AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Canopus/ Yaiba 24 Kit
日本発のカスタム・ドラム・メーカー、カノウプス。そのクオリティの高いサウンドを容易に手に入れたいというリクエストに応えて、開発されたのがYAIBA Ⅱシリーズ。価格帯はミドル・クラスでありながら、革新的な音色を誇り、高い評価を得ている。今冬、同シリーズに24″のバス・ドラムを軸とするニュー・モデル、Yaiba 24 Kitが新たにラインナップ。ここでは日本屈指のトップ・ドラマー、玉田豊夢によるYaiba 24 Kitの試奏レビューを紹介していこう。
日本刀をイメージした鋭いデザインのラグがトレード・マークでもあるカノウプスのYAIBA Ⅱは、ミドル・クラスの価格帯でハイエンドのクオリティを実現した人気モデル。従来のラインナップは、18″×14″の小口径キックを軸にした3点セットにスネアを加えたメイプル・シェルの “Bop Kit”と、22″×18″のキックを軸にした4点セットにスネアを加えた、バーチ・シェルの “Groove Kit”の2種類(スネアの有無は選択可能)。それぞれのキットはネーミングが示唆するようなサウンド・コンセプトの元に開発されていますが、今回新たにラインナップに加わった“Yaiba 24 Kit”は、大口径の24″×14″のキックを軸にした3点セットにスネアを加えた構成で、シェルはGroove Kitと同じくバーチを採用。伝統的なロックの雰囲気が色濃く漂う存在感のあるキットに仕上がっています。
▼CANOPUS Yaiba 24 Kit▼
このYAIBA Ⅱが目指したのは、品質を保ちながらコストを抑え、手頃な価格でカノウプスこだわりのサウンドを提供するということ。そのためにシェル調達や製造工程の見直し、そして運送費を抑えるための新たな梱包方法なども開発。象徴的なダイキャスト製のYAIBAラグもその一環から生まれたそうですが、シェルとの接地面積が大きいデザインの特徴が、締まりのあるサウンドを生み出す要因にもなっているということです。
またシェル塗装の選択も大きなポイント。カノウプスが従来のシリーズで導入していた木材の自然な鳴りを最大限に引き出すニトロセルロース・ラッカーから、一般的なドラムに広く使用されている強制硬化系ラッカーに変更することで作業工程を大幅に短縮。その塗装面の硬質さが、レスポンスが良く、ツブ立ちの明確なYAIBA Ⅱのサウンド・キャラクターを際立たせる効果も生み出しています。ちなみに“Yaiba 24 Kit”のカラー・バリエーションは、落ち着きと深みを感じさせるマット系のラッカー・フィニッシュが5種類と、オーダー制のスパークル・カラーが注文可能となっています。
楽器にとって最も重要な音色を犠牲にすることなく、手の届きやすい価格を実現したYAIBA Ⅱ。そのサウンドの素晴らしさは、スティーヴィー・ワンダー、ケニー・ワシントン、ジャスティン・タイソン、玉田豊夢、吉田雄介、河村吉宏など、研ぎ澄まされた耳を持つ、国内外の一流達に愛用されていることでも実証済み。価格=グレードの常識を見事に覆すシリーズと言えるでしょう。
●Yaiba 24 Kitの第一印象は?
玉田 バーチ特有のふくよかさというか線の太さみたいなものを感じました。(バス・ドラムが)24″とちょっと大きいサイズなんですが、深さが14″なので、ふくよかなのに、ちょうどいいタイトさもあるんです。チューニングを緩めたり張ったり、ミュートをしたり、どんなバランスで使っても良い形にできる。タムも13″でちょっと大きめなんですけど、とても収まりが良くて、これも張っても緩めてもバランスが良いんです。チューニングがしやすくて、とにかく音が作りやすいというところが第一印象としてありました。
●撮影中に、音色がナチュラルなので、音作りがしやすいとおっしゃっていましたよね。
玉田 そうですね。特定のジャンルに偏った感じがなくて、張り気味にしたらジャズ的な音にもなるし、倍音をたくさん鳴らすようなヴィンテージ・テイストのロック・サウンドにもなるし、タイトな音にもできるっていう感じですね。ナチュラルな幅広さがものすごくあるセットだと思います。
●玉田さんが感じるYaiba 24 Kitの特徴、魅力はどんなところでしょうか?
