを用意していました。さらにアナログ・エフェクターはどんどん量が増えていく。そういった大がかりなセットをHelix Floorなら1台でまかなってくれますし、アナログ機器では難しかった、曲ごとバンドごとの設定をプログラムしておけるというのはありがたいです。例えば、春のツアーと秋のツアーでサウンドが変わっても、元のデータを更新してバージョン・アップしていける。これは大きなメリットです。
今回のデモ演奏で使ったエフェクトは、いわば僕の常備ラインナップみたいなものですが、実はまだまだ足りないですね(笑)。実際Bメロのパートは、バッキングとフィルター・サウンドを重ねるだけの予定だったんですけど、現場でヘッド・アレンジしていくうちにオクターバーをかけたリードとそのハモり、さらにオブリのアイディアが出てきたんです。ベーシストというよりアレンジャーの視点から、「この音はこのパートで使いたい」とか「リードをハモらせたい」とか、いろいろと考えてしまうんですね。それをすぐに実現できるスピード感はすごく大事です。
それと、ベースの場合はモジュレーション系エフェクトを100%でステレオに振ってしまうと、ボトムがなくなってしまうんですね。そうならないように原音をミックスするとしても、アナログ機器だったらいちいちブレンダーなどをつながなくてはいけませんが、Helix Floorなら信号を分岐するなどで簡単にできる。歪みやディレイなども同じで、ベースらしいボトム、音程感といった芯があって、それをエフェクトで化粧するというのが僕の考え方ですし、その化粧のバランスはひとつひとつ違うわけです。Helix Floorならそういった個々のバランスをそれぞれ取れるのが嬉しいですね。
やっぱり楽器本来の音が大好きなので、それをどれくらい出すことができるかというのは、これから突き詰めていきたい点です。その結果、「デジタルはここまで」ということがあったとしても、それを何かの方法でフォローしてでもこのHelix Floorを使っていきたいと思っています。僕みたいに、ベースの音色を使って音楽全体を作っていきたいという発想の人間にとっては、夢のような機材ですよ。
櫻井哲夫「僕がイメージするサウンドをすべて実現してくれる。そんな可能性を秘めているから、Helix」
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櫻井哲夫
さくらい・てつお●1957年11月13日生まれ、東京都出身。1976年にカシオペアのベーシストとしてデビュー。1989年にカシオペアを脱退し、同バンドの神保彰(d)とJIMSAKUを結成して1998年まで活動する。1999年以降はソロ・アーティストとしてさまざまなプロジェクトでの演奏を行なうほか、サポート・ワークや音楽学校での後進の指導も積極的に展開している。最新ソロ・アルバムは亀田誠治プロデュースによる『Nothin’ but the Bass』(2015年)。JIMSAKUは、結成30周年を迎えて期間限定でJIMSAKU30thプロジェクトが始動し、7月28日に新作アルバム『JIMSAKU BEYOND』を発表する。