Positive Grid Spark LIVE meets Toshiki Soejima & Naho Kimama
- 2024/12/13
Fender / Made in Japan Hybrid Ⅱ
ビンテージなルックスはそのままに、プレイヤーや音楽ジャンルを選ばないオールマイティーなモダン・スペックを盛り込んだ日本製フェンダーのシリーズ、Made in Japan Hybridが“Ⅱ”として生まれ変わった! 実力派の若手バンドSuspended 4thのギター&ボーカルを担当する鷲山和希、そしてギタリストの澤田誠也の2人に登場願い、その実力をチェックしていこう。
US本国のデザイン・データを使用して(シリーズ共通)、テレキャスターの美しいボディ・ラインを完璧に表現しつつ、バック・コンターを採用してフィット感を高めているのが特徴。このモデルの“ハイブリッド”な仕様の中でも注目したいのが、ピックアップ・セレクターが一般的な3ウェイではなく、そこにリア+フロントのシリーズ配線(直列)を加えた4ウェイ仕様になっている点。テレキャスターらしいトゥワンギーなサウンドはもちろん、シリーズ配線のハムバッカー的な野太いサウンドまで、従来以上のサウンド・バリエーションを楽しめる。また、ビンテージ・ライクなブラス・サドルには角度が付いていて、正確なオクターブ・チューニングが可能だ。
フェンダーの始祖的ギターがいまだに進化しているのがスゴい。
テレキャスターはずっと欲しかったんですけど、ちゃんと弾いたのはほぼ初めてなんです。自分の中でハードルが高いんですよね。だってフェンダーの始祖じゃないですか? “テレキャスターを弾く=フェンダーを背負う”みたいなイメージがあって。でも今回弾いてみたら、始祖が進化しちゃってたので驚きましたね。ピックアップ・セレクターが4点になっていたりして、いまだにこうやって進化できるのはすごいと思います。音に関しては、ストラトよりもブリッジの金属の接地面が大きいせいか、鈴鳴りのようなハイが出ている感じが想像通りで、弾いていてすごく楽しいギターだと感じました。1ボリューム1トーンのギターを弾くのもほとんど初めてなんですけど、操作性は意外と良いなという印象です。ストラトキャスターと比べると、こっちは“男らしく左手で勝負しろ! 指板で勝負しろ!”と言われているようで、闘争心を掻き立ててくれるギターだと思いますね。
リアとフロントの直列は面白いし便利ですね。
僕はそもそもテレキャスターというプロダクトが好きなんですよ。パーツもシンプルで、デザインもスッキリしていて、“これでいいじゃん!”っていう潔さですよね。あとは好きなギタリストがテレキャスターを使っていることが多いので憧れもあります。新しいギターを弾く時、僕はまずリア・ピックアップから弾いてカッティングの切れ味やエッジ感を確かめるんですが、このモデルはブリッジが良いのか、ちょっと“キン”とした音がするので、弾いてみてすぐに気持ち良いと感じました。あとは4ウェイ・セレクター仕様でリアとフロントの直列が選べるんですが、音が太くて面白いです。ブースターを使うわけではなく手元で操作できるので、セッションで“ちょっと太い音が欲しいな”と思った時すぐに“味変”できるのが便利ですね。弾き心地としては、ネックがサラサラしていて引っかからないし、ボディ裏にコンターがあって身体にフィットします。僕はコンターがないのもテレキャスターらしくて好きなんですけど、このモデルのコンターにはフェンダーの優しさが垣間見えますね。
伝統的な3カラー・サンバーストやUSブロンド、さらに新色のモデナ・レッドとフォレスト・ブルーまで計7色で展開するストラトキャスター。一見オーセンティックに見えるが、ビンテージ・スタイルのペグが実はロッキング・チューナーだったり、サドルはビンテージ仕様だがトレモロ・ユニットは2点支持タイプだったりと、随所にモダン・スペックを配している。指板は9.5インチRとややフラットで、サテン仕上げのニュー・モダン“C”シェイプ・グリップやナロー・トール・フレットと合わせて、スムーズな演奏性を実現。新開発されたピックアップのサウンドも心地良く、“これぞストラトキャスター”というサウンドとプレイを楽しめるモデルだ。
普段使ってる65年製ストラトと遜色ない音も出せる。
僕はストラトを高校2~3年生の頃から弾いていて、今愛用している65年製のビンテージ・ストラトとも21歳の時からの付き合いなんです。ストラトを心から愛する者として、この新しいモデルに対しても“ヘタなことはできないぞ”とプレッシャーを感じたんですが(笑)、実際に弾いてみるとグリップやフレットの処理が良くてすごく弾きやすかったですね。ブリッジが2点支持であること以外は普段使っているビンテージとの大きな違いは感じなかったです。それくらい良い音なんですよね。もちろんビンテージは電装系などが経年劣化していくので、そういった新旧の違いはあると思うんですけど、そこはこのMade in Japan Hybrid Ⅱも使い込めば変わっていくと思います。僕は“このギターを使い倒してやる!”という気持ちでビンテージを買って、ストラトで出せる音を研究し尽くしたんですけど、このモデルもそういう意気込みで使えばビンテージと遜色ない音を出せると思いますよ。
色がすごく良いですね。品がありつつレトロな感じ。
僕は普段テレキャスターを弾いていて、ストラトはたまに鷲山のものを少し弾かせてもらうくらいなので、こんなにストラトに触れたのは久しぶりです。ピックアップ・セレクターが5点あるって、今更ですがテレキャスターと比べて豪華ですよね(笑)。特にハーフ・トーンにした時のノイズが少なくて、クリアに弾けて気持ち良いです。ピックアップのポジションを変えると同じフレーズでもフィーリングが変わるので、多彩な音色を使いこなしたいプレイヤーには良いですよね。弾き心地に関しては、ストラトに触れるのが久々な自分でもまったく違和感なく弾けました。あと、色がすごく良いので女の子にオススメです。品がありつつレトロな感じ。女の子がこれを弾いていたら“オオッ!”って思いますね(笑)。もちろん男が弾いてもカッコいいし、絶妙なカラーリングです!
