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- 2024/11/16
Fender / Fender Made in Japan Hybrid Ⅱ
伝統的なルックスと現代的なスペックが融合し、世界的に評価の高い日本製による作りの良さもあいまって人気を集めてきた“Made in Japan Hybrid”。同シリーズは2017年に発表され、その後、⽇本の伝統⾊ “藍” をテーマに開発された新色モデルや、5弦ジャズ・ベース、PJ仕様のムスタング・ベースといったモデルの拡充を続けてきた。そしてこのたび、さらなるクオリティの向上を実現した新シリーズ“Made in Japan Hybrid II”として進化した。ここでは、新世代を牽引する注目バンドであるSuspended 4thのベーシスト、フクダヒロムによる試奏レポートを通して、その魅力をお伝えしていこう。
まずは、今回全モデルを通じてリファインされたポイントを見ていこう。見た目に大きく現われる変化ではないが、確実にサウンド/演奏性に影響を及ぼす部分が見直されている。
新たなネック・シェイプと指板エッジ加工
ネック・グリップはスリムで薄めに仕上げられたモダンCシェイプを採用している。また、指板のエッジには丸みのある加工が施されており、ネックを握ったときのフィット感が向上している。サラサラとした手触りのサテン・フィニッシュ仕上げもあわせて、ネックをグッと握り込んで弾く場合も横移動で運指する場合も、快適に演奏できるだろう。なお、指板Rは9.5インチ(250ミリ)と前シリーズから変わっていない。
ツバ出し21フレットと頭出しトラスロッド
フェンダー・ベースといえば20フレット仕様が標準だが、今回は1フレット多い21フレットを装備している。ツバ出し仕様とすることで構えたときに違和感もない。これにともない、トラスロッドの調整口はヘッド側に設置されている。フレット・サイズは前シリーズのミディアム・ジャンボから細く高めのナロー・トールに変更されており、音の立ち上がりが速く、軽いタッチでの演奏を実現しつつサステインの向上にも寄与する。
ブリッジ下部のサステイン・ブロック
ブリッジは一見、薄いプレートを曲げた“ヴィンテージ・スタイル”のオーソドックスなものだが、実はブリッジ下部にブラス製のブロックが取り付けられており、ブリッジ全体の質量を稼いでいる。これにより、見た目はヴィンテージ・タイプながら、より豊かなサステインを実現した。
ジャック&コンデンサーの見直し
ジャックは通常のものに比べて2倍の接点を確保し、シールド・ケーブルのプラグを抜き挿しするときに2段階の手応えがあり抜けにくい構造の“Pure Tone Jack”を採用している。不意のシールド抜けを防止すると同時に、信号の伝達性も向上している。また、コンデンサーにはオレンジドロップを採用。
スタッガード・ポールピースを採用
ピックアップはUSAのプロダクト・マネージメント・チームと共同開発。各弦ごとに段差のあるスタッガード・ポールピース仕様を採用しており、どの弦を弾いても出力とトーンが均一になるようになっている。指板を幅広く、また多彩な奏法で演奏する現代のベーシストにとっては最適なピックアップだ。
Made in Japan Hybrid IIのベース・モデルのラインナップは、プレシジョン・ベース、ジャズ・ベース、5弦ジャズ・ベースの3種類。なめらかなエルボー・コンターのUSAデザイン・データを採用したボディ設計となっており、ボディ材がアルダー、ネック材がメイプルというのは全モデル共通で、各モデルともカラーによってローズウッド指板とメイプル指板のモデルが用意されている(両方の指板材が用意されているカラーもある)。ナット幅は、プレシジョン・ベースが42ミリ、ジャズ・ベースが38.1ミリ、5弦ジャズ・ベースが47.6ミリ。牛骨ナットやオープンギア・タイプのペグといった仕様は共通だ。
価格はプレシジョン・ベースが121,000円、ジャズ・ベースが132,000円、5弦ジャズ・ベースが143,000円とコストパフォーマンスは非常に高い。
