AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Guild
アコースティック・ギターの世界では、マーティンやギブソンに次ぐ存在として知られるギルド。創業70年を迎えんとするこの老舗は今、また新たな人気を獲得しつつあるように思う。このご時世に伴なうアコギ需要もあるだろうが、低価格〜高価格帯まで充実したラインナップ、ブランド・バリューを裏切らない安定のクオリティ、またクールなルックスなども相まって、“エレキ・プレイヤーが1〜2本目に手にしたいアコギ”として、まさにピッタリ! なのである。そんな“今ちょっと気になる存在”、ギルド・アコースティックから厳選した6本を、BARBEE BOYSでお馴染みの、いまみちともたかが徹底試奏!
現行のベーシックなジャンボ・モデルF-40をもとに、トラディショナルな外観と質感に仕上げた1本。大ぶりな17 1/4インチ幅のアフリカン・マホガニー単板ボディで、トップにはシトカ・スプルース単板を使用。さらにスキャロップ加工を施したアディロンダック・スプルースをブレイシングに用いることで、繊細さとダイナミクスのある鳴りを実現している。マホガニーとウォルナットによる3ピース・ネックもギルドならではの特徴で、ダブテイル方式でジョイントされているのもポイント。
【Specifications】●ボディ:ソリッド・スプルース(トップ)、ソリッド・マホガニー(サイド&バック) ●ネック:マホガニー/ウォルナット3ピース ●スケール:651mm ●フレット:20 ●ピックアップ:なし ●ブリッジ:インディアン・ローズウッド ●ペグ:ギルド・ビンテージ・スタイル・オープンギア ●ケース:デラックス・ヒュミディファイド・ウッド・ケース
まさに“ザ・アコースティック・ギター ”という印象です。音はもうリッチ! ゴージャス! カポを付けた音もキレイだよね。あとは、意外とコンプ感があるかな。ちなみに今回は半音下げチューニングにして弾いてみたけど、これはレギュラーでバーンと弾いてもいいと思う。オレの場合は、アコギを渡されると、とにかくジャカジャカやっちゃうんだけど、これはテクニカルなプレイヤーにも良いだろうね。タッピング奏法とかもいけちゃうんじゃない? 新品だから響きはまだ大人しいけど、弾き込むともっと鳴ってくると思う。うん、“ザ・ギルド”って感じ!
ジャンボ・モデルの形状はそのままに、小型にリサイズしたJUMBO JUNIOR MAHOGANY。14 1/2インチ幅のマホガニー・ボディで、トップはシトカ・スプルース単板。弦長はショート・スケールで、トラベル・ギター的に扱える1本だ。アーチバックの効果も相まって、見た目以上に鳴りが力強く感じられる。ピックアップはギルド/フィッシュマンのソニトーンGT-1をマウント。メイプル・ボディのモデルもラインナップしている。
【Specifications】●ボディ:ソリッド・シトカ・スプルース(トップ)、マホガニー(サイド&バック) ●ネック:マホガニー ●スケール:603mm ●フレット:19 ●ピックアップ:ギルド/フィッシュマン・ソニトーンGT-1 ウィズ・ボリューム&トーン・コントロール ●ブリッジ:パーフェロー ●ペグ:オリジナル・ビンテージ・オープン・ギア ●ケース:デラックス・ギグ・バッグ
ちっこい! まさにトラベル・ギターな感じだね。コロンと抱えてポロンと鳴らすといいかな。ただ、ボディは小さいけど、ネックは普通にがっしりとしているから、弾いていて違和感はないよ。最初に弾いた時、ちょっと音が硬めに感じたので、チューニングを半音下げてみたんだけど、そうしたらいい塩梅になった。部屋の隅にポンとこれを置いといて、曲が浮かんだ時にパッと手に取るのにいいかも。小ぶりで抱き心地もいいし。ストロークで思いっきり弾いてもそんなにやかましくないし、扱いやすい気がするね。
ギルド・アコースティックを代表するメイプル・アーチバックの12弦ギター。こちらはその現行モデルで、12弦ギターにしてはスリムなグリップで弾きやすい。大ぶりの17 1/4インチ幅ボディで、トップにはシトカ・スプルース単板、サイド&バックにはメイプルを使用。大きなサイズとアーチバックとのマッチングにより、実に広がりのある明るい響きが楽しめる。ピックアップはギルド/フィッシュマンのソニトーンGT-1をマウント。