玉田 このキット自体に特徴があまりないことが特徴なんじゃないかと思うんです。特徴はチューニングであったり、タッチや踏み方でつけられる……それが一番の魅力なんじゃないかと思いますね。いろんなヘッドを試したときに、(ヘッドの持つ)特徴がものすごく素直に出るので、そこも僕としては扱いやすいところですかね。いろんな現場に持っていっても、“今日はこの感じ、このテイストで”とか、(求められることが)けっこう変わるんですけど、まったく苦労せずに合わせられる。楽曲に馴染んでいくような音作りがすごく楽にできるんです。年末前くらいから、ほとんどこのセットしか使ってないです。ちょっと前までは、ナチュラル・マットのラッカー・フィニッシュのセットをお借りしていて、サイズは同じなんですけど、ライヴやレコーディングで使ってたんですけど、本当に使いやすくて。年末に今のこのセットが届いて、2021年はこれしか使ってないくらい、とにかく使い倒してます(Yaiba 24 Kitでレコーディングした楽曲に関する記事はこちら)。
●Yaiba 24 Kitは価格帯としてはミドル・クラスになりますが、プロの現場で問題なく使えるというのがすごいですよね。
玉田 ミドル・クラスだから、鳴りが悪いとか、マイク乗りが悪いとか、そういうことは本当にまったくなくて。このキットならではのナチュラルさというか、クセのなさがあるんです。ミドル・クラスだから何かが劣ってるとか、そういうことは僕は微塵も感じないですし、パーツのチョイスとか、そういうものがすごくうまくいってるんじゃないかという印象もあります。もうこれはキットとして完成されている、素晴らしい楽器だと思います
玉田が愛用するYaiba 24 Kitは、24″×14″BD、13″×9″TT、16″×16″FT、18″×16″FTという王道のロック・セッティング。フィニッシュは、Groove Kit、BopKitに採用されている“Yaiba Gray SP”というスパークル・ラッカーをチョイス。写真のセッティングは、エンディングのデモ演奏時に使ったもので、バス・ドラムの打面にレモのCSクリア、タム、フロア・タムは打面がコーテッド・エンペラーで、ボトムはタム、フロア・タムがクリア・アンバサダーという組み合わせ。打面にフェルト・ミュートを施し、余韻を調整している。バス・ドラムはフロント・ホールを塞ぎ、さらに打面側に帯ミュートを装備。シンバルはエージーン、ジルジャン、セイビアンなどさまざまなメーカーのモデルをセレクトしている。スネア・ドラムは現在のメインというTYPE-RのMAGNUM。
【ドラマガWeb/CANOPUS Yaiba 24 Kitの実力 feat.玉田豊夢】
本記事は、3月16日発売のリットーミュージック刊『リズム&ドラム・マガジン 2021年4月号』の転載記事になります。誌面ではカノウプス代表が語るYAIBA Ⅱ開発秘話の他、玉田のインタビュー全編に加えて、機材のさらなる詳細も掲載。YAIBA Ⅱを愛用している海外の凄腕ドラマー達のコメントも含めて、Yaiba 24 Kitの魅力に迫っております。また表紙特集として、世界の舞台で高い評価を得る青山英樹を大フィーチャー。機材面では、ついに日本上陸を果たしたBritish Drum Co.のドラム・キットや、独特なフォルムが印象的なVOX Telstar Maple Kitも紹介しております。
価格:¥152,000 (税別)
価格:¥152,000 (税別)
価格:¥144,500
玉田豊夢
たまだとむ:1975年生まれ。20歳の頃からサポート活動をスタート。100s、C.C.KINGのメンバーとしても活躍。これまでに中村一義、小谷美紗子、斉藤和義、レキシ、いきものがかり、Superfly、フジファブリック、ポルノグラフィティなど数多くのアーティストのライヴ/レコーディングに参加している。Yaiba 24 Kitを使ったレコーディングした楽曲は星野 源「創造」、中島 愛「メロンソーダ・フロート」、aiko「磁石」、「No.7」、フジファブリック「赤い果実 feat.JUJU」、「あなたの知らない僕がいる feat.秦基博」など。