CASE：21　神奈川県　小蔦規夫さん宅スタジオ

ジャズ・ファンの叔父が聴いていたレコードを幼い頃から隣で楽しんでいたという小蔦さん。小学校の合奏の授業で担任教師が持ち込んだドラム・セットを叩いてドラムに目覚め、同時期に知ったTHE SQUAREに心酔する。「最初に聴いたのが長谷部 徹さんの叩くシンプルな8ビートだったので入りやすかったんですね。そして則竹裕之さんを好きになり、神保 彰さんやデイヴ・ウェックルも、という感じでハマッていきました」

ドラムは自分の人生の一部だと、ようやく本当に言えるようになりました

　プロ用のスタジオやライヴ・ハウスなどを手がける防音／音響建築の専門業者アコースティックエンジニアリングが設計した自宅スタジオで“好きな時間に思いきりドラムを叩きたい”という夢をかなえたドラマーを紹介している当連載。今回は2017年夏に完成した小蔦規夫さんの自宅スタジオを訪ねた。

　幼い頃から音楽に親しみ、小学５年生で初めてドラム・セットを叩いた小蔦さんは「いつか家でドラムを叩けるようになりたい……というか、いつかはそうなるんじゃないかと漠然と思っていました」という。

　「アコースティックエンジニアリングのことはドラム・マガジンで知っていたので、家を建てることになって住宅メーカーと契約するときに雑誌を渡し、スタジオはこちらにお願いしたいと伝えました。最初、１階にスタジオを作ると生活スペースのレイアウトが難しくなるかなと心配していましたが、うまく設計していただいたので不便はありません」。

施工後約13畳の空間に、ドラム・セットやオーディオ・システム、机、本棚が並ぶ。オーディオ用のスピーカーは「50年くらい前に父がユニットを買って、エンクロージャーは地元の家具屋さんに作ってもらったもの」だという。「かなり傷んでいたのですが、アコースティックさんにまた聴けるようにしてもらいました。私もこの音で育ったので、これからも大事にしたいです 」とのこと

ドラム・セット正面には大きな鏡。その上には横長の窓が設けられ、ここから外光が差し込むことでスタジオ内の雰囲気は明るい。右奥のピアノは奥様の実家で眠っていたのを運び込んだもの

　そんな小蔦さんのフェイバリット・ドラマーは則竹裕之。約15年前、当時の則竹のセッティングに合わせて購入したドラム・セットも、このスタジオが完成したことで、昼夜を問わず叩けるようになった。

　「素人ながら、ドラムは自分の人生の一部のようになっているのですが、それを倉庫に入れっぱなしにしているのは違うなと、ずっと思っていました。これでようやく本当に、自分の人生の一部になったんだと感じています。仕事から帰ってきて食事などをすませ、夜11時くらいからが自分の時間。スピーカーから音楽をガンガン流しながら叩いていますが、隣に住んでいる両親はまったく気づかないほど。音の響きもとても気持ち良いです。とにかく、家に自分のドラムがセットされていること自体が信じられなくて、うれしくてついスタジオを覗いてしまいます（笑）。夢の部屋を作っていただきました」。

則竹裕之がソロ・アルバムを発表した頃のセッティングを摸したTAMAのStarclassic Maple。使っていた期間がそう長くなかったゴング・バスまで揃えているのはまさにファンの鑑！

部屋が広めで天井も高く、壁の鏡も大きいことから、響きのバランスを整えるために吸音パネルを天井にも設置

出入り口は木製防音ドア×２枚。ピアノを搬入することが決まっていたので、幅の広いタイプをオーダーした

※本記事はリズム＆ドラム・マガジン2018年2月号の記事を転載したものです。

アコースティックエンジニアリングとは？

　株式会社アコースティックエンジニアリングは、音楽家・音楽制作者のための防音・音響設計コンサルティングおよび防音工事を行う建築設計事務所。1978年に創業して以来、一貫して「For Your Better Music Life」という理念のもと、音楽家および音楽を愛する人達へより良い音響空間を共に創り続け、携わった物件の数は2,000件を超えている。現在も時代の要請に答えながら、コスト・パフォーマンスとデザイン性に優れ、「遮音性能」、「室内音響」、「空調設備」、「電源環境」、「居住性」というスタジオの性能を兼ね備えた、新しいスタイルのスタジオを提案し続けている。

株式会社アコースティックエンジニアリング

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