【Specifications】●ボディ:ソリッド・シトカ・スプルース(トップ)、メイプル(サイド&バック) ●ネック:マホガニー ●スケール:648mm ●フレット:20 ●ピックアップ:ギルド/フィッシュマン・ソニトーンGT-1 ウィズ・ボリューム&トーン・コントロール ●ブリッジ:パーフェロー ●ペグ:クローズド・ギア ●ケース:デラックス・ギグ・バッグ
あまり弾かないんだけど、12弦ギターは2台くらい持っていてね。12弦って、D弦とG弦がおいしいじゃない? これもそのおいしさがちゃんとあるよね。オクターブ違いになったD弦とG弦の音の張り出し具合と、ユニゾンになったB、E弦のドローン効果との音量バランスがうまくとれないことがあるけど、これはそういう問題はなさそうだし。あとは、生音も素敵だけど、ピックアップを通した音も気持ちいい。12弦ギターって弾いているだけでリフができちゃうじゃん? それが楽しいよね。
OM-260CE DELUXEは材にこだわりを持たせたプレミアムなモデル。トップはシトカ・スプルースの単板で、サイドとバックには縞の入ったエボニーを使用。硬質なエボニーが解き放つクリアで広がりのあるサウンドが持ち味だ。15 1/4インチ幅のシングル・カッタウェイ・ボディで、バックはアーチ形状を採用。ピックアップはフィッシュマンのSonitone GT-1を搭載している。今回紹介する6本のモデルの中では最もモダン派と言えるかも。
【Specifications】●ボディ:ソリッド・シトカ・スプルース(トップ)、ストライプド・エボニー(サイド&バック) ●ネック:マホガニー ●スケール:648mm ●フレット:20 ●ピックアップ:ギルド/フィッシュマン・ソニトーンGT-1 ウィズ・ボリューム&トーン・コントロール ●ブリッジ:パーフェロー ●ペグ:ギルド・チューニング・マシンGBB2バタービーン ●ケース:デラックス・ギグ・バッグ
実はカッタウェイが付いたアコースティック・ギターってルックスが苦手なんだけど、これは出音のバランスが良いし、オールラウンドでいいね。複雑なテンション・コードを弾いてもきれいに響くし、どんなプレイ・スタイルでもイケるんじゃないかな。カッタウェイも付いているしね。ハイ・ポジションを駆使するようなテクニカルな人にも良さげで、1弦から6弦まで過不足なく良いバランスで鳴ってくれてる。だから、自分だったらこのギターでは開放弦をいっぱい鳴らしたいな。
M-240E TROUBADOUR(トルバドール)は、取り回しのしやすい13 7/8インチ幅ボディのコンパクトなモデル。マホガニーのアーチバックとなっており、トップのシトカ・スプルース単板とのマッチングによって、倍音豊かでバランスの取れたサウンドを生み出してくれる。最大の特徴はなんと言っても、サウンドホールにマグネティック・ハムバッキング、ディアルモンドTone Bossを標準装備していることだろう。ギター・アンプにつないでもビンテージ感溢れる温かなサウンドが楽しめる。
【Specifications】●ボディ:ソリッド・シトカ・スプルース(トップ)、マホガニー(サイド&バック) ●ネック:マホガニー ●スケール:629mm ●フレット:20 ●ピックアップ:ディアルモンドTone Boss ●ブリッジ:パーフェロー ●ペグ:オリジナル・ビンテージ・オープン・ギア ●ケース:デラックス・ギグ・バッグ
これは面白いギターだね。音も面白い。中音域に音が集まっていて、イナタイ感じがする。それに単純にこのピックアップの外観でそそられてしまうよね。気分としては手荒に扱っても許されそうな感じ。弾いていると、ボディ・バックに振動がすごく伝わってきて気持ちいいね。エレキ・ギター用のアンプにつないで弾いてみたけど、いい感じにレトロなエレキ・ギターのトーンも出せる。こういう小ぶりなギターって軽い音がしそうだけど、これは潔いし、骨太な感じがワイルドで良いよ。