ビンテージ愛用者がよく施す定番カスタムを、初期スペックの状態で多く取り入れている本シリーズのジャズマスター。まず、積極的に使うプレイヤーが少ないプリセット・コントロールを排して操作性をシンプルに。それに伴ってピックアップ・セレクターの位置もボディの6弦側に移動した。加えて、演奏中の弦落ちを防ぐためにサドルにはムスタング・タイプのものを採用するなど、操作性や使い勝手の面は“モダン”に設計されている。一方でフローティング・トレモロや、新開発されたピックアップのサウンドはしっかりとジャズマスターらしさを継承しており、“クラシック”な側面も維持。まさにハイブリッドな1本だ。
シンプルにコードを弾くだけですごく良い音なんですよ。
ジャズマスターは良くも悪くも、“こいつを持ってしまうとギター・ボーカル的になってしまうなぁ”というイメージがあって、手にしてこなかったんです。テレキャスターと一緒で、憧れてはいるけれど自分はまだそんな器じゃないなと思ってしまうんですよね。それで今回いざ弾いてみた感想は、ストラトやテレに比べてピックアップにパワーがあって音が速い印象です。シンプルにコードを弾くだけでもすごく良い音なんですよ。この音でリードを弾けるようになればカッコ良いなと思うんですけど、やっぱり自分にはまだ弾けないですね(笑)。ジャズマスター使いには好きなギタリストが多いので、動画では彼らにリスペクトを持って演奏してみました。あと、僕がジャズマスターを使ってこなかった理由の1つとして、操作が難しいというイメージがあったからなんですが、このモデルはコントロールがシンプルになっているのが良いですね。でも、シンプルがゆえに“自分自身のプレイ”をする必要があるなとも感じます。
ハードにピッキングしても弦落ちしません!
実は昔、ジャズマスターを使っていたことがあるんですよ。借り物だったんですけど、よくライブでも弾いていたので馴染みがありますね。久しぶりに弾いてみてやっぱり良いなと思いました。ジャズマスター・ユーザーが増え始めた時期に僕は逆に敬遠してしまったんですけど、今はその波も少し落ち着いてきたように感じますし、また使ってみてもいいかなと思います。ジャズマスターはピックアップの音が特に好きなんですよ。特にセンター・ポジションでアルペジオを弾いた時の分離感とか、すごく良いですよね。あと、僕はわりとハードにピッキングするタイプなんですけど、このモデルは弦落ちしませんね! 細かいところも改良されていて素晴らしいです。個人的には、背の低い人がこれを持ってもボディが大きく見えてカッコ良いし、逆に高い人が持ってもバランスが良くてまたカッコ良く見えるんじゃないかなと。ステージ映えするギターだと思いますね。
フェンダーは伝統を守りながらエッジが効いた進化をする。
クラシカルな見た目が好きな人にとって嬉しいポイントを押さえつつ、それぞれにモダンな部分も取り入れて現代的な音や弾き心地も両立しているので、本当に幅広いギタリストにマッチするシリーズだと思いました。今日弾いた中で個人的に一番気に入ったのはテレキャスターで、リア+フロントの直列では不思議な音が出て面白かったです。4ウェイのピックアップ・セレクターは今後のスタンダードになるかもしれないですね。それとカラーリングも良くて、新色(モデナ・レッドとフォレスト・ブルー)は“何で今までのシリーズにはなかったんだろう?”って思うくらいしっくりきています。フェンダーは見た目などの伝統を守りながらエッジが効いた進化をするイメージがあるんですけど、このシリーズはそんなイメージ通りのモデルが揃っていると感じました。
自信を持って演奏できる日本製のフェンダー!
今日の試奏では3モデルを弾きましたが、まずはどれも作りが丁寧だなと感じました。テレキャスターはリアとフロントの直列配線が追加されていてモダンな仕様なんですけど、ルックスやカラーリングはレトロで、“クラシック・モダン・ブルー野郎”という感じ。ストラトはピッチの安定性が素晴らしい。オールラウンダーなので、“真面目オールラウンダー・レッド”ですかね。ジャズマスターはワイルドに歪んでロックな気分にさせてくれて、名付けは……できないんですけど(笑)、一番気に入りました。フェンダーは長い歴史の中で変わらない部分もありつつ、でも、今回のモデルのようにプレイヤーに寄り添った改善もされていて、改めて素晴らしいメーカーだなと思います。日本製の、自信を持って演奏できるモデルが出たぞ! みんなも買ってギター弾きまくろうな!
本記事は、5月13日(木)に発売されるリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2021年6月号』にも掲載されます。
価格:¥121,000 (税込)
価格:¥121,000 (税込)
価格:¥137,500 (税込)
鷲山和希
わしやま・かずき●2014年に結成された名古屋在住の4人組ロック・バンド、Suspended 4thのボーカル&ギター。普段は65年製のストラトキャスターを愛用している。
澤田誠也
さわだ・せいや●Suspended 4thのギタリスト。BUMP OF CHICKENやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTなどから影響を受ける。