そんなMade in Japan Hybrid IIの3モデルを、ヴィンテージ・ジャズ・ベースを武器に、テクニカル・スラップをはじめとした技巧派プレイを繰り広げるSuspended 4thのフクダヒロムに試奏してもらった。メンバー同士が熱い火花を散らす本格派ロック・サウンドにおいてフェンダー・サウンドの魅力を存分に引き出してきた彼にMade in Japan Hybrid IIはどう映ったのだろうか。
快適な演奏性とまとまりのあるサウンドが使いやすい最新型プレシジョン・ベース
フェンダーのロゴとしては最も古く、プレシジョン・ベースでは1964年まで採用された“スパゲティ・ロゴ”が刻印されたMade in Japan Hybrid II Precision Bass。プレシジョン・ベースらしさはありつつもまとまりがあり扱いやすいサウンドと快適な演奏性を両立したモデルだ。カラー・バリエーションと指板材の組み合わせは、フォレスト・ブルーにはローズウッド指板とメイプル指板の両方がラインナップし、3カラー・サンバーストとモデナ・レッドがローズウッド指板のみ、ブラックがメイプル指板のみとなっている。
Specifications
●ボディ:アルダー●ネック:メイプル●指板:ローズウッド or メイプル(ボディ・カラーによる)●フレット数:21 ●スケール:34インチ●ピックアップ:ハイブリッドIIカスタム・ヴォイスド・シングルコイルPベース●コントロール:ヴォリューム、トーン●ブリッジ:4サドル・ビンテージ・スタイル●ペグ:ヴィンテージ・スタイル ●カラー:3カラー・サンバースト(ローズウッド指板、写真)、モデナ・レッド(ローズウッド指板)、フォレスト・ブルー(ローズウッド指板/メイプル指板)、ブラック(メイプル指板)●価格:121,000円
Fukuda’s Impression
プレベのイメージがいい意味で裏切られました。
僕はプレべってまったく弾かないんですけど、その弾かない理由が、やっぱりプレベってネックが太くてゴツいとか、音の立ち上がりがジャズベよりも遅くて僕の普段のプレイにあまりついてこないというところなんです。でも、このプレベを持って最初に感じたのが、弾きやすいということですね。プレベのイメージがいい意味で裏切られました。ネック・シェイプに関しては、一般的なプレベに比べて薄めだと思います。しかも指板のエッジが丸まっているので、握ったときに引っかかりもないですし、握りやすい。プレイアビリティが高いし、弾きやすいプレベだと思います。ネック裏がサラサラしたサテン・フィニッシュになっていて、すごくすべりがいいから横の移動もしやすいですね。
サウンドは、まとまっているという意味で、すごく優等生な感じがしますね。ヴィンテージのプレベにあるような、ピーキーな荒々しさはあまりないんですけど、そのぶん、誰でも簡単に“いいプレベ・サウンド”が出せるようなイメージですね。基本的にはモダンなサウンドに感じますけど、トーンを絞っていったときの、モータウンのようなサウンドもすごくいいですね。
より汎用性を高めたスタイリッシュ・ジャズ・ベース
本シリーズのベース・モデルでは最もカラー・バリエーションのあるMade in Japan Hybrid II Jazz Bass。もともと汎用性の高い楽器ではあるが、サステインやピックアップ・バランスの向上、ネック周りの進化により、さらにオールラウンドな楽器となった。カラーは、ローズウッド指板とメイプル指板の両方が用意されているのが、3カラー・サンバースト、フォレスト・ブルー、モデナ・レッド。アークティック・ホワイトはローズウッド指板のみ、ブラックとヴィンテージ・ナチュラルはメイプル指板のみとなる。
Specifications