13 3/4インチ幅の小ぶりなオール・マホガニー・モデルM-25E。ミディアム・スケールで、トップ、サイド、バックともにアフリカン・マホガニーの単板だ。カリフォルニア・バーストと名付けられた渋めのブラウン・フィニッシュは、ニトロ・セルロース・ラッカーによるサテン仕上げ(トップのみグロス仕上げ)。ピックガードは付いておらず、装飾もシンプルだ。全体にオールドの雰囲気が漂う1本だが、ピックアップはL.R.バッグスのELEMENT VTCをマウントしており、モダンな現場でも活躍しそう。
【Specifications】●ボディ:ソリッド・アフリカン・マホガニー○ネック:マホガニー○スケール:628mm ●フレット:20 ●ピックアップ:L.R.バッグス・エレメント・ウィズ・ボリューム&トーン・コントロール ●ブリッジ:インディアン・ローズウッド ●ペグ:デラックス・ビンテージ・オープン・ギア・ウィズ・クリーム・オーバル・ボタン ●ケース:デラックス・ヒュミディファイド・ウッド・ケース
“アメリカや〜!”って感じだね。ミシシッピ生まれの白人女性で、めちゃくちゃギターがうまくて泥臭い歌を歌ってたボビー・ジェントリーって人がいるんだけど、そのお姉さんが弾いていても似合いそうな感じ。温かい音でギラついてなくて、この小ぶりのサイズのわりにはドスが効いてる。このオール・マホガニーのボディも好きだな。ルックスのせいかもしれないけど、ボトル・ネックを使ったスライド・プレイも良さそう。かと思えば、ピエゾ・ピックアップを通してラインで鳴らすとちょっとモダンな音になるんで、そのギャップに萌えました。
1〜6弦までが塊になっている力強さがどれにもあった。
ギルドのイメージと言えば“タフ”。それとストロークのイメージが強い。というか、自分がアコギを持つとストロークばかりしちゃうというのもあるんだけど。でもやっぱりコードをかき鳴らしたり、歌う人が持っているとサマになるギターだよね。アコースティック・インスト、みたいなイメージはあまりないかな。
最近、アコギってわりと高音域を押し出したものが多い気がしていて。でも、今回弾いたものは基本的にどれもドスが効いてるから、弾いていて戸惑わなかったな。全体的なサウンドの印象としては、1〜6弦までの音が塊になって、それにちょっとコンプがかかったような力強さがどれにもあったように思う。
特に気に入った1本をあげるならM-240E TROUBADOUR。これは面白い。割り切り感がいいね。生音も良いし、アンプに挿してみると、またすごく個性的な音がしたし。
オレは普段からアコギをよく弾いていて、曲を作る時はアンプにつながないエレキかアコギで作るんだけど、それもあってアコギはいつも部屋の隅に置いてある。だから取り回しがいいと嬉しいよね。特にギルドはケースに入れっぱなしにしとくんじゃなくて、いつもサッと手に取れるようなところに置いておくようなギターというか。以前はギルドってゴージャスなイメージがあったけど、今回弾いたモデルはどれもいい意味でカジュアルだった。
ちなみに、今回の試奏動画ではすべて半音下げチューニングにして弾いてみたんだけど、これは単純に自分の趣味。オレは弦をかき鳴らす時に、けっこうバシッ!って弾いちゃうんで、弦が少し余裕を持って振動するくらいのテンションのほうが耳に痛くなくて響きも好きなんだよね。音の出る位置が5cmくらい深まるような感じがして、優しく弾いても豊かに響くようなイメージかな。そういう風に、自分のセッティングや鳴らし方を探るのもアコギは面白いよね。
本記事は、4月13日(火)に発売されるリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2021年5月号』にも掲載されます。巻頭表紙特集は「フェンダー・ムスタング」。ぜひチェックしてみてください!
いまみちともたか
BARBEE BOYSのギタリストとして1984年にデビュー後、佐野元春や井上陽水のレコーディングに参加するなど、多方面で活躍。ほかにも、椎名純平らとのヒトサライ、自身がホストとなってゲストを迎えるスタジオ・ライブ・シリーズ=“カメを止めるな”を主催するなど、精力的に活動中。現在ギター・マガジンWEBにて連載『イカサマイマサ』を連載中!