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  • CULTのオーバードライブ2機種を山岸竜之介がチェック!

CULT × 山岸竜之介

CULT

  • 制作:デジマート・マガジン 文・スチール撮影:細川雄一郎(CULT) 動画撮影・編集:熊谷和樹 録音:細川雄一郎(CULT)、真部勇輔(CULT)

新品からビンテージ、マス・プロダクツからブティックまで、ジャンルを問わず“決定的な個性”を持ったエフェクター、およびその関連商品を取り扱うCULT。今回は、そんなCULTから発売されているオリジナル商品のTS808 1980 #1 Cloning mod. V.2とOD-820 Secede from T.S. mod.の2機種を、ギタリストの山岸竜之介が徹底試奏! TSと言えばスティーヴィー・レイ・ヴォーン……ということで、試奏ではストラトキャスターを使用してもらった。CULTの代表・細川雄一郎氏の商品解説とともにお楽しみ下さい。

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CULT × 山岸竜之介

※今回の動画では各エフェクターの音をそのままに伝えるため、録音音源の加工、マスタリング・エフェクトなどは一切行なっておりません。音量差にご注意ください。

CULT
TS808 1980 #1 Cloning mod. V.2

日本が誇る伝説のエンジニアが
異端的なビンテージ個体のサウンドを再現

CULT / TS808 1980 #1 Cloning mod. V.2(Front)

CULT / TS808 1980 #1 Cloning mod. V.2(Back)

※TUBE SCREAMERは星野楽器株式会社の登録商標です。

 某専門誌が行なった特集取材のために、数多く集められた198088年製のTube Screamer。その中にあった、多くのマニアに最も高く評価された1980年製のTS808を再現するべく、現行品のTS808をモディファイすることで生まれたのが、このTS808 1980 #1 Cloning mod. V.2である(※V.2は現最新モデル。V.1からバイパス時の音色やドライブ・サウンドが改良され、元となったビンテージの個体の音色により近づいている)。

 集められた大量のビンテージTube Screamerを個別に管理するため、各個体には順に識別番号が振られていったが(#1#2#3~)、#1が割り振られた1980年製TS808のみが明らかに異質であり、同時に素晴らしい音色であった。その通称“#1”をオーディオ用精密測定器にかけ、様々なパラメータを解析した結果、まず出力波形が異質であったことが判明。TS808 1980 #1 Cloning mod. V.2では、異端的な#1の波形を再現し、周波数特性、コンプレッション特性、倍音構成までも非常に近いレベルに近づけられている。その結果、ビンテージTS特有の素朴な音色に加え、#1にあった豊かな偶数次倍音からなる鈴鳴りのような美しい高音成分、そして周波数特性のデータから再現された太い低音を備えた、ビンテージとモダンの中間的なTSサウンドとなった。

モディファイ作業は田村進氏が手作業で行なっている

 これら解析作業と新たな回路設計を行なったのは、1970年代より多くの名機の設計を担当した元日伸音波製作所のエンジニア、田村進氏である。すべての作業は田村氏本人が行ない、出荷される個体の裏面のラベルには同氏のサインとシリアル・ナンバーが直筆で記入される。なお、本機は受注生産品となり、不定期的に受注が行なわれているので、詳細はCULTのHPをチェック。

Yamagishi's Impression

音が良すぎて、どこかに連れていかれるような印象すらあります。

 Tube Screamerって、もっとキュッとミドル・レンジに寄るイメージだったんですけど、この#1 Cloning mod.は上(高域)と下(低域)が残ったまま、おもにミドルが上がっていく感じ。Levelを上げてもブーミーにならないまま低音が出てる感じがしたので、まず第一印象でそれがすごく良いなって思ってました。でも、これはもとになった#1がこういった音だったってことなんですよね。すごく新鮮に感じました。

 Levelを3時くらい、Overdriveを11時くらい、Toneは3時よりちょっと手前みたいな、このセッティングで弾いた時の、この太さって何なんですかね? 音が良すぎて、どこかに連れていかれるような印象すらあります(笑)。ライブ中に背中でアンプの音を感じている時、僕は“天国に行ける瞬間ってこんな感じなんじゃないかな?”って思うことすらあるんですよ。で、今日これを使ってスティーヴィー・レイ・ヴォーンみたいなフレーズを弾いた時、まさにその天国感をすごい感じたんです。こういう音に憧れて“ギターが弾きたい”って思ったよな、って。これはぜひ、一度弾いてみてほしいですね。

CULT
OD-820 Secede from T.S. mod.