●ボディ:アルダー●ネック:メイプル●指板:ローズウッド or メイプル(ボディ・カラーによる)●フレット数:21 ●スケール:34インチ●ピックアップ:ハイブリッドIIカスタム・ヴォイスド・シングルコイル・ジャズ・ベース×2●コントロール:ヴォリューム×2、トーン●ブリッジ:4サドル・ビンテージ・スタイル●ペグ:ヴィンテージ・スタイル ●カラー:3カラー・サンバースト(ローズウッド指板/メイプル指板)、フォレスト・ブルー(ローズウッド指板/メイプル指板)、モデナ・レッド(ローズウッド指板/メイプル指板)、アークティック・ホワイト(ローズウッド指板)、ブラック(メイプル指板、写真)、ヴィンテージ・ナチュラル(メイプル指板)●価格:132,000円
Fukuda’s Impression
作りもサウンドも非常にバランスがいい。
僕は普段、ヴィンテージのジャズ・ベースを使っているんですけど、それに比べて、ネックもプレベ同様にすごく握りやすいし、ボディとネックのバランスがすごくいいですね。出力のバランスも良くて、リア・ピックアップを絞ってフロントだけにしたらいきなり出力がデカくなるとか、逆にリアにしたらローが全然なくなるということもなくて、どのセッティングでも非常に使える音がします。トーンの効きが良いのも個人的なイチオシのポイントですね。それこそ僕が使っているヴィンテージのジャズ・ベースって、正直トーンとかピックアップのヴォリュームの調整があんまりあてにならなくて。ちょっとでもリアが絞られちゃうと音が引っ込んだりするんですよね。このシリーズだと、ちょっとした細かいニュアンスの違いだとかを、音量を変えることなく表現できるので使いやすいです。これは現代の楽器のいい部分だと思いますね。
あとはサステインがすごく長い。これはめちゃくちゃ恩恵があります。しっかりと鳴らさないといけない楽器が多いなかで、サステインが伸びることによってプレイが楽になるというか、音のつながりが生まれるし、それによって弾きやすくなるんです。フレージングにも直結しますよね。
4弦からの持ち替えもスムーズな5弦ジャズ・ベース
指板エッジの丁寧な処理により、実際の幅以上に手に馴染みやすいMade in Japan Hybrid II Jazz Bass V。アクティヴ仕様が主流の5弦ベース界ではあるが、本器はパッシヴ仕様で34インチ・スケールと王道の姿勢を崩していない。カラー・バリエーションは、3カラー・サンバーストがローズウッド指板のみ、モデナ・レッドとヴィンテージ・ナチュラルがメイプル指板のみと、ほかの2モデルに比べると少ないが、モデナ・レッドのピックガードには3プライのブラックを組み合わせるなど、新鮮なルックスが目をひく。
Specifications
●ボディ:アルダー●ネック:メイプル●指板:ローズウッド or メイプル(ボディ・カラーによる)●フレット数:21 ●スケール:34インチ●ピックアップ:ハイブリッドIIカスタム・ヴォイスド・シングルコイル・ジャズ・ベースV×2●コントロール:ヴォリューム×2、トーン●ブリッジ:4サドル・ビンテージ・スタイル●ペグ:ヴィンテージ・スタイル ●カラー:3カラー・サンバースト(ローズウッド指板)、モデナ・レッド(メイプル指板、写真)、ヴィンテージ・ナチュラル(メイプル指板)●価格:143,000円
Fukuda’s Impression
上にも下にも音域が広がって、現代の音楽にすごく合う。
Hybrid IIシリーズ全体に言えるんですけど、ネックのグリップは薄めになっていて、この5弦ベースも普段4弦を使っている人が弾いても違和感なく持てるかなと思います。指板エッジが丸まっているというのも、5弦ベースだと特に有効なのかもしれないですよね。
また、5弦ベースで21フレットなので、一般的なフェンダーの4弦ベースからすると上にも下にも音域が広がっている。普通の20フレットのジャズベだと、“もう1フレットあったらいいのに”っていう瞬間って実はけっこうあって。Suspended 4thの「GIANTSTAMP」っていう曲では、21フレットのギターとユニゾンしたいんだけど、ベースは1フレット足りないから仕方なく1オクターヴ下で弾いているんです。だから本当にかゆいところに手が届く仕様になっていると思いますね。また、1フレット多いぶん、ちょっと倍音も増えているというか金属っぽい鳴りも増えていて、全体的にサウンドもモダンになっていて、それも現代の音楽にすごく合うような気がしますね。
