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- 2024/11/16
AMPEG / Rocket Bass RB-108
大型真空管アンプの代名詞的存在であり、また、世界で最もレコーディングに重用されてきたコンボ・アンプの送り手として、世代やジャンルを超えて愛用されている、ベーシストにとっての王道アンプ・ブランド=Ampeg。本連載では、第一線で活躍するAmpegユーザーたちに、それぞれのAmpeg観を聞くとともに、注目のAmpegギアをチェックしていく。第3回は、マキシマム ザ ホルモンによる世界初のバンド・フランチャイズ“コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店)”に参加するほか、さまざまなアーティストのサポートや自身のYouTubeチャンネルでの演奏動画でも話題を呼んでいるレフティ・ベーシスト、わかざえもんが登場。発売間近の新製品“Rocket Bass”シリーズから最も小型のRB-108をチェックしてもらった。
私がAmpegを最初に知ったのは、高校生のときに出ていたライヴハウスに置いてあったアンプだと思います。やっぱり、でっかいアンプってロマンがあるじゃないですか。ライヴハウスに入って8発のAmpegが置いてあると、“今日はイケる気がする”って気持ちになったり(笑)。
今はB-15Nをレコーディングでもライヴでもメインに使っています。B-15Nを知ったのはけっこう最近の話で、スタジオでヴィンテージのB-15Nを弾かせていただいたんです。そのときは私はヴィンテージのベースを使っていたわけではないんですけど、弾いてみたら音が好みすぎて。ドンピシャで自分が好きな音がバーンって出ていたんですよ。真空管の歪みのあの感じとか、ちょっとウェッティな感じとか、こんなに自分の好みにピッタリな音の出るアンプがあるんだって思ったんです。その数ヵ月後にヴィンテージのジャズ・ベースを買うことになるんですけど、そのお店に置いてあった試奏用のアンプもB-15Nで。今のベースを買った理由も、音がドンピシャで好きだったからなので、“この音を出すにはB-15Nを買わないと、この試奏で感じた感動は表現できない”と思ったんですね。そこからヴィンテージのB-15Nを探し始めて、たまたまフラッと立ち寄った別の楽器屋さんに試奏用で置いてあった1970年代製のB-15Nを、お願いして買い取らせていただいたんです。
私の体感では、B-15Nはチャンネル1のほうが若干スッキリした音が出ます。チャンネル2のほうがロー・ブーストを感じるんですね。基本的にレコーディングだと、ラインの音とアンプの音をそれぞれ違う用途で使っているので、レコーディングではチャンネル2のほうを使って、ボフッと膨らませたアンプの音を作っています。逆にライヴでは、ほかの楽器のみなさんの中音の環境もあるので、スッキリとしたクリアなロー成分が出るチャンネル1を使って演奏するという使い分けをしていますね。
私は宅録もするのでラインの音もけっこう家で作るんです。でも、やっぱりアンプから出したときにわかることっていっぱいあるんですよね。聴感上で気持ちいいと思っていた成分がアンプから出してみたら邪魔であったりとか、逆にアンプで出してみて初めて足りないところがわかったりとか。そういう意味でも、自分で作ったラインの音は、一度アンプから出して試してから現場に持っていくようにはしています。自分のアンプを持っていないベーシストも増えているというお話なんですけど、私は自分のアンプがないと不安なんですよね。知り尽くせないから。自分が気に入ったものを手元に置いて、音の特性はもちろん、あんまり熱くなりすぎるとダメなんだとか、過剰出力しちゃうと落ちてしまうとか、そういう個性を知ってあげて、そのアンプを使いたい。だから自分のアンプを持っていきますし、アンプをすごく愛しているのかなって思います。
私がAmpegを使うのは、音が好きということに尽きます。自分のテンションが上がる音でベースを弾きたいですし。でも、それは独りよがりの“いい音”ではダメで、バンド・メンバーとかレコーディングのときにはそこにいる人たち、みんなが納得する“いい音”じゃなきゃいけない。そういう音を出せるアンプがAmpegだと思うので、私はAmpegを使っています。
RB-108は、表面にあしらわれているダイヤモンドの柄が、私が使っているB-100Rっていうコンボ・アンプと同じデザインで、まずそこでヴィンテージ心がくすぐられて、ワクワクする見た目だなって思いました。音のほうは見た目よりも力持ちっていうか、ちゃんと低音がいます。いわゆる小型アンプだと、前に押し出す力っていうのが、どうしてもなくなってしまうことが多いかなと思うんですけど、RB-108は、どういうわけだか、そのちゃんと前に押し出す低音が出ているなって印象はありますね。つまみをフラットにした状態でも、私は“ボフッとした音”と言っているんですけど、いわゆる“Ampegサウンド”と言いますか、温かいベースの音がしますね。
EQはトレブル、ミッド、ベースで、ベースのつまみを上げていくと、すごくローが出ますね。“こんなに出なくてもいいよ”っていうところまで上がります(笑)。いわゆるスーパー・ローあたりもけっこう出ていて、低域が足りなくて困ることはないんじゃないかな。このサイズ感からは想像もつかないロー感ですね。床が揺れてますから(笑)。普段はフラットの位置でも充分かもしれません。ミドルのつまみはモータウン系みたいな感じで、オールドライクなミッドの上がり方に感じます。邪魔なミドルっていうよりは、キャラクターのあるミドルというか、色づけができるような出方がしているんじゃないかな。チューブっぽい質感というか。真空管を使ったアンプじゃないんですけど、全体を通してチューブ感のある音色だと思うので、不思議な感じがします。トレブルを上げると,けっこう尖ってきますね。刺さります。アクティヴのベースになったような感じで、性格が悪いトレブルを感じます(笑)。基本的にはつまみはフラットで充分いい音が出るんですけど、トレブルもミッドもベースも、EQの効きがいいので、例えばアンサンブルをしているときに、“ちょっとこんな感じにしてよ”って言われたときにも、いろいろと対応できると思います。