ドライブ/クリーンの割合が調整可能な
オールラウンド・オーバードライブ

CULT / OD-820 Secede from T.S. mod.(Front)

CULT/ OD-820 Secede from T.S. mod.(Back)

 今でも愛用者が絶えないオーバードライブ・ペダル、Maxon OD-820を新たな発想でモディファイしたモデル。もともとのOD-820は、TS系オーバードライブ回路にクリーン・ミックス機構を併せ、回路に供給される電圧の一部を昇圧したような構成、つまりはKlon Centaur的な思想を含んだものであった。しかし、このOD-820Secede from T.S. mod.では、Driveコントロールに併設されていたクリーン・ミックス機構を独立させ、単独でクリーン・サウンドの音量を調整できる“Additional Clean Volume”を本体背面に装備。ドライブ・サウンドとクリーン・サウンド、それぞれの音量バランスを緻密に調整することが可能になり、深く歪ませた際に起こる低音の痩せの補正や、ブースターとして使用した際の音圧感をコントロールできるようになっている。

クリーンの割合を調整するAdditional Clean Volume

 TS系回路のオーバードライブ・セクションには、CULT TS808 1980 #1 Cloning mod.と同様のモディファイが施され、基本のオーバードライブ・サウンドは素朴で透明感のある、ビンテージ然としたものへ生まれ変わっている。そして、同時に行われた電源回路の大きな改良により、音質はそのままに解像度、ダイナミック・レンジが大きく向上した。

 これらの設計、モディファイの作業はTS808 1980 #1 Cloning mod.と同様、すべて田村進氏によるものであり、出荷される個体の背面ラベルには同氏の直筆のサインとシリアル・ナンバーが記入されている。

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Yamagishi's Impression

音が前に出てきていて、欲しいなって思いました(笑)。

 まず、コードの分離感が凄いなって思いました。普段はアンプやエフェクターで歪ませて、ギターのVolumeを絞ってアルペジオを弾く、みたいな時があるんですよ。それについてきてくれるのも凄い。ギターのVolumeやToneを絞っても、しっかりと音が前に出てきてくれるなって感じたんで、これは欲しいなって思いました(笑)。

 こういったギター側の強弱で侘び寂びがつけやすい機材って、ミスタッチが目立つと思うんです。でも、僕は侘び寂びが出過ぎている機材のほうが好きで、このOD-820 Secede from T.S. mod.はDriveをフルにしてもそれがちゃんと出せるところがカッコ良いなって、素直に思いました。アンプがクリーンの状態で使うのも好きなんですけど、これをTS808 1980 #1 Cloning mod.のうしろに置いて、ソロの時にOD-820 Secede from T.S. mod.のDriveを高めに上げて踏むのがめっちゃ好きですね。ロー(低域)も消えないんですけど、ハイ(高域)が前にバンッと出てくれるので、ソロが弾きやすいと思います。

Total Impression

ギターのツマミをいじる楽しさも
一緒に気付かせてくれるんじゃないかな。

 TS808 1980 #1 Cloning mod. V.2は、半音下げチューニングのストラトとフェンダーのアンプで弾くと、僕が小さい頃から聴いていた音が自分のアンプから鳴っているような気がして、めっちゃ大好きやなって思いましたね。自分がスティーヴィー・レイ・ヴォーンなんじゃないかって、勘違いする気持ちを持つくらいです(笑)。

 OD-820 Secede from T.S. mod.は、Driveを上げると歪みだけがグンと前に出てくる。Driveをガッツリ上げた時に音がモコっとしてしまうものがたまにあるんですけど、これは全然そんなことなくて。ギター・ボーカルの人とか、いわゆる邦楽ロック的なアプローチをする時に使えるんじゃないかなって思いました。もし僕にサンタクロースが来るなら、これが一番欲しいです、って感じです(笑)。

 CULTのこの2機種を弾かせてもらって、僕はホンマにCULTのファンになったっていうか、カッコ良いなって思いました。ギタリストは将来的にいっぱいエフェクターを買っていくことがあると思うんですけど、まずこの2台を買ってください(笑)。で、これで音作りをすれば、間違いなく抜ける良い音っていう、ギタリストが目指す音が作れるんじゃないかなって本当に思いますね。そして、ギターのツマミをいじる楽しさも一緒に気付かせてくれるんじゃないかな。ちょっと歪み量を足すTS808 1980 #1 Cloning mod. V.2。そしてガッツリ歪みを足すOD-820 Secede from T.S. mod.の2台を持っていれば、あとはギターの手元でコントロールして、どんなジャンルでも使えるんじゃなかなって思います。

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製品情報

プロフィール

山岸竜之介
やまぎし・りゅうのすけ●1999年生まれ。 幼少期に『さんまのスーパーからくりテレビ』(TBS)で天才ギター少年として話題に。 その表現はロックだけにとどまらず、ジャズ、ファンク、J-POPなど多ジャンルに及ぶ。ギター以外にプロデュース・ワークもこなす。最新デジタル・シングル「Hurry Up」をリリース。6月26日には初の配信ライブも行なう。

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