今回のモデルたちって、フレットが狭くて高いので、音もすごく引き締まっているというか。5弦や4弦のロー感もすごくタイトなので、弾いていてまとまりがいいですよね。
Total Impression
世界的なスタンダードな音が、さらにモダンにブラッシュアップされている。
今回のHybrid IIシリーズは、サウンドに関して非常に素直なので、エフェクターのノリもすごくいいですね。だから素の音でやるのもいいし、エフェクターをかまして自分の好みの音に加工していけるというのも、このシリーズの強い点なんじゃないかな。
あと、ジャックが2アクションで抜き挿しする感じで抜けにくい構造になっているのもライヴを考えるといいですよね。ライヴ・バンドだと音が途切れちゃったりっていうトラブルも起きやすいですけど、そういう人にもすごく安心できるポイントなのかなと思います。
僕のなかでの日本製のフェンダーって、“入門用のベース”っていうイメージがわりと強くあったんですけど、今回のシリーズは、それがすごく覆ったというか。USAのフェンダーに引けを取らないクオリティに仕上がっているなって思いました。それは全体的なサウンド面もそうですし、作り込みの部分ですごく精密に作られていると感じます。そういったものがこの価格っていうのも、非常にリーズナブルというか、本当にコストパフォーマンスが高いなっていう印象ですね。
僕は普段ヴィンテージ・ベースを使っていて、もちろんヴィンテージ・ベースの良さも知っているんですが、音の立ち上がりの面に関してはやっぱり遅いときがあるんです。その点、こういったモダンなサウンドのベースは、それこそ21フレットとか高いフレットになっているということで、音の立ち上がりはすごく速いし、現代のロックなどのシーンには非常にマッチするんじゃないかなと思いますね。
フェンダーって世界的なスタンダードな音で、絶対誰しも聴き馴染みがあるものだと思うんですよね。誰が聴いても、“いいベースの音だな”って感じるのがフェンダーの最大の魅力だと思うんです。今回のシリーズは、今までのフェンダーの培ってきたサウンドを、さらにモダンにブラッシュアップしているので、現代の音楽に非常にマッチするサウンドだと思います。これからベースを始めようとしている人だったり、今は初心者セットみたいなものを使っているけど、もうちょっと1ランク上の楽器が欲しいと思っている人にもすごくいい選択なのではないでしょうか。
Bass Magazine Webでは、秋澤和貴(Saucy Dog)と山本大樹(My Hair is Bad)という新世代を牽引する人気バンド2組のベーシストによるFender Made in Japan Hybrid IIの試奏レポートを掲載中!
本記事は、リットーミュージック刊 『ベース・マガジン 2021年5月号』の記事を転載したものです。同号では“Slap The World”と題して、全90ページでスラップ奏法を大特集! スラッパー同士による対談、海外ベーシストの奏法分析や国内ベーシストによるセミナー、アンケートなどを通して、プロ・ベーシストがどんな思考回路で、どんな機材を使い、どのような演奏スタイルでスラップ・ベースをプレイしているかを明らかにします。ぜひチェックしてみてください!
価格:¥121,000 (税込)
価格:¥132,000 (税込)
価格:¥143,000 (税込)
フクダヒロム
ふくだ・ひろむ●1994年11月3日生まれ、愛知県出身。小学生でドラムを、中学1年でギターを始め、中学3年でベースを手にする。マキシマム ザ ホルモンやレッド・ホット・チリ・ペッパーズに影響を受け、スラップに開眼する。2014年に結成されたSuspended 4thに2015人に加入。名古屋市栄の路上ライヴでインプロヴィゼーションやパフォーマンスを鍛え上げ、2019年7月に1stミニ・アルバム『GIANTSTAMP』にてピザ・オブ・デスよりデビュー。2021年1月に配信シングル「もういい」をリリースした。