AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Universal Audio
オーディオ・インターフェイスのApolloシリーズや、クオリティの高さから愛用者の多いUADプラグイン、そして自社製DAWのLUNAなど、DTM分野において傑出した支持を誇るUniversal Audio。このたび、そんな同社からブランド初のペダル・タイプ・エフェクターであるUAFXペダル・シリーズが登場した! ギタリスト/作編曲家であり、自身で数多くのエンジニアリングも手がける青木征洋を試奏者に招き、モデリング技術を最大限に駆使した本シリーズの魅力に迫る。
60年代フェンダー・アンプのスプリング・リバーブを意識した“SPRING 65”、EMT140のプレート・リバーブを模した“PLATE 140”、Lexicon 224のホール&ルーム・リバーブを狙った“HALL 224”という3種のアルゴリズムを切り替え可能。さらにUSB経由で製品登録を行なえば、Lexicon 224のチャンバーとプレートのアルゴリズムを追加DLすることもできる。コントロールはギター・ペダル向けに厳選され、比較的シンプルな6ノブに収まっているが、それぞれのアルゴリズムでA/B/Cタイプを切り替えることで、本モデルの場合はスプリングやプレートのバリエーションを選択可能。設定を追い込めばあらゆる空間表現を生み出せる。
どのアルゴリズムも圧倒的なクオリティですね。リバーブの粒が悪目立ちするような、ザラザラした質感に悩む必要はありません。僕は普段ミックスの中でEMT140のUADエフェクトをよく使うのですが、そうしたプラグインを調整するのと同じ気持ちを味わいながらペダルでの音作りを行なえるため、なんとも不思議な感覚に陥りました。コントロールについては、特にPredelayとBass/TrebleのEQがついているのがとても便利ですね。実際のミキシングにおいてもこれらは距離感や質感をデザインする上で役立つパラメーターなので、楽曲にマッチした響きを作る過程で迷うことはないと思います。
EP34をもとにしたテープ・エコー“TAPE EP-Ⅲ”、エレクトロ・ハーモニックスのメモリー・マンを模した“ANALOG DMM”、そしてクリアなデジタル・ディレイの“PRECISION”と、キャラクターの異なる3つのサウンドを作り出せるStarlight Echo Station。製品登録を行なえば“Cooper Time Cube”のアルゴリズムも入手可能だ。それぞれのアルゴリズムでA/B/Cを切り替えると、テープの使用状態やモジュレーションのコーラス/ビブラートが選べるほか、ウェット音のワウやフラッター、フィルタリングなどを作り込める。アンプやギターとの組み合わせを選ばず、常に最適なディレイをデザインすることができるだろう。
テープ、アナログ、デジタルと、それぞれのカテゴリに属するディレイの名機を模したペダルは多数存在します。しかし、テープ・スピードを変更した時のピッチ変化やテープ摩耗による経年劣化、プリアンプの歪みといった“触り心地”のような要素まで再現できているという点でStarlight Echo Stationは特異な存在だと思いました。ギターにおけるディレイはその濃さや個性が重要で、それが楽曲全体のムードにまで影響を及ぼします。その点このモデルなら、ミキシングでのディレイのデザインと同じくらいこだわりを持ってタップ音を追い込めるので非常に心強いですね。
BOSS CE-1スタイルのコーラスとビブラートの“CHORUS BRIGADE”、MXRを意識したフランジャーとダブラーの“FLANGER DBLR”、そして60年代フェンダー・アンプを彷彿させるトレモロ“TREM 65”という3種を切り替えできる本モデル。他モデルと同様に、製品登録によって“Phaser X90”やハーモニック・トレモロのアルゴリズムも入手可能だ。SPEEDやDEPTHで揺れを制御するベーシックな使い方以外にも、フランジャーではwet音の位相反転ができたり、トレモロではLFOの波形の切り替えやデュアル・モノ/ステレオの切り替えができるようになっており、一般にモジュレーションと呼ばれるサウンドのほとんどをカバーできる。
今回の試奏はどれも同社のOX Amp Top Box(ロード・ボックス)の後段で使用しましたが、その恩恵が一番大きかったのが本機でした。モジュレーション系は時として音が細くなったりチープになりやすいですが、このペダルはどのアルゴリズムも濃密さやツヤが損なわれず、特にトレモロのステレオ化は抜群に美しかったです。つい音価を伸ばして音数を減らしたくなりますね。また、多種多様の元ネタを共通したインターフェースで制御できるよう落とし込んだデザイン性もさすがです。デジタル・エフェクトは操作が煩雑になりがちですが、このモデルは安心して触れると思います。
歴代名機のサウンドを手軽に持ち運べます!
“レコーディング・スタジオを足下に詰めこんじゃいました!”。 UAFXはそんな革命的なペダルだと思います。これまでは持ち運びの問題でスタジオの中でしか使うことができなかった大型機材や、メンテナンスの難しいビンテージ機材の音を、手軽に持ち運んで足下でコントロールできるようにした点でギター・ペダル市場に大きなインパクトをもたらしたんじゃないでしょうか。また、最先端のデジタル機材であることを感じさせないシンプルな操作性やデザインにも、アナログとデジタルの橋渡しにこだわり続けてきたUniversal Audioならではの強みが表われています。ギタリストだけでなく、ベーシストやキーボーディストにもオススメしたいですね。
本記事は、5月13日(木)に発売されるリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2021年6月号』にも掲載されます。表紙巻頭特集は「ケヴィン・シールズ(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)」。ぜひチェックしてみてください!
価格:¥46,200 (税込)
価格:¥46,200 (税込)
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青木征洋
あおき・まさひろ●作編曲家、ギタリスト、エンジニア。株式会社ViViX代表。代表作は『Street Fighter V』、『ASTRAL CHAIN』など。世界中から若手の超凄腕ギタリストを集めたプロジェクト“G.O.D.”のプロデュースを務め、最新作『G.O.D.IV DUSK』はiTunes Storeのメタル・アルバム・チャートの1位を飾った。