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- 2024/11/16
BLACKSTAR / ID:CORE V3 STEREO 10
アンプ設計に50年以上携わったエンジニア達により、2007年に創業されたイギリスのアンプ/エフェクター・メーカー、ブラックスター。アンプのみならずコンパクト・エフェクターにも真空管を搭載するなど、真空管サウンドを追求してきた同社が、7年もの研究期間を設けてデジタル・アンプという新境地を切り拓き、送り出したのがID:Coreシリーズだ。ここで紹介するID:Core V3はその第3世代で、10W(2×5W)、20W(2×10W)、40W(2×20W)の3モデルをラインナップしている。
今回試奏したのは、10Wで3インチ・スピーカーを2基搭載した「ID:CORE V3 STEREO 10」。10Wといえど音量は十分で独自のスーパー・ワイド・ステレオ技術による広がりのある音像が楽しめる。一般的な練習用アンプ・サイズだが、片手で軽々と持ち運びできるのもポイントだ。コントロールは、CLEAN WARM/CLEAN BRIGHT/CRUNCH/SUPER CRUNCH/OD 1/OD 2という6つのアンプ・タイプ(VOICE)を基本に、GAIN、VOLUME、EQ(ISF)、MOD/DLY/REVという3エフェクト・カテゴリーと4つのエフェクト・タイプ、エフェクト・レベルというシンプルなもの。
アンプ・タイプは初代から変更なしだが、2タイプずつ用意されたクリーンとクランチのサウンドの違いが明確で、幅広い音楽ジャンルに対応してくれる。中でもSUPER CRUNCHは、GAINの設定次第でかなり強烈なオーバードライブにもなり、ハードなロックでも十分使えるだろう。また、ワイド・レンジなOD 1とミドル・ブーストのOD 2は2種類のオーバードライブ・ペダルを使い分ける感覚で、SUPER CRUNCHとはまた異なる歪み感を感じさせてくれる。加えて、ブラックスターのトレードマークであるISFコントロールもやはり秀逸で、ツマミはひとつながら低音域から高音域のEQが連動し、左に回せばタイトで煌びやかなアメリカン・サウンド、右に回せば低音の効いたブリティッシュ・サウンドとなる。シンプルなコントロールながら多彩なサウンドを生み出してくれるわけだ。
3カテゴリー × 4タイプのエフェクトは、MODがフェイザー、コーラス&フランジャー、エンベロープ、トレモロという構成になった2世代目のID:CORE V2を引き継いだもの。[アナログ]のかすれ具合や[テープ]の変調具合などディレイの質も高いが、モジュレーション系にエンベロープが含まれているのも、ファンキーなバッキングを演奏するときなどに重宝する。エフェクトのレベル調整やタップ・テンポなどの搭載も、かゆい所に手が届く仕様だ。
ID:CORE V3での進化で特筆すべきは、本機のために新しく開発されたPC/MAC用のサウンド・カスタム&ライブラリ・ソフト「Architect」だ。本ソフトでは、ISFにプラスして3バンドのEQを調整できるほか、レゾナンスやプレゼンスといったパラメーターもコントロールすることができる。特にレゾナンスはサウンドの“鳴り方”が大きく変わる見逃せないコントロールだ。
また、例えばMODのDEPTHやSPEEDなど、本体ではいじれなかった各エフェクトのパラメーターまで細かく設定していくことができる。第2世代に付属していたソフトInsiderではなかったノイズ・ゲートの搭載も注目のポイントだろう。さらに、スピーカー・シミュレーターの「Cab Rig Lite」も重要な機能で、キャビネット構成やマイクなどを選択することで、同じアンプ&エフェクト設定でもまったく異なるサウンドを生み出してくれる。小型アンプとは思えない生々しく迫力のあるサウンドの鍵と言える機能だろう。
USBオーディオ・インターフェースを搭載しロー・レイテンシーのレコーディングやリアンプにも対応。さらに、LINE IN / STREAMING端子を使用すれば、iPhoneやAndroidなどによるライブ・ストリーミングも簡単に行なえる。ID:CORE V3は、ビギナーのみならず経験者でも十分な満足感を味わえるアンプだ。
価格:¥16,000 (税別)
価格:¥21,000 (税別)
価格:¥24,000 (税別)
野村大輔(のむら・だいすけ)
1975年、東京都出身。エレキ・ギター、アコースティック・ギターのどちらも得意とし、歌の良さを引き出し曲に溶け込むようなギターアレンジを得意としている。また、幅広いジャンルをカバーしつつもブルースをベースにしたプレイ・スタイルを持ち味としたギタリスト。15歳からビートルズに憧れアコースティック・ギターを弾き始め、その後ジミ・ヘンドリックス、エリック・クラプトンなどに影響を受けエレキ・ギターを弾くようになる。様々なバンド活動をしながら10代でギター講師の仕事を開始し、現在ではレコーディング・サポート、ライブ・サポート、作曲、編曲、プロダクト・スペシャリスト、ギター講師、執筆活動など幅広く活動を続けている。