SGTスイッチは、押した瞬間に、思わず“オォッ”って言っちゃいましたね(笑)。このスイッチも、最近流行っている“刺さる歪み”っていうよりはチューブっぽい歪み。私は歪みは大好きなんですけど、ジャキジャキした成分があんまり好きじゃないので、ミドルをちょっと上げて、トレブルをちょっと削った状態にすると、私が好きな感じの歪みサウンドになりました。ミドルを上げてAmpegのボフッとした感じのロー・ミッド感もうまく出ましたね。すごく使い勝手がいい歪みだと思います。古き良きAmpegの歪みへのリスペクトがあるというか、それに向かって行ったんだろうなっていう歪みの響きを感じますし、真空管を使っているわけではないのに、この温かさっていうのはビックリしました。
8インチのスピーカーが1発ということで、自宅にも置きやすいサイズなんじゃないかなと思います。ヘッドフォンも使えますし、AUXインを使って外部音源も鳴らせるから、これ1台で自宅練習が完結するような使い方もできるんじゃないかな。でも、家の練習で使うだけだと、ちょっともったいない気もしていて。音量もしっかり出ますし、低音も半端なく出るので、練習の延長として軽音部とかでみんなで音を出そうよっていうところに置いておくのもいいと思いますし、お食事しながら演奏を聴くようなバーとかカフェでライヴをするときにもピッタリの大きさ、パワー感なんじゃないかなと思います。実際に持ってみてもすごく軽くて、女性の私でも片手で持てるんですけど、このフォルムからこんなに低音が出るんだっていうのは、目から鱗というか耳から鱗というか(笑)。驚きでした。“8インチっていうことはスカスカなんでしょ?”っていうことを言わせないアンプですね。
私自身、けっこうオールド大好き人間なので、ヴィンテージのものが好きは好きなんです。でも今回、新しいAmpegを弾いてみたら、おそらくAmpeg自身が、なぜヴィンテージがいいと言われているかをわかっていて、そこに今風のアプローチで向かおうとしているのかなって感じました。向いている方向性として昔のものも今のものもあんまり変わっていなくて、ベーシストが出したいと思っている音に対してのアンサーが変わっていないんですよね。そういう意味では、現行品もヴィンテージも、大きな意味で同じAmpegサウンドなのかなって思っています。私がその音を聴いて一目惚れして絶対に欲しいと思ったB-15Nの感動と同じような感動を、今のAmpegの現行品も誰かに与えられる。そういうものを作り続けているのかなって思います。
音が好き。独りよがりじゃなくて、
みんなが納得する“いい音”が出せる。
Ampegの古き良きコンボ・アンプの遺伝子を受け継ぐRocket Bassシリーズが今春リリースされる。PORTAFLEXシリーズにも採用されているブラック・ダイヤモンド・トーレックスをまとった外装がクラシカルな印象を与え、雰囲気は抜群。小型軽量でありながらクラスDパワー・アンプを採用した音量感は充分で、“SGT=Super Grit Technology”と名付けられた独自のオーバードライブ・サーキットを搭載して、チューブライクな歪みサウンドを得ることができる。
ラインナップは5種類が用意されており、今回紹介するRB-108は、外形寸法が433(H)×411(W)×306(D)mm、重量が10.45kgで、8インチ・スピーカーを1発搭載した30W出力という、シリーズでは最小モデル。そのほか、RB-110(10インチ・スピーカー1発、50W)、RB-112(12インチ・スピーカー1発、100W)、RB-115(15インチ・スピーカー1発、200W)、RB-210(10インチ・スピーカー2発、500W)が用意されている。なお、RB-108はSGTオーバードライブ・サーキットのオン/オフ・スイッチのみの搭載だが、他4モデルではSGTオーバードライブ・サーキットのドライブ量とレベルをコントロールするつまみを備えている。そのほかのコントロールはヴォリュームとトレブル、ミッド、ベースの3バンドEQを基本に、RB-112、RB-115、RB-210はウルトラ・ハイ/ウルトラ・ロー・スイッチを装備する。
入出力端子は、全モデル共通でインプット(0dB、-15dB)、ヘッドフォン・アウト、AUXインを持ち、自宅練習などにも有効活用できる。そのほか、RB-110、RB-112、RB-115、RB-210はバランスドDIアウトを、さらにRB-112、RB-115、RB-210はエフェクト・ループとSGTオーバードライブ・サーキットのオン/オフを切り替えるフットスイッチ・インを、RB-115、RB-210はエクストラ・スピーカー・アウトを備える。
発売はRB-108が4月8日を予定(その他のモデルは4月
わかざえもん
1997年9月29日生まれ。中学3年でベースを手にする。高校卒業後に洗足学園音楽大学へ進学するのと並行して17歳よりサポート活動を始める。これまでに片平里菜、河村隆一、鎖那、ずっと真夜中でいいのに。、みみめめMIMI、むらたたむ、などのライヴ・サポート、つるの剛士、中川翔子、中島愛、HoneyWorksのレコーディングなど、さまざまなジャンルのアーティストの活動に関わっている。2019年5月にはマキシマム ザ ホルモンが行なった世界初のバンド・フランチャイズ化、コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店)のベースに抜擢され、SUMMER SONIC 2019など多数のフェスに出演した。また、自身のYouTubeチャンネルにて公開した演奏動画も話題を呼んでいる。宅録、DTM、アレンジ、作曲、ミックス/マスタリングまでこなすなど精力的に